ラス&ADは圧倒的なコンビになれるのか

「レブロンが・・・」という視点で考えたくなるレイカーズのトレード劇でしたが、もしもレイカーズにレブロンがいなかったとしたらですよ。

ラス&ADって最高にワクワクするコンビじゃないか!?

そういう風に思いませんか?
いや、思うから書くわけですよ。

◎同じ長所と同じ欠点

まずは2人の欠点を書いておきましょう。大いなる不安要素も抱えるコンビですので。

〇FG
ラス 43.9%
AD 49.1%

〇3P
ラス 31.5%
AD 26.0%

〇EFG
ラス 47.4%
AD 51.2%

まず最大の不安要素がここですね。とにかくどっちもシュート成功率が極めて低い。わすれられがちだけどADはセンターとしてはメチャクチャ低い。このコンビが不安になる要因です。実は共にレブロンとのコンビだと「上手くいくのかなー」と思いつつも、それぞれの苦手分野を埋めあう存在だったりします。

レブロン×ラスorADは弱点を補いあう
ラス×ADは同じ長所と同じ欠点を持っている

こんな構図が出来そうなのです。なお3Pは全員が不安なので、相対的にレブロンが良いシューターに見えてくるよ。

じゃあレブロンに足りず、ラス&ADが共通して持っている長所とは何か。それはもちろん「ハードワーク」です。共にリーグ最高レベルのスーパースターでありながら、リーグ最高レベルのハードワーカーでもあります。比肩できるのはヤニスくらいなもんだ。

プレーに絡む回数が異常に多いコンビ

それがPGとセンターという両面にいるわけなので、これは驚異的なハードワークチームになりそうです。ただ、ウエストブルックが「PGなのにインサイドプレーでも絡みまくる」わけで、ADが「センター(PF)なのにアウトサイドプレーでも絡みまくる」ような選手だから、同じ長所を持つことは

強力に作用するのか、スキを生み出すのか、よくわからない

そんな未知数な部分もあります。だから「違うストロングポイントを持った選手を掛け合わせるチームが強い」わけじゃん。ラス&ADはレブロンと違って、プラスにもマイナスにも働きそうなコンビなのです。

でも、あれだね。明確なメリットは「レブロンはサボれる」ってことだね。殆ど動かなくても、ラス&ADがなんとかしてくれる。むしろ、レブロンはファイトする2人から生まれる隙を、ひたすらフォローに回るのが正解かもしれない。

◎サンダー時代

今回の記事を書こうと思ったのはウエストブルックのサンダー時代のハイライトを見たからです。どう考えてもサンダー時代の方が輝いて見えていたわけですが、ウィザーズでは圧倒的なスタッツを残しているのに、ワクワク感が足りなかった。

22.2点
11.5リバウンド※
11.7アシスト※

※キャリアハイ

ディフェンスリバウンドがゴベアに次いでリーグ2位だったことは、単にリバウンドに強いこと以上にウィザーズが弱い事情が関係していました。ガード陣はリバウンドとれない選手ばかりだもんな。一方でアシストがキャリアハイだったことは、それだけゲームメイクに徹していたからでもあります。

どうみても「1人でチームを勝たせていた」ようにしか見えないウィザーズでしたが、センターが引き出された時にリバウンドカバーするのは1人だけだし、全体を考えて動きを作っていくのも1人だけだしさ。唯一、得点だけはビールがとってくれるから助けていたけど、総合的に観て目立たない部分でザ・ワンマンチームでした。

これって変な話で「ザ・ワンマンチーム」なのはサンダー時代の16-17シーズンの方が強かったわけであり、その後にOK3になったり、ポール・ジョージが得点ランク2位になったりはしたけど、ずっと「ウエストブルックのチーム」であり続けました。なんだけど、サンダーの方がチームとして主役を輝かせていたんだよね。

チームメイトが支えてくれていたサンダー時代
チームメイトを支えていたウィザーズ時代

こんな印象の違いがあり、それだけ個人としてはサンダー時代の方が輝いていました。だからサンダー時代のプレーについて「ミスが多いし、荒いし・・・」とディスるのはわかるけど、ウィザーズ時代はむしろチームメイトのミスをカバーしまくっていたんだよね。今更ここを掘り下げるつもりもないけどさ。

