NBA入門編です。
エイトンに対してペイサーズがマックス契約を提示し、即座にサンズがマッチしたことで残留が決まりました。なぜ、ここまで決まらなかったのかは大きな謎であり、ピストンズあたりが手を出さなかったのも勘繰られてしまいます。
さて、今回は特段の考察はなく、オフにたまにやるNBA入門として制限付きフリーエージェントの話をエイトンのケースで当てはめてみましょう。
◎契約延長
1巡目指名ルーキーの契約は基本が4年。ドラフト順位ごとに契約金額の上限が定められているので、途中でチームからカットされない限りは4年間はキープされます。
なお、「カットされた」のがジェイレン・スミスで2年目のシーズン開始前にサンズは「3年目のオプションを破棄」しています。3年目と4年目はチームオプションなので、チーム側にジャッジの権利がありますが、行使するのはシーズン開始前(3年目のオプションは2年目開始前)なので、1年目で見限られることがない限りは3年目くらいは行使されます。
見事に1年で見限られたジェイレン・スミスですが、サンズでも活躍したものの見返りを求めてシーズン中に放出され、ペイサーズが獲得しました。でもペイサーズには3年目の権利がなかったので、このオフに再契約してくれるかは微妙でしたよ。
さて、エイトンに戻りましょう。
このチームオプションルールと同じく、契約最終年となる4年目のシーズン前までに「5年目以降の契約延長」を締結できます。今オフはモラント・ザイオン・ガーランドが延長しています。さっきケルドンもしたね。
1年前にサンズもエイトンに対して4年マックスでの契約延長をオファーしたと言われています。しかし、エイトンは5年契約を求めオファーを断りました。サンズも折れることがなかったため、延長されずにシーズンインしました。
でも、この時点でサンズには特に問題はありませんでした。敢えて5年をオファーしなくてもサンズ側に優位なルールだからです。4年が終わったところで選手側がとれるルール制限があります。
①元のチーム(サンズ)と契約延長する
②他のチーム(ペイサーズ)と契約する
③クオリファイングオファー(サンズ)を受け、1年後に完全FAになる
③は制限付きフリーエージェントになるための前提としてチーム(サンズ)が出すオファーですが、規定額なのでエイトンのようにマックスを求める選手が得るような額ではありません。確かブルース・ブラウンが1年前にチョイスしたような。
問題は①と②でオファー額に差があり、5年契約は①のサンズしか提示できない事。つまり、1年前のオフにエイトンにマックスをオファーしなかったサンズでしたが、その時点では
どうせ他のチームは5年契約を提示できない
自分たちはエイトンが活躍したら5年を提示すればよい
こんな状況でした。だから1年前のサンズの動きは別に批判する要素はありません。エイトンも1年間プレーして5年に相応しい選手であることを示せばよかっただけです。
そして②をチョイスされても制限付FAってことで、他のチームと同じ条件をサンズが受ければキープすることが出来ます。何も問題はないぜ。
◎サンズは何をオファーしたのか
そして今オフにサンズとエイトンは合意しませんでした。ということは5年マックスは提示しなかったわけです。それどころか、ペイサーズと契約したという事は4年マックスすら提示しなかった可能性があります。
実は、これ自体がちょっと不思議なラインです。そもそもエイトンって3年目と4年目で活躍ぶりに差はなかった。もちろん「思ったよりも伸びなかった」かもしれませんが、チームはリーグ最高成績を残したわけで、エイトンを残すのは既定路線に思えただけに、1年前にオファーした4年マックスすらも提示しなかった雰囲気は気になります。
また、それ以前に「4年マックスはいいけど、5年は出したくない」という判断そのものが割と謎です。これがクリス・ポールの契約なら理解できるけど、エイトンの5年目にどれだけのリスクがあるのか。
むしろ「マックスは嫌だから、5年契約にして年平均を負けてもらう」方が普通です。みんなエイトンにマックスは高すぎる気がしていたくらいなので、ジョン・コリンズ型の契約がベターに思えました。もちろん、これはエイトンが拒否した可能性もあるよ。
