セクストンとキャブスの問題

セクストンを売りに出しているらしいキャブス。他の案件と違って、本人が「出ていきたい」といっていないだけに、急ぐ必要がないため進展もしていないものの、シーズンスタッツから見ると、そもそもキャブスが売りに出していることは不可解でもあります。

〇セクストン
得点 24.3
2P 51.1%
3P 37.1%
アシスト 4.4
リバウンド 3.1
スティール 1.0
ターンオーバー 2.8

このオフはドンチッチ、ヤング、そしてSGAがマックスでの契約更新をしましたが、スタッツ的にはひけをとりません。もっとも、それが問題で、おそらく本人(代理人)はマックスに近い額を要求するはず。トレードが成立するには

キャブスへの対価(最低1巡目指名権)
適切な額での契約更新

この両者が必要になり、相手チームからするとセクストン獲得には、かなりの代償が求められます。かといって「勝てる選手」ではないことも明確なので、強豪チームが欲しがるとは思えません。

オフに積極補強に動いたキャブスですが、ガードの補強はなかったため、このままセクストンと共に歩む可能性も高く、今回はセクストンについて触れながら、キャブスが改善すべきポイントについても触れていきたいと思います。

なお、シーズンスタッツを使って比較していくのですが、ドラモンド・ラブ・アレンなど、シーズン中にインサイドのロスターが大きく動いており、ナンスもケガで離脱していたこともあれば、ガードが全滅でセンターばかりで戦ったこともあるので、数字はあまり参考にならなかったりします。その前提で読んでください。

◎セクストンの得点力

まずセクストンの特徴を捉えてみましょう。まず挙げられるのは得点力の高さですが、特に3P成功率は3年目のガードで38%は立派。185センチと小さいながらも2Pも50%超えており、それでいてターンオーバーも3を切っているので立派なスタッツと言えます。特にドライブからのフローターが上手く、ペイント内で器用に振舞えることが、得点力を後押ししています。

〇エリア別FG
ゴール下 330本 61.8%
ペイント内356本 46.9%

ゴール下まで行き切れないことは致し方なく、いけるかいけないかを判断し、ショートレンジに切り替えています。このフィニッシュ力はかなり高いと評価できます。ゴール下では54ブロックを食らっていますが、ブロックさえかわせれば高確率で決めきっています。そのゴール下まで詰め切らずにショートレンジを決めていく上手さも持ち合わせているのが特徴です。

ただし、裏を返せばモラントのように強気に飛び込んでから、伸びやかなジャンプや腕の動きでゴール下を決めきることは出来ないので、シュート力の上手さは評価を上げる事にも、下げる事にも繋がっています。フィニッシュ力はあるけど、ドライブ突破力が優れているわけではないし、どこで打つのか、より適切にジャッジしていく必要があります。

また似たようなことは3Pにもいえます。

〇3P
キャッチ&3P 2.4本40.3%
プルアップ   1.9本31.3%

平均24点のガードとしては3Pアテンプトが極めて少なく、近しい所でも4.9本のレナードくらいです。成功率の高さは「キャッチ&3Pを選ぶセレクトの良さ」ですが、プルアップは苦手分野であることもわかります。フォックスと似ているな。

シュートアテンプトの78%が2Pになっており、ウエストブルックの78%に近く、現代スコアラーとしては異質です。かといって「突破力に欠ける」というのは難しい。2Pのフィニッシュが上手いことはストロングポイントなのですが、現代オフェンスにおいては活かし方が難しいエースキャラになっています。

2Pフィニッシュスキルは高いが、突破力に欠け、プルアップ3Pは得意ではない

もっと単純に「シュートが上手い」と書ければよかったのですが、EFG52.1%は効率的なスコアラーではありません。ならば、そこから何が生み出せるのか、という話になってきます。

◎セクストンのパス

4.4アシストを記録しているセクストンは、PGとしてゲームを作るのはイマイチですが、ガーランドにポジションを譲り、アタッキング中心になったことを考えれば、悪いスタッツではありません。

ショートレンジのシュートが上手いセクストンなので、このレンジでシュートに行く形から、センターに合わせるパスが出せます。ここについては一定の評価をして良いプレーなのですが、その一方でハーデンなんかを見慣れていると「意図的にディフェンスを引き出すドライブは出来ない」ことも感じてしまいます。

シンプルに言えば「ドライブしてから状況判断している」ことが多く、隙間を見事に通すパスはあるけど、狙いすました連携は少なく、ビッグマンのフィニッシュがスムーズではないことが多く出てきます。

ちなみにキャブスはシーズン通じてアリウープは74本でした。ジャレット・アレン(ネッツ時代含む)1人で50本決めており、合わせる能力が高いアレンがいなければ、どうなっていたことか。
アレン加入からセクストンだけでなくキャブスのガード陣は、少し楽しそうになりました。それはチームとして仕込まれていない中で、個人の戦術力が光った形でした。もっともアレンはシーズン終盤になるにつれて、ネッツ時代のプレーを忘れ始めた感じですが。

