オフの補強から考えよう。
レイカーズからの80M近いオファーを断り、100Mクラスの契約を求めていたシュルーダー。この人が自分自身を過大評価しているのは今に始まったことではないのですが、結局はセルティックスに1年5.9Mで落ち着きました。
「安すぎる」という声がある一方で、「供給過多のガードに高いサラリーは払いたくない」ようなリーグ全体の事情も垣間見えます。仮にセルツが優勝したとしてもシュルーダーに100M出すチームが出て来るとは思えないしな・・・。
いずれにしても補強終了と思われたセルツに新たなカードが1枚加わりました。そんでもってTwitterでみたロスター表がなかなか面白かったです。スターターとベンチについては無視しよう。
つまり、この表で見ると5つのポジションにわかりやすく分類されていることになりました。
①得点力ガード
②ディフェンス力ガード
③攻守に働くウイング
④オフェンシブウイング
⑤ビッグ
グラント・ウィリアムスだけ大嘘ですが、そこはまぁテイタムとブラウンが長く出るわけだしさ。どっちかというと6つに分類して
④テイタム&ジャバリ
⑤ホーフォード&グラント
⑥ロバート&カンター
これだともっとわかりやすいかもしれません。得点力ウイングとマルチ担当ビッグにゴール下専門ビッグ。あとは試合の中での使い分けってだけさ。ということで「ブラッド・スティーブンスは何に困っていたのか」という表題の1つ目の答えは
スターターとベンチに同じポジション・役割の選手を並べたロスター構成が欲しい
こんなことだったと思われます。シーズン当初にタイスとトリスタンを並べ、何がしたいのかわからない構成にしていましたが、タイス&グラントとトリスタン&ロバートの2つにわけて見ていたって事なのかな。いずれにしても、今回のロスターはわかりやすくなっています。
シュルーダーを手に入れたことで、ワントレード発生してもおかしくないんだけどね。デッドラインでシュルーダーとダンを放出してルビオを手に入れよう。テイタム&ブラウンと並べるならシュルーダーじゃなくてルビオでしょ。
◎ドラフト
話を昨年のドラフトに戻してみましょう。このドラフトはセルティックスにとって重要なドラフトでしたが、見事に失敗しました。何が重要かといえば「1巡目指名権を3つも持っている」ことです。トレードを駆使して指名権アップを狙って将来の主力を獲得したり、現時点で必要なポジションをカバーすることが好ましかったです。
具体的にはセンターを若手有望株に引き換えておきたかった。後付けならばジャレット・アレンですが、シーズン当初はムリだったな。まぁ実際に昨年のドラフトは6位ホークスのオコングくらいだったし、ホークスが譲るわけないので「純粋にムリだった」という可能性は十分にあります。
結果的に契約義務のある30位指名権は使う事が難しくグリズリーズに譲渡したような形です。この段階でいろいろと問題がありました。ブラッド・スティーブンスは若手が好きなので、若手が増えることは好ましかったでしょうが、一般的に観たら失敗です。
14位アーロン・ニスミス
26位ペイトン・プリチャード
指名したのはこの2人。2人に罪はないので、個人としては何も問題ないよ。スチュワートかアチュワを指名したほうが良かったかもしれないけど、ニスミスも活躍しているし、そこはもう仕方がないさ。ただポジションバランスが悪くなってしまった。
特に目立ったのはガードです。それが今回の補強にも出ているのですが、シーズン当初の布陣はオフェンシブとディフェンシブに分けると
ケンバ・ティーグ・プリチャード・エドワーズ
スマート
ティーグは安いし良い補強だと思われましたが、そこにあったのは「若手に偏らずベテランを補強」したことでした。しかし、若手大好きHCだと考えれば問題なのは経験年数ではなく、特徴のバランスだったかもしれません。オフェンス担当ガードが4人いてディフェンス担当ガードがスマートしかいなかった。なお、ジャボンテ・グリーンを好んで起用していたのはディフェンス担当ガードの必要性を示していたのかもね。
