シュートファールのルール変更について

来シーズンからシュート時のファールルールが変更になり、『ファールドロー』が減ることになります。これにどんな影響があるかを考えてみましょう。まずはルール改正について、例示を見てみましょう。

『バスケットボール以外の動き』の例
①シューターが異常な角度でディフェンダーに当たりにいく
②シューターが異常な角度で足を、上または横に蹴る
③シューターがディフェンダーの腕に絡ませてシュートを狙う

2つ目はわかりやすいけど、1つ目と3つ目がね。また「オフェンスファールになるケースも」というのが、さらに厄介だったりします。

①シューターが異常な角度でディフェンダーに当たりにいく

まずは、このケースですが、これはわかりやすく「シューターが異常な角度でディフェンダーに当たりにいく」にあたります。レフリーがどこまでを『異常な角度』と判断するかに課題は残りそうですが、オフェンス側からすると「やらなければよい」だけなので、大した問題にはなりません。

ただし、これは例示が3Pだからわかりやすいですが「ペイント内でどう判断するのか」は、極めて難しい問題になりがちです。特にこれをやっているビッグマンがいますよね。かといってペイント内でファールを貰うための『異常な角度』といえるのか、単にシュートを打ちに行く動きなのかは難しそうです。

総じてフリースローが減って得点が伸びなくなるケースもありますが、オフェンスは意図した「ファールドローはNG」という共通意識を持つだけです。ガード陣はそんなに問題ないですが、ビッグマンはファールコールがないことにブチ切れる案件は増えそう。

ファールドローを辞めるだけだが、コールへの不満が増えそう

さて、問題はオフェンスよりもディフェンスです。このルール改正によってインサイドからチェイスして3Pをブロックすることに勇気を持って取り組めるようになりました。映像にもあるようなゴベアのブロックはコンタクトせずにボールだけを叩くようなコース取りなので極めて有効です。

ディフェンダーは積極的にブロックに飛べる

そこで今シーズンの3Pアテンプトと被ブロック数を見てみましょう。

〇19-20シーズン
ハーデン 842本12回
ヤング  567本 9回
ドンチッチ532本 4回

〇20-21シーズン
ハーデン 332本 1回
ヤング  397本 2回
ドンチッチ543本 1回

見ての通り、この1年で被ブロック数が激減しています。理由はタフスケジュールでディフェンスが緩いことも関係しているでしょうが「ファールはダメよ」の意識が高くなり、3Pへのディフェンスが甘いことも関係している気がします。

※「3P成功率上昇」が顕著だったシーズンです。そのうちテーマにする予定

ディフェンスは自分がコンタクトしないコース取りでブロックにとべばOKなので、ブロック数上昇・3P成功率低下は自然の流れです。いずれにしても「守りやすくなる」が最大のメリットです。

2つめの例示は「オフェンスファールになるケース」です。これはカリーが明らかに身体をぶつけにいったため「オフェンスファール」だと警告されています。

FIBAルールなのか、オリンピックのファイナルではデ・コロが追いかけてきたディフェンスにブロックされないためコンタクトしておいてレイアップに行ったらオフェンスファールにされる驚異のコールがありましたが、やはりレフリーの判断は難しくなります。

ただNBAなので、カリーのように「後ろに飛ぶ」をしなければノーコールで終わると思います。『異常な角度』に当たらなければOKです。これに関してはNBAじゃなくて、将来的にFIBAルールがぶっ壊れていく可能性を秘めています。オフェンスファール大好きなことがわかったオリンピックだったこともあり、同じルール規定を持ち込むほどNBAとFIBAが離れていく変な現象が起きそうだ。

このプレーについてはオフェンスは辞めるだけ、ディフェンスにはメリットはありません。後ろからブロックに来た選手とぶつかったときのコールが難しい程度です。

ただし、カリーが例示されていますが「サイズの小さな選手には不利なルール改正」にはなるでしょう。単にファールドローではなく、デ・コロのようなケースも多いだけに、ブロックに飛ばせないスキルの1つが使いにくくなります。

「ノーコール」なら問題ないが「オフェンスファール」は問題が発生する可能性がある

こんな感じだと思います。カリーの例示はわかりやすすぎですが、基本的に「ダメ」といわれたらやらなくなる中で、オフェンスファールをコールされると厳しいシーンは出てくるのではないでしょうか。このルール改正は揉めそうです。

②シューターが異常な角度で足を、上または横に蹴る

2つ目の改正点ですが、これについては「既にルール化されているよね?」という感想です。足を出した方がオフェンスファールをコールされるのは、現行ルールでも発生しているので『再徹底』程度にみえてきます。

なので、攻守にこれといって変更点はありません。いいかえれば、このブルックスみたいなケースは「今後も発生する」と見た方が自然です。未だにわざと足を出す選手もいますが「自然な動きです」と言い訳もできる以上は、続けるシーンは続けます。

このブルックスについても「敢えて足を振り上げたのか」といわれると極めて微妙というか、一連のシュート動作とみてもおかしくありません。これが「オフェンスファール」と言われるとかなり苦しい気もするので、レフリーへの不満は溜まりそうです。

③シューターがディフェンダーの腕に絡ませてシュートを狙う

このルール改正については、かなりの物議を醸しだす匂いがします。改正の意図は明確で、明らかに「自分から腕を巻き込みに行ってファールドロー」が横行しています。ポール・ジョージのこのプレーは、割とひどい部類ですがアウトサイドなだけマシです。ロンゾなんかはファールコールを避けるため、頻繁に両手を背中側に組んでディフェンスしていました。

