取扱説明書「ドノバン・ミッチェル」

本来は「5年間の成長」として書く予定だったドノバン・ミッチェル編ですが、トレードによってキャブスファンに向けた取扱説明書になってしまいました。

ジャズというチームが地味だからか、もしくは単にファン以外は見ていないチームだからかわかりませんが、ジャズファンの感想は管理人と似ているのに、一般的にはゴベア重視の人が多いのは奇妙な話です。

ジャズはドノバンへの依存度が高く、特に「困ったら全部任せろ」路線になっており、チームとして理路整然としたバスケと、困ったときのドノバンという構図になっていました。最近は困ったときにクラークソンにもなっていたけどさ。

従来のジャズは「ゴベアがいなくても、フェイバーズでどうにでもなるけど、エース不在はどうにもならない」でした。しかし、フェイバーズを放出するとゴベアの重要性が高まり、高まるほどにプレーオフで惨敗しました。そういうことだな。

そんなこんなも含めて「取扱説明書」と題しつつ、6年目のスーパーエースについて、改めてドラフト時のことから振り返ってみましょう。

①変な身体的特徴

2017年ドラフト13位とやや低い評価(これでも指名順位は予想より早くなった)だったのは、185センチというサイズも関係しています。NBAではPGしか出来ないサイズですが、プレーはPGではないので、アシスト面など含めて大きな懸念があったはずです。

ところが、ルーキーシーズンにダンクチャンピオンになる破壊的な運動能力で、あっという間にスターダムにのし上がりました。185センチだと日本のPGと大差ないですが、日本人がこんなプレーを出来ないのは「身長ではない、身体的特徴」にあります。

185センチのドノバンですが、ウイングスパンは驚異の208センチもあります。アイザイア・トーマスもですが、ウイングスパンのオバケはサイズでは測れないプレーが可能になります。

このダンクコンテストでもバックボードに当ててからのダンクがあり、普通はタイミングを合わせるのが難しいのですが、比較的、低い位置でボールをキャッチし、全力ではないジャンプでのダンクをしており、腕が長いことで可能になるプレーです。

また、腕の長さもあって185cmながら94キロと重く、スピードが抜群にあるものの、前後左右の細かい動きとなるアジリティは苦手としています。

ドノバンがドラフト順位を上げたのは、ドラフトコンバインの結果が良かったからですが、この時の数字は特徴を物語っています。

3/4コートラン 3.01秒(1位)
レーンアジリティ 11.53秒

3/4コートランは恐ろしい速さで、例年のコンバインでは3.1を切ればトップになる可能性もあります。13年はハリソン・バーンズが3.16秒でトップでした。(ちなみに去年は3人も3秒を切っていて、逆に記録が怪しくみえてしまう)

にもかかわらずレーンアジリティ(ペイントを回る)は、極めて遅く、この年のトップから1秒ちかく遅れています。ちなみにオジェレイ(10.58秒)とジョーダン・ベル(10.68秒)は体のデカさに対して、優れたレーンアジリティがありました。

圧倒的なスピードと苦手なアジリティ

コンバインの時点でわかりやすく特徴が出ており、縦への推進力は抜群ですが、細かいゆさぶりで抜け出すのは得意ではありません。

同時にディフェンス面の問題はサイズよりもアジリティにあり、やっぱり左右の切り返しには弱い一面があります。自分の特徴がオフェンスでは優位に働き、アジリティの高いガードを守るべきディフェンスでは不利になるわけだ。

まぁプレーオフでポール・ジョージに狙われた時はサイズの問題でやられつつ、ケガもあってスピードの切り返しにもついていけなかったんですけどね。

ジャンプ力(助走付き) 40.5インチ
ジャンプ力(垂直)   36.5インチ

また、ジャンプ力は高いのですが、40.5は特筆すべき数字ではありません。普通に上位ってくらい。この年はハミドゥ・ディアロが驚異の44.5インチを記録しています。

しかし、ドノバンの凄いのは垂直飛びになっても4インチしか落ちていないことです。36.5インチはかなり素晴らしい記録です。ちなみにアズブイクがビッグマンなのに37インチも飛んでおり、それがジャズ基準で高く評価された可能性もあります。

