バックス連覇のカギは何だろうか

Q。バックスの連覇への課題分析をお願いします

なんとも気の早い質問というか、優勝チームが「課題」なんていうのはシーズンが始まって困ってからで十分な気もしますが、話題としては面白そうなので触れてみましょう。

①健康

バックスは優勝したチームでありながら「課題」がいっぱいあるチームです。それは「未完成だけど優勝した」と言い換えることも出来ます。そんな優勝を可能にした最大の要因はなんといっても「健康」につきます。

レイカーズ、ヒート、ナゲッツ、セルティックスと1年前のプレーオフでカンファレンスファイナルまで進んだ各チームが軒並みケガ人で苦しみ、早々に敗退したのに比べて、バックスは元気でした。中心選手のヤニスやミドルトンは19年W杯にも出ているし、カンファレンスセミファイナルまで進んでいたのだから、もっと苦しんでもおかしくなかったのに、周囲の状況関係なく元気に過ごしました。

ファイナルのゲーム6で50点取ってしまうようなヤニスは、本当に怪物的なスタミナを持っていますが、そんなヤニスもホークス戦では離脱しており、無傷ってわけではありません。ミドルトンとホリデーはオリンピックに参加しており(ヤニスが不参加だったのはラッキー)、新シーズンもフル稼働となると疲労の蓄積も出てきそうです。

他にブルック・ロペスも長く元気に働いており、どこかで誰かが勤続疲労となってもおかしくありません。バックスにとって最も重要なことは

健康なシーズンを過ごし、プレーオフにぶつけるパワーが残っていること

これに尽きます。今までは頑丈なミドルトンを筆頭に問題は起こらなかったけど、いつまでも同じとは限らない。どこのチームも同じではあるけど、ファイナルまで戦ったチームだからこそ気になる話です。アデバヨもオフが長かったことでパワーアップ出来たって言っているしね。

②ガードディフェンス

健康なバックスですが、シーズン中に明確な課題も持っていました。それはホリデーが加わったけど、総合的にガードのディフェンス力が低下してしまったこと。

〇ディフェンスレーティング 102.5→110.7
〇被FG成功率 41.4%→45.6%

その結果、シーズン中のレーティングは驚くほどに悪化しました。それなりに健康だったはずが中身を見るとかなり苦しかったのです。これがディヴィチェンゾが離脱したプレーオフではさらに苦しくなったのですが、全てをPJタッカーで解決するという荒業と、ネッツのケガやらなんやらで、気が付いたらディフェンス力で優勝していました。

健康をキープすることも含めて、この弱点をカバーしておくことは重要です。そして実際にオフの補強はここが中心になりました。いなくなったのはティーグなので、ここは明確にプラスです。

ジョージ・ヒル
グレイソン・アレン

補強としてはヒルなんだけど、若いパワーに負けないためにアレンもいるのは良きかな。ブライアントやヌワラも残っているので、意外とガードは厚めに手配された感じがあります。

ただし、これはシーズン仕様。プレーオフではディヴィチェンゾ次第って感じです。カバー要員は作れたから連覇のためにはディヴィチェンゾをしっかりとレベルアップさせることが大事。特にオフェンス面も含めると重要性アップ。

③オジェレイ

しかし、もしも「PJタッカーの穴」を考えるならば、そこを埋められるのはオジェレイ。フィジカルに守れるし、ガードからPFまでOKなので最も便利に使えるディフェンダーです。オジェレイとしては「ヤニスキラー」としてバックスに大きなインパクトを与えたのかな。

ネッツやヒートを相手に考えた時にvsデュラントやvsバトラーなどが重要になってくるのもポイント。ミドルトンがいる中でプレータイムが増えるとは思えないけど、ピンポイントで起用したいのがプレーオフのライバルになりそうなチームってのは、オジェレイの重要性をアップさせます。セルティックス相手にテイタムを止めるのも仕事かな。

といっても、1年前も同じ理由で評価していたクレイグを使わなかったんだけどさ・・・。

オジェレイが使えるようになると違う意味もあって、センターがブルックしかいない中で「ヤニスのワンビッグ」を構築しやすくなります。PJタッカーとカナートンでやっていたけど、オジェレイがそこまで信頼を得られるのか、クレイグみたいになってしまうのか。

④ポーティスは本物か

キャリアで6試合しかプレーオフを経験していなかったポーティスが、まさかのキーマンになったのが優勝に繋がりました。3Pをしっかりと決め、速攻に走り、ビッグマンカウンターがなければバックスの優勝はなかったでしょう。オフェンスに困ったときに光ったポーティス。

一方で弱点のディフェンス面も貢献出来たってのが意外や意外。ってことで

「ポーティスは本物なのか」は一番気になる

センターがブルックしかおらず、PJタッカーも抜けたことからポーティスの役割は間違いなく増えます。ガードが強化されたからこそ薄くなったインサイドをベンチから支えなければいけません。シーズン通してポーティスが働くことが出来るのか。

要はポーティスとオジェレイのところが最大の注目事項。なんというか名前だけ見たら「優勝するには物足りない」レベルの選手です。でも、必要なのはヤニスの控えなんだからワンランクアップしてくれれば十分かもしれません。vsデュラントは注目事項って事もあって、この2人がどれだけ働けるかは連覇に最も大事な要素だと思うのでした。

⑤ヤニスはレベルアップするのか

キャリア8年目を迎えたヤニスは前年よりも少し3Pを減らし、少しだけアシストを増やしましたが、概ねプレースタイルに変化はなく、変わらぬ課題を持ち続けていました。もう少し個人技を減らし、チームオフェンスの一部になれば、効果的に得点を積み重ねられたはずですが、プレーオフになったらパスアウト徹底の戦略もこなしていたので、オフェンス面ではなんとかかんとか。ディフェンスは圧倒。

しかし、そのプレーオフで感じたヤニス最大の成長は「タフになった」ことでした。

サンズに2連敗した後で4連勝したように、圧倒的不利に追い込まれても必ず持ち直せるだけのメンタルのタフさと、21試合目となったファイナルゲーム6で50点、14リバウンド、5ブロックというスタミナというタフさと。

ヒートに負けた20年プレーオフ、ラプターズに負けた19年プレーオフといずれもヤニスはトーンダウンしていった印象でしたが、その経験から奮起したのか、とにかく毎試合ハードに戦い続けていたし、メンタル負けしないから(プレー選択は悪くても)、最後まで自分の強みを出し続け、それ故に相手は対応に困っていく流れでした。

ウィナーズメンタリティを手に入れていた21年プレーオフ

2年連続シーズンMVPを手にしながら辿り着けなかったファイナルだったことが、ヤニスに精神面での成長をもたらしたのかもしれません。まぁヤニスはほっといても成長していた気がするけどね。

ってことで、こうなると22年のヤニスはどんな成長をするのでしょうか?

さらに止められない選手になるために、一番シンプルな改善事項は「ショート力の改善」です。それはもちろん3Pではなく、ショートレンジを決めきること。ゴール下まで飛び込まなくても決め切ってしまえば、ヤニスを離して守るのが難しくなります。

そして実際にファイナルでは、そんなショートレンジを決めまくりました。それが優勝を掴む要因になったわけですが、シーズンも同じように良かったわけではありません。

〇シーズン → プレーオフ
8FT以内 73% → 73%
16FT以内 37% → 46%

8~16フィート以内の46%はちょっと出来過ぎな数字ではあるものの、シーズンの成績は悪すぎます。目指すは45%ってことで、ここを決め続けられると相手は手の打ちようがなくなります。

プレーオフでのプレーを継続して披露すること

ヤニスの成長ポイントは「安定感」になります。これを実現されるとディフェンスはテンテコマイだし、対策を立てるのが非常に難しくなります。もちろん、戦術力やら3Pやらわかりやすい改善ポイントはあるけれど、どうせそっちは簡単には解決しないしさ。

「ヤニス対策」を無効化していったプレーオフであり、タフだったプレーオフ。同じことを安定して再現すれば、連覇はグッと近づいてきそうです。

幸いにしてチャンピオンリングを手に入れたって事は「これで正しい」と信じることが出来ます。プレーオフでは3P19%しか決まらなかったけど、驚くほどに圧倒的に進化していったヤニス。その完成形をシーズン開幕から見続けることが出来るのでしょうか。

バックス連覇のカギは何だろうか” への2件のフィードバック

  1. 個人的にはグレイソンアレンはディフェンス力というよりも、シューターとして期待されての補強だと思います。
    昨年のプレーオフ、バックスにとって残念だったのはフォーブスの存在だと思います。
    フォーブスが守備で大穴になるので使えず、小回りのきくシューターがカナトンしかいなかったのが、戦術を狭くせざるを得なくなったかな、と。
    アレンがヤニスやミドルトンのおかげでこれまでよりはスリーポイントも決めやすい環境でハマるようでしたら、これはかなり大きな補強になり、スターターを奪う可能性すらあるかなと期待してます。

    ただバックス連覇の鍵はバックスの弱点というよりもネッツの自滅だと思います。
    正直、探せばアラは出てくるかもしれませんが、バックスのタレント力はその辺のチームじゃ太刀打ちできないレベルで普通に負けないチームだと思います。
    しかし、東では唯一例外としてネッツというスーパーチームが、、、

    ネッツがじゃあ今年は健康なのか、ダントーニもいなくなり上手くやれるのかとか色々と考えるとなんだかネッツはバックスより不安定で消えていくような気もしなくはないですが笑

    管理人さんが初めにご指摘してる通り健康が東の覇権争いのテーマではありそうですね。

  2. プレシーズンを見てると、ウォラとマムケラシュビリには伸びしろを感じました。オジェレーに加えてこの2人が上手くステップアップ出来ると、SF〜Cの層が厚くなるのでシーズンがかなり楽になるのかなと思います。その上でPOにミドルトン、ポーティス、ロペスが全力でプレイ出来ると連覇も見えてくるんじゃないでしょうか?

へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA