ゴールデンコンビ’21

ヤング&コリンズ

Q.プレーオフで最も印象に残ったシーンは?

それはこれ。このシリーズでエンビードの上からダンクを決めていたコリンズだけど、最後もやっぱり豪快なアリウープを完成させて決着させました。でもさ、123-118で5点リードの残り18秒にアリウープをやる必要はゼロ。これがドフリーならともかく、エンビードが残っていたわけで、それでも関係なくパスを出すヤングと、ここでもアンドワンで決めきったコリンズ。

いうなれば「必要のないパス」を出す判断の悪さにみえて「確実に決まる」と判断されるゴールデンコンビの怖さです。なお、ファイナルゲーム6のホリデーからヤニスへのアリウープも同じようなシチュエーションだよね。

ヤングのルーキーシーズンから始まったホークスのゴールデンコンビ。現在のNBAでここまで見事なアリウープを乱発するコンビは他にいない。パスを出すヤングとダンクするコリンズ。魔法のようなパスを出すヤングと、魔術のようにスペースを作ってしまうコリンズ。派手なプレーをさせたらリーグ最強のコンビについて振り返ってみましょう。

◎コンビの効率

シーズン中はコリンズのトレードも噂されていたものの、カンファレンスファイナルまで進んだことで契約延長が成立。晴れてゴールデンコンビで未来を作っていくことに決まったホークスですが、コンビで見た時にはいろいろとあったシーズンでもありました。

共に62試合に出場し、そのうち57試合で両者がプレーしています。まずはそれぞれのレーティングと、コンビで出場している時間のレーティングを比較してみます。

〇オフェンス
ヤング  118.2
コリンズ 116.0
コンビ  118.1

〇ディフェンス
ヤング  113.0
コリンズ 111.7
コンビ  110.8

オフェンスは118と圧倒的でした。でもヤング個人でも118なので、ヤングがいればコンビじゃなくても成立していたとも言えます。なお、チーム平均は114.3なのでコリンズ単体でも平均よりも高くなっています。

一方でディフェンスではチーム平均が112.1なのでコリンズ単体で成立している部分は大きく、でもコンビの方が機能性はあるって事になります。総じてヤングの方が重要になっているのは、想像の通りです。

過去2シーズンを振り返るとコンビの特徴は「オフェンス力は微増、ディフェンス力は微減」ということで、コンビの強さに反して影響力は小さかったのですが、今シーズンはレーティング差が+7.3もありハッキリと数字に出る影響力がありました。

チーム平均に対して「オフェンス力は増加、ディフェンス力も微増」という形になったのですが、ディフェンスまで良くなったことが最大の変化だったと言えます。プレータイムが長いコンビなので総じて攻守にホークスのスタッツは上がったわけですが、共に安定感が増したことが好成績に繋がっています。

◎アリウープ

〇コリンズのアリウープ 55本
 うち、ヤングのパス  33本

2試合に1回はヤングからコリンズへのアリウープパスが発動する計算のホークス。ヤングのパスも素晴らしいけど、コリンズのスペースへ飛び込む感覚も優れています。なお、ヤング以外では半分以上がハーターからのパスだったので、コリンズ慣れてしている選手からするとイージーにアリウープが出来る雰囲気でした。

・ピック&ロールからアリウープ
・ハンドオフからアリウープ
・コーナーからエンドラインをカットしてアリウープ
・ゴール下エンドラインで待ち構えてアリウープ
・ドライブに対して3Pラインの外からカッティングアリウープ

速攻はもちろんとして、一般的に考えられる全てのアリウープパターンが成立してしまうのは、コリンズのリングにダイブしていく上手さが光っています。スペースを見つける感覚と、ビッグマン離れしたスピードで振り切り、さらに空中で動きなおせる身体能力がパスの難易度をグッと楽にしているのでした。ヤングも

・ハーフラインくらいからのロングパス
・ドライブからのロブパス
・他の選手を見ていながらのノールックパス
・逆サイドへドリブルしてのフック気味のパス

などなど、様々なパスを展開しました。フローターを使う選手って事もあり、リング上空にパスを浮かせる感覚の良さが、コリンズのフィニッシュを生み出しまくっていました。

次にこのコンビが誕生してからの3年間におけるホークスのアリウープの数を見てみましょう。なお、この3年ってのが試合数が違うので比較しにくいんだけど、3年目が一番多かったことは確かだ。

18-19シーズン 120本
19-20シーズン 105本
20-21シーズン 161本

実はこの数字は少し意外でもあります。なんせコリンズが55本なのにチームでは161本もあるのです。コリンズの3年間のアリウープ数を見てみると

18-19シーズン 65本
19-20シーズン 54本
20-21シーズン 55本

初めの2年間はチームの半数がコリンズでしたが、一気に1/3くらいまで減りました。ゴールデンコンビといいながら、コリンズ以外もアリウープしまくっているじゃん。これもまた大きな変化であり、コリンズ以上にアリウープするカペラの登場があったのでした。

