八村とウィザーズ 前半戦

◎ウィザーズのオフェンス

最後にウィザーズのオフェンスについて触れてみましょう。よく「アンセルドってどうですか」と聞かれますし、その評判が悪いことも知っていますが、これがまた非常に難しいのがウィザーズらしいです。少なくとも優れたHCではないことは確かですが。

ウィザーズのオフェンスはPGが片側のサイドによってタメを作り、逆サイド側でオフボールスクリーンからマークを外す形が基本です。オフェンスパターンは多くないものの、オフボールのプレーメイクとポストを経由するボールムーブによって構成されており、ハンドラーアタック依存症だった以前のウィザーズからガラっと変わりました。

昨シーズンは「ヨキッチがいないのに、なんでこれをやるかなぁ」というシーンが多く、そこにポルジンギスをあててプチ解決を目指していました。今シーズン序盤もそんな印象がありましたが、モンテ・モリスの加入によってオフボールのチョイスが増え、スペーシングされた中でオフボールから作るという割と論理的な形をしています。

〇モンテ・モリス
9.9点
3P38.3
5.4アシスト
0.9ターンオーバー

躍動していないバートンと違い、モリスは期待通り、いや期待以上の活躍ぶりです。タメを作る役割で5.4アシストしながら、ターンオーバーが驚異の0.9のみ。アシスト/ターンオーバー率6.14はウィザーズでは異次元の数字です。八村は1を下回っているというのにさ・・・。

主役ではないモリスが、主役たちにスペースとアタックチャンスを与えており、ビール、クズマ、ポル、そして八村に点を取らせるオフェンスにおけるゲームメイカー役を適切にこなしています。ディフェンス悪いけど。

〇オフェンスレーティング
オンコート 118.7
オフコート 102.8

その結果、エゲツナイ数字を叩き出しています。モリスがコートに居なければ酷い数字であり、コートに居ればウィザーズはリーグ有数のオフェンスチームなのです。もちろん、モリスは単なる脇役なので、スターターの時間がメインというアドバンテージがあるし、個人として積極的に点を取っているわけではないし、シュートチャンスを作りまくっているわけでもないので、スコアラーたちの活躍があってこそですが、スコアラーもモリスがいないと活躍できないんだから、卵と鶏。

この事実はアンセルドの評価を難しくします。モリスがスゴイのではなく、モリスが演出すればスゴイわけだ。でも、それはモリスがいないとスゴイことにはならない。良いオフェンスシステムは組めているけど、そのオフェンスシステムを実行できるのはモリスしかいない。

オフボールから崩すオフェンスを作れている
でも、作れるのはモリスしかいない
チーム全体に戦術を徹底できていない

自分たちがやりたいオフェンスを展開出来れば、良いオフェンスチームになれるものの、それを徹底させることが出来ていません。これが2年目なので更にたちが悪く、また選手の方もチーム戦術をしっかりとこなせるのがモリスとクズマとアブディヤくらいしかいません。なので、アンセルドが悪いのか、選手が悪いのか、よくわからん。

さて、八村の話に戻りましょう。

今シーズンはモリスの加入により、オフボールムーブから仕掛けるオフェンスが機能しています。しかし、八村はキャッチ&3Pが少なく、またコーナーまでしっかりとスペーシングしての3Pも少なく、オフボールムーブ+ポジショニングの課題が明確に残っています。ちなみに管理人が見た試合ではビールのオンボール時には、モリスから頻繁にポジショニングを修正されていました。コーナーにいかないんだもん。

ポジショニングが定義されているにもかかわらず、ポジショニングミスが多い八村も悪いけど、八村に限らずチーム全体として徹底されておらず、選手個人の判断次第になっている。なんだこれ、意味わからんぞ。それがアンセルドの評価でもあります。

オフボールから作っていったものの、崩し切れていない時の出口はポストアップになっており、セカンドユニットでは八村の仕事です。ここでミドルを決めているので、働けているのですが、チーム全体でみると効率の良いオフェンスは出来ていません。八村のオンコート時はモリスはベンチの事が多いしね。

