もう少しディティールを考えてみよう。
今シーズンの対戦成績は2勝1敗でロケッツリードです。その内容はオフェンス勝負になっています。特に開幕戦はお互いの高度なオフェンス力を止められない戦いとなりました。第2戦ではハーデンとデュラント欠場の中でスプラッシュブラザーズの活躍でウォーリアーズがねじ伏せました。第3戦はそのスプラッシュブラザーズを抑えきってロケッツが制しました。
お互いの手の内が少しずつ判明していき、次第にディフェンシブになっていきました。この傾向はプレーオフでも続くと思われます。
このプレーオフでディフェンス1位はウォーリアーズで2位がロケッツです。相手次第なので一概には言えませんが、ディフェンス力で勝っているという両チームです。なおオフェンスはロケッツが1位でウォーリアーズが4位です。相手次第。
そんなわけで予想されるのはよりディフェンシブになっていく本流の中で、どうやってオフェンス面で攻略していくのか。
・・・・・・・・・・・
◉カペラという最強のディフェンダー
本ブログでは最強のディフェンシブセンター認定されているカペラ。リムプロテクト能力だけでなくガード相手でも守ってしまうフットワークは現代的。ここが穴にならないのがロケッツの最大の特徴です。相手からすると使いたいマッチアップが存在しない状態になります。
それでいてブロックショットの達人なので手に負えない存在です。スモールラインナップで走る展開にするのは多くのチームが狙うセンター対策ですが、スモール合わせをする必要がないのは大きなアドバンテージでした。だからなおさら現代的。
https://youtu.be/LZdk_GN1zsI
その先駆的存在がドレモンド・グリーン。オフェンスは課題だらけでしたが、ディフェンス面では強力なところをしっかりと発揮しています。特にロンドのマークマンになったのは秀逸でした。ボール運びにプレッシャーはかけつつも、ハーフコートではロンドを捨てて持ち前の高速ヘルプを最大限に活かせる形です。
ここは両チームの大きな分岐点になります。この2人のマッチアップ自体には特に意味がありませんが、PG仕事をするグリーンならばカペラを外に引き出せます。その一方でロケッツはグリーンに打たれるのは無視してカペラがヘルプでリムプロテクトしやすくなります。
グリーンが3Pをヒットしまくれば大きくウォーリアーズペースになる反面、そんな博打みたいな選択肢は選びたくないはずです。
一方でカペラをマークするのがグリーンになる場合はロケッツのピック&ロールの破壊力が落ちる一方でサイズ不足なので得意のロブパスは通りやすくなります。しかし、アンソニー・デイビスへのロブパスも阻害していたグリーンなので、これを守り切れるならば大きなアドバンテージです。
グリーンがカペラに対して攻守に有効に働けるかどうか。そこは大きな注目ポイントです。同時にウォーリアーズはそんなシーンを最終局面まで作ってこないでしょう。
カペラとグリーンのヘルプディフェンス
より機能したチームがディフェンスでアドバンテージを得られます。
・・・・・・・・・・
◉マッチアップ
そんなビックマンの部分を除くと、この両チームにはディフェンス面でハーデンとカリーという穴があります。お互いにあまり守れないのですが、その代わりにハンドチェックでスティールするのが上手く、そして穴を塞ぐだけのディティールもあります。
まずはウォーリアーズ側が想定しているであろうマッチアップ
基本的にカペラのリバウンドを除くとマッチアップは3人だけ考えておけばOKです。クリス・ポール、ハーデン、ゴードンの3人。担当するのはカリー、トンプソン、デュラント、イグダラです。シーズン3試合の対戦ではハーデンをトンプソンが、クリス・ポールをカリーが抑えています。
ところが個人をおさえるほどに周囲にやられていきます。
「ハンドラーを抑える=3Pシューターにやられる」となります。これがあまりにも見事な数字が並んでいます。逆にデュラントだとハーデン個人に得点されていくのですが、チームとしては抑えることが出来ています。
データ的に言えば「ハンドラーを自由にしてシューター達を抑える」のが最も効率的です。これってジャズがサンダーとロケッツ相手にやった対策そのままです。
しかし、おそらくウォーリアーズはその守り方をあまりしてきません。彼らのディフェンスはヘルプと連動したチームディフェンスにあります。「3Pは打たせるけど外させる」ディフェンスマネジメントの強力さがウォーリアーズを支えています。
その中身はパスが出る方向を先読みし、最後までプレッシャーを与えていくことです。
ロケッツが勝利した開幕戦ではタッカーの高確率があり、第3戦ではハンドラーに打たせた結果、クリス・ポールとハーデンで3P11/20と高確率で決まりました。なお、ゴードンは9本全てミス。
https://youtu.be/lOWMXEXfTtk
結局の所、どこかでロケッツの3Pが火を噴くことが求められますし、逆にウォーリアーズがどこを空けてくるのかは注目ポイントでもあります。プレーオフの調子で判断するならば空けるべきはハンドラー達です。
ジャズとのシリーズでハーデンの3Pは29%
第5戦の8/10を除くと3P29%のクリス・ポール2人合計で第1戦に何本の3Pを決めるのか。
なお、ジャズ戦もウルブズ戦も平均5.6本
— whynot! (@whynot_jp) May 11, 2018
アンケートの結果は「ホームだし6~8本」でしたが、もしもウォーリアーズがここに打たせる作戦でくるならば「圧巻の9本以上」でないとロケッツは苦しくなります。
個人的にはアリーザとタッカーに打たれるのを諦めておき、2人が外すように全力で追いかけると予想します。空ける選手を理解していれば追いかけやすい。なお、アリーザはウォーリアーズ戦では全く活躍していません。
・・・・・・・・・・
この3Pと合わせてロケッツが勝利した2試合ではオフェンスリバウンドを拾いまくっています。元々よく奪われるウォーリアーズなのですが、3Pのリフレクトへの集中力の高さはロケッツが上回ります。逆にディフェンスリバウンドを確保出来ると次の展開に移行しやすいので、意外とこのリバウンド対決の方が重要かもしれません。
そんなオフェンスリバウンドをもっとも奪っていたのは、意外にもライアン・アンダーソン。3試合平均2.7です。アウトサイドから打ってくるアンダーソンをブロックアウト出来ないのは致し方ないのかも。しかし、起用されないというプレーオフになっています。
アンダーソンをとるか、カペラをとるか。オフェンスをとるかディフェンスをとるか。
それも1つの分岐点です。
・・・・・・・・・・
◉オフボールムーブを止められるのか
カリーが復帰してウォーリアーズのオフボールムーブは凶悪になりました。トンプソンに対して最もスクリーンかけるのカリーじゃないか疑惑。そのオフボールムーブ対策のためにひたすら修行してきたのがロケッツのスイッチングディフェンスです。スイッチしてしまえば怖くない。怖くないけど、あちらこちらにミスマッチが発生するはず。
それが関係ないのがカペラというセンターであり、インサイドは守れるハーデンとフィジカルが強いクリス・ポールでもあります。
一方でプレーオフにはいってからトンプソンのキャッチ&シュートは僅かな隙も許してくれないレベルで決まっています。
https://youtu.be/Rs3GrqjxhoU
要は打たせると決めてくるので、スイッチでどこまで虐められるかです。スイッチしたところでインサイドを攻められるのはデュラントしかいないので、思い切った方法でロケッツは守ってくるはず。
ここでウォーリアーズがどんなパターンで対抗してくるかは注目です。
マギーをゴール下に張らせてアリウープ狙いや、ウエストのミドルレンジ多用、リビングストンの打点の高いミドルあたりが武器になってきます。こうやってベンチメンバーの武器を使いパターンを多様化してくるのがウォーリアーズです。
スターター以上にベンチメンバーが何をしてくるのかは注目です。
・・・・・・・・・・
アリーザ、タッカー、バーアムーテと強力なディフェンダーを並べるロケッツに対し、ウォーリアーズが個人で打開するのは基本的にデュラントくらいです。それが悪いのではなく、ボールムーブからのキャッチ&シュートを武器にするチームとしては基本的に個人技を省いています。
そのためスターター以外の時間ほど、上手く対策しないとウォーリアーズは苦しくなります。オフボールムーブが驚異的と言ってもスプラッシュブラザーズがいない時間もあるのでロケッツはその間にリードを奪いたいです。
つまりはウォーリアーズのベンチメンバーの時間ほど、ロケッツ対策が鮮明になりやすいし、その時間ほどロケッツは試合を有利にしておきたいはずです。
同じようなオフェンスが出来るメンバーを揃えてトータルゲームを展開するロケッツ
特殊な武器をもつベンチメンバーを集めて試合の中でパターンを多様化するウォーリアーズ
強力な同じパターンが勝つのか、多様なパターンが勝つのかという戦いです。
・・・・・・・・・・
◉ハンプトン5
強力なユニットはデスラインナップとも呼ばれますが、基本的にはオフェンス力が高いのではなく、ディフェンス力の高さからトランジションゲームで3Pを決めまくるから怖いのがハンプトン5です。カリーが最も輝くのがトランジションゲームです。
https://youtu.be/v6_w_g12N84
ここでロケッツには不安材料があります。そもそもシュートがいまいち決まっていないので、ジャズにも走る機会をかなり与えました。ジャズは本当によく走りました。ゴベールがあんなに走るとは想像していなかったので、このプレーオフで管理人の評価をグッとあげたゴベールです。
そんなジャズに対し,明らかに戻りが遅かったロケッツ。ちょっと最近のスローテンポになれすぎている印象です。ウォーリアーズのスピードに晒されると混乱するのではないかという疑問があります。逆にペリカンズ相手にもトランジションで勝負できたウォーリアーズからすると、守って速攻による大量リードが期待できます。だからこの両者で最も大事なのは攻守一体の考え方です。
ロケッツがハーフコートゲームでシュートを決めたり、オフェンスリバウンドを確保して自分達の流れをキープするのか。
それともロケッツのハーフコートゲームでシュートが外れ、トランジションに移行してウォーリアーズが大量リードを得るのか。
ハーフコートゲームの質が高いのはロケッツ。攻守一体のラッシュ力こそがウォーリアーズ。ジャズに悩まされ続けたロケッツのトランジションを考えると、ウォーリアーズ側にチャンスが多く訪れる気がしています。
・・・・・・・・・・
◉クラッチ勝負
ウォーリアーズはプレーオフでここまでクラッチ勝負らしきことは殆どしていません。勝った8試合は有利に試合を運びクローズしています。ロケッツの方も同じくですが、ウルブルとの第1戦はハーデンにより、ジャズとの第5戦はクリス・ポールにより勝利を得ています。
強力なスプラッシュブラザーズですが、クラッチ勝負になってくるとそこまで存在感を示せないことがあります。それだけなら「事がある」程度の話なので良かったのですが、デュラントが加わったことでクラッチ勝負になるとデュラントによるプレーメイクになります。
ウォーリアーズが更に強くなった部分でもあるし、ちょっと単調になった部分でもあります。
https://youtu.be/KDcfku1zekQ
ロケッツはここでハーデンとクリス・ポールの2段構えになっていることが今シーズンの特徴です。より好調な方が勝負することは、殆どクリス・ポールに任せたジャズとの第5戦が示しています。リーグ最高のオフェンスマシーンのデュラントと、2人のクローザーを揃えたロケッツ。その行方を左右するのは勝負強さよりもディフェンス力です。
・・・・・・・・・・
https://youtu.be/y1uuPvqw72g
今シーズンはアリーザ、タッカー、バーアムーテが驚異的にデュラントを抑えています。特にハンドチェックの上手いアリーザはFG29%でターンオーバーも誘いますが、その一方でデュラントがパスを選択して打たせていくのでチームとしては守れていない面があります。
それに対してバーアムーテはそもそも打たせない守り方によりシュートを打たれるとお手上げですが、チームとしても守れている成績です。なお、3試合しかないので母数が少ない。
ならばデュラントはスイッチさせて他の選手を狙うのが得策ですが、その相手がハーデンくらいしかいません。そのハーデンは平均よりも守れていないものの、比較的デュラントを守るのは好きですが、ハーデンに攻守に負担を強いられるのであれば効果的なマッチアップに出来そうです。
https://youtu.be/mNmamHtzxUQ
一方でロケッツが頻繁に狙ってくるのがカリーです。しつこいくらいにカリーをマッチアップに選ぼうとします。ところが前述の通り、個人のアタックに関してはカリーはクリス・ポールを止めるケースがでていました。上手くスティールしたシーンが思い出されます。
一方でハーデンはカリーを相手にしないのですが、2年前はトンプソンとのダブルチームにハマりました。あの頃とは全く違うので参考にはなりませんが、ポイントになるのはカリーは勝負所でギャンブル気味の守り方を割とすることです。
シリーズの中であまりクラッチ勝負にならない可能性もあり、珍しく訪れた勝負所でカリーのギャンブルが成功してウォーリアーズが逆転する可能性は十分にあります。もちろん失敗して逆転される可能性も。
そんなわけで攻守にカリーとハーデンがポイントになってきそうなクラッチ勝負です。なんとなく2人いるロケッツが上回りそうですが、そこではきっとタッカーをフリーにして3Pを打たせてくると思うので、勝負を決めるのはタッカーです。
ここまで何を書いたのかといいたくなる結論がタッカー。
・・・・・・・・・・・・・
◉レポートし難いシリーズ
おそらくこのカンファレンスファイナルは試合の面白さはあっても、ブログでレポートを書きにくい内容になるはずです。お互いの対策と修正は細かくて書いてられないし、そもそも見つけられるか微妙です。
戦術的に練り上げている両チームなので、おそらく偶然性が勝負を分けてきます。拮抗しているからこそ「シュートが連続で決まった」みたいな事で流れが大きく揺れ動くはずです。ギアを上げようとすればカウンターされるのも良くある話。
だから多分、普通にハイライト観た方が伝わりやすい試合になる気がしていて、楽しみな反面気が重かったりします。
シュートが好調な方が勝つ
それだけの気もしています。ホームもアウェイも関係なく、そして拮抗しているからこそ、何かを突破されると堰き止められない部分も出てくるはずです。意外とあっさり決着がつくこともよくある話です。
レギュラーシーズンの対戦だとイグダラが一度も出場していなかったんですよね。
プレーオフに入って好調なイグダラがいる分ディフェンス面ではよりウォーリアーズが有利でしょうか?
デュラントのいなかった試合にはスターターで出ていますね。イグダラ、デュラント、グリーンとヘルプディフェンスが揃った状態はロケッツは未体験なんですよね。
すみません。
イグダラ1試合出ていましたか。勘違いしていました。
でもやっぱり怖いことには変わりないですよ。