〇カペラのアリウープ 87本

ハーデン時代に120本近いアリウープをしていたカペラなので、ホークスにきて劇的に増えたなんてことはありませんが、コリンズの独壇場だったプレーは、むしろカペラのプレーになっています。それは「ゴールデンコンビはヤングとカペラ」になってきた雰囲気でもあります。レーティングなんかを見てもヤング+カペラの方が成績良いしね。

実は『ゴールデンコンビ』な雰囲気ではなくなってきたシーズン

そんな印象のあるシーズンでした。単純にカペラの方が合わせまくっているじゃん。ただコリンズ単体で見るとアリウープの本数が変わらなかったことは驚異的な面もあります。

これまでセンターとしてプレーすることでインサイドのスペースを使いまくってきたコリンズでしたが、29分のプレータイムのうち19分はカペラと同時起用されたため、従来よりもスペースを使えなくなりました。にもかかわらず変わらぬアリウープ数を記録しているのです。

スペースを使いにくくなっても、効果的に飛び込んでいたコリンズ

これはこれで凄いものがあります。ちなみにオフェンスリバウンドでも同じことがいえて、リバウンド数は落としているのに、セカンドチャンスの得点は微減にとどめています。

〇オフェンスリバウンド 2.8本→1.9点
〇セカンドチャンス   3.4点→3.1点

コリンズ個人のスタッツにとっては得点もリバウンドもブロックも下がってしまい、マックス契約を勝ち取れない要因にもなったカペラの加入ですが、ホークスというチームで見た時には「カペラが加わった割にコリンズの成績は落ちなかった」という状態になりました。

ゴールデンコンビが使われる回数は減ったけど、効果的であることは何も変わらなかったといえるのかもしれません。

◎パスとアシスト

必然的にヤングからコリンズへのホットラインのパスも減ってきました。コリンズ目線でパス数とアシスト数の推移を見てみましょう。

〇パス数
14.7 → 11.2 → 10.1

〇アシスト数
2.7 → 2.9 → 2.2

『ゴールデンコンビ』と呼ぶにはかなり寂しいパス数になってきました。コリンズからヤングへのパスは20本近くあるのですが、それはアシストにはならないパスだしさ。順当にアシスト数も減っており、結構苦しいね。

9.4アシストを記録するヤングは「ホークスのアシスト王」ですが、一方で被アシスト数が5.3もあるコリンズも違う意味でのアシスト王です。ここでもチーム2位となる4.3を記録したカペラが加入したことによってコリンズの被アシスト数は落ちています。

〇コリンズの被アシスト数
5.8 → 6.8 → 5.3

平均得点を4点落としたコリンズですが、ここが原因です。いいかえればカペラ(センター)の得点が増えたわけだから、チームとしては問題ありません。チームメイトからパスを引き出しまくる「魔術師」な空気は減ってしまったコリンズですが、それでも未だにチームトップではあるし、3Pも40%決めています。

個人としてはネガティブな一方でチームとしてはゴールデンコンビ頼みな空気が減りました。層が厚くなったことで勝率を挙げたホークスですが、コンビでの攻略が減ったことが勝率を挙げたともいえます。

試合を支配するほどのゴールデンなコンビにはなれなかった

こんなことも言えるシーズンでした。カペラの件を除いても、もう少しコンビで崩していいんじゃないかな。ある意味でホークスの伸びしろ。コンビプレーが減ってチームは勝てるようになったけど、もっと強力なコンビプレーになればチームはもっと強くなりそう。それはプレーオフの土壇場でアリウープを完成させたように、緊迫した試合になるとコンビの輝きが出てきたことからも物語られています。

ちなみにプレーオフになるとヤング→コリンズのアシスト数は2.4に上がりました。でも、まだちょっと少ないですね。カペラとも契約延長しているだけに、このロスター構成でより輝く方法を見つけていきたいところです。そうじゃなければコリンズの価値ってなんだろうか。

◎ディフェンス

一方でコンビとして考えた時に、ディフェンスに難があるヤングをコリンズのカバーが助けていったシーズンでもありました。従来はセンターがメインだったコリンズはブロック数が減っており、リムプロテクターとしての役割はカペラが中心に切り替わっています。

それはウイングをコリンズが守ることになり、これまでよりも広い範囲をカバーしなければいけませんでしたが、全く問題なくこなしています。センターでありながらウイングディフェンスできてしまうことはラインナップ変更をスムーズにしました。

