JBAテクニカルレポート ルビオ&ドンチッチ編

◎ドンチッチ対策

大会 6 試合での平均 23.8 得点は全体 2 位、そして平均 9.5 アシストでアシスト王を獲得した。大会のベストオフェンシブプレーヤーとして疑う余地のないス
ロベニアのスーパーエースは、日本の12人のロスターの誰よりも若い22歳の若者である

ディフェンスのスペシャリストの渡邊をマッチアップさせ、オンボールスクリーンに対しては全てスイッチするディフェンスを選んだ。

ドンチッチに対しても渡邊ですが、オールスイッチをチョイスしています。アルゼンチン戦で48点取っており、ダブルチームからショーディフェンスやら何やらと、あれやこれや試しては崩されたアルゼンチンのイメージが強く残ったかもしれません。

それがオールスイッチへとつながった気もしますが、そうであれば渡邊がマッチアップする意味合いが小さくなります。どうせドンチッチなんて「イージーな相手は誰かなー」ってやるからさ。

また、ゾーンについてのレポートではスペインが51ポゼッションでゾーンを採用しているとの記述もあり(他の3試合では僅か9ポゼッションのみ)ドンチッチ対策の難しさと、マッチアップ担当の意味がないことを示しています。

また、ドンチッチはスイッチに対してアイソレーションでの 1 on 1 を仕掛ける傾向にあるが、よりペイントへアタックされるリスクの高い右ドライブを防ぎ、左のドリブルへ追い込むことが日本の準備したプランである。

左へ行かせるディフェンスと、1 on 1 を簡単にさせない “ハイトライアングル ” でのディフェンスを入念に準備して試合に臨んだ。

ラマスは異様に「ペイントへアタック」を嫌います。逆にオフェンスでは重視していたので辻褄はあっているのですが、この前に行われていたプレーオフでは、ドンチッチが左へドリブルし(ドリブルさせ)フェイダウェイ3Pを連打していた(大体、ズバッツが相手)なのを、どう捉えていたのか。

確か、この試合も3P打たれていた気がしますが、どうだったかなー。

プランどおり試合を通して14回のスイッチが起こった。ドンチッチは 5 との PNR でセンターを自分にマッチアップさせたが、試合序盤の第1 Q 7:50 のスイッチの場面では、田中のスタントが大きな助けとなり、ドンチッチにタフな 3pt を打たせることに成功した。

同じく第 1 Q 5:00 の場面では、田中がコーナーから長い距離のスタントでパスを誘い、“コンテストありの 3pt ”に追い込んでいる

第 2 Q の最後のポゼッションでのベンドラメが仕掛けたスタントだろう。トラップと勘違いしたドンチッチはボールをピックアップしてしまい、パスを選ばざるを得ない状況になった。

3P対策としては「スタント」っていう守り方を用いて妨害しました。なんか成功した感じですね。記憶がないぜ。ドンチッチを「迷わせる」ことに成功したわけです。本当かよ。でも、少なからず対策が上手くいったのは間違いありません。

しかしながら、この戦術の効力は長くは続かなかった。左に行かせる方向づけにすぐに気がついたドンチッチは、1 on 1 のエリアを調整し、オーバーに方向づしたディフェンスを簡単に抜き去り、左ドライブのレイアップもあっさり成功させている

対策がバレたわけですが、ドンチッチはプレーエリアの調整を行いました。またスタントを使って「迷わせに来ている」のも理解したでしょうから、多彩なる個人能力でイージーに突破し始めたってことみたいです。

結果的に14回のスイッチ機会のなかで、ファウルをしないで守れたのは 5 回だけという結果に終わった。スイッチしてアイソに対峙したエドワーズ、シェーファー、張本の努力もあり、得意のプルアップ 3 pt は 2/8 と低い確率に抑えることができたが、試合を通してドンチッチの TO は 0 回だった。

14回のスイッチで9回ファールがあったってすごい話だよね。あとはドンチッチの3Pが決まらなかったわけです。またドンチッチなのにターンオーバー0回はマズい。迷わせにいったはずが、ミスを促すことはできませんでした。

ところで、管理人によるドンチッチ対策は「3Pが外れるのを祈れ」でした。2/8は祈りが通じたわけですが、そんなことは関係なくチームとして失点しています。ぶっちゃけ「もっと3Pを打たせとけ」なのですが、それをしないならばダブルチーム⇒パス促しの守り方が主流です。

ドンチッチにはシュートまで1人でやってもらうか、早々にボールを手放してもらいましょう。後者をチョイスできるディフェンス戦術があればよかったのですが、厳しそうだよね。

◎ルビオとドンチッチ

さて、ドンチッチの話はこれで終わりです。拍子抜けするくらい少なかったのですが、ファールしないと止められない選手であり、スイッチ誘導しまくることに日本は疲れてしまったかのようです。

さて、このレポートで日本の話をする前に、ルビオとドンチッチの対応力について考えてみましょう。それぞれディフェンスが講じてきた対策に、どんなアクションをしたのか。

ルビオ

プレー選択の多彩さを利用し、日本の予測の逆を取るプレーをチョイス
ディフェンスに発生した穴を活用し、日本のコミュニケーションミスを誘発

ドンチッチ

プレーエリアの調整により意図したオフェンスを成立させる
対策を上回る個人技で打開

共に判断力に優れているためディフェンスの狙いをずらしてきましたが、その手法は対照的でした。プレーの多彩さで予期できないチョイスをしたルビオに比べて、ドンチッチはあくまでも予定したプレーを遂行するための修正です。これが両者の違いとなります。

ルビオは世界一のPGだけど、世界一の選手はドンチッチ

オリンピックだけを見ると、こんなことも言いたくなります。見事なチョイスをしていくルビオと、自分の強みを出せてしまうドンチッチ。両者に存在する差異は興味深いものがあると、JBAのレポートが教えてくれました。

次回はそんなことをテーマにしてみましょう。

次のページからレポートにある課題を考えてみます

JBAテクニカルレポート ルビオ&ドンチッチ編” への2件のフィードバック

  1. 日本でおっきくて上手い選手が生まれるのはほぼ不可能に近い環境ですからね。
    育成年代では背の順でポジションが決まるのが当たり前で、本人がG/Fをやりたいと言っても監督は「4番か5番でプレーするのがチームのためだ」と一蹴して終わりという光景が目に浮かびます。
    大学やプロに上がる頃にコンバートしようとしても、それまでに培ってきたスキルの差を埋めるのは大変でしょうし、協会が育成年代での意識改革を促さなければ難しいと感じます。
    渡邉が高校時代にG/Fでプレーしていたことは奇跡と言えるでしょう。

    また、Bリーグも「日本で通用するバスケ」に甘んじているので、その中で国際試合で通じるような判断能力を持ち合わせたガードが誕生することはあまり期待できません。
    結局テクニカルレポートのように「個人能力を高めろ」ばりに才能ある選手がNBAを目指して海外で成長し、その成果を代表に還元してもらうことに期待するしかないように感じます。
    せめてラグビーのように協会が優秀ならまだ望みもあるんですが、バスケにはそんな雰囲気は感じられないです。

  2. 数年前から見させて頂いており、コメント欄も含めいつも興味深く拝読しています。疎いもので、テクニカルレポートというものの公表があることを初めて知りました。第三者的視点というよりも少し当事者の立場に近い立場から見た内幕的な記載もあり、非常に面白かったです。何年か前にNHKの将棋を見た際に、対戦直後に対戦相手同士がこのときはこう考えていた、または対戦相手にはこういう手もあったのでは的な感想を互いに言い合う感想戦というものの存在を初めて知って結構衝撃を受けたのですが、バスケにもこのような慣行を取り入れたら、間違いなく全体的な強化に繋がるのになと思いましたが、ブログ主様としてはどうでしょうか。

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