ちなみに、ティーグはオフェンス担当なのかどうかもわからないので、ひょっとしたら「特徴が薄いから起用しにくかった」可能性もあります。もっとわかりやすい武器を並べて、それをHCの采配で使い分けるのが天才のやりたかったことかもしれません。
バランス型よりも特徴のある選手をベンチに置きたい
これもまた補強から推測される要素ではあるのですが、その前を振り返るとバランス型のジェイレン・ブラウンとヘイワードをシックスマンにしていたので、わかりやすいようでわかりにくかった。単に能力の高い選手がいっぱい欲しいだけにも見えるしさ。
いずれにしてもニスミスはともかくプリチャードについては、オフェンスに偏った選手であり、そんな選手を有効に使いたい事情が垣間見えました。一方で昨オフの時点でディフェンシブガードを優先すべきだったという反省が今回の補強です。
◎チェイスディフェンダー
わかりやすい補強になったディフェンス担当の2人。とはいえ、これはシュルーダー獲得でロスターがわかりやすくなった面があり、これまでのスターター予想はディフェンス強化の視点を強く打ち出し
スマート、Jリッチ、ブラウン、テイタム、ホーフォード
この5人を並べる形でした。これでも何も問題はないし、むしろこっちの方が強そうですが、Jリッチではなくシュルーダーを前提にすることで、ポジション概念は明確になったのでした。
なお、現実的なシステムを考えた時にセルツが困っていたのは
「ハンドラー・テイタムと周囲のバランスが取れない」
ってことなので、シュルーダーにPGやらせるよりもスマートのままで。Jリッチをウイング起用したほうが機能します。フロントとして「ロスター構成を考えた」気がする一方でHCとしては違う選択肢をとりそうです。
単純にテイタムの控えにシュルーダーの方が効果的だもんね。シックスマンに戻ろう。シックスマンで100M契約はムリだろうけどさ。
アイザイア・トーマス時代を思い出すと、スマートとエイブリー・ブラッドリーを並べていました。ここのガードディフェンスを重視する傾向があっただけに、近年の3P中心としたオフェンス能力重視でガードをドラフトしていることは奇妙でもありました。
〇ディフェンスレーティング
17-18シーズン 103.2
18-19シーズン 107.0
19-20シーズン 106.5
20-21シーズン 111.8
急速に守れなくなったセルツですが、いなくなったのはヘイワードくらいなもんです。ホーフォードが抜けても守れていたのだから、いくらなんでも今シーズンの成績は悪すぎました。
〇被3P成功率
17-18シーズン 33.9%
18-19シーズン 34.4%
19-20シーズン 34.0%
20-21シーズン 37.4%
困っていた要素も明確です。得意だった3Pチェイスの悪さが大きく響いてしまいました。ここの理由は「守れるガードがいない」こと以上に、ビッグマンを2人並べてテイタムをSFにしたらチーム全体でチェイス出来なくなったことも関係しています。
相手のターンオーバーも平均1くらいですが減っており、総じてプレッシャーディフェンスが出来ませんでした。正直言って「やる前から分かっていた事じゃん」って気もしますが、ブラッド・スティーブンスが困っていたのが
アウトサイドでハードチェイス出来るディフェンダー不足
オジェレイも移籍しており、ウイング側を補充して、ニスミスかラングフォードをガードの一角にする方法もありましたが、それよりもガードディフェンダーを2人増やすことを選びました。この点でも万能タイプよりも明確にペリメーターのチェイスが欲しそうです。
〇被3Pアテンプト
ステフ・カリー 33本
ダンカン・ロビンソン 30本
グラハム 28本
ヤング 27本
ロジアー 26本
ガリナリ 25本
ビール 24本
ベルタンス 24本
アービング 24本
実際に3Pを打たれた選手を並べてみるとガードが多いです。なお、シーズン中に移籍したミハイルーが5試合もセルツと対戦している不規則スケジュールでした。
これ以外に試合数が少なくても平均が多いのがポール・ジョージ、ヒールド、レブロン、クラークソンなので、そこそこウイングもいるのですが、HCとして試合に臨んでいる中では「相手のガードに3Pを打たれすぎている」と感じていたのでしょう。特にカリーにはバカみたいに打たれています。確率よりも「打たれている」のが印象悪い。だけど選手交代で改善も出来なかった。