じゃあレイカーズに来たらどうなるのか。そうさカバーしまくってくれるADがいるじゃないか!?ってなるわけです。だからラス&ADって期待したくなるコンビなのです。

◎アダムスとAD

『ハードワーカー×ハードワーカー』が機能するのかといえば、ラス目線だと既にサンダー時代に証明済み。アダムス&ロバーソンとのトリオは最高に機能していました。ミスも多いラスを2人が支え、ハードなディフェンスで追い込んでからのトランジションには必ず全員が走り、爆発的な突破に誰もが合わせていきました。

特にアダムスは「どんなムチャクチャなパスでもキャッチする」スペシャルな相棒でした。ウエストブルックの1つの特徴として

視野が広く、ワイドにも小さなギャップにも、どんな体勢からでもパスが出てくる
パスの強弱・正確性・トリッキーさなど、総じてパススキルは低い

本当によく見えているし、ドライブしながらコーナーへの強烈なキックアウトもあれば、ディフェンスが動いて生まれたゴール下のスペースを見つけて見事なパスを通してきます。だからこそアシスト王なわけだ。

でも、その「パスの質」は低い。弾丸パス過ぎて取れなかったり、前や後ろにいってしまったり。そしてディフェンスを騙すようなパスではないから「鮮やかなパス」には見えなかったりね。このパススキルだけをとってパスが下手ってのはちょっと違うけど。

そんなわけでパスの精度の低さによってミスも多いっていう難しい選手ではありますが「突破の段階でディフェンスを振り切っている」のは間違いないので、アダムスのように「ムチャなパスでもキャッチするスキル」があれば、イージーなゴール下を決めることが出来ます。

ADならアダムス並みのキャッチが出来る

まず、この点は確実に期待できる。アダムスほど強引でも成立するパワーはないけど、ボールを見てから動く反応力は段違いなので、多少のムチャくらいなんとかしてくれます。さらにアダムスにはないジャンプ力も加わるので、パターンも増えそうです。ただし、必ず「ゴール下にスペースを作る動き」はしないといけない。

〇8ft以内のFG
アダムス 64%
AD   68%

フローターの柔らかさは圧倒的にアダムスが上なのですが、ADには多彩なフィニッシュとそれ以上に圧倒的な「押し込み力」があるので、ショートレンジのFGはほぼ変わりません。ADとしてはこのレンジを徹底すれば、FG成功率が55%を超えることも現実的です。

ADの「キャッチ力+ショートレンジ」はラスが求める相棒らしさ

アダムスがやっていた献身的なまでのキャッチとフィニッシュは、ADにもこなせるものです。これが他のセンターになると、あそこまで「献身的」になれない。プレーに関わる回数が多いADだからこそ「アダムスのように」合わせることを期待したくなります。本当に一番大事なのはハードワークなんだ。

ところでアダムスはラストのコンビが解消されてから、その個人能力を生かしまくるとかと思いきや、平均得点を落としていきました。FG成功率は60%を超えているけど、その能力を生かしてくれる戦術・PGに恵まれなかったわけです。サンダーのクリス・ポールはダメだったけど、サンズのクリス・ポールならいけそうだけどね。

〇アダムスの平均得点
18-19シーズン 13.9
19-20シーズン 10.9
20-21シーズン  7.6

しかし、これがグリズリーズで再びラスのような突破力とパス能力を発揮するモラントとのコンビが結成されます。7.6点は寂しすぎるスタッツですが、ビッグマンが合わせまくるグリズリーズオフェンスなら、再び二桁得点するのは確実に見えるのでした。

一方でアダムスは持っているけど、ADがもっていない能力もあります。それがオフェンスリバウンド。「ラスのシュートミスはアダムスへのパス」といわれるほどに、ミスショットを拾って押し込んでいきました。その結果として

オフェンスリバウンドがディフェンスリバウンドより多いアダムス

なんていう変態スタッツを記録しました。そこにはもちろん「ディフェンスリバウンドをラスがとる」とう事情もありますが、ラス移籍後に+1.4だったディフェンスリバウンドに対して、オフェンスリバウンドは△1.6だったというオチもついた。

〇オフェンスリバウンド
17-18シーズン 5.1
18-19シーズン 4.9
ーーーーーーーーーーーーーー
19-20シーズン 3.3
20-21シーズン 3.7

〇ディフェンスリバウンド
17-18シーズン 4.0
18-19シーズン 4.6
ーーーーーーーーーーーーーー
19-20シーズン 6.0
20-21シーズン 5.2

オフェンスリバウンドだけならリーグで2番目に強かったアダムス。でもディフェンスリバウンドは50位くらいなんだよね。変なの。なお1位はどっちもドラモンド。でも混雑するレイカーズのゴール下では特徴を生かしきれなかった。

ADのオフェンスリバウンドは、ペリカンズ時代のキャリアハイで3.1本なので、ゴール下が薄くなり、ラスの突破が加わる新シーズンはこれを上回ってくることが予想されます。

いずれにしても「シュートミスしてもADが拾ってくれるはず」という関係性が出来ればラスのシュートはもっと楽になります。アダムスとは違うタイプの選手だけど、共通する「ハードワーク」という能力は極めて重要です。サンダー時代のようなワクワク、ドキドキ、そしてハラハラするインサイドワークがみれるかも。

◎ラスとウィザーズ

ウィザーズに行ってからのウエストブルックは、見事なゲームメイクをするPGでした。それは戦術がなく、オフボールで動ける選手がいないウィザーズの酷さにアジャストしていったようにも見えます。つまりは「誰もフォローしてくれない」なら、プレースタイルを変えたような感じです。

特に目立ったのはドライブよりもミドルを選択する事。これはいろんな意味があって、「イーストのディフェンダーは下がって対応する」ことだったり「インサイドを固めている」ことだったり相手の事情もあれば、純粋にラス本人がコンディション不良だったこともあります。

18-19年サンダーと20-21年ウィザーズでのスタッツを比べてみましょう。

試合数 73試合 → 65試合
ダンク  33本 → 24本
ミドル 355本 → 394本

ただウィザーズオフェンスには気になる点が多過ぎたので、やっぱりチーム事情に見えてきます。そして明確に減ったのがノーチャージエリア内のアテンプトでした。「ダンクが減った」のではなく「ゴール下が減った」ことになり、それはラス自身が得点しに行かないことから生まれた結果でした。

ゴール下 553本 → 324本

よりチームメイトへのゲームメイクに徹したら、ゴール下アタックが減るってのは、どういう意味なのか。至極単純な話として「センターがジャマ」でした。

サンダー時代もアダムスがいない方がラスの得点は伸びたし、ロケッツではセンターみたいなこともしていたのでマイクロボールによってゴール下こそが戦場でした。でも、ウィザーズはレン、ロペス、ギャフォードと選手は変われど、ゴール下に陣取っており、ドライブするスペースがなかった。

センター陣は「ゴール下で待っている」ことが多く、そこでのポジション取りが仕事でした。これがアダムスだとトップへのピック&ロールを繰り返してくれるため、ゴール下にはスペースがある状態でラス&アダムスが飛び込んでいきました。

サンダーの方が「ゴール下のスペースを作って」からアタックするチームでしたし、翌シーズンのクリス・ポール体制になると、その傾向はさらに強まりました。これを現わす良いスタッツがないのですが、わかりやすいのはアリウープの数かもしれません。

〇アリウープ
サンダー
18-19シーズン 180
ウィザーズ
20-21シーズン  69

ウィザーズはビッグマンがフィニッシュするチームだったけどアリウープは少なく、ロブパスを押し込むような形にはならなかったのでした。これらのことをパスを出すウエストブルック目線で言えば

センターの動きを「みてから」パスを出す
アダムスの動きを「信じて」パスを出す

こんな違いがありました。とにかくウィザーズでのウエストブルックはチームメイトの動きを「よく見ていた」感じです。サンダー時代なんてドライブしたら「そこにいるだろ」みたいなパスが多かったし、プレーパターンとしてもアリウープに行く形が仕込まれていました。

ちなみに3/27からウィザーズで試合に出たギャフォード。合計27試合でプレーしましたが、アリウープ67本のうち、ギャフォードで26本でした。ほぼ1試合に1本。唯一のスペースに飛び込むタイプで、ラスに合うタイプでした。ちょっとADっぽいよね。

