しぶといナゲッツの若手たち

マレーに続きMPJが長期離脱となり、主役2人がいないナゲッツ。さらにPJドジアーがケガをすると、先日はマーカス・ハワードも膝をひねって離脱。ジャマイカル・グリーンもいないし、主役だけでなくカバーするわき役もいません。コロナのプロトコルで各チームが選手の離脱に困っているとはいえ、ケガ&ケガなナゲッツの状況は頭が痛い。

また、ギャリー・ハリスのトレードとドジアーの離脱によってガードディフェンスが悪く、3P打たれまくっていたじゃん。3Pは打たせなかったホークス戦も、トレ・ヤングのマーク担当がアーロン・ゴードンになるとか意味不明です。

MPJが離脱しても、しばらくは耐えていたのですが、11月15日のマブス戦から6連敗。さすがに今シーズンはダメだねー、なんて思っていたら、そこからロード7連戦を4勝3敗で乗り切りました。

ディフェンスはごちゃごちゃ。オフェンスは主役がいない。だから早々に5割を切りそうだったのに、なんだかんだと5割をキープしている今日この頃。MVPヨキッチの偉大さを感じずにはいられない日々です。

〇パス数
ヨキッチ 74.3本
モリス  49.4本
バートン 39.0本
カンパッソ35.7本
ゴードン 28.1本

オフェンスを彩るのは、もちろんヨキッチ。続いてモリスとバートンが続き、控えPGに遅れてきたルーキー・カンパッソになります。5番目のゴードンはスターターながら28本とヨキッチの1/3程度にとどまっています。

このヨキッチの74本を分解してみましょう。各選手へのパス数とレシーブ数を比較します。

〇ヨキッチのパス/レシーブ数
モリス 25.7本/25.0本
ゴードン13.7本/9.5本
バートン11.4本/9.9本
グリーン 5.8本/4.4本
カンパッソ4.9本/4.5本

傾向としてはオフェンスの殆どをヨキッチ&モリスのパス交換で作っています。ゴードンもヨキッチと絡みますが、バートンはヨキッチというよりはチーム全員と絡みます(もしくは絡まずに個人技)そのため、実質的にナゲッツは

ヨキッチ&モリスのパス交換か、バートンの個人技からの展開

という図式が増えます。とはいえ、このチームはギブ&ゴーが常態化しているので、普通のチームに比べたらコンビプレーが多いのですが、ナゲッツの中だけで言えば、こんなもんです。ゴードンは割とヨキッチとの絡みが多いですが、半分がヨキッチとのパスになっており、ヨキッチに依存しているような面もあるのでした。

なお、そもそもナゲッツっていろんなことをやるチームなので、試合のイメージがスタッツに響いてこないんだよね。だから今の問題は「試合の印象通り、ヨキッチ&モリスのコンビプレーばかり」ってことでしかありません。どうしても新加入選手がヨキッチについて行けないのがナゲッツの伝統なのでした。

ヨキッチ、ハリス、マレーで作られてきたチームからハリスが抜けたのは痛すぎるようにしかみえん。実力じゃなくて、カルチャー的な問題さ。

特殊なヨキッチだからかナゲッツからキャリアを始めた選手は輝き、外から来る選手は常に違和感が付きまとう。その傾向が強くフィットすると思われ、そして貢献していたミルサップさえも「違和感を飲み込みことで」初めてチームに融合できている感じです。唯一、違和感がなかったのはジェレミくらいかな。

そんなナゲッツは選手が次々に離脱し、層が薄くなり、ヤバくなったところで、これまで日が当たらなかった若手たちがプレータイムを得るとともに、素晴らしいプレーで貢献しています。窮地になったら若手が救う。非常に珍しいチームなんだよね。今回はそんな若手たちについて触れてみましょう。

◎ハイランド

“ボーンズ”ハイランドはドラフト26位のルーキーで、190センチながら207センチのウイングスパンを持つPGで、スピードもあるけど緩急を使って抜いていくSGAのようなタイプです。サマーリーグで初めて見た時に目を奪われたけど、セカンドユニットの一部に混じるようになりました。

ちなみにファーストネームの「ボーンズ」は相性らしいよ。21歳なのでワン&ダンではなく、大学1年生の時の成績は9点2アシスト程度と凡庸。それが2年生になると19.5点、2.1アシスト、1.9スティールを記録してドラフトされました。

そうね。PGだけどアシスト役ではなく、得点力とディフェンス力を買われているタイプです。マレーにしろMPJにしろ、ナゲッツはチームのイメージに反して、意外とアシスト力を気にしないよね。ここ結構重要。