4年マックスはオファーしなかった
5年契約もオファーしなかった
おそらく、こんな感じですね。うーん、ジェイレン・スミスの件も含めてサンズは変なこだわりがあるように見えますね。サラリー総額を大きくしたくないのは理解できるけど、それ以上に契約期間のリスクだけは絶対に負いたくないっていうさ。
◎サイン&トレード
ペイサーズはマイルズ・ターナーを対価に、サンズに対してサイン&トレードを提示したと言われています。ペイサーズがどんな契約をオファーしてもサンズがマッチすればエイトンを獲得できないため、それならターナーをだしてでも権利ごと欲しいということです。
ペイサーズは権利をもらっておけば、エイトンに対して何もマックスをオファーする必要もありません。サンズよりも少しだけ良い額で提示し、妥協の戦いに持ち込めるわけだ。
しかし、サンズはこれを断りました。サラリーを考えたらターナーの方が遥かに優良物件なのですが、断ったという事は、この時点でエイトンの残留は確定的でした。もちろん「ターナーは要らない」可能性もありますが、ビッグマンの補強をしていなかったサンズなので、エイトンを残すのは大前提だったと思われます。
サンズはエイトンを残すことを決めていた
ここが決まっていたからこそ、他のチームはエイトンに手を出さなかったのかもしれません。頑張るだけムダ。
ただ、突如としてデュラント案件が飛び出したので、サンズが何とかネッツと合意できないか、引き伸ばしていたのかもね。エイトンを対価にするかは別にして、エイトンが決まると身動きとりにくいので。
ある程度、サンズとエイトンの間では話が進んでいたはずです。ただ合意しなかったので、少なくともペイサーズと同等額のオファーはなかったのでしょう。
業を煮やしたようにエイトンはペイサーズと契約し、サンズがマッチしました。サイン&トレードが実現しなかった時点で既定路線なので、エイトン側も「絶対にペイサーズに行くんだ」という気持ちはなかったはずです。
これでエイトンは1年間ペイサーズへのトレードは出来ず、また半年は他のチームへもトレードできません。さらにエイトンにはトレード拒否オプションが付くのだとか。希望の5年マックスは手に入れられなかったとはいえ、許容範囲だとは思います。
ところで、かつてオット・ポーターにネッツ砲がぶっ放された時、単なるマックス契約だと思いきや、付帯条項がいろいろあり「サラリー先払い」なんてものも含まれていたとか。サラリー上限は決まっているけど、なんとか違う条件を提示したような金満ネッツでした。そんな条項がエイトンにも・・・ペイサーズはやらなそうだけど。
◎エージェント
これでエイトンは元鞘ですが、そうなると浮いたのがターナーです。自分を大事にしてくれるペイサーズと、割安の契約を結んでいたのに、そのペイサーズはエイトンにマックス提示するんだから気分悪いよね。
んー、でも、ちょっと微妙だよね。ペイサーズって本当に「マックス出してもエイトンが欲しい」と思っていたのかな?
エイトンは欲しいだろうけど、それこそ若いチームで色んな変化も起こりえるんだから、サンズよりもサラリーで困るのは避けたいはず。エイトンに4年マックスはリスキーだ。
で、浮上するのが実はターナーとエイトンのエージェントが同じだから、エージェント側がペイサーズにムチャを承知で依頼した可能性です。だって、何してもどうせサンズがマッチするってことをエージェントは知ってただろうし。
交換条件が「ターナーとの再契約」か「ターナーのトレード」だとすれば、なんとなく納得。要するに茶番劇だ。
エイトンからの玉突きトレードに巻き込まれなかったターナーですが、何らかの動きがあると考えるのが自然です。ペイサーズはインサイドが薄いので、このままターナーを残してもおかしくないしね。
お騒がせなエイトン君
ターナーが直近までタンザニアのサファリでライオン見て興奮していたことが全てを物語っていたのかも知れませんね…
彼女に振られた感じの喪失感は、何なんでしょう。ペイサーズは、トレード下手のレッテルを貼られてませんかね?