〇八村のレーティング
オフェンス  104.0
ディフェンス 109.1

セカンドユニットなので致し方ない面はありつつも、八村のオフコート時のオフェンスは114もあるので、その差は歴然です。シックスマンとしてスコアリングに徹しているのは個人スタッツをあげていますが、それはアンセルドからするとチームオフェンスの中に混ぜにくいという評価なのかもしれません。

好調に過ごしているシーズンですが、ウィザーズはチームオフェンスが徹底されているのか、よくわからず。その影響は特にセカンドユニットで色濃く出ています。何がしたいのかわからなかったり、個人アタック中心だったり。

八村の個人としてはオフボールのポジショニングと3Pの積極性が課題となり、チーム全体の改善とは関係ないですが、ディティールがチームオフェンスを作るわけで、よりスペーシングを意識したほうが良いでしょう。このあたりはアンセルドがどう捉えているのか謎だよね。

ということで前半戦の感想でした。役割としては明確なので、これを続けるのが一番大切です。プラスしてチームとしての約束事をより的確にこなせるのか。っていうかチーム全体がもっとディティールに拘れよ。個人の課題も、チームの課題も似ているんだよね。それは八村だけじゃないけどさ。

八村とウィザーズ 前半戦” への9件のフィードバック

  1. ハチムラが良い選手かを迷います。スリーも安定せず、ルーキーからできることが変わらないので、成長しているかがわかりません。

    ドラフト時はレナードと比較させてましたが、ディフェンス面は成長したりはしてるのでしょうか
    御印象、いかがでしょうか。

    1. もちろん、ディフェンスも改善してますが、
      オールラウンドに守れる
      帯に短し襷に長し
      で、どっちに振れるかってなると、後者ですね。

      今はポルとギャフォードで中を守る必要はないので、ウイングとしてのディフェンスが問われます。同じポジションのクズマがオールラウンドに守れ、アブディヤがエースキラーやってる事を考えると、諦めムードも感じちゃいますね。それより点を取れ!とね。

  2.  ご無沙しています。少し前の話題ですみません。
     ウインターカップが終わって直後ですが、”大濠の川島18の時と比較して自チームに戻ると変に委縮して本来の良さが失われている”というご指摘は私も同感ですが、残念なことにこの点に触れているコメントには他には会っていません。川島のみならず、湧川も同様に感じますし、大濠以外にも、女子の桜花の横山、高木、森にも感じました。高木、森はそれどころか、U18終了後スタメンから外されてしまいました。(勿論、菊池実欄、深津の台頭は立派だったのですが)。

     一つ感じるのはU18に比較し、日本の高校のdefenceがタイトでタフということですが、これは各選手自身が乗り越えることかもしれません。ただ預かる側に将来を見据えて大きく育てようという雰囲気はあまり感じません。」

     湧川は年初よりB1の滋賀に行くみたいですし、山田は日大の様です。川島はわかりませんが、横山はWリーグのトヨタにアーリーエントリーです。彼ら彼女らの将来が少し心配です(U18の中でジェイコブスとマクルーニーは一足早く海外挑戦です)。

     いつもバスケで困ると管理人さんに頼るのですが、ご意見お聞かせ願えれば、幸いです。宜しくお願い致します。

    1. 質問が、よくわからないのですが、国際試合と高校バスケの違いは
      ・トランジションが多い
      ・手を使ったファールOK
      という部分が大きく、国内の戦い方をそのまま持って行こうとした佐古のU19では
      ・トランジションでもハーフコートでも何がしたいかわからない
      ・運動能力勝負に持ち込んで完敗
      こんな印象です。

      言い換えればウィンターカップでは戦い方としても、運動能力勝負で勝てるので問題ないって事です。
      U18とU16はスペイン人のマルチネスがHCになったので
      ・しっかりとスペーシングしたハーフコートバスケ
      ・判断力やポジショニングで選手を選ぶ
      こんな感じだったので、個人レベルではスペースがある中で仕掛けることが出来ました。

      判断力やポジショニングでは、山田や小澤、八重樫のポジショニングが大きく
      その中で湧川や川島も仕掛けやすかったと思いますが、
      高校に戻ったら、スペース不足で困った・・・のかもしれません。

  3. 素人考えですがビールいなくても成立しているように思います。
    ビールがスターPG、例えばラスであったらセカンドユニットにモリスが組み込めてかなり強い気がするのですが、そう簡単な話ではないのでしょうか?
    また現状、メンツに対して成績が悪すぎると感じますが、この戦績は妥当ですか?