ナゲッツに加入すると、ヨキッチにボールを渡すのがデフォルトになるため、得点力が特徴の選手もシンプルなパスを出し、ギブ&ゴーを仕込まれます。仕込まれているのか、ナチュラルに覚えるのかわかりませんが、1on1が強いことよりもセンターとのコンビプレーを使う方が効率よいことを知るのでした。

だからアシスト力のない選手もちゃんとパスを出し、アシストを記録しなくてもコンビプレーを使います。このカルチャーに初めから染まる選手と、他のチームで個人突破から始める選手ではベースが変わってくるんでしょうね。なお、現状で一番困っていそうなのはウルブズのビーズリーです。

ハイランドには足りないガードディフェンダーの役割を担って欲しいのですが、ここまでそんな空気はない代わりに、ガードながらウイングも守れるマルチなディフェンス力と、ガードだけどカバーリングの良さが目立っています。ブリッツ⇒カバー⇒ローテを常とう手段にしているチームなので「カバーリング」というガードだと見えにくい能力が発揮されるのは面白いナゲッツ要素です。

良い動画があったぜ。

オフェンス面でのハイランドはルーキーらしく不安定。ホークス戦では4本の3Pを決め、24点を奪ったものの、ウィザーズ戦とスパーズ戦ではシュートが決まらず困っています。

ナゲッツでは珍しくスピードで振り切れる選手のため、アウトサイドさえ安定すればドライブでの得点も伸びてきます。また点が取れるとアシストも記録しており、わかりやすく好不調の波が激しいというか、3Pさえ決まれば様々なプレーに派生していきます。

かなり期待しているんだよね。ほんとSGAみたいでさ。出来ればスターターにしてエースキラー役をやらせたい。マレーの新しい相棒に就任してくれないかなぁ。とかいって、オフになったらギャリー・ハリスが帰ってきたりして。

◎ナジ

期待していたハイランドと違って、ダメだと思っていたのが昨シーズンのドラフト22位のナジ。2年目のサマーリーグなのに、ポストアップしてはボロボロ。判断力の低さとプレー精度の低さが目立ち、ナゲッツ流のオフェンスでは何もできないと思ったのでした。バンダービルドが恋しいよ。

ところがナジは、ここまで37本打った3Pを19本も決め、ここにきて機能しそうになっています。管理人は大混乱。なんでナジが機能しているのかもわからなければ、ウイングシューターになっているのもわけわからん。

ナジには少し変わった要素があって、ポジションがフォワード/センター登録になっており、比較的ヨキッチと同時起用されるケースが少ないことです。だから決めた3P19本のうちヨキッチのパスは3つしかありません。シーズントータルでヨキッチのアシストは4つしかなく、カンパッソやハイランドからパスを受けてシュートを打っています。

またヨキッチの代役として起用されると、ウイングシューターではなくピック&ロールのロールマンになります。要するにポイントセンターではなく、ストレッチ5タイプのセンターになるわけだ。

〇エリア別FG
ゴール下 14/24 58%
ペイント内 1/8
ミドル   1/4
3P   19/37

3Pかゴール下という構図ですが、3Pの方が多いわけで、現代的なストレッチ5です。インサイドをのスペースを空けることで他の選手のドライブを促し・・・てはいるけど、全体の成功率が低くて意味はないかもね。

うーん、ナジが3P決めまくっているのは違和感だらけなんだよね。ただし、サマーリーグと違い3Pかゴール下のフィニッシュのみに集中しているので、判断力ミスは目立ちません。

ナゲッツっぽいかというと、ナゲッツっぽくない選手のナジですが、わかりやすいストレッチ5であることが他の選手を楽にしている気がします。ヨキッチを理解できなくてもナジを理解するのは簡単だ。

そしてナジの特徴はオフェンスではなく、ハッスルプレイヤーであること。まぁ頑張って走っているよ。こちらもヨキッチにはない要素なので、プレッシャーディフェンスを強める時には向いています。ハイランド同様に運動能力の高さでハッスルしている感じだね。

ジェフ・グリーンやジャマイカル・グリーンと似たタイプだけど、違うのはナチュラルにセンターも出来る事かな。ヨキッチの代役でありつつ、ウイングシューターを続けられるなら、出番も増えそうだけどどうなんだろ。

◎チャンチャー

17年のドラフト49位のチャンチャーはNBA3年目だけど、トータルでも400分しかプレーしていません。ヨキッチの10試合分かってくらい起用されていないのですが、実は一番ナゲッツっぽい選手です。

意外とディフェンス面でのハッスルが目立ち、素早いヘルプでコースを切り、攻守の切り替えの早さでトランジションにも頻繁に参加します。リバウンドは弱いけど、粘り強く対応しているので、他の選手に取らせることにも繋がっているし。