もともとコリンズはルーキー時代に比べてディフェンス力が大きく改善していましたが、パワー勝負が減ったことでスタミナロスも減り、そして運動量が増えています。全体的にはもう少しディフェンスレーティングを明確に上げて欲しい所ですが、ツービッグで守れることはホークスのディフェンスを柔軟にしました。

〇ディフェンス平均移動速度
コリンズ
3.67 → 3.93

ヤング 
3,58 → 3.58

「動けるビッグマン」は結構な人数いるけど「動いているビッグマン」ってのは偉い。ハーターやソロモン・ヒル、ボグダノビッチよりもディフェンス時に動いているコリンズ。あんまり動かないヤングをカバーする意味でも大きな働きでした。

そしてホークス全体が「ヤングを隠す」ことを実行しており、コリンズの運動量とペリメーターでも追いかける能力は極めて重要でした。

〇ヤングの被FG数 9.8 → 8.3
 うち3P     4.0 → 4.1

これがデカかったホークス。ディフェンスの弱点であるヤングですが、数字の上では狙われにくくなりました。ディフェンス力が改善したというよりは単純にオンボールディフェンスを担当しなくなったよ。でも被3Pアテンプトは増えており、それだけアウトサイドのチェイスは担当させられたわけです。

しかも3PのDIFFが△1.7と良いディフェンダーになった感もあります。どうみても「インサイドはチームメイトに任せていいから3Pだけは追いかけろ」になっていました。

ヤングを隠すため、出来るだけ他の選手がローテやスイッチでボールマンを追いかけ、ヤングは「3Pは守るけど抜けれてもOK」だから他の選手がカバーしている構図です。そこにウイングとしてもビッグとしてもカバー要員になっているコリンズは大事な役割を果たしていました。運動量の多さがチームを、ヤングを助けています。

ということで従来は「ヤングとコリンズが並ぶとオフェンスは良いけどディフェンスが弱いよなー」という印象でしたが、オフェンス面でゴールデンコンビとしての活躍度が落ちたシーズンは

ヤングのディフェンス力をコリンズがカバーしていくコンビプレーが光ったシーズン

でもありました。この構図はコンビとしての価値をあげたし、コリンズを使い勝手の良い選手に変えてきています。

個人的に考えるコリンズの課題は「ヤニスとデュラントを止める事」に尽きます。どうしても常に弱点となっていくヤングのサイズを抱えている中でツービッグの体制は続けたい。続けるならばヤニスやデュラントを止める役割はコリンズに回ってきます。

いかにしてディフェンススターになれるのか。カンファレンスファイナルでは負担減も含めてヤニスを担当する機会は少なかったコリンズですが、むしろ「オフェンスは良いからコリンズのディフェンス力を使いたい」と思わせないとダメかもね。

◎ゴールデンじゃなくても

相変わらずのアリウープを連発し、ゴールデンコンビなところを見せたヤング&コリンズですが、それは印象度の話であって、実際にはコンビプレーが減ったシーズンでした。逆に見えにくいディフェンス面でコリンズの存在がヤングを助けまくっていたのが面白い所です。

総じてコンビとしてはレベルダウンしたけど、チームとしてはより良い関係性にブラッシュアップされています。長所×長所のコンビが、弱点を補うようになったわけだ。

今ではどちらかというとヤング&カペラの方が目立ちますが、イーストの状況を見てもツービッグで戦える方が重要です。そう考えるとコリンズはディフェンス面での貢献度を上げて行くのが重要になるし、もう少しパス能力も向上させたい。

ホークスはインサイドのプレーメイカーがいません。ポストアップできるタイプのガードもおらず、ガリナリのアイソ気味に頼っているのが現状。今後はヤングtoコリンズよりも、コリンズtoヤングを増やしていけるかもポイントになってきそう。得点力をフルに使いにくくなったコリンズが、パス能力で貢献度をあげることが出来るのかどうか。

若きゴールデンコンビは、経験を重ねるとともにコンビとしての輝きは薄まり、勝てるチームに移行していくのかもしれません。

新シーズンはハンターやレディッシュも戻ってきて、より多様なオフェンスにスライドしていくことが重要。それはヤングの得点を減らすことにも繋がるので、やっぱりコンビよりもチームとしての輝きの方が重要になってきそうです。

しかし、試合を決めるのはヤング&コリンズの仕事。もっとチームメイト全員と絡むことで終盤までコンビプレーを温存しておくのも勝つためには必要なこと。ゴールデンというには寂しいコンビスタッツになったとしても、「勝利に導く」コンビであることの方が重要です。

ホークスのヤング&コリンズは次のステージに進めるのかどうか。イーストトップを狙うべきシーズンが始まります。

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