ニスミスやラングフォードのディフェンスが信頼できるレベルになったとしても、ブラッド・スティーブンスの好む形で守れるかは別の話。ウインガーとしては守れても、アウトサイドを走り回るシューター達について行く事や、スクリナーが用意されるハンドラーに対して効果的に守れるわけではありません。
Jリッチはオフボールのチェイス能力が高く、ダンは瞬間のスピードとハンドラーへのプレスが上手い選手だけに、ブラウンやスマートとは違うタイプのディフェンダーです。
3Pを止めたいセルツ。流行系はウイングスパンのある選手で「シュートを外させる」止め方ですが、わかりやすく「打たせない」ためのガードディフェンダーを2枚加えてきました。そういえばシュルーダーもレイカーズではこれまでになくチェイスしていたし、ディフェンスの弱点は劇的に改善するのかもしれません。
なお、ルール改正の件があるので、これは関係なく3P成功率は下がるかもしれない。
◎ストレッチかゴール下か
ホーフォードの買戻しは極めてわかりやすい補強でしたし、外から見ていても「ホーフォードがいればなぁ・・・」という場面が頻出していた2年間は、ブラッド・スティーブンスにとって地獄のような日々だったのかもしれません。
じゃあその間に「次のホーフォードを探せよ」って感じですが、グラント・ウィリアムスはその系統の選手です。伸び悩んでいるのですが、伸び悩む理由が本人にあるというよりは、同じポジションのテイタムがスーパーエース化したことが問題でプレータイムを伸ばせず、加えてサイズがないので「センターとしては起用しにくい」事情が絡んでいました。
だから、まさにホーフォードが欲しかったわけです。ホーフォードしかいなかったわけです。
・・・んー、でもさ。他にもいるよね。
もちろん現時点で「ホーフォードクラス」はいなくても、チームとして計画的に鍛えれば、近しい存在になりそうな選手をかき集めてくればよかったはずです。ただ、同様のキングスはバグリーとジャイルズの2人を抱えていたけど、結局は育てられずにムダにしているわけで、個人の問題だけで伸ばせるタイプじゃないんだろうね。
あるいは「働くミニマムサラリー」の若手を試してみる手法もありました。ラプターズはギレスピとかブシェイとか自前で何とかしているしさ。そういやセルツにはポワティエがいたんだよね。何故かホーフォードがいなくなったシクサーズにいったけどさ。
「2年越しでもホーフォードを戻したかった」というのは、ブラウンとテイタムのチームには欠かせないタイプの選手って事でもあります。今はホーフォードで良くても、2年後には困ることを考えると、そういうタイプの選手を集めて育成すべきだったね。なによりも、そういうドラフト路線にすべきだった気がします。
ストレッチビッグは欲しいけど、ドラフトでもトレードでも手に入れられなかった。そしてサンダーが「待ってました」といわんばかりのトレードを成立させたわけだ。
ホーフォードがいない期間に補強したセンターがカンターとトリスタン・トンプソンでした。どっちも違うタイプじゃん。だめじゃん。
そう思っていたら、何故か再びカンターを取り戻したのも意外な一手でした。そういえばタコ・フォールがいるわけですが、ストレッチタイプも欲しいけど、でっかい選手も欲しがるんだよね。欲張りさん。
ビッグマンの最適解は未だにわかっていないし、育成も出来ない
実は総合するとコレが結論なのではないかと。あれやこれやと手を出してみても、どうしてもフィットさせられない。だから「なんでも出来るホーフォードしか成立していない」ような気がします。ストレッチでも何でもなく、ただ単に「何でもできる優れたセンター」が即戦力で欲しかったんだ。
しかも、ヘイワードには最終的にセンターをやらせていたしね。基本的にスモールラインナップ大好きなHCで、サイズよりも機動力でしたが、だからこそセンターをどうすればいいのかに悩みまくっていました。タイスで良かった気がしますが、ダメだったのは「どっちにしても、どこか物足りない」と困っていたって事だ。