スロベニア代表での高確率マシーンっぷりが目立ちましたが、今シーズンは3Pを80%も決めています。5本しか打っていないけどね。またカットプレーの意識も高く、オフボールでスペーシング&ダイブを繰り返せるので、ヨキッチとの相性も良さそうです。

3年目だけあって、3人の中で「最もナゲッツっぽい選手」なのですが、何故かナゲッツっぽさが機能していないという気持ち悪さもあります。

トランジションに参加しては逆サイドにパスがでるし、ポジショニングよく3Pを待っているけどパスは来ない。もちろんカッティングなんて無視されているというか、他の選手が気が付かないことが多い。

全体的に「ヨキッチなら気が付きそう」なことが多いのがチャンチャーの特徴かも。パスレシーブの段階で周囲が見えているヨキッチの場合は、周囲の選手からすると「早いタイミングで動き出してディフェンスを振り切ること」が大切です。チャンチャーは本当にそんな感じ。だけど普通の選手は「キャッチしてから周囲を見る」なので、先に動き出しているチャンチャーは見逃されています。

すごくヨキッチナイズされているように見えるチャンチャーは、今シーズンはヨキッチのパスは4本しかもらっていませんが、そのうち3本がシュートに繋がっています。恐ろしい確率であり、ヨキッチナイズされているように見える理由です。

こんなにナゲッツしているチャンチャーなのに出番は少ない。ナゲッツしすぎてはいけないのか、それともマイク・マローンはナゲッツらしいのは好きじゃないのか。

いずれにしてもチャンチャーの存在は不思議です。貢献しているし、ナゲッツらしさを持つ選手だけど、パスは来ないし、出番も少ない。どうしても違和感を感じてしまう外から来た選手に比べて、違和感のない動きをするのに周囲と合っていない。ヨキッチに慣れすぎているようなプレーをしているチャンチャーです。もっとヨキッチと一緒に出してあげて欲しい。

◎何故、若手が出てくるのか

単なる選手紹介になってしまったけど、ナゲッツの不思議さは次々に若手が出てくること。ベテランを補強しても上手くいかないのに若手は出てくる。スカウティングの良さはあるけど、それにしては補強は失敗しているわけだしさ。

ハイランドが魅せているプレーは「ヨキッチがいるからこそ生み出されるコンビプレー」です。ここでいう「ヨキッチがいるから」は同時にコートにいるかどうかではなく、インサイドにボールを渡してから展開するというナゲッツらしさから生まれる自然発生的なプレーチョイスです。

能力の高いルーキーであれば、普通なら個人で仕掛けそうなのに、ギブ&ゴーをメインにしたコンビプレーになるのがナゲッツの良さであり、他のチームでは起こることが少ない現象です。もっとハイランドを使って欲しくなるのは個人技の強みを持ちながら、チームオフェンスがあるからだね。

ナジはヨキッチの代役なんだけど「ヨキッチとは違うプレーをする」から機能しています。3Pが決まることが全てだけど、ヨキッチのような中継役は出来ないからこそ、周囲は普通のプレーが出来るから合っているのかな。

チャンチャーはもっともナゲッツらしく、ヨキッチと合いそうなんだけど、だからこそイマイチ機能していない。慣れていることがマイナスになっているようです。

・ナゲッツ流を身に着けることで活躍できる
・ナゲッツ流になりすぎないことで機能する
・ナゲッツ流になりすぎたことで機能しない

わけがわからんぞ!

若手が次々に台頭できる理由は、個人技に依存しすぎない事と、様々なプレーチョイスがあるので自分の強みを出していけることです。そしてこのチームらしいのは「悪い部分が目立ちにくい」ってこと。チームオフェンスの意識が高いというか、必然的にそうなるので、チームの中で個人を出せる。

ところがチームに馴染み過ぎると、周囲との連携に課題が残ってしまう。もとい。ヨキッチ以外との連携に課題が出てしまいます。セカンドユニットに混ぜると上手くいかないケースになりがち。ただ、そういう選手ほどオフボールでの動きを繰り返すタイプなので、実はチャンチャーはチャンチャーで囮としては機能しまくっています。

ナゲッツで若手が出てくる理由は「囮の動きを厭わない」ことかもしれません。それは時に囮でも、時には決定機になる動きでもあるから。ただパスが回るチームっていうだけではなく、次々に連なる連動した動きが多いのが特徴であり、外から来た選手はワンプレーの動きで止まってしまいがち。

まぁいずれにしても「動けばパスが出てくる」は大正義。そうではないチームから来た選手にとっては違和感あるんだろうね。

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