取扱説明書「ドノバン・ミッチェル」

②理不尽なるエースへ

開幕戦でロドニー・フッドがユニフォームを忘れただか何だかで、急遽スターターになったドノバン・ミッチェル。ジャズがナゲッツとのトレードをしてまで指名したにもかかわらず、初めからエースの期待をかけられていたわけではありません。

ヘイワードがオフに出ていったジャズは、ある意味で再建ロードへと踏み込む可能性があったシーズンは、順当にプレーオフが危ぶまれるスタートだったのですが、10月こそエースではなかったドノバン・ミッチェルが、11月以降にエースになり始め、年明けには押しも押されぬスーパーエースと化していきました。シーズン後半になるとチームはリーグ最強の一角へとステップアップしました。

ところで、なんで「スーパー」をつけるのでしょうか。ドンチッチやヤングにはつけないのにね。モラントにはつけるかな。

ルーキーシーズンのジャズはシーズン後半になると異常な強さを発揮しました。それはルビオを中心にした見事なチームオフェンスで論理的にディフェンスを切り崩していく部分と、それ以外の部分、つまり

チームオフェンスでディフェンスを崩せない時に、個人技で切り裂く役割のエース

という二段構成の二段目を1人で担っていたからです。ローカルチームのジャズでは、エースキャラを連れてくるのは難しい代わりにチーム力を高めてきましたが、たった1人のエースで別のチームへと進化した感があります。戦術側にいたヘイワードとは異なる立ち位置。

ドンチッチやヤングはチームオフェンスの中心であり、その中で得点とアシストを量産するけど、チームがどうにもならない時に動き出すエースは個人技突破がお仕事です。デュラントとか、レナードとか、そっちのタイプです。何が優れていて、誰が優秀かは別の話だよ。

http://nba-data.work/?p=1370

ディフェンスを攻略するというよりも、ディフェンスの強い部分に真っ向から立ち向かって壊してしまうのが役割でした。特に印象に残っているのは、ペリカンズ戦でアンソニー・デイビスに真っ向勝負していた時です。ペリカンズの一番強い部分を破壊してしまうと、ディフェンス戦術そのものが崩れてしまいます。ハイライトだとよくわからん。この試合ってジャズのオフェンスがイマイチ通用しなかったのを個人でどうにかしたんだよね。

ちなみに、この意味合いはvsジャズで例えると分かりやすいかも。最近のゴベアはプレーオフになると攻略もされるけど、破壊もされているイメージあるな。テレンス・マンとかさ。

〇ジャズ攻略法
ゴベアを外に引き出して、ヘルプを難しくする

〇ジャズ破壊法
ゴベアが待ち構えているインサイドに飛び込んで得点を取る

こうしてシーズン後半に強烈な強さを発揮したジャズ(当時はディフェンスもよかった)ですが、スーパースター不在なので「どうせプレーオフでは」と思われていました。

しかし、そのプレーオフではスーパースター軍団のOK3(ウエストブルック、ポール・ジョージ、カーメロ)に対して、独力でぶっ壊してしまったイメージです。

ちなみに戦術的なやり取りでは「ルビオを空ける」というのがキーになっており、この部分でサンダーとジャズがやりあっていました。ルビオがミドルレンジマスターになった試合もありましたね。

ただ、勝負を決めるべきシーンになるとドノバン・ミッチェルが個人技でぶっ壊してしまいました。まぁカーメロ先輩を呼び出しまくっていたので、カーメロが悪いとも言えるけどね。ほぼほぼ1on1アタックだもん。

特に衝撃的だったのは、ミスした後で即座に取り返すプレーで、集中力が極限に達しているのがよくわかりました。

こうしてルーキーらしからぬシーズンを過ごしました。ROYはシモンズでしたが、ある意味で対照的な2人となっており、圧倒的なプレーメイク能力のシモンズと、圧倒的な試合を決める能力のドノバンでした。そしてその後へも絡んでくるんだよね。

シーズン中から個人技担当のエースとして躍動
プレーオフになると更に別人のようにステップアップ

異次元のルーキーでした。プレーオフチームに加わって、即座にエースになるってのは簡単な話じゃないし、スーパースター不在といわれたチームが強さを見せつけた理由もわかります。