一方でドライブからのキックアウト能力は低く、早めのヘルプが来ればウイングにパスは出るものの、インサイドにディープに飛び込んでのキックアウトはイマイチです。

〇セクストンのドライブ
回数  16.8
得点   9.7
パス数  5.9
アシスト 1.2

ドライブの回数に対してアシストが少なく、アシスト率は7.2%しかありません。ガーランド(11.5%)、オスマン(12.1%)と比べても、ドライブからのパス能力の低さは目立っています。ただ、ここにはコーナーに選手を置いていないキャブスの事情も絡んできます。

〇キャブスのコーナー3P 6.8本(28位)

インサイドアウトには課題があるものの、セクストンはアウトサイドのボールムーブは改善しています。突破からきっかけを作るのに時間がかかるキャブスですが、ボールムーブが始まると流れるようにつながるため、チームのパス数は多くなります。そんな事情もあって、キャブスはパスは多いけどアシストが少ないのもチームの特徴です。

〇パス数   303.1(6位)
〇アシスト数 23.8(20位)

チームとしてもセクストン本人としても課題の大きなパス能力ですが、その場の判断でセンターなどへ合わせのパスを出すことは出来るし、ボールムーブの一部になることも出来ます。ただ、エースとして考えた時にセクストンが抱えている問題は

①視野が狭くコート全体は「見えていない」ことが多い
②ディフェンスを「動かす」プレーが出来ない

こんなことが挙げられます。2年目には「ラブブチ切れ事件」が発生しましたが、目の前の勝負しか見えていないので、外で何が起きているかを把握できていません。要するにパスそのものよりも「視野が狭い」のが難点です。そこにはプレーを仕掛ける前に「このプレーをすれば、ディフェンスがこう動く」という予測もたっていないことになります。経験不足といえば経験不足であり、多くの選手が感覚的につかんでいることを掴めていない雰囲気です。

◎キャッチ&シュート

セクストンの長所と短所を上げてみましたが、大事なことの1つに「ガーランドとのコンビ」であることもあって、明らかにPGとしてはマズかったのを、ガーランドが加わることによって改善してきているのも事実です。それでも、やっぱりドライブからの展開力不足はどうにかしないと、セクストンは独りよがりなプレーから脱却できません。これはメンタルではない問題なので、スキルを上げるしかない

プルアップが少なく、キャッチ&3Pを打っているセクストン、そしてパス数が多くボールムーブするキャブスなのですが、ガードコンビの問題なのか、チームの問題なのか、明らかに苦しいスタッツがあります。

〇キャッチ&シュート
アテンプト 23.6本(28位)
成功率   34.9%(30位)
EFG   50.5%(30位)

キャブスはそのプレースタイルに反して、キャッチ&シュートが少なく、しかも成功率が非常に悪くなっています。総じてガードコンビは「シュートチャンスを作れていない」ことになり、個人での打開もチームの流れを作ることも出来ていません。

パスの判断の悪さから生じるキャッチ&シュートの少なさ

ウイングにプリンス、オコロ、オスマンとそれなりに揃えていながら、ウイングが死んでしまうのがキャブスの問題点。パスが一瞬遅く、それ故にキャッチ&シュートが生まれない傾向が強くなっています。

一方でシュート能力に課題があるのも事実です。

〇ディフェンダーとの距離別3P
4~6ft 
11.1本(28位)
30.8%(30位)

6ft以上 
16.0本(16位)
37.7%(21位)

全てが上手くいかないなんてことはなく、ボールムーブもあってワイドオープンはそこそこ作れていますが成功率が低い、それ以上に4~6ftの「オープンショット」の少なさが際立っており、確率も酷いものです。シューターポジションの選手もワイドオープンじゃなければ打てないし、決められないという傾向がありました。

パスは回ってもキャッチ&シュートを打ち切り、決めきるシュート能力が課題

ガードコンビの展開力・ビッグマン過多も含めて「ウイングが死んでしまう」のがキャブスの弱点でしたが、そのウイング側もシュート能力不足を感じさせる面がありました。ドットソンなんかいたけど、明らかにシューターじゃなくてハンドラーになっていたしなぁ。

とにかくキャッチ&3Pを積極的に狙っていく選手を増やすことは、ガードコンビの判断力向上のためにも必要な事でした。ジャレット・アレンを残したのでワンビッグでもいける状況ですが、モブリー加えたし、ツービッグなんだろうな。いろいろと難しいぜ。

◎マルカネンは変えられるのか

オフの補強でマルカネンを手に入れたキャブスですが、単なる選手補強と違うのは、これまでにいなかったビッグマンシューターであり、キャブスの明確なる弱点を改善する可能性がある選手という事です。マルカネン本人への期待以上に、戦術的な面での期待があるわけだ。

〇マルカネンのキャッチ&3P
5.7本
40.5%

ブルズで苦しんでいたマルカネンですが、26分のプレータイムでこれだけのキャッチ&3Pを生み出しています。キャブス全体の1/4なので、1人で違いを生み出してくれることも期待されます。ちなみにプルアップは殆ど打っていませんが、20%しか決まっていません。

サイズがあるのでターゲットとしてもわかりやすく、パス待ちではなくアクティブに動いてパスを引き出したいタイプだけに、これまで「見えていない」ことが多かったセクストンからパスを引き出せるかも注目点です。

キャッチ&シュートの専門家は、ガードの判断力も変えるはず

マルカネンがブルズ時代と同程度でもキャッチ&3Pを打てる状況を作れれば、キャブスのオフェンスは大きく変わるし、さらにセクストンが抱えている課題を解決する要因になれれば、キャブスのオフェンスは劇的にスムーズになるでしょう。

まぁそこまでは期待しすぎか・・・あとHCが個人での仕掛けを好きすぎるんだよな・・・。

ただし、マルカネンもコーナー3Pは68本しか打っておらず、コーナー待機はしません。ここは戦術的にカバーしないと人数が増えたトップ近辺での渋滞が発生します。ピック&ポップからの3Pが好きなマルカネンだけに、セクストンへのスクリーンを増やし、セクストンも自分で行くよりもパスアウトすることを好んでほしい所。

「パスをする気がない」のではなく「見えていない」って感じのセクストンなので、上手くいけばアシストを増やすかもね。・・・マルカネンからすると、セクストンよりもガーランドやルビオとのコンビの方が期待したいところだけどさ・・・

キャブスの3P 29.5本

もしもラブが48分コートに居たら 33.8本
もしもセクストンが 〃      27.8本

マルカネンについてはラブのことを考えるとわかりやすくもなります。25試合しか出ていないラブですが、コートにいるとチームの3Pは明らかに増えており、シューター系ビッグマンがいるとオフェンスが劇的に変わるわけです。なお、セクストンがコートにいると3Pが減るんだよね。

シュータービッグマンのマルカネンは、キャブスを変える可能性が高い
セクストンのプレーも変えることは出来るのか?

モブリーもいるので、どの程度のプレータイムが与えられるのか不明ですが、物凄く閉塞感のあったキャブスオフェンスは、手元になかったピースが加わることで変化する可能性があるのでした。

◎セクストンは変わるのか?

セクストンには判断能力が足りず、それでいてキャブスにはチームとして戦術が足りません。相乗効果でセクストンは酷かった。1on1させたら高い能力を発揮していますが、チームメイトを効果的に使う事は出来ないし、その個人アタックも強引にでも突破するほどの怖さはない。

ルビオの加入はそんなチーム状況の改善を狙ったのでしょうが、そもそもガーランドもいるのでタイプ的には大きく変わりません。セクストンを変えるほどの影響力はなさそう。

しかし、マルカネンの意味合いは違いました。ちょうど、ジャレット・アレンが加わってからのキャブスがインサイドにスペースを保ち、パスを出すことを増やしたように、マルカネンはアウトサイドの問題を解決してくれることが期待されます。

上手くいくかどうかは50%よりも低そうですが、足し算ではない変化を期待したいところです。セクストンの成長って、セクストン個人のスタッツじゃなくてキャブスがチームとして改善するかどうかなんだろうな。

死んでいたウイングと少なすぎたキャッチ&シュートに変化が訪れるのか?

そうならなければトレードの話は加速しそうです。皮肉なことに個人スタッツが伸びるとトレードしたくなりそうなので、その瞬間で上手くいっていないチームがあれば、トレードは成立するかもしれません。

チームとして考えた時のキャブスはルビオの補強もあって、ガード陣は人数が揃い、マルカネン、モブリー、アレンと揃えたインサイドも人数が揃っています。本来はオコロもガードなので、実はウイングに選手を集めたがらない変わった習性も持っています。

一風変わったロスター構成ですが、バランスが悪いわけでもないので、これでどんな戦い方を見せるのか。セクストンの問題って、別にセクストン個人だけじゃなく、キャブスがチームとして

セクストンを中心にした戦い方が何も見えてこない

ここが最大の課題になっています。平均24点を奪っている3年目の若手がトレード候補になるのは、使い方がわかっていない中で個人スタッツだけは伸びてきた結果でもあります。何かしらポジティブな変化が起こるのか、それともグタグタとしたシーズンを過ごしてしまうのか。4年目のシーズンが始まります。


セクストンとキャブスの問題” への3件のフィードバック

  1. どうせしばらく勝てないんだからSACのフォックスと交換してお互いリフレッシュしましょう

  2. マルカネンの加入はキャブスにとってかなりポジティブだと読んでいて感じましたが、マルカネンにとってキャブスはベストだったと思いますか?
    スパーズにもマルカネン獲得の噂があってファンとしてはそれは悪手だと感じていたのですが、マルカネンにとってはどのチームに入るのが一番幸せだったのかなーとふと思いました。

  3. ガーランドも急成長してますよね。セクストンには試合終盤でもシュート確率が落ちないので安定したスコアラーとしての良さがありますけど、オフェンスの起点という意味ではガーランドの方が明らかに上で、将来的にどっちを残すのか迷います。個人的には来オフにセクストンをS&T(25Mくらい)で放出して、ガーランドの方を残したいですけど。

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