◎ベッカム・ブラックの衝撃
そんな白谷のプレーとは対照的なものを見せられたのがアメリカ戦でした。世代NO.1プレイヤーとしてスポンサーもついているベッカム・ブラックは次元の違うプレーメイカーっぷりでした。
アメリカらしい身体能力とスキルによる突破・・・ではなく、常にルックアップし、パスでゲームを組み立て、少しのギャップからディフェンスを崩し、驚異的なコートビジョンでワイドにキックアウトもすれば虚を突いたアリウープパスでフィニッシュに繋げ、そして正確な3Pで射貫いていく。
常に余裕のある振舞いをしているだけでなく、U17とは思えない冷静沈着っぷりでした。ダンクを連発して勢いのある時間帯に速攻のシチュエーションですら、急いで戻る日本の逆を突いて逆サイドから3Pを打たせたシーンなんか、パスそのものではなく「この流れ、このシーンで、それを選択する17歳」なのが驚異でした。
その上でトランジションで3人に囲まれても左手フローターで決めきるし、ペイント近辺でファールされるとスピンムーブして&ワンにしてしまう。タフなフィニッシュすらも難なく決めてくるので化け物すぎました。
あとブムチェ・ブムチェが余計なことをせず、ディフェンスが薄いスペースへ動くんだよね。外が空いていたらオフボールでポジションを変えてパスを呼び込んで3P。ペイントが1人になったらポジションを取る。シンプルだけど、止められないし、個人技アタックじゃないからカバーも出来ないし。
そんなベッカムは日本どころかアメリカの控えガードとの差が激しすぎ、ベッカムがコートにいるか否かでオフェンスが別物になってしまいます。だからといってベッカムは個人技で突破しているわけじゃなく、あくまでもチームオフェンスをしているだけ。違うのはコートビジョンと多彩なスキルです。もちろん、身体能力もあるけど控えガードだって身体能力満載だし。
さて、ここが選手評価の話になってきます。ベッカムが他の選手と差を作っていたのは何か。それは1on1で突破する能力ではありません。
①全てのスキルレベルが高い
②パス、フィニッシュなど、全てのスキルでパターンが豊富
③コートビジョンが抜群
④状況判断、プレー選択が素晴らしい
⑤チームメイトを使う能力が高い
こんな点になってきます。突破力やシュート力で言えばベッカムよりも優れた選手はいるのですが、何でも出来てしまうのはベッカムの優位点です。ただ、それらは③④⑤が紐づいています。どんなに多彩なスキルがあっても使いどころは間違えてはいけないし、身体能力マックスで突き進むよりも適切なチョイスをしています。アメリカですら、、、アメリカだからこそ、単純な身体能力やスキルではない部分で差が生まれているともいえます。
『育成年代は個人能力を重視』なんていう話が出ているみたいですが、その中に③④⑤が含まれている気がしないのが日本です。それどころか、今回の代表だと①と②も乏しいというか、ストロングスタイルで自分の得意技を求めているように見えます。それは国内の高校で試合をするならば、多彩さよりも得意な形で勝負する方が勝率が高いからでもあります。
また、③④⑤は試合に出て経験しないと向上しない能力であり、そういう判断する機会がないと試合に出ていても意味がありません。個人技突破中心の日本のオフェンスでは使われない能力でした。そこはマルチネスのオフェンスに求められていた能力との大きな差だし、フランス戦で急にやることを変更した日本で宮里が必要になった理由でもあります。総じて日本の選手選考は判断能力を重視しておらず、それはオフボールで棒立ちになるコート上のプレーにも表れています。
ベッカム君がアメリカの中でも別格の凄味を見せつけてきましたが、スクリーンの使い方やマイボールになった瞬間のロングパス、ディフェンス時のディレクションなど、様々な部分で色んな『上手さ』がありました。圧倒的な差を感じさせるのは1on1の差ではないのでした。
ちなみにトルコのガードもなかなかすごいです。予選時点では得点王であり、アシスト王でもあります。
ところで、ちょうど『ADIDAS NATIONS TOKYO』の記事が出ていましたが、このキャンプの内容について次のように記載されています。この年代で求められている要素は、個人の1on1中心の能力ではありません。
選手たちは3日間で、身体測定、アスレチックテスト、ワークアウト、そして実戦形式のゲームに臨み、NBAコーチ陣が担当するワークアウトでは、トランジションやピック&ロール、スクリーンプレーなど実戦を想定した内容を中心に行われた。細かな指示は少なく、高い理解力、判断力、コミュニケーション能力が求められる、まさにNBAレベルを意識したプログラムとなっていた。
ベッカム君と17歳時のドンチッチだとフレームの差が大きいですが、どんな違いがありますか?
ドンチッチは意外とアスレチックなプレーをしていたんですよね。スピードにキレもあったし。
ベッカムはもっと達観している感じで、常に周りを見ることを大事にしているので、スピードを上げすぎないし、オンボールのフェイクも少ないかな。
とはいえ総合的にはフロアビジョンに優れている点なんかはドンチッチっぽいです。ドンチッチもアメリカにいたら、もっとプレーメイクよりだったかもしれないし。
個人的には白谷がNCAAに行くためのショーケースなのかなと思うくらいの試合構成で、ガーベッジみたいな時間でしか使われない選手もおり、U17なんだけどなーとも思う試合ばかりで。
「部活」な感じが全面に出ちゃうのは佐古と同じですね。
確かに「部活」ですね。すごく「部活」です。
優秀な選手が沢山いて、そのなかで競争が行われている感じもなかったりして。
ハイレベルな環境で化ける選手がでてもおかしくないのに、可能性を閉じているようでした。