ファイナルのスタッツを見ていると時に2勝2敗とは思えない差が出てきます。そのひとつがハッスルスタッツ。なかなかの差です。
〇スクリーンアシストからの得点
セルツ 14
GSW 33
4試合トータルではなく、1試合平均のスタッツです。ウォリアーズはスクリーン利用から33点も奪っているので、得点にならなかったスクリーンも含めれば、スクリーン回数で圧倒していることになります。
特にルーニーとOPJは延々とスクリナーになっており、この2人のスクリーンから平均17.8点が生まれています。ちなみに偉いのはウィギンズで、スコアリング担当だけど5.5点を生み出すスクリーナーでもあります。
ただし、これらのスクリーンはほぼ3Pのためのスクリーンです。スプラッシュ・トリオのために動いていることが非常によくわかるとともに、シューター達は点を取っているようでいて、半分以上は助けてもらっているわけだ。
実はこの傾向は、キャブスとファイナルを戦っていた時期から高かったわけではなく、当時は半分くらいしかありませんでした。セルツの守り方がそうさせている面もあり、グリズリーズはスクリーンから19.4点しかとられていません。それでもかつてのファイナルよりは多いけどさ。
ここで違いを作っているのは、やはりOPJといえます。かつてのセンター達もスクリーンが仕事だったじゃん。でも今はウイングのOPJがスクリーン専門家みたいになっているもん。一時はマックスサラリーだった選手がスクリーン専門家ってどうなっているんだろうね?
◎イグダラの仕事
「かつて」の中でも個人技で打開してしまうデュラントがいた時代と違い、初めての優勝時が今のウォリアーズのイメージに近いわけですが、ファイナルMVPのイグダラといえども、そこまでスクリーナーにはなっていませんでした。
イグダラのオフェンス面での仕事はPG役になりつつ、コーナーシューターまで担当する万能性でした。イグダラが加わることでボールムーブのテンポが上がり、スクリーンがなくてもシュートに行けたともいえます。
ウォリアーズはずっと「ネクスト・イグダラ」を探してきましたが、誰一人としてハマりませんでした。ある意味でウォリアーズ以外もイグダラを探しているのですが、延々と見つかることはありません。単にポイントフォワード的に動ける選手ならいるけど、イグダラの程のディフェンス力はないもんな。
何よりも、困ったときに打開できてしまう個人能力は「元オールスターのすごみ」だったので、初めからイグダラやっている選手は、本当のイグダラにはなれないんだ。
◎OPJの仕事
「元オールスター」ではないけれど、「元マックスサラリー」なOPJは、最もイグダラに近づいている存在でもあります。ただし、OPJの仕事はイグダラとは大きく異なっており、スクリナーであるとともにシューターをしています。
ボールムーブに加わるっても力を発揮するのは「元マックス」らしさかもしれませんが、そこまで優れたプレーメイカーではありません。逆にシュート能力には懸念もあったイグダラなので、2人の役割は全く違います。
〇3P 64%
ファイナルではエゲツナイ成功率を残しています。ナゲッツとのシリーズだけがイマイチで、以降はvsグリズリーズで3P44%、vsマブスでFG77%です。
あれ。ちょっと変ですね。何故マブスとのカンファレンスファイナルだけ3PではなくFG表示なのか。それはアテンプトの関係性にあります。ファイナルと比べてみましょう。
〇ファイナル
2PA 0本
3PA2.8本
〇カンファレンスファイナル
2PA3.6本
3PA0.7本
何とファイナルでは3Pしか打っておらず、逆にカンファレンスファイナルでは2Pばかり打っています。この両シリーズは極端ですが、本来は3Pが6割って感じです。
起点になるイグダラとは役割は異なるものの、「空いているスペースで仕事をする」という点では共通事項があります。決して自分から積極的には攻めないし、パスかスクリーンを繰り返しているOPJですが、コーナーが空けば3Pを放ち、インサイドが空けばカットプレーで得点します。
得意なプレーは全く違うけど、求められている要素は意外と似ているのかもしれません。
◎デスラインナップ
イグダラといえば「デスラインナップ」のために出てくるベンチメンバーです。ファイナルMVPを獲得した理由は単にレブロンを止めたからではなく(だって、レブロンは平均35.8点だったし)、イグダラがコートにいる時間帯の際立った得失点差にもありました。
〇15年ファイナル
イグダラ +10.3点
チームトップとなった得失点差ですが、意外にも当時のウォリアーズは平均100.4点とファイナルはロースコアでした。その中でイグダラがコートにいると、オフェンスレーティングが上昇しており、実は攻守にイグダラで解決を図っていたわけです。
勝負をかけたいときはイグダラを起用し、オフェンスもディフェンスもギアを上げるのがウォリアーズらしい新たなスタイルでした。15年の話ね。
一方で、このプレーオフはルーニーの重要性が際立っており、OPJ投入でギアを上げるイメージはありません。シックスマンとしてプールがいることもあり、そこまでOPJは重要ではない。
ただ、交代策を見ているとカーはOPJをイグダラと重ね合わせている印象です。圧倒している3Qはまさにそんな印象です。
〇3QのOPJ
プレータイム 6.1分
得失点差 +5.8
ベンチから出てくるのがメインながら、3Qの半分以上に出ています。まぁチームとしてリードを得まくっているクォーターなので5.8点が多いとは言えませんが、高確率で決めてくれる3Pと、何よりもカリーのためにスクリーンをかけまくっている事で、ウォリアーズはギアを上げやすくなっています。
※ハッスルスタッツはクォーターごとの数字が出せないので、スクリーンアシストがわからない。ただ、カリーが平均5.0本の3Pアテンプトがあります。
OPJを起用してスモールで走力アップを図り、トランジションを増やしてラッシュを作るのは、まさにデスラインナップ時代の戦い方です。よりディフェンスプレッシャーから走りたいときはペイトンを起用している印象ですが、バランスを保ちながら、走力狙いだよね。
〇オフェンスレーティング
チーム 110.8
OPJ 122.5
実際にOPJがコートにいると、オフェンス力が爆上がりしています。カリーに打たせるだけでなく、自らがカリーを超える超高確率の3P(殆ど打たないけど)で助けているため、明らかにセルツは守りにくくなっています。
ただし、ディフェンスは118.9とOPJの時間に悪化しており、セルツは対抗できるようになってきました。この違いがゲーム5以降にどのように動いていくのかはキーポイントかもしれません。
ちなみにウィギンズはディフェンスレーティングが105.0で、ルーニーは100.0です。OPJとの差がデカすぎるよね。スモールサンプルとはいえ、ファイナルの競り合いとは思えないね。
◎1勝2敗
ゲーム4でスティーブ・カーはOPJをスターターに持ってきました。ゲーム3が高さで負けてしまった感もあるだけに、走力アップでロバート&ホーフォードを潰しに行った印象です。加えてルーニーがベンチになることで、途中交代からワンビッグで耐えきれるようにもしていた。
後者は成功しましたが、前者は思いっきり失敗していました。3Qはそこまでじゃなかったけど、1Qは大失敗だったね。ゲーム開始直後から主導権を握りに行ったウォリアーズでしたが上手くいかなかったです。
さて、1勝2敗でデスラインナップをスターターに持ってくるのは、まさに15年ファイナルを思い起こさせます。
それまでベンチスタートだったイグダラをスタートに持ってくると、以降はカリーに次ぐ39。4分のプレータイムで一気に3連勝へと導きました。これがファイナルMVPの力なのだよ。
7年の月日を経て、同じカードを切ってきたかのようなスティーブ・カーのゲーム4でしたが、OPJはファイナル4試合目で最も悪いパフォーマンスとなってしまい15分のみのプレーに終わりました。3Pも0/2だもんね。
果たしてゲーム5で元に戻すのかどうか。OPJはイグダラになれるのかどうか。15年ファイナルMVPの影がちらつき、何よりもスティーブ・カーがイグダラを追い求めてOPJの起用をしているような22年のファイナルです。