バウンスバック・ラプターズ

渡邊雄太について触れたので、せっかくだからラプターズについても整理しておきましょう。これを書いている時点ではトレーニングキャンプが始まっていませんが、ドラギッチもバイアウトされることなくキャンプ参加する方向性みたいです。

「ベン・シモンズが欲しい」というラプターズなので、シモンズのトレードに絡める可能性も含めて、現時点では動きたくはないのでしょう。あとドラギッチいなくなると「イーストの強豪に帰り咲く」なんていう事態は起こらないだろうしな。

◎シーズンの反省

コロナによってトロントからタンパベイへの一時的な移転、同じくコロナによる主力の集団離脱、そしてチーム成績が振るわないことからトレードでプチ再建モードに見えたこと等、ラプターズにはいろんなことが起きたシーズンでした。オフにラウリーがいなくなったことも含めて、大きな再建に打って出たように思われがちですが、実際にはそんなでもありません。

エースがシアカムで大丈夫か、なんていう問題は引き続きありますが、それはそれ。前回も触れたけど、シアカムの個人技に頼らないように変化していくのがラプターズの方針ってことも含めて、今回はチームとして見た時のことを考えましょう。

明確に問題が起きていたのはオフェンスではなくディフェンスでした。得意のディフェンスが崩壊してしまったのが、低迷の最大の要因です。

〇レーティング
オフェンス  110.8→111.6
ディフェンス 104.7→112.0

さすがに、こんなに悪化するとは想像もつかなかったでしょう。リーグ全体がハードスケジュールでディフェンス問題を抱えていたとはいえ、ラプターズは突出して酷くなりました。ちなみにラウリー+アヌノビーがコートにいると106.0まで下がるので、この2人次第なのですがシーズントータルで27試合しか揃わなかったことも響いています。

またセンターのガソル&イバカが抜けたことは、そこまで大きな問題にならないと思ったら、代役不足過ぎていろんな問題が起きてしまいました。ヘルプディフェンダーの脅威がなくなり、しかもリバウンドの弱さが更に目立ってしまったのです。

〇ディフェンスリバウンド 35.9→32.1

テレパシーディフェンスをしているので、ゴール下でボックスアウトが出来ない事もあり、弱かったリバウンドが更にボックスアウトしなくなってしまったとはね。イバカみたいに高さで取ってくれる選手も足りなかったし。

※ボックスアウトのスタッツはカウント方法が変わったのか、リーグ全体が劇的に落ちています。ラプターズは 17.0 → 9.5 なので比較として正しいのかどうか。

そんな事情もあって、ラプターズは総じてディフェンス主体の補強を繰り広げてきました。今の時代でここまでディフェンス優先で選手を獲っていくチームはみたことがないぜ。ってことで今回は「ラプターズディフェンスはバウンスバックするのか」という視点でみてみましょう。

◎補強

シーズン中の補強も含めて、主な新加入選手を見ていきましょう。

ゲーリー・トレント
ドラギッチ
ミハイルー
スコッティ・バーンズ
アイザック・ボンガ
サム・デッカー
アチュワ
ケム・バーチ

うーん、新加入が多いな。ラウリーやパウエルは出ていったものの、それ以外のロールプレイヤーも大きく入れ替えてきました。シューターのミハイルーと、理由がわからんデッカー、そしてドラギッチを除いてディフェンス主体の選手補強となっています。

特にドラフト4位でスコッティ・バーンズを指名したのは驚き。ラウリーの後継者を選ぶと思いきや、アヌノビーの匂いがする万能ディフェンダーにしてきました。この点からもラプターズはディフェンス力低下を問題視していたことが伺えます。

特にセンターについてはブシェイのブレークがあった割に、バーチ、アチュワと積極補強に動いています。誰がスターターになるかすらわからないメンバーですが、言い換えれば明確に武器になるオフェンスは持っていない選手達ばかり。将来性も含めてアチュワがスターターな気がしますが、3人を使い分けてくるのでしょう。

ただし、全員が「リバウンドに強い」タイプのセンターではありません。弱くはないけど、強みってわけでもない。まずはそこから触れてみましょう。

◎テレパシーの前に

ラプターズのディフェンスといえばラウリー、アヌノビー、ヴァンブリード、シアカムの4人が信じられないようなカバー&ローテを繰り返していくディフェンスが持ち味でした。普通ではありえないチームディフェンスは、まるでテレパシーで通じ合っているかのよう。コースを塞ぐのが上手いガソルも加えて異次元なチーム戦術でした。

しかし、このディフェンスが復活することは期待してはいけません。1つにはラウリーとガソルがいなくなったことで役者が足りない事。なんせイバカでも難しかっただけに、同じことが出来る身体能力と戦術力を持っている選手が登場しないとムリです。ちょっとセンター陣が難しそうだ。

一方でこのディフェンスには大前提としてインサイドのカバーが上手いラウリーや、異常な守備範囲を誇るアヌノビーのように「ポジション関係なく守れる」ことと「平面でチェイスする能力」が求められます。

この点でアチュワの存在はキーポイントになりそうです。どこでも守れる身体能力はテレパシー以前に必要となる要素を持ち合わせています。バーチも似たタイプで高さよりも守備範囲の広さでカバーしている。ペリメーターに強いってわけじゃないけど。

べインズとアレックス・レンではダメだった理由がここにあるので、アチュワへの期待はかなり高いものがあります。スピードやブロックならブシェイが立派な活躍を見せるものの、1on1でも何でも対応するアチュワほどチームディフェンスに適してはいません。

ただし、アチュワはブロック力の高さはあるけど、リバウンドには強くありません。アデバヨも同じでしたがヒート自体がラプターズ同様に積極的なチェイスをするので、ゴール下でリバウンドを抑えることを優先せず、参加していないことも多かった。ナイジェリアではとっていたけどね。

いずれにしてもラプターズのセンターに求められるのは、単にリバウンドやブロックが強いことではなく、チェイス能力の高さと適切なカバーリングです。ガソルはカバーリングによっていて他の選手が動き回って助けていましたが、アチュワはチェイス能力に寄っているタイプ。これがどうなっていくのかは楽しみだし、その成熟度によっては強烈なディフェンスが戻ってきます。

バーチはよりヘルプに特化したタイプ、アチュワよりも安定したカバーリングディフェンスが期待できます。ここはディフェンスでの使い分けが行われそう。

ブシェイはもっと身体能力に優れていますが、どちらかというとオフェンスオプションとして活用されそう。ディフェンスで何かをしたいのではなく、センターの3Pを有効に使い、ガード陣のドライブを増やしたいときに使われそう。

ラプターズが強烈にバウンスバックするためには、3人のセンターの使い分けがキーポイント。その中でもアチュワのディフェンスがどこまで出来るかはテレパシーディフェンス復活の大前提になってきます。

◎ノーラウリー

ディフェンス要員が補強されてきた中でドラギッチは全く違うタイプです。しかし、個人での強みはなくてもチームディフェンスの一員として機能すればOKの状況は、ドラギッチを助けてくれます。ヒートでもゾーンのウイング側をやっていたし、ラウリーのようにカバーディフェンダーにもなってきます。

ただラウリーほどは動けないし、止めきるディフェンスは出来ないので、どんな役割を与えるかは重要になってきそう。次々にマークを入れ替えてローテーションしていくならば、ドラギッチは少し厳しいかもしれません。

ボールの逆サイドにいる2人のオフェンスを1人で守ることも多いラプターズ式は、パスが出た先をカバーするのが優先なので、その時どんなマッチアップになるのかわからない。ここで標準以上に守れる選手が多いから成立していたけど、ドラギッチはどこまで出来るのか。

一方でラウリーには時に特殊な役割が与えられます。それがエースキラーというか「シューターキラー」役でした。何度もスクリーンを使って動き回るシューター相手にした時、カバー&ローテをしていく守り方は相性が悪く、「ボールと逆サイドを1人で守る」なんてことをシューター相手にすると、簡単にボールサイドに走られてしまいます。

そんな相手にはラウリーの出番。1人だけマンマークとなり、オフボールでチェイスしまくります。それでいてカバーにも飛び出てくるから極めて厄介。それこそダンカン・ロビンソンの対応はラウリーの仕事でした。