なお、セカンドラウンドでロケッツに負けており、最終的にステップアップしすぎたドノバンがケガで終わっています。実は相手が最強ロケッツであることを考えると、こっちのシリーズの方が凄かった。個人としてはすごかったけど、チームの結果には繋がっておらず、なんだかんだとプレーオフで勝つには複数のスーパースターが必要であり、

ファーストラウンドからスーパーエースがステップアップしすぎるチームはダメ

ということを、以降の5シーズン全てで見せつけてしまったジャズです。実は早々にゴベアをトレードして、もう1枚のエースを連れて来ていれば話は違ったんじゃないか疑惑。プレーオフに弱いというのは、エース不足って感じでした。

次は2年目の話  ⇒

取扱説明書「ドノバン・ミッチェル」” への9件のフィードバック

  1. 西ではグリズリーズの次にジャズをよく見ていましたが、アダムズとゴベアのIQの違いが前シーズンは如実に表れてましたね。
    スクリーンで棒立ちすら出来ずにちょくちょく動いてファウルとられるゴベア、パス受けるとお手玉しがちなゴベア、小学生みたいなおふざけでコロナ感染を拡大させたゴベア、そりゃ愛想も尽きるわ。
    しかしドラフトギャンブルやるよりも柱としてドノミチだけ残して再建する方が安全確実だと思うんだけどチームが先に愛想尽かされたのかなぁ。

    1. 相手がスモールになったときに、オフェンスで何もメリットを生み出せないのが致命的でしたね。
      IQなのか、スキルなのか。なんなのか。

      ドラフトギャンブルは、エインジがセルツで味を締めちゃったんでしょうねぇ。

  2. ゴベアだけいなくなってもPOに絡んできそうだったので、ドノバン君がいなくなって、やっとジャズはPOに絡んでこないと安心しているMEMファンです。
    「エースがファーストラウンドから全力ではPOは勝ち切れない」っていうのを踏まえて、昨季のモラントはファーストラウンドは抑え気味にしたのだと思っています。ただ、今年はルーキー増やしすぎて、戦力落としすぎたと思っているので、どうなるやら心配です。

    ドノバン君の最近は、ハンドラーやりすぎてる感があったので、ガーランドとうまいことやって欲しいですね。キャブスのHCをあまり信じていないのでそこが不安ですが・・・

    1. キャブスのHCさんは、コンリーをこんな風にした原因でもありますしね。こんな感じじゃなかった気がするのに。

      普通にアヌノビーやマルカネンみたいな選手とドノバンを組ませたら面白そうでしたが、今って再建時なのかな?

      モラント君はケガをしないように。

  3. コンリーと4年契約を結んでサラリーダンプでフェアバースを放出したのがキツかったですね。

    あとダニーエインジやんちゃすぎ。

    1. 1年は殆ど動かずに、突然やんちゃしすぎるから困りものです。

      なんだかんだとイングルスの件から一気に、でしたね

  4. ルビオがサンズに居たシーズンのブッカーとほぼ同じ役割が当てはめられそうなんですよね。
    5年ほど前は、加速力で突破するミッチェルと、体幹の強さでシュートをねじ込むブッカーっていう印象でしたが、どっちもオフェンスの引き出しが増えることで持ってるスキルが似通ってきているように思えます。
    どちらもルビオと組んでた時期はアイソレーション担当で、ルビオがいない時期にオフェンスの起点としてPG寄りの技術を身に付けていってたのも似てますね。

    1. 確かに似ていますね。
      次にきたのが、クリス・ポールとコンリーの差なのか、それともエイトンとゴベアの差なのか。
      なんかちょっとずつサンズの方が上だなぁ。

      良いSGエースを育てるにはルビオを取れって事ですね

  5. おもしろい記事でした!自分はドノバン3年目以降は見なくなったのですが、プレーはきれいになったけど面白くない、みたいな印象でした。プレーオフだけは見ましたが。1年目とかの3.4コーターの、なんだか理由もわからずディフェンスをぶっ壊していく感じのドノバンがまた見れるとしたら、めっちゃ嬉しいですね〜。ドノバンはもっと自分勝手にプレーしてほしいなあという感じがあります。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA