◎走れなかったディフェンス
〇平均失点
オリンピック 81.5
ワールドカップ 65.6
オリンピックはアメリカ戦が2試合あったとはいえ、平均失点は16点も差があり、今大会は「ディフェンスが悪かった」とは言えませんでした。その一方で、トランジションアタックを出来なかったことで、試合のペースが落ちただけの一面もあります。
いずれにしても、ディフェンス力そのものには大きな違いはなかった・・・どころか、やや今大会の方が上でした。リバウンドさえ確保できれば、ディフェンスで勝てた可能性すらあります。しかし、問題はそのリバウンドにありました。
リバウンドの確保から、トランジションへと繋げられなかった
「日本の長所」といわれていた要素が消えたことが、オフェンス力低下へと繋がりました。男子のテクニカルレポート的には最悪の流れです。
「オフェンスリバウンドを取られた」ことよりも、「速攻を出せなかった」ことの方が罪深いのですが、なんでそうなってしまったのか。渡嘉敷が加わって高さのデメリットは減ったはずですが、見事にやられまくりました。オリンピック時との違いで明確なのは赤穂の仕事です。
〇赤穂の平均リバウンド
オリンピック 7.3
ワールドカップ 5.0
〇赤穂以外のリバウンド
オリンピック 26.5
ワールドカップ 30.8
数字にすると僅か2.3本の差ですが、今大会は渡嘉敷がリバウンドリーダーとなり、赤穂、高田と続く形でわかりやすくインサイド陣の仕事になっていました。オリンピックでは6試合中5試合で赤穂がリバウンドリーダーだったのは
高さではなく、反応力勝負のリバウンドを増やす
こんなことが出来ていたからですが、今大会はペイント内に相手のリバウンダーが3人参加しているなど、反応力ではなく密集地帯の高さ勝負になっているシーンが多かったです。それを引き起こしているのは
ディフェンスの陣形が崩れ、ペイント内に侵入された状態でシュートを打たれている
こんなことがいえます。言い換えればディフェンスリバウンドを確保しても、3人くらいに囲まれているのでブレイクパスが遅くなるし、自分たちもペイント内の人数を増やさざる得ないので、トランジションへの移行が遅くなりました。
赤穂が1on1ディフェンスで負けた
しかし、ただ単に戦術的にマズかったのではなく、そもそもリバウンダーになっていたはずの赤穂が「1on1で負けることが多い=リバウンドに参加しにくい」なんていう状況も多く、思っていたような守り方をさせてもらえなかったのも事実です。
極端な話をすると、日本の場合は一生懸命守るよりも
インサイドカバーを厚くしてペイント内侵入をブロック
⇒3P打たせてロングリバウンドのカウンター狙い
この方が向いているともいえます。今大会はオリンピックよりも良いディフェンスが出来ていた気がしますが、その結果はオフェンスリバウンドを取られる回数が増え、カウンターの機会が減るという「日本らしい負け方」へと戻ってしまいました。スピードでは高さに勝てない戦い方ね。
がんばるな、打たせろ。
それが正解だったかもね。
東藤のハイプレスは強力だった
しかし、良かった部分もあり平下のハイプレスなんかは新しい風を吹き込んでいました。ただ、なんといっても東藤のディフェンスは「1人戦術」レベルで違いを作っていました。
相手のガードを封鎖してしまうので、ボールが動かなくなっていきました。カナダ戦では逆アイソみたいに、マークマンがコーナーに立っているだけのシーンも出てきており、かなり警戒されていました。
また、ボールを失った後のリカバリーが早く、起点を潰してしまうので、赤穂と東藤がいればカウンターを食らうリスクもガクっと下がりました。インサイドカバーとリバウンドへの参加も多く、反応力勝負のリバウンドシチュエーションを増やせれば、回収役として機能しそうでした。
東藤がベンチに下がると日本のディフェンスは明確にワンレベル下がってしまい、その存在価値の大きさはオリンピック時よりもわかりやすくなりました。
ただ、途中から渡嘉敷がスターターになったように、どこにフューチャーして守るのか、よくわからなかったです。ハイプレスからのスティールを狙いたいのか、1on1でミスなく守りたいのか。
ある意味でディフェンスを捨てがちなホーバスに対して、頑張らせる恩塚は「頑張りすぎている」傾向が強く、
全てをカバーしようとして、カバーしきれない要素が発生した
東藤と赤穂がメインならば、オコエやステファニーをインサイド役にして、明確にスピード勝負のディフェンス戦術でも良かった気がします。高さなんて、全部負けてもイイじゃないかってね。
いつも楽しく拝見しています。(Youtubeも)
素晴らしい分析ですね!有難うございます。
僕は大学までバスケやってて、NBAも観てるし、、経営コンサルティングも長年なってますが、こんな分析はとてもできません。。
いえいえ、大学までやってて、コンサルやってるなら、やれますよ。
バスケというよりも、ビジネス分析みたいもんですし。書くのはちょっと難しいですけど。
町田は8月上旬のインタビューでW杯参加の懸念点として、コンディションと恩塚バスケへのアジャストの2点をあげていました。
プレイオフでは早々に負けW杯まで1ヶ月の間があったので、プレイタイム少なめのセカンドユニットだった町田なら、ホーバスが熱心に求めれば出ていた可能性もあるかなと思います。
林は4月上旬に疲労骨折で離脱しており、それでW杯参加がノーチャンスかというとすごく微妙で、やはり恩塚バスケにアジャストする機会がなかったからノーチャンスになったのかなぁと。
恩塚も熱心に求めても良かったと思うんですよね。
1カ月あるならコンディションくらいどうにでもなりそうだし。
あとホーバスの方が、超長期合宿するから、実は町田には厳しかったかも。