至高のヨキッチ~シグニチャー~

シーズンMVPを獲得したヨキッチ。それは世界一の選手だと認められた証ではあるものの、この選手がどれだけスペシャルなのかは、未だに理解されていない気がするのです。「レブロンの後継者は誰か」といわれれば、それはヤニスでもドンチッチでもなくヨキッチ。オンリーワンでスペシャルワン。

2年くらい前まで『ポイントセンター』という概念はヨキッチを形容するのに素晴らしいワードだったけど、今ではこの概念が足を引っ張っているかもしれません。

ヨキッチはセンターなのにポイントガードみたいなプレーまで出来るからMVP

この表現は「正しい」けれど「正当な評価ではない」のです。ヨキッチはヤニスのような身体能力はなく、世界最高の『アスリート』とは言い難い選手だけど、ことバスケットボールのスキルにおいては他の追随を許さないレベルにいます。

史上最高のバスケットボールIQとスキルを備えた選手

ひょっとしたら、これくらい言っても過言ではないかもしれない。ヨキッチのスキルを持った選手は過去にもいなかったかもしれない。「センター」ではなく「選手」でね。それくらいスペシャル。ヨキッチの高いスキルを現わしていた『ポイントセンター』という言葉がジャマをしているかもしれないくらいのスペシャル。

そんなわけでシリーズ企画『至高のヨキッチ』として、20-21シーズンMVPの凄みを見ていきましょう。

◎シグニチャー

初回に触れるのはヨキッチの『シグニチャー』プレーのひとつである「ソンボル・シャッフル」です。ソンボルはヨキッチの出身地の地名です。『ハーフ・ステップバック』と評されたプレーはスペシャルにして不可解。アンストッパブルなステップバックにして、読めないタイミングのシュートです。

ドレイモンド・グリーンをして「守るのが難しい」と評された得点パターンについて触れていくのが今回です。つまりヨキッチはポイントセンターである前に、そもそも「1on1で止めるのが極めて難しい」わけだ。

◎ザ・ノビツキー

あまりジャンプしないで打っている形でありながら、後ろ足に重心を乗せ、前足が出ている形はダーク・ノビツキーのシグニチャー・フェイダウェイに似ています。今では多くの選手が取り入れているプレーですが、ノビツキーのサイズでコートのどこからでも成功させている選手はおらず、非常に難しいことは言うまでもありません。タウンズもやっているのかな。

「ノビツキーのフェイダウェイ」が難しい理由を挙げて行くと

・そもそもフェイダウェイが難しい
・フィジカルコンタクトからバランスを崩さずターンする
・身体のエネルギーが著しく後方にかかっているため、腕のエネルギーだけで打っている
・ハイアーチのため、より繊細なコントロールが求められる

フェイダウェイそのものは珍しくないので、特に最後のがノビツキーならでは。ノビツキーは育成年代の時に個人トレーニングで指やリストの強化を徹底的にやらされ、それがこのシュートに結びついたともいわれていますが、肘から先だけでボールをコントロールする能力はノビツキーが史上最高と言っても過言ではないでしょう。

ワンレッグのフェイダウェイそのものは他の選手もマネしているとはいえ、ノビツキーほど「どこから」でも「正確に」フェイダウェイで決められる選手はいません。

また、このシュートは「止めようがない」とされていますが、その理由はESPNが動画にしてくれています。

ディフェンス目線で言うと、こんなことがいえます。

・そもそもノビツキーがデカい
・前足が残っているため近づけない
・シュートの角度が高いため、普通のブロックでは高さが足りない

そして、同じことはヨキッチの『ソンボル・シャッフル』にも当てはまります。理論は同じで手前に出ている足がディフェンダーとの距離を空け、ヨキッチの高さ&シュートの弾道はブロックを極めて難しくしています。つまり

