Window2を整理しておこう

ホーバスのセカンドラウンドは1勝1敗で終わりました。この2試合について「ホーバスの戦術が浸透してきた」みたいな評価がされていて、なんだか違和感を感じていることもあり、うちのブログなりにまとめておきましょう。なんせWindow1の事なんて何も覚えていないもんな。

◎勝てるかどうか

管理人的にはホーバスの評価が低い2試合でした。その理由は置いといて「評価が低い=勝てない戦術」というわけではありません。それは全く違う話じゃん。少なくとも3Pが決まれば勝てるわけだしさ。

基本的にラマスの方が良いバスケであり、強くなりそうでしたが、その一方でラマスの戦い方は「ワンチャン勝てる要素もない」ような戦い方なので、その意味ではホーバスの方が可能性はあるよね。ただ、問題なのはラマスとホーバスの方向性が違いすぎて、日本は継続性のない強化をしているという事です。

それはホーバスじゃなくて協会の問題だし、トーステン・ロイブルが恋しいという毎回の話でございます。

BS朝日ではホーバスの戦術ポイントを
・3P
・ハイスピード
・粘り強いディフェンス

としていました。あるいはサッカーの代表で使われるキャッチフレーズのように

ファイブアウト

なんて表現も使われています。特に気になるのは「ファイブアウト」の方でして、どうもこれがチームに浸透してきたことを持って「ホーバスの戦術が浸透し始めた」と評しているんじゃないかって疑惑です。

ぶっちゃけファイブアウトなんて、5人が3Pラインの外にいるって事に過ぎず、そんなもんは簡単に実現できます。出来ない方が問題なわけで(それすら出来ない疑惑もあるけど)別に5人が3Pラインの外に広がったからなんだってんだ。

「5人が3Pラインの外に広がる」
「スピード感あふれるバスケ」

なんてものは、目新しさゼロであり、特殊性も何もありません。現代バスケでは普通の事であり、その流れに日本が乗り遅れすぎているだけの話です。なお、ここで問題なのは女子は世界全体が遅れていた事であり、これだけで目新しく映ってしまったわけです。

だから、これらのことが出来たところでプラスの評価なんてできません。ここから先に何があるのかで「ホーバスの戦術はなにか」「ホーバスの戦術が浸透してきた」ってことになります。その意味では、これといった長所を感じないWindow2だったので、管理人的には評価が低いです。

ファイブアウトなんて、ただのポジショニングです。そのポジショニングから何が生み出されるのか。それが全く分からなかったし、西田と富樫のハンドラアタックにしか見えなかったのでした。とはいえホーバスがそれだけで終わるHCじゃないことは知っているよ。「難しい」といわれるけど、そうじゃなくて「細かく設定している」ような感じ。

◎時間が足りない

ここで女子のオリンピックを思い出しましょう。日本の3Pアテンプトは非常に多く(それは男子の平均程度でしかないけどね)ファイブアウトで銀メダルを取りました。正しくは「アメリカ以外には通じた」かもしれません。

それでは女子が単なるファイブアウトとスピードだけだったかというと、そうではありません。大きく分けて3つの特徴がありました。

①3Pの精度が高い
②ガード陣がスピード突破できる
③オフボールのカットプレーが上手い

特に重要なのは①ではなくて、②と③です。その中でも③は3Pによるストレッチと、バックドアカットが効果的に組み合わさっていました。特に赤穂ひまわりは上手かったのですが、でも3P打たない担当だから、実は単にカットプレーが上手いだけかも。

アシスト女王・町田の見事なパスと周囲のカットプレーの連携が優れていたのがホーバスの優位点でした。そんなプレーがあるからスピード感あふれるバスケになったわけです。

しかし、Window2の男子ではそんなオフボールカットは全くと言ってよいほど見ることが出来ず、せいぜい西田&富樫のパスにエバンスが合わせたくらいでした。だからエバンスのところは評価できるんだけど、帰化選手だからそれが長い目で正解なのかどうかはわからん。

この点で「ホーバスの戦術が浸透してきた」という評価は全くできないWindow2でした。ガードアタックそのものはWindow1でもあったよね。

この要素については「一緒に練習する時間が足りない」とホーバスが嘆くわけですが、ぶっちゃけオーストラリアなんて2回くらいしか練習していなかったらしく、世界的に観ても代表に時間を取れないのは普通の出来事です。日本は殆どの選手がBリーグにいるので、むしろ時間が取れる方になるし、コミュニケーションはよい部類のはず。

ホーバス的には繰り返しの練習によって、連携を深めたい希望がありますが、それを求めるのは非現実的だし、あと八村と渡邊がいる限り、常にW杯本番でどうするのか問題にぶち当たります。まぁ嘆いても仕方がないし、繰り返していくしかないので、これくらいにしよう。この問題は育成機関を作って一貫した強化をするっていうフランスやオーストラリア路線が正しそうだしね。