◎シューターではなかった
トレードデッドラインでフォーニエやワグナー、コーネットを獲得していたセルツの狙いは「シューターの補強」にも見えました。テイタムがハンドラーしているのでキックアウトを決める選手を増やしたかったかと。
しかし、オフの補強はフォーニエが移籍したにもかかわらず、シューター系統は加えませんでした。ホーフォードは手に入れたけど、センターはカンターとフェルナンドなので、1人は3Pが得意なタイプでも良かったはず。
リーグ全体で高確率の選手が増えていた中で、40%を超えたのがティーグ、フォーニエ、プリチャードの3人だけなので、実質的にガード2人のみって事になります。オジェレイ(36.7%)の代役にウイングで確率の高い選手でも良かったはず。つまりはビッグでもウイングでも良かったわけだ。
Jリッチ 33.0%
ダン 25.9%(ブルズ時)
シュルーダー 33.5%
ホーフォード 36.8%
こんな感じなので「誰もが3Pを打てるけど、特別なシューターはいない」ことになります。そしてブラッド・スティーブンスは3Pの確率には困っていなかったわけだ。どっちかというとハンドラーに困っているしな。
ディフェンダーとして複数ポジションが守れ、オフェンスでは高確率のコーナー専門家であるスネルなんかがピッタリの補強に見えていましたが、実際には全く違う路線での補強を考えていたわけです。
話を戻すと「ガードのディフェンダー」も「ウイングじゃダメ」ってことにも見えし、ビッグマンもヘイワードみたいにインサイドも守らせるウイングじゃなかったってことだしさ。
各ポジションに専門家タイプは欲しいけど、シュートは全員が上手くなれ
こんな感じのこだわりがあります。割と誰にでも3Pを仕込んできたのがブラッド・スティーブンス。何故かカンターだけには仕込まなかったけどさ。
◎1つひとつは理解できるけど
このオフの補強は1人ずつをみれば納得できるものでしたが、全体を並べると偏りも感じ、それがセルツが困っていた事なんだろうという印象を強くしました。特にHCが社長になったからこそ目立ったわけです。
Jリッチ+ダン
ホーフォード+カンター
ウイングなし
シューターなし
テイタムがハンドラーになっただけに、ウイングを厚くしても良かったし、シューターを補強しても良かった。ホーフォードが恋しくなったなら、ストレッチ系のビッグを増やしても良かったけど、ゴール下に強いタイプもロバートだけでは物足りなかった。そして最終的にオフェンシブなガードも欲しくてシュルーダーをゲットしました。
また、このオフは初めて「1巡目指名のルーキー補強をしなかった」のも象徴的です。いくらなんでも
ルーキーで補強して優勝を目指すのはムリがあった
という事なのかもしれません。スマート、ロジアー、ブラウン、テイタムとドラフトで成功してきたチームですが、以降は「可能性はあるけど、主力にはなり切れていない」ケースが多くなっています。その中ではロバートが成功例だな。
もともとユーロから補強するのも好きだったし、今回の45位もパリからの補強みたいだし、プレータイムを与えられない中では、こっちの方が良かったんだろうね。
いよいよテイタム&ブラウンが共に高いサラリーのシーズンとなります。これまではそれぞれのコスパが最高だったため、強いチームでいられましたが、豪華戦力ではなくなるシーズン。まぁシュルーダーとれちゃったけどさ。
ブラッド・スティーブンスは「困ったいた事」を解決したオフだったのか。新HCウドカは自分のスタイルに合ったロスターにしてもらえたのか。あるいはもう1手のトレードがあるのか。
ちなみに来オフはスマート、Jリッチ、ダン、シュルーダーの契約がないので、場合によっては大型補強することも出来ます。そうなるとテイタムと仲が良いらしいビールを獲得しても良さそうな・・・
「被3Pアテンプト数1位がステフ?年間2回しか対戦しないのに?流石にセスの間違いだろう」と思って見てみたら14本と19本で本当にステフと知って笑ってしまいました。
このラインナップで優勝していい感じに解体するのが目標なのかなとにわか目線ながら思いました。
2年後誰が残るんでしょうねぇ