    1. そんなイメージですね。とにかく展開する役割の選手が足りていません。シュートを打つ選手が多過ぎる。

      メンツに対しての成績でいえば、他のチームの方がメンツがいいこともありますが、選手の方にインテリジェンス系統が少ないので、そんなに良いロスターではありません。

  4. 個人的にはアンセルド高評価なのですが、管理人さん的には低評価なんですね。

    セカンド問題に関しては直近だとラプターズ戦法を移植する事で解決を図っている印象です。
    3人(クズマデニ八)の器用貧乏もといオールラウンダーを併用して有耶無耶にするスタイルは嵌まっている気がします。
    既存システムはギャフォードにとって難しすぎますし、シンプルなPnRもバートンには扱えない。苦肉の策ではありますが、曲がりなりにも上昇気流を生み出す原動力にはなっていそうです。八村もトランジション主体の方がやりやすそうですし。

    格上には通用しないと思いますが、これまでの日程が苦しかったこともあって勝ち星は増えそうな予感はします。

    勝率はともなっていない(怪我も多かったし)ものも、若手ベテランポジションコチャまぜで、ここまでシステム、ラインナップを模索出来るHCって珍しいと思います。並のコーチならギャフォードにシステムを覚えされる事に躍起になって嵌まったり、バートンを干す決断に至れなかったり、ビッグマン対策としてタージにPTを与えることもなかったのではと。
    実際にバートンをスタメンとして40分弱使い続けるHCが居た訳ですから、それと比べれば天地の差な気がします。

    1. アンセルドの評価は難しいです。
      ・やっていることは良いのですが
      ・やりたいことを選手に徹底できていない
      ・選手の能力と折り合いをつけていない
      そんな感じですね。
      バートンを諦めたのは最後の要素ですが、果たしてバートンが悪いのか、徹底できなかったからバートンにしわ寄せがいったのか。

      そしてセカンドユニットや、ギャフォードの件は、まさに「折り合い」ですが、ここはアンセルドよりもロスター問題もありましすね。
      ただ、アブディヤやギルが機能しているのに、あまり起用しない事や、シューターとして打ち切らないキスパートなど、やっぱり個人で見ると起用法も役割も、なんだかよくわかりません。

      マイク・マローンの意味わからない采配と比べてはだめですよ。ヨキッチ最高!

      1. その最高なヨキッチに最高の結果を与えるために頭を悩ませて欲しいものです。
        シーズン序盤はギルを重宝していましたが難しいですね。若手主体なのは好ましいと思いますが。
        私の場合は好きなチームのHCが極端に変化を嫌うタイプなのもあって、アンセルドの采配を一層柔軟に感じるんでしょうね。バートンを干す決断って言うは易し行うは難しで、例え能力的に使い物にならないと思っていたとしても「16M+ベテラン+昔馴染み+自己主張強め」な選手をを即効DNPって無理だと思うんですよ。絶対本人から不満が出るしGMの面子もあるし。理由付けしながら段階的にPTを減らす必要があって、それをうまい具合に遂行してる点はHCとして評価していいと思います(バートンが大人になった説もあり)
        変化を起こし続けていて、それが良い結果に向かっている これ凄いと思うんですよね。ハードルが低いのかもしれませんが。
        個人的に明確に彼より仕事してると思えるのはウィリーグリーン、タイラージェンキンス、マイクブラウン位です。感覚的にはモンティのチョイ下か同列位の評価はあげて良いんじゃないかなーと。

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