②ガード陣がスピード突破できる が今回で一番難しい要素でした。それは富樫と西田が点を取れたわけだから、男子においても一定の成果はあったとみることが出来ます。ただオーストラリアが後半に見せたように「動けるビッグマンがガード相手にも守り切る」なんて言うのは、珍しくもなんともないシーンなのが世界の話です。あと流行系は「ガードにプレスしてパスを促し混乱させる」ってのもあるしね。ハンドラー時代だからこそ、ハンドラーには思うようにやらせないディフェンスはNBAで増えた。

女子は町田も宮崎も本橋も相手ビッグマンを引き出せばドライブ出来ましたが、果たして男子でそれが出来るのかどうか。ただ少なくとも相手がニック・ケイならばBリーグで出来るわけです。でもBリーグはそういうことをやらず、ミスマッチとは外国籍選手が高さを活用することを指すのが殆どです。

ある意味でホーバスがBリーグでも代表のプレーをして欲しいというのは、ここなのかもしれません。ポストアップが多いことを嘆いてもいたしね。

オーストラリア戦で富樫が3P決めまくったことは、うちのブログでは「単なるハンドラーアタックでチームの成果ではない」という評価ですが、ホーバス戦術としてはそこを求めていたのであれば、見事に狙い通りビッグマンを引き出してガードアタックしたのだから成功だったのかもね。

ところで台湾戦の後半について、ホーバスはこんなコメントを残しています。

「後半に限れば、3ポイントシュートの成功率は46%で満足しています。また、とてもハッピーなのは21本のフリースローを獲得したことです。それはペイントアタックしていたことを示しており、このバランスを私たちは必要としています」

ペイントアタックの重要性を語っているし、そのバランスが評価に値するとしています。これを受けてオーストラリア戦は前半から富樫がプルアップのアウトサイドを打ちまくっていました。西田のペイントアタックはどこへ行ったのか。

だからもう混乱なわけですよ。少なくとも西田のペイントアタックをオーストラリア戦でも繰り返していたなら、負けたからって言って評価0点なんて言いませんでした。正直、何を正しいものとしているのか全く分からなかったんだ。

ただし、ホーバスの傾向を考えると「準備していたプレーコールを出来た」と捉えることはできます。実際、オーストラリア戦は再現性のあるプレーコールが出ていました。西田が個人技で打開した台湾戦と違い、形としてはホーバスの予定通りだったのかもしれません。ただ、プレッシャーに簡単につぶされていたし、プレッシャーを受けるようなプレーコールだった。オーストラリアの修正力に完敗。

◎テストしたのか?

台湾は学生を多く含んだチーム構成できて、オーストラリアもベテラン+超若手という構成でした。リーグ戦に出ていない選手も連れてきており、テストの意味合いが強かったです。それは「負けてもW杯に出れる」日本はより強くてもいいはずですが、実際にはテスト要素は小さかったです。

若手は殆ど呼ばれず、中堅とベテランの構成だった日本。その上でプレータイムも特定の選手に偏っていました。それだけでなくプレースタイルもポジションごとに固定化された印象です。

ストレッチ4(死語!)として機能した谷口は最大の発見でしたが、最大の収穫は佐藤だったでしょう。3Pを決めながらオフェンスリバウンドに飛び込んでハードワークし、ハイプレスもインサイドディフェンスもしていました。

残念ながらケガで途中離脱の斎藤はニャンともいえませんが、その他大勢の選手はこれといったインパクトを与えることが出来ませんでした。安藤はドライブは良かったけど、その前のミスが多かったしなぁ。

特に野本は酷かった。・・・なんだけど、実は野本はウインガーとして唯一2回のドライブアタックをしており、ファールドローにタフショット成功と、ペイントアタックを成功させています。ガード以外でアウトサイドからドライブで侵入したのは野本だけだったよ。

大学時代の野本を見に行っていた身としては、今の野本は寂しいのですが、このドライブに関しては明らかに他の選手には出来ないプレーであり、野本っぽかったです。さて、問題は谷口が重用され、佐藤が3Pとハードワークで結果を残し、古川や今村が起用されたように、ウインガーのドライブを重視していないような構図です。

試合の感想でも書いたように、女子の代表を思い起こさせるポジション概念の強さがありました。選手の固定化だけでなく、ポジション概念も固定化されているので、ここから進化していくのか不安なのでした。

3Pとハードワークが重視されているようなウイング。つまりは「3&D」ってやつですね。うーん、ちょっと古いよね。3年前って感じです。思えば3年経ったら「3&Dなんて当たり前じゃん。そこに何を+できるかでしょ」ってなっているNBAの世界。でも、国際試合は3年くらい遅れていてもOKなのかな。

◎スモールとビッグガード

さて、ホーバスに感じた違和感というか、ホーバスの言葉に乗っかっているイージーなメディアに感じた違和感は、なんだかちょっとちぐはぐな組み合わせにありました。それはホーバスの戦術は

ファイブアウトだけど、スモールラインナップではない

ということです。これについては女子の時にも「ガードは小さいけど、ウイング3枚は180センチ以上で固めている」と書いており、実はスピードじゃなくて高さでも一定の対抗を優先するホーバスです。面白いことに小さいガードと普通のウイング&ビッグが好みなんです。

5人がアウトサイドに広がるというのは、スペースを作って飛び込む形を作りやすいメリットがあります。だから、イマイチだったけどドライブを決めた野本なんかは、それはそれでよかったはずですが、3P専任の谷口と評価の差は大きかったね。普通はスピードのある選手を置きたいのに、そうは考えていないんだ。

4ガードを平然と並べるクリッパーズとか、小さくないスモールラインナップのウォリアーズとか、いろいろあるけど、それぞれ大事なのは「ガードだけどハードワーカー」か「ガードのようなウイング」です。でも、そういう選手は好まないんだよね。

スピードアップしたいならスモールラインナップは有効なので、そういう選手を呼んでも良かったよね。いるのかは知らんが、少なくとも鵤やベンドラメなんかいるし、ギリギリ岡田もやれそうだし、小さいガードと並べるのは嫌だけど、こういうタイプのガードを3人並べてもイイよね。あるいは今回の代表でもマーフィーと佐藤でウイング2枚にするとか、完全なスモールじゃなくてもガードスキルを持った選手を増やす取り組みがあっても良さげでした。

まぁここら辺はテストに値する選手がいなかったのかもしれないし、呼んでも来てくれなかったのかもしれない。Bリーグを見ない管理人には、よくわからない。ただ、いずれにしても思ったのは

スピードアップし、シュートを決め、ドライブを増やす手法(スモール戦略)は採用しなかった

ということですね。ファイブアウトだなんだというけれど、そこまで大胆ではなかったのが気になったポイントです。気になっただけで良し悪しではありません。テストしてもよかったけど、テストしなかったってことだ。

ところで、もしもホーバスも本当はそういうことをしたかったけど「ガードだけどハードワーカー」も「ガードのようなウイング」もいなかったとするじゃん。でもさ、どっちも渡邊雄太がやってくれるんだよね。ちょっと日本人とは思えないジョーカーっぷりなんだよね。馬場も戻ってくれば、なんやかんや解決。

あと、これをやるのに選手を考えるとラマスの方が時期的に向いていたよね。ベンドラメ、田中、比江島、馬場、竹内譲というアルバルク東海みたいな構成で、スモール戦略作戦はチャレンジしてみて欲しかった気もする。それが全く通用しなかったら、日本には難しいとあきらめもつくかもね。

さて、これらの事を含めてオーストラリア戦の感想には「高さ重視だったよね」と書きましたが、ホーバスのコメントも興味深いです。2試合通してのコメントとして

「今はまだ、このスタイルにフィットする選手、高さに対抗できる選手は誰なのか探している段階です。何人かは良いプレーを見せてくれました。これからがより楽しみになりました。多くのポシティブな要素がたくさんありました」

「高さに対抗できる選手」と明確にいってますね。「スタイルにフィットする」だけの方がしっくりきたのですが、女子の時にも触れたように

勝つ部分と、負けない部分を両方持ちたい

そんな事情が垣間見れたコメントです。女子とは違うので、もう少し諦める部分は諦めて良い気がしますが、なんでも手を抜かないことが日本人の感性とあっている気もするので、いかに高さで負けずにスピードで勝つのかを考えていくのでしょう。

まぁスピードで勝っているとは思えないんだけどさ。オーストラリアには平面のプレッシャーディフェンスで往復ビンタされたし。

◎次はどうなる

さて、ネガティブな要素を書いている今回ですが、ポジティブな要素がなかったかというと、そんなことはなく、富樫、西田、佐藤、谷口、エバンスと主力はみんな頑張りました。なんとなくチームとしての意思統一も出来てきたのは事実なので、主力の連携・チーム作りはグッと進みました。かなりポジティブ。

で、それ以外がネガティブ。クラブチームみたいなチーム作りをしているってことですね。それはとってもホーバスっぽいよね。この点については、帰化枠問題がなければ気にすることもないのですが、代表っぽくないってだけです。

果たしてホーバスは、すそ野を広げてチーム全体の強化を進めるのか、それとも主力の連携を重視していくのか。女子の時は合宿に大量の選手を呼んで試したけど、時間のない男子ではそれよりも連携を重視するのかな。

次回のWindow3のスケジュールはこんな感じです。

Window3
6月30日 台湾-日本
7月3日 オーストラリア-日本

Window4:2022年8月22日〜30日
Window5:2022年11月7日〜15日
Window6:2023年2月20日〜28日

んーーっと、これって渡邊と馬場を呼べるんじゃないか。(八村は来ないだろう想定)

ってことで、実はいろんなことがWindow3と4では解決しているかもしれません。谷口のところに渡邊をいれて、西田とウイングのところに馬場をいれれば、選手交代で違いも作れつつ、人数も足りてきます。センターだけが問題だけど、八村いるじゃんっていうカードもあるし。

また、間の7月にはアジアカップ2021も行われており、そっちでも選手をテストすることで、今回の問題だった選手層を解決する算段なのかもしれません。こちらは若手中心みたいですが、若手には良いガードが多くいるはずなので、やっぱり不足していたハンドラーの補充もあるかもね。

そんなわけで別に愚痴りたいわけではなく、今回のWindow2は選手固定だし、戦術的な革新もなくて、悩ましかったけど、主力の連携を深めて、次回に繋げるって意味ではこれでよかったのかもしれません。そこんところは結果のみが知る話であり、Bリーグで富樫と西田がケガしたら、それどころじゃないし。未来は誰にもわからないよね。

Window2を整理しておこう” への7件のフィードバック

  1. 継戦能力問題はどう解決しますか。ホームラン競争で大谷がスイングを続けられなかったことに思うところがありました。

    あきらめ、という言葉も使われているし。

    1. そこは単に武器が足りないだけだと思っています。
      そして選手交代しないホーバス問題です。

      いっぽうでフォーメーション増やしまくるのがホーバスの得意技でもあるので、時間と共に解決するのか、それとも酷くなるのか。どっちにもいきそうですね。

  2. メディアではホーバスのバスケを「スリーポイント」の部分だけ強調していますが、実際はホーバス自身も「ツーポイントがちょっとだけ多いのが理想」と話しているので、スリーポイントをどう打つかよりも、今後はドライブしてペイントの中をどれだけ荒らせるかが重要ですね。ポジションに関係なく。ただBリーグがガード&ウィングの選手がガンガン1対1する環境じゃないのが悩みです。Bリーグで平均15点近く取る日本人がもっとたくさん出てこないとダメだと思いますね。
    カットインなどのオフボールの動きがほとんどないのは男子の課題ですね。渡邊雄太がラプターズでやってることを、もっと他の日本人選手にやってほしいってのがホーバスの望みでしょうか。

    東海大の河村が、大学を辞めてプロになりましたね。今後バスケに専念して代表にも絡んで来るとは思いますが、高さ的に富樫と河村の2人を同時に代表12人には入れないと思うので、河村には富樫を早く超えてほしいです。

    1. 15点でいいからBリーグでも取って欲しいですね。
      渡邊がラプターズでやっていることは、特別でも何でもなく世界の流れなのですが、Bリーグだけは延々とインサイドにビッグマンを置いてしまうので、なかなか日本人のカットプレーも伸びないですね。そもそも育成段階でも多くないし、留学生に任せる姿勢を強め過ぎてしまった。

      富樫はシュート力があって点を取れるわけですが、それは高校をアメリカで過ごしたことで得た結論だと思います。河村が個人として富樫を上回ったとしても、国際試合で通じるかは違う問題になりそうです。

      1. その通りですね。富樫はアメリカに行ってする個人のスキルと得点力を磨きましたからね。その点、河村はなんだかんだで留学生頼りの高校バスケだったわけで…私の私的な考えですが、留学生いるチームで高校で全国で勝ってても、その後の大学とかユニバーシアード代表とかプロレベルでの活躍は少ないように感じます。むしろ大濠の選手とか、留学生いなくて全国優勝はしてないけどエースでチームを引っ張ってたような選手のほうが、高校以降で個人として活躍してる気がします。
        ただ信州の岡田は高校時代、留学生いながらも自分でガンガン点取りに行ったりしてたので、最近の活躍を見ると身長もあるしガードとして代表に早く入ってほしいですね。

        Bリーグの外国人ビッグマンのインサイド主体は改善してもらいたいですね。むしろオールラウンダーの外国籍選手がもっと増えてほしいです。
        以前アルバルクに一年だけいたギャレットが懐かしい…

  3. ウィングの合わせが無かったですね。

    今のメンバーなら増田を入れると面白そうですね。ディフェンスの死角を突く合わせが増えそう。

    1. そういうタイプ欲しいですよね。
      谷口は発見ではあるけど、特殊なタイプじゃないので、1人くらい変な選手を混ぜたい

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