ジョー・ハリスやレジー・ブルロックを相手にしてもチェイスしていたラウリーですが、面白いことにテイタムのマークもラウリーでした。1on1で止めきるというよりは「シュートを打たせない」のがラウリーの仕事だったので、38回のマッチアップでFG1/3に抑え込んでいます。ただし、打たせないのが仕事だったからテイタムに4アシストされている。

シューターをチェイスするのはスクリナーを上手くかわしていくドラギッチには向いていそうです。しかし、テイタムのようなタイプを相手にするならば、トレントの出番になります。

ここでの問題はラウリーが1人で3役くらいをこなしていたこと。新シーズンはドラギッチとトレントで2人3役くらいが限界に見えます。でも、この2人はオフェンス面で全く違うタイプだし、使い分けるのは簡単じゃないよね。

ハードに守れるトレントはエースキラー役としては適任。ちょっとオフェンスに色気を出しすぎて怪しくなっている時もあるけど、PGへのプレッシャーからドライブへの対応まで対人で強さを発揮します。

一方でラウリーのようにインサイドのカバーリングに優れているわけではありません。これはラウリーの方が異常なので気にすることはないのですが、トレントはチームディフェンスよりも個人としてエースキラーさせた方が輝くタイプなだけに、ラプターズでは飛び道具的な存在になってきます。

ディフェンス能力が高く、エースキラーで輝くトレント
対人は弱いけど、チェイスやチームディフェンスが出来るドラギッチ

どっちも良い選手だけど、1人で柔軟に仕事を変えることが出来たラウリーの利便性は別格でした。だからこそラプターズは同じユニットで、異なる守り方が可能だった。その便利屋がいなくなったことは、チームとしての戦略に大きな影響を与えます。

シアカムがPGを守ったり、アヌノビーがコートの全てをカバーしたりと、かなり異常なことをしていたラプターズ。それを可能にするのは、何をさせてもOKな存在がコートにいたからです。

変わらずガードは充実させてきたけれど、それをプラスのエネルギーに変えないといけません。対戦相手とのかみ合わせでユニット構成を変えることになりそうだけど、変えてもオフェンスを機能させることが出来るのかどうか。

標準以上のディフェンスはしてくるでしょうが、リーグトップに返り咲くには少し厳しいようにも見えてきます。

◎スコッティ・バーンズ

そんなマルチな役割を期待したくなるのがルーキーのスコッティ・バーンズ。6ー9(206センチ)とサイズのあるウイングは、7-2(218センチ)のウイングスパンをもっており、それでいてアジリティにも優れているというモンスターです。

大学で1.5スティールを記録したようにボールを奪う能力に優れており、このサイズでPGとマッチアップしています。なかなか大学では見られない光景な気がするよ。ブロックは多くないけど、その高さは圧倒的なだけにインサイドヘルプでも貢献してくれそう。

ちなみにバーンズは垂直飛びが36インチとドラフトコンバインの中でも上位なんだけど、マックスジャンプ(助走アリ)は39.5インチと垂直とさほど変わらなかったよ。

これだけのアジリティと手の長さがあればシューター相手のディフェンスでは強みが出るだろうし、PG相手でもウイング相手でもエースキラーになれます。カバーディフェンスは不明ですが、実はラプターズに不足しそうな「マルチな役割」って意味では適任なルーキー。

もっとも、現時点では「経験不足なアヌノビー」なので、ウイングのスターターとして起用するほどじゃないし、ガードとして考えるとオフェンス面での不安が大きすぎます。アシスト力はそこそこあるんだけどシュート力不足がデカい。ドラギッチやトレントに比べると雲泥の差があるな。

マッカウやスタンリー・ジョンソンがいなくなり、渡邊・ギレスピにボンガとデッカーを加えた感じのウイングなので、バーンズはシックスマン的に起用されそう。そういやポール・ワトソンってウェイブされていたんだね。期待されているような起用ぶりだったのに。

いずれにしてもバーンズにはディフェンスで多くの役割が与えられそうです。というか、多くの役割を与えないと意味がないタイプの選手でもあるな。何でもできるだけに、試合終盤に向けてのキーマンにもなれそう。アヌノビーと並べて起用することが出来るくらいに成長すれば、超強力なディフェンスユニットを作れる気がします。