またギャフォード目線で言うとウィザーズで、誰からのアシストパスを受けていたかというと
ウエストブルック 42本
ビール 10本
イシュ 10本
ネト   4本


こんな感じです。八村からは0本です。実に60%以上がウエストブルックのパスからであり、FG成功数94しかないのに42本も1人の選手からのアシストでした。新シーズンはどうするんだろうね。ディンウィディは長いロブパスは好きだけど。

一応、ラス本人も「スペースがない所に強引に飛び込む」ことをしなかったってことだ。あと「ビールとのバランスをとった」ともいう。

〇ラスからのパス数
ビール 18.1本
ポール・ジョージ 17.4本

〇パスからの3P
ビール 2.1本
ポール・ジョージ 4.3本

〇パスからの2P
ビール 5.8本
ポール・ジョージ 5.0本

2Pの本数はそこまで変わらないのに、ポール・ジョージの方がハッキリと「パスアウトから3Pを打ち切ってくれる」選手でした。ビールってシューター系の選手だったはずが、ウォールがいない間に踏ん切りが悪く、ドライブからねじ込みたい選手に代わってしまったんだよね。

ビールだけでなく、ウィザーズ自体がリーグで2番目に3Pの少ないチームになっており、ウエストブルックのキックアウト能力を使いこなせていない上に、せまっ苦しいゴール下を生み出してしまいました。

プレーパターンが決められており、感覚でパスを出せていたサンダー時代に比べると、より落ち着いたプレーメイクはしていたウィザーズ時代は、狭いインサイドを本人も使い切れないし、アダムスへのムチャぶりのようなパスもなかったのでした。

ダイナミックなプレーが少なく、ワクワクしなかったウィザーズのラス

こんな印象です。レブロンのいるレイカーズに来ても、これはあまり改善しない気がしますが、もしもレブロン抜きで考えると

「ラス&ADってスペースに飛び込みまくるダイナミックなコンビプレーをしそう」

なんてことを想像していまい、ワクワク・ドキドキ・ハラハラするのでした。最後のハラハラはとっても大事だから忘れないでね。でもハラハラがなくなると、プレーの怖さもなくなるんだよ。

◎AD編に続く

そんなわけでキャリアハイの11.7アシストを記録しながら「ウィザーズで苦しんでいた」ようにも見えるウエストブルックの話でした。苦しんでいるといっても本当に苦しかったのではなく、少し大人なプレーをしていた感じでしたが、やっぱりサンダー時代のハイライトをみると

ウエストブルックの本質的なプレーではない

なんてことを感じ、そこにはアダムスが絡んでいることが多いのでした。またディフェンスの悪いウィザーズでは速攻が少なく、それでいて走るコースも悪いのでトランジションアタックも窮屈になっていました。

〇速攻での得点
18-19シーズン 5.2
19-20シーズン 4.8
20-21シーズン 2.7

『理不尽大王』と評しているウエストブルックですが、あまり安易に理不尽というワードを使いたくなかったりします。ウエストブルックが持つ理不尽さは

ディフェンスが戻っていても強烈な突破力によって、非常識な速攻を生み出すことが出来、時間をかけずに追い上げるため逆転劇を作り出す

そんな『理不尽速攻』の持ち主でした。その理不尽さを感じることはあっても、武器として活用されるほどウィザーズは整ったチームではなく、その座を完全にヤニスに譲ってしまいました。

レイカーズはディフェンスの良いチーム(だった)ので、もう一度復活するかもしれないし、ヴォーゲルの特性を考えれば難しいかもしれないし。まぁそんなレイカーズ目戦の話は次回に回しましょう。

今回と全く同じことをADの立場から書いていくわけですが、総論記事も書いたから同じことを3回も書くんだよね。ちょっと飽きてきています。

ラス&ADは圧倒的なコンビになれるのか” への2件のフィードバック

  1. チーム事情はもちろんあると思いますが、
    単純にウェストブルックのフィジカル面での衰え という事もあるのではないでしょうか?
    大人プレイの結果かとも思いますが、コロナと怪我があってから、体のキレやスピードが落ち着いてきたように思います

  2. 衰えだと決め付けで見てましたがこういう側面もあるのだな、とハッとさせられました。
    ラスは大好きだし来季活躍してくれたら嬉しいですけど、LALのやり口が汚すぎて素直に応援できないジレンマ…

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