「ハイ、ストップ。もしここでオフェンスリバウンドを取ったのが君だったらどうなる?それはつまり・・・」
「4点分の働きって事か!」
そんな事を言ったのは誰だったか?
しかし、まぁオフェンスリバウンドに4点分の価値はないわけです。
速攻くらうならばオフェンスリバウンドよりもトランジションディフェンスしろよ!
そんなツッコミはさておき、オフェンスリバウンドには何点の価値があるのか?
それが知りたいのです。
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◉最強オフェンスリバウンダー
リーグで最強はこの2人
◯スティーブン・アダムス
5.2オフェンスリバウンド
◯アンドレ・ドラモンド
5.0オフェンスリバウンド
アダムスの方がインサイドを1人でこなしており、単純に相手を上回ってリバウンドを獲得しなければいけません。
ドラモンドはハイポストでハンドオフプレーを混ぜて、ボールマンへのヘルプへディフェンスを誘導し、ゴール下でフリーになるシステムが出来ています。だからグリフィン加入でハンドオフが減ったのが悩みのタネだったりします。グリフィンが外したのはリバウンドが取れない。
もっとも、アダムスもウエストブルックがインサイドをメチャクチャにするのでイージーに取れる面も大きいです。
そして2人とも圧倒的な高さよりも、体の幅とポジションとりで優位に立ってオフェンスリバウンドを獲得します。同じく4位のカンターもポジションで確保します。
『オフェンスリバウンドは気持ち』なんてウソです。
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ジョーダンとハワードも今季も好調に獲得しています。ハワードはカンターに近いタイプでゴール下のパワープレーからの流れでポジションをとってオフェンスリバウンドを取るタイプ。ある意味リバウンドへの参加数が増えればもっと取れそうなので、『オフェンスリバウンドへの気持ちが足りない』と言いたくもなるわけです。ただ、意外と高さがないのもハワードです。
ジョーダンは逆にオフェンスシステムの中での役割が少なく、リバウンドに備えるのが最も重要だったりします。ゴール下にジョーダンが待ち構えている怖さを利用してフリーに作るので、ドラモンドやアダムスと考え方が逆になります。
昨季3.9本だったゴベールは2.7本とケガもあり不調です。一方で役割変更の面もあって、ハイポストでボールを経由するパターンが多くなり、そこからシュートに結びつくとゴール下に間に合わなくなっています。そんな戦術の影響も出るのがオフェンスリバウンドです。
速さが高さを凌駕するのはドラモンドがゴベールよりもオフェンスリバウンドを取れる点にも関係して来ます。同じようにハイポストで中継点になるけど、ゴール下まで行く機動力が段違いに速いドラモンドです。
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◉最強オフェンスリバウンドチーム
◯オフェンスリバウンド
サンダー 12.6
ナゲッツ 11.2
レイカーズ 11.1
シクサーズ 11.0
サンズ 10.7
ニックス 10.4
ウルブズ 10.4
アダムスの存在もありサンダーが圧倒的な強さを誇ります。最下位のマブスとは5本近い差があります。それではオフェンスリバウンド5本というのはどれくらいの差になるのでしょうか?
当然ですが、さすがに5本×4点で20点の価値にはなりません。セカンドチャンスポイントの差でそれがわかります。
◯セカンドチャンスポイント
サンダー 14.9
レイカーズ 14.6
ウルブズ 14.3
ナゲッツ 13.7
シクサーズ 13.6
ニックス 13.6
サンズ 13.6
オフェンスリバウンドの数とセカンドチャンスの得点数は順位こそ違えど、トップ7は同じチームが並びました。オフェンスリバウンド数では2位と1.4本の差がある割には、セカンドチャンスポイントではサンダーが圧倒的ではなくなっています。
こうみるとレイカーズやウルブズがリバウンドからの得点効率が高そうです。
ペイント内得点はサンダーが43.5点で17位なのに対し、レイカーズは53.5点で1位、サンズまでが11位以内にはいっており、
「オフェンスリバウンド数、セカンドチャンスポイント、ペイント内得点の3つには相関関係がある」
当たり前のような理論が成り立ちますが、そこから大きくサンダーが逸脱している事がわかります。
アダムス、ドラモンド、ジョーダン、カンター、オルドリッジ、ハワード、カペラ、ホワイトサイドとオフェンスリバウンド個人上位のメンバーですが、サンダーとニックスしかチームとしては上位に並んでいません。
チームとしてオフェンスリバウンドを重視し、セカンドチャンスを稼ぐためには個人よりもチームで取りに行く方が大切のようです。
オフェンスリバウンドの強いサンダーですが、中身をみるとアダムスの異様性で首位にいるような雰囲気です。
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◉オフェンスリバウンドは何点の価値があるのか?
そこで各チームでオフェンスリバウンドに何点の価値があるのかを計算してみました。
セカンドチャンスポイント ÷ オフェンスリバウンド
つまり1本のオフェンスリバウンドで何点を稼いでいるのか?
◯オフェンスリバウンドの価値
キャブス 1.39
ウルブズ 1.38
ペリカンズ 1.36
ホークス 1.35
クリッパーズ 1.34
・・・
サンダー 1.18
なんとキャブスが1位です。オフェンスリバウンド数は28位、セカンドチャンスは22位と全くダメなチームなのですが、リバウンドをとれば得点に繋げるわけです。
ウルブズを除き、オフェンスリバウンド数が1桁のチームが上位に並びます。それはつまり少ない代わりに効率的に得点できるとも言えそうです。混戦の中でリバウンドはとれないけど、少人数の競り合いでとるから得点になりやすい。
トリスタン・トンプソンはオフェンスリバウンドに強いですが、押し込む能力が高いイメージはないです。しかしキャブスが大きくスペーシングしているので周囲のディフェンスも少ないのかもしれません。
一方でサンダーは29位と全くダメ。ロバーソンについて「オフェンスはPF」と評しましたが、チームとしてリバウンドはとるけど、押し込むのは上手くありません。ただサンダーの場合は何度も拾い直してシュートを決めているイメージがあるので、確率が上がったらリバウンド数は減りそうですが。 サードチャンスの得点が多そうなサンダー。
◯リーグ平均得点率 1.28
全チームを平均するとこんな数字になります。チーム毎に大きな差はなく、グリズリーズ、サンダー、ブルズの3チームだけが1.2を下回っています。サンダーに違和感はありますが、ほぼこれがオフェンスリバウンドの価値と考えて良さそうです。
リバウンド後に全て2Pを打ったと仮定するならば、FG64%です。リバウンドはとったけどオフェンスをやり直しパターンも多いので、おそらくリバウンドから直ぐにゴール下で打てるならば70%くらいでしょう。
「オフェンスリバウンドの価値は1.28点」
「オフェンスリバウンドの価値はFG64%」
2PFGの平均は51%です。つまり、この価値基準で捉えるならば、通常のオフェンスよりも効率的なので
『オフェンスリバウンドの価値は、1つのオフェンスを組み立てるよりも価値がある』
そう捉える事が出来ます。ただし、3P換算だと42.7%相当なので『一部の優秀なシューターはオフェンスリバウンダーよりも価値が高い』とも言えます。
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◉価値が高いオフェンスリバウンダーは誰か。
それはドラモンドとアダムスで良いのですが、同じ様に上位陣を得点率にしてみます。
◯セカンドチャンス/オフェンスリバウンド
アダムス 0.90
ドラモンド 1.10
ジョーダン 0.86
カンター 1.25
オルドリッジ 1.32
ハワード 1.18
カペラ 0.81
リバウンドを拾っても自分で打てるとは限らないので、チーム平均よりも低くなるのが普通です。特に多くのリバウンドをとるインサイドプレーヤーはディフェンスにも囲まれているので、その傾向は強いはず。
その中でオルドリッジとカンターの優秀さが目立ちます。どちらのチームも苦しいオフェンスを強いられるシーンが多いのですが、それを個人で拾って押し込んでいる事になります。
特にオルドリッジには強さのイメージはないし、何よりミドルレンジを得意としておきながら、オフェンスリバウンド数で5位というのも素晴らしいです。今季のスパーズをオルドリッジが支えている事がよく分かります。そして鮮やかなオフェンスのイメージが強いスパーズですが、こんな地味な部分こそが強さの秘密だったりします。
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オフェンスリバウンド数は2.3前後と少ないものの、効率では別格の強さをみせる3人がいます。
アンソニー・デイビス 1.75
デマーカス・カズンズ 1.50
ジョエル・エンビート 1.50
特にアンソニー・デイビスは次元が違います。高くて強いだけでなく速さがあるので、プットバックにいけるシーンが多いのも特徴です。
オフェンスリバウンド上位陣はポジション取りの上手さで獲得しますが、デイビスはそれよりもタイミングで飛び込んでくるので、数は少なくても押し込む能力が高くなっています。そして同じチームにカズンズがいるのも脅威。