ラプターズのディフェンスがバウンスバックするには複数の要素が必要ですが、バーンズは1人で多くの要素を補ってくれるかもしれません。

◎6-9

ところでラプターズって新シーズンは7フッターが誰もいません。その代わりといってはあれですが6-9が異常に多い。バーンズの6-7がかわいく見えるもんな。

【6-9】
ギレスピ
渡邊
サム・デッカー
シアカム
バーチ
ブシェイ

【6-8】
アチュワ
ボンガ

【6-7】
バーンズ
アヌノビー
ミハイルー

見事に全員が動けるタイプだもんね。ほぼノーポジションなローテディフェンスを意識しているように思えます。ドラギッチとヴァンブリードを並べなければ有効活用されそうだけど、ガードの並べ方どうするんだろ。

そして渡邊はロスターに残れそうなんだよね。ポール・ワトソンやベンブリーがいたら難しかったように見えるけど、スタンリーもいなくなった中、明らかにガードも経験している6-9でマルチなビッグマンポジションは渡邊を必要としているように見えます。

Q.渡邊とスコッティ・バーンズの相性についてどう思いますか?
 DFはともかくOFはライバルになると思っていましたが、バーンズがパスファーストな事もあって、良き相棒になる可能性もある気がします。

問題はオフェンスって事ですが、渡邊とバーンズに限らず、このサイズのウイングタイプにしてガードもしそうな選手を多く揃えたので、並べて何かをしたいのだと思います。だから面白そうでもあります。

このタイプの選手を並べた作戦が成功するかどうかはバウンスバックに大きく関係してきます。オフェンスの出来が気になりますが、それだけディフェンス強化を図ったって事かな。

◎カウンターアタック

ディフェンス力の高いチームは基本的にリムプロテクターが重視されます。DPOYはいつだってセンターだ。実際にリムプロテクトを重視したディフェンスをするのが、もっともシンプルなディフェンス強化です。まぁそれがプレーオフになると成功しているかというと難しいんだけどさ。

しかし、ラプターズは極端にリムプロテクトを重視せず、ハイプレッシャーでディフェンス力を上げているチームです。それは時にオフェンス力不足を補ってくれる面があり、ボールを奪ってからのトランジションアタックでイージーな得点を増やしてきました。

それがディフェンス力の低下によって明確にトランジションも減りました。新シーズンはディフェンス力強化に成功すれば、必然的に得点も伴ってきます。

〇トランジション
回数 24.2回 → 20.5回
得点 27.8点 → 23.1点

これを19-20シーズンの水準まで戻せるかどうかがキーポイント。トランジションなので当然スティール数は大事ですが、実はラプターズのスティール数は微減にとどまっており、それよりも3Pに対するディフェンスの方が大事になります。ロングリバウンドからトランジションの流れだね。

〇スティール 8.8回(2位)→8.6回(4位)
〇被3P 33.7%(1位)→37.9%(24位)

リーグ最強の3Pディフェンスをしていたのに、ローテが機能しなくなって一気に24位に落ちてしまいました。面白いほどに全員のDIFFが悪化しており、1つ狂ったところからチーム全体がくるってしまったシーズンでもありました。

ラプターズにとっては3Pへのディフェンスが得点面でもキーになってくるという事なので、従来のような広い範囲を守る手法が戻ってくることが何よりも重要になります。アチュワやバーンズが加わったことで全体的な運動量の高さが上がり、トレントのようなエースキラーもいるので守り方も複数の形を用意できそうです。

ラウリーがいなくなったことは大きな不安はあるものの、ここまで徹底してディフェンス強化を図った激レアな補強だっただけに、ディフェンス力をバウンスバックさせることは至上命題と捉えているのでしょう。

トロントに戻る21-22シーズンは、何よりもディフェンスに注目すべきシーズンになりそうです。

バウンスバック・ラプターズ” への1件のフィードバック

  1. ルール改正が1番ポジティブに影響するのがラプターズと思ってます。
    被3P%とスティールがトップ3になり、ディフェンスレーティングをTOP10に出来ればプレーオフも見えてくるのではないかと期待をしてます。

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