身体が重い部類の選手なのですが、筋力で飛び上がっているので、助走なしでも高い数字を残しました。総合的には

サイズ不足を驚異のウイングスパンと垂直ジャンプで補い、他の選手にはない武器にしている

こんな特徴を持っています。ガードらしいガードでありながら、フィジカルの強さを持っているのは特異な選手として際立たせることになりました。

ちなみに身長に対して、手のひらも大きいです。むしろ、「手のひらやウイングスパンに比べて身長が低い」という表現が正しい気すらしてきます。

次はルーキーシーズンの話 ⇒

取扱説明書「ドノバン・ミッチェル」” への9件のフィードバック

  1. 西ではグリズリーズの次にジャズをよく見ていましたが、アダムズとゴベアのIQの違いが前シーズンは如実に表れてましたね。
    スクリーンで棒立ちすら出来ずにちょくちょく動いてファウルとられるゴベア、パス受けるとお手玉しがちなゴベア、小学生みたいなおふざけでコロナ感染を拡大させたゴベア、そりゃ愛想も尽きるわ。
    しかしドラフトギャンブルやるよりも柱としてドノミチだけ残して再建する方が安全確実だと思うんだけどチームが先に愛想尽かされたのかなぁ。

    1. 相手がスモールになったときに、オフェンスで何もメリットを生み出せないのが致命的でしたね。
      IQなのか、スキルなのか。なんなのか。

      ドラフトギャンブルは、エインジがセルツで味を締めちゃったんでしょうねぇ。

  2. ゴベアだけいなくなってもPOに絡んできそうだったので、ドノバン君がいなくなって、やっとジャズはPOに絡んでこないと安心しているMEMファンです。
    「エースがファーストラウンドから全力ではPOは勝ち切れない」っていうのを踏まえて、昨季のモラントはファーストラウンドは抑え気味にしたのだと思っています。ただ、今年はルーキー増やしすぎて、戦力落としすぎたと思っているので、どうなるやら心配です。

    ドノバン君の最近は、ハンドラーやりすぎてる感があったので、ガーランドとうまいことやって欲しいですね。キャブスのHCをあまり信じていないのでそこが不安ですが・・・

    1. キャブスのHCさんは、コンリーをこんな風にした原因でもありますしね。こんな感じじゃなかった気がするのに。

      普通にアヌノビーやマルカネンみたいな選手とドノバンを組ませたら面白そうでしたが、今って再建時なのかな?

      モラント君はケガをしないように。

  3. コンリーと4年契約を結んでサラリーダンプでフェアバースを放出したのがキツかったですね。

    あとダニーエインジやんちゃすぎ。

    1. 1年は殆ど動かずに、突然やんちゃしすぎるから困りものです。

      なんだかんだとイングルスの件から一気に、でしたね

  4. ルビオがサンズに居たシーズンのブッカーとほぼ同じ役割が当てはめられそうなんですよね。
    5年ほど前は、加速力で突破するミッチェルと、体幹の強さでシュートをねじ込むブッカーっていう印象でしたが、どっちもオフェンスの引き出しが増えることで持ってるスキルが似通ってきているように思えます。
    どちらもルビオと組んでた時期はアイソレーション担当で、ルビオがいない時期にオフェンスの起点としてPG寄りの技術を身に付けていってたのも似てますね。

    1. 確かに似ていますね。
      次にきたのが、クリス・ポールとコンリーの差なのか、それともエイトンとゴベアの差なのか。
      なんかちょっとずつサンズの方が上だなぁ。

      良いSGエースを育てるにはルビオを取れって事ですね

  5. おもしろい記事でした!自分はドノバン3年目以降は見なくなったのですが、プレーはきれいになったけど面白くない、みたいな印象でした。プレーオフだけは見ましたが。1年目とかの3.4コーターの、なんだか理由もわからずディフェンスをぶっ壊していく感じのドノバンがまた見れるとしたら、めっちゃ嬉しいですね〜。ドノバンはもっと自分勝手にプレーしてほしいなあという感じがあります。

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