エンビートは数を増やせれば更に手に負えなくなりますが、運動量が増えすぎるとケガも怖いしな。将来への課題でしょう。
まぁこの3人は他の選手がとったオフェンスリバウンドから最終的に自分がシュートを打つ機会が多いから高いだけかもしれません。というか間違いなくそんな理由です。
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◉ウルブズの恐怖
リバウンドランキングの上位にはこんな特徴がありました。
・そもそもFG%が低い
・リバウンドを押し込む決定率が低い
シュートが多く落ちればオフェンスリバウンドは増えやすいですし、サンダーのようにサードチャンスを手にするならば尚更です。
そんな全体の特徴全てを否定するのがウルブズの存在です。
◯ウルブズ
オフェンスリバウンド数 6位
FG% 4位
決定率 2位
まぁリバウンドを押し込む能力が高いからFG%が上がる面もありますが、それにしても群を抜いた違和感があります。
◯カール・アンソニー・タウンズ
オフェンスリバウンド 2.9(10位)
決定率 1.31
◯タージ・ギブソン
オフェンスリバウンド 2.4
決定率 1.25
その中心にいるのはタウンズとギブソン。決定率ではペリカンズコンビに劣るものの、リバウンド数が多いので上回ります。そしてこの2人はどちらかはインサイドにいるので、ディフェンスも多くいる事になります。そんな中でリバウンドを高確率で押し込めてしまう能力の高さは素晴らしいものがあります。
ジャズのゴベール+フェイバーズも本数では同じくらいとりますが、高確率で決める事が出来ていません。
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◉ディフェンスリバウンドを取らせない
ウルブズの凄さは相手にディフェンスリバウンドを取らせない事にあります。
◯オフェンスリバウンド数 10.4
◯被ディフェンスリバウンド数 34.2
相手のディフェンスリバウンド数が最も少ないのがウルブズでもあります。それだけ相手にチャンスを与えない事にも繋がります。
これはスタッツでオフェンスリバウンド率という統計もあります。自分達が外したシュートの何%をオフェンスリバウンドで獲得しているのか。
◯オフェンスリバウンド率
サンダー 28.1%
ナゲッツ 26.1%
シクサーズ 25.7%
ウルブズ 24.8%
ニックス 24.4%
ここでも圧倒的なのはサンダー。そして重要なのはそれが相手の速攻を防ぐ役割を果たす事です。まぁディフェンスリバウンドからの速攻のデータがないので比較できません。
サンダーの特徴としてロバーソン不在で失点が増えた事があります。そこにロバーソンのディフェンス能力に注目が集まりますが、実はオンコートでのオフェンスリバウンド率が32.1%と非常に高くなります。
つまり単にディフェンス能力が優れているだけでなく、相手のオフェンス機会を減らす事にも長けていました。
もう少し掘り下げても面白そうな数字ですが、それはまたいつか。
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◉オフェンスリバウンドの価値は高い
そんなわけでオフェンスリバウンドの価値の高さを数字で換算してみる企画でした。それはだからこそ「ディフェンスリバウンドを確保しろ」という事ですが。
サンダーの強さは数字で分かりやすいわけですが、それだけでなくウルブズの驚異的な数字や、ペリカンズの特殊性が上げられます。
3Pの重要性が高まりスペーシングしているからこそ、オフェンスリバウンドの価値も高まってきています。
しかし、面白いのは現在のトップ4チームであるロケッツ、ウォーリアーズ、ラプターズ、セルティックスの名前が全く出てこない事です。
オフェンスリバウンド率では10位のラプターズを除いて20位前後に3チームがいます。弱くはないけど強くもない。
オフェンスリバウンドの計算上の価値は高い。
でも高い勝率を実現するのにはオフェンスリバウンドに頼ってはいけない。
そんな気がするのはサンダーだけでなく、ナゲッツやウルブズが非常に強いと感じる割には、あまり高くない勝率が示している気がします。