ソンボル・シャッフルはノビツキーのフェイダウェイくらい止めにくい

こんなことがいえるわけです。この時点でスペシャルな技なのですが、ここから続いていくのがヨキッチの嫌らしさであり、「史上最高の」と言いたくなるわけです。

◎なんばショット

ノビツキーのフェイダウェイは左足を軸にして右手で打っているのに対して、ソンボル・シャッフルは「右足を軸に、右手で打つ」形なので、シュートの基本には存在しない打ち方であり、ボーっとみていると「なんか変なシュート」にみえるわけです。右手と右足を同時に動かしているのは「なんば走り」みたいなスタイルです。

この違和感のあるモーションに対してディフェンダーは予想することが出来ずに「シュートだとすら思わないタイミングで打たれる」ことがあります。

ただでさえ「ブロック不能」なのに「タイミングも読めない」シュート

予備モーションがわかりにくすぎるので、ディフェンダーはどうしても後から追いかけるしかありません。そして、追いかけ方を間違えるとファールになってしまいます。このタウンズは典型的な例でした。

「ハーフステップバック」と評されているように、半歩下がるわけですが、この半歩が「右手足が同時に下がる」なので、真っすぐ後ろではなく、右斜め後ろであることもポイントです。

理論上ディフェンダーは「左斜め前に出る」ことが求められますが、このタウンズのように右手でチェックに行くとなれば、さらに遠くなってしまいます。左手でなければチェックできないわけだ。両足のスタンスに加えて、チェックに行くべき手すらも限定してくるのが、ソンボル・シャッフルなのです。

◎ステップバック&フェイダウェイ

ソンボル・シャッフルが厄介なのは、ボールを持ったヨキッチが
・なんでもない右手ドリブルから突然打てる
という点にあります。ディフェンダーがハイプレスしてこなければイージーに打ててしまいます。

そしてハイプレスしてきても「ステップバック」するから、距離を空けて打つことが出来ます。強烈な「ステップバック」なのです。

その一方でドライブモーションやリングを背にしたポストアップからも打てるのが特徴です。
・左手ドリブルから止まってフェイダウェイ
・スピンムーブからフェイダウェイ

こんな形で打てるのも特徴です。つまり

「ステップバック」であり、「フェイダウェイ」でもある

ドリブルモーションからも打てれば、ステップワークからも打てるし、プレーを止めれてもターンからのフェイダウェイにもなります。このプレーが「シャッフル」と言われる由縁なのかな。

様々なプレーモーションから繋げることが出来るのがソンボル・シャッフルの恐ろしさ。こんな変なシュートを決めまくれるヨキッチの異常さであり、その異常さによって手が付けられなくなるシグニチャームーブなのです。

◎コンテステッド2P

上記のESPNの動画によると、ヨキッチはソンボル・シャッフルを武器に競り合いの中での2Pの確率が53.8%もありリーグNO1だとか。平均が37%程度なのでヨキッチの確率は異常です。

そしてそんなヨキッチがいるから「オフェンスが手詰まりになっても最後にヨキッチに打たせればよい」ことになっているナゲッツは「何度もオフェンスをやり直すことが出来る」強みも持っています。

〇ショットクロック残り4秒以下のFG成功数 50(1位)

時間がない中で決めたシュート数はヨキッチが2年連続でリーグトップでした。確率も50%を超えており、最後にヨキッチにボールを回せる強みは際立っていました。センターであり絶対的なステップバックだから、ガードのように突破する必要すらありません。それでいて確率も素晴らしい。

ディフェンスからするとショットクロックギリギリまで追い込み、苦し紛れの『オフバランスショット』を打たせたはずが、実際にはヨキッチのシグニチャームーブだったりするので、やっていられないでしょう。

◎本当に怖いこと

『ソンボル・シャッフル』は「タイミングが読めず・ブロックも出来ず・どんな体勢でも打てる」ので、超強力なシュートなのですが、本当に怖いのは『単なるシュートではない』ことです。

ドリブルから即座に打つこともあるステップバックだけにチェイスしたいところですが、チェイスするとハンドリングやステップワークで簡単に抜かれてしまいます。そのプレーに反応しヨキッチを止めたとしても、フェイダウェイが待っているのです。そもそも、右斜め後ろに下がるのは前後左右にディフェンダーを動かすことになり、フットワークが良く、それでいて高さもある選手でなければ守ることすら許されません。

要するに『シャッフル』というだけあって

様々なプレーが紐づいてついてくるため、何を止めるべきか絞れない

そもそも必殺の武器なのに、ヨキッチの場合はその必殺と関連するプレーが次から次へと出てきます。プレーとプレーの継ぎ目がないから、守っている方はやっていられません。普通の感覚でヨキッチを守ることは難しく、唯一「身体能力は高くない」ことだけで助けられます。

◎もしも「ポイントセンター」じゃなかったら

シリーズ連載:至高のヨキッチ
初回は『ソンボル・シャッフル』についてでしたが、ヨキッチの印象としてはパス能力の方が強烈であり、また「シュートの上手さの1つ」くらいの認識でしかありません。

しかし、もしもヨキッチに「ポイントセンターと呼ばれるほどのパス能力・戦術能力がなかった」としたら、実はポストアップから繰り返される『ソンボル・シャッフル』によって、恐るべきポイントゲッターになっていたかもしれないのです。

ノビツキーレベルに止められない必殺シグニチャームーブをもつスコアラー

実はヨキッチという選手は得点に特化したら、得点王も狙えるスコアラーです。アシストの方が好きなだけあって、よりパスを出すことを好むだけで、オラジュワンのドリームシェイクの如き幻惑させるプレーで違いを作り出してくれます。

ヨキッチは「ポイントセンター」という言葉を生み出した選手だけど、もはや「ポイントセンター」という評価では不十分になっているのです。『ソンボル・シャッフル』という多彩でアンストッパブルなムーブは、今やNBAで最高クラスの必殺技になっています。

ひょっとしたらヨキッチの引退後には、新しいスター候補たちがこぞってヨキッチ道場に通うことになるかもしれません。

至高のヨキッチ~シグニチャー~” への6件のフィードバック

  1. ヨキッチ特集ありがとうございます
    流れの中でヨキッチを見てると、シュートがホントにただの選択肢の一つに見えますよね
    ネットを揺らすためにただただ合理的にプレイをしてる感じがします
    続編楽しみにしております!

    1. 合理的なのかどうかはわからないですが、こんな必殺技を持っていてもプレーの一部でしかないから、何をしたいのか読めず、凄いプレーが出てきますね。全4回シリーズです。

  2. 今まで管理人さんがヨキッチを絶賛してきた理由が解明されていくようで,とても面白いです!
    すごい選手なのはMVPを取った時点で勿論なんですが、得点能力の面でもアンストッパブルというのは、恐ろしいものですね。
    しかも、ヨキッチの真骨頂とも言えるパス能力や状況判断の良さが加わるのが、これもまた恐ろしい。
    よく2巡目まで残っていて、その選手を中心としたチーム作りをしてきたナゲッツも毎度思いますが凄いですよね。

    1. まさに「何故、誉めているのか」を解説していくシリーズです。
      ヨキッチの場合はデメリットを語る必要がないくらいなので、その凄みを感じて欲しいシリーズです。

  3. 至高のヨキッチ特集サイコーーー
    ナゲッツファンとしてはオフシーズンは退屈なので超感謝
    管理人さんからレブロンの後継者、史上最高との評価されたヨキッチがいる内にナゲッツは優勝しないとね
    MPJの契約問題にヨキッチの契約延長も近づくとの記事が出てましたが、ナゲッツはそんな”史上最強”のヨキッチをどう生かせばいいのか、相棒はマレーやMPJでいいのかその辺も触れて欲しいです
    個人的にはヨキッチ&マレーコンビで優勝して欲しいのですが

    1. 相棒としてはいいので、ディフェンス頑張りましょう、ってくらいですかね。
      ただ、間を埋めるのがハリスならよかったけど、SG不足になってしまったし、ゴードンなのかセンターなのかが難しそうです。

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