そして全般的にイーストはオフェンスリバウンドが弱いです。その中ではシクサーズの存在が大きくなっています。ほかのチームにはない強さは相手にとっては対策が必要になり困らせるので、これから台風の目になりそうなシクサーズです。
始めまして。いつも楽しく拝見しております
バトラーが壊れてしまい傷心のMINファンですが
ポジ要素を書いていただき少し心が軽くなりました
しかしシボドー大概にせえよという感は拭えませんね・・
PO進出も大事ですがウィグとタウンズまで壊れないことを心から願います
いやー、シボドーの罪は重すぎますよね。オールスターでプレー出来ないほどに疲弊していた事も気になります。
しかし、まさかバトラーが根を上げるとは意外でした。ウィギンズとタウンズに関しては頑丈なので、すぐにケガにはならなそうですが、将来への重荷を背負わせている気がします。
タウンズがいなくなると苦しいのは、こんなウルブズの強みが失われる危険性があるんですよね。
初めまして、スポナビのころからいつも楽しく読ませて頂いております。
この記事とは関係なくて申し訳ないのですが、現代のNBAはスモールラインナップ、3p多投の全盛期ですよね。ここまで流行ったのはヒートが連覇したことが理由でしょうか?80年代のドン・ネルソンHC、サンズの頃のマイクダントーニHCがラン&ガンでスモールラインナップをやっていましたが主流にまではなりませんでした。私としてはスポルストラHCがヒート連覇でシステムを構築し、カーHCがそれを昇華させたように感じました。(印象で申し訳ありません)
whynotさんの意見をお聞かせ頂けたらと思います。これに関してですがデータに基づく現代NBAの起源はどこか?のような記事があると今のゲームを見る上でとても面白いと思いました。(他力本願で本当に申し訳ありません…)
これからも更新楽しみに待ってます!
スポナビの頃にあった将棋棋士をNBAヘッドコーチに当てはめてみたのようなマニアックな記事もまた期待してます!笑
ありがとうございます。将棋の話はおふざけですが、同じおふざけとしてサッカーの『ミシャ式』は書いてみたいと思った事があります。
スモールラインナップをまとめるのも良いかもしれませんね。
大きく2つのスモールラインナップがあって、1つはインサイドを減らしてアウトサイドを増やすパターンです。これはストレッチ4の概念の時点で生まれています。
スリーピートしたレイカーズはロバート・オーリーがいましたが、彼はロケッツではSFでした。シャックを活かすためにインサイドを空けたわけですが、実質これは現代でも行われているスモールラインナップです。7つのリングを獲得したオーリーこそが思い返せばスモールラインナップを流行らせた、そしてチームを勝たせた張本人だと思います。
ヒートのパターンは完全にセンターを置かない形です。それはウォーリアーズで完成したのは事実ですが、ウォーリアーズの場合はラン&ガンスタイルでした。
ラン&ガンを除けば連覇したレイカーズも似ていました。ガソルは万能系PFですし、こちらも万能系のSFオドムを使っています。
だから実はスモールラインナップは時代を遡ると色んな場面で出てきていると思います。
そこに3Pと高速化が加えられているのが最近の流れですね。そしてスモールラインナップの目的も変わり始めました。
だからヒートが始まりというのは強く違和感があって、ウォーリアーズが流行を定めたというのは納得する感じです。
でも、そんなにNBAを観ていなかったので、高速化と3Pの原点がどこかは難しいですね。個人的に1番初めに観たのはNCAAでナンバー1シードがスウィート16でジャイアントキリングされた時に3P乱れ打ちされていました。いつだったか忘れましたが、かなり昔です。
返信ありがとうございます!
サッカーの方も期待してます!笑
スモールラインナップが大まかに2パターンあり、スリーピートレイカーズでも採用されてたのは知りませんでした!
私がNBAを見始めたのが08年ぐらいからなのでスモールで連覇したヒートの印象に引っ張られてました、申し訳ありません。
また色々と知ることができ、ありがとうございました!
実はヒートが優勝した前後はファイナルさえも観ていません。だからヒートの「高速化」の部分は知らないのです。
レブロンとウェイドをみていると、そしてスポルストラとフィッツデイルをみていると、最近の高速化とは違うかな、と感じています。