これ以上に「ドライブしながら腕を巻き込む」ケースは狙いやすいこともあり、致命的欠陥になっていました。さすがにそこまで両手を後ろに組んでいたら、何も守れないじゃないかと。ってなことで、このルール改正もオフェンスよりもディフェンスにとってありがたく

プレッシャー&ハンドチェックがしやすくなる

総じて「ファールにならない」以上に「アグレッシブなディフェンスが出来る」というメリットが大きく、オフェンスレーティングは全体的に下がるでしょう。

また、このケースはオフェンスファールではなく「ノーコール」なので、オフェンス側にとっても変なデメリットはありません。ただ、この例示が「シュートとは逆の手」なのが、非常に微妙な例示になっていて、複数のケースで難しさが残ります。

Q1 シューティングハンドで腕を巻き込んだケース

これについては従来通りという解釈です。だから「あからさまなファールドロー」が消えるわけではありません。ハーデンのような選手を守る時の基本は「利き手側を守れ」が基本でしたが、それだと同じようにファールドローされる可能性があり、今後は「利き手と逆を守れ」というケースも出てくるかもしれません。

まぁなんというか「解説泣かせ」な気もします。これまでなら「利き手の逆を守るのは悪手」で済んでいたけど、今後はファールドローがあからさまならば逆側を守ることで、よりアグレッシブにプレッシャーをかけることが出来ます。それはやっている本人の策略なので、解説からするとわからん。そんなことを考えている解説者はいないだろうけどさ。

Q2 逆の手ならハンドチェックしてもいいのか

んー、ここが難しいですね。長時間のハンドチェックそのものはファールなのですが、普通にやっている話だし、そっちにドライブされない限りは何も問題はない。そうね。だから「シュートとドライブでファールコールの基準がかわる」ってのが、なかなか厄介です。

Q3 スクリーンからのファールドロー

一番難しいのがこれです。1on1時のファールドローとは意味が違うのが、スクリーンを利用し、抜け出す瞬間に飛びあがってファールドローするスキルです。

それはいいかえるとディフェンス側が「スクリーンに引っかかる瞬間に、手を出して止めに行く」ことをしており、どう考えてもファールなわけです。でも、それが「シューティングハンドと逆だったらノーコール」なのか?

もしも、これがノーコールになると劇的に守りやすくなります。ファイトオーバーをするのが原則という守り方が現実味を帯びることに。ハイピック活用者には関係ないけど、ちょっとオフェンスの戦略が狭まるし、ディフェンスは相当楽になります。

◎アグレッシブなディフェンス

ルール改正そのものは「過度なファールドローを抑制する」という点で必要なものだと思います。ただ、実は1~2年遅かった面があり

ファールドローされないためのディフェンススキルが高まっていた

こんな事情があります。例示されたケースの中では
「ポール・ジョージにファールドローされたドノバン・ミッチェル」
現代ディフェンスではNGな行為をしていました。逆に
「こんなんでファールドローすんなよ!」
とポール・ジョージにケチをつけたくなるくらいのケースでもあるので、ルール改正はポジティブですが、みんなが新しい守り方に慣れて来ていた中での変更なので、守り方そのものが変更されることになります。

ただ、ネガティブなのはディロン・ブルックスのようにフィジカルなディフェンスで追い込もうとし、ファールドローされまくっているタイプです。プレーインでのカリーへのハードチェイスは誉める部分もあれば、危険な面もありました。これをファールドローによってかわしていくのも大事だったわけです。

レフリーが過度にコールを辞めると、フィジカルなリスクを伴う

んー、ちょっと表現は違うのですが、それこそブルース・ボウエンの危険なディフェンスは「プレーオフになるとケガさせるくらいにフィジカルで攻めるのが正解」みたいになっていました。レフリーのジャッジに任せる部分が増えると、プレーオフほどフィジカルかつ危険なディフェンスが優位になってしまう。

これが復活してしまうのは怖すぎる。マジで辞めてくれ。

③シューターがディフェンダーの腕に絡ませてシュートを狙う

これの解釈次第で大きくぶれてきそうな改正です。ただ、オフィシャルの例示が「あからさまなファールドロー」だったことを考えれば、「アレもダメ、これもダメ」にはならないと思います。あくまでも「オフ・アーム」に限定したケースなので、従来通りシューティングハンドによるファールドローは認められるはず。見ている方が慣れる必要がありますね。

「意図的なファールドローはNG」ではない

ここは忘れてはいけません。あくまでも「異常な角度」「足の振り上げ」「オフアームを絡ませる」が禁止されただけです。これらはオフェンスからすると「やらなければ良い」ってレベルで済みます。一方でディフェンスには大きなメリットが出てきました。

インサイドからの3Pへのブロック
オフアームでのハンドチェック

この2点が使いやすくなることはディフェンス戦略にとっては大きな変化です。いち早く戦術化するチームがディフェンスレーティングを大きく改善させるかもしれません。特にハンドチェックの件はエースキラーにとっては劇的な変化かもしれないので、

エースキラーが目立つケースが増える

こんなことがあるかもね。そういえばアリーザやエイブリー・ブラッドリーみたいなハンドっチェックの上手いディフェンダーって、若手からは生まれてないじゃん。スマートみたいなフィジカルで止めたり、アヌノビーみたいに異常な守備範囲のタイプはいるけど、エースキラーでボールを奪い取るタイプはやりにくかっただろうね。

シュートファールのルール変更について” への8件のフィードバック

  1. 「あからさまな」「意図的な、故意に」
    この解釈がレフリーのその時々の判断に任されるので、かなり難しい仕事になるのかなと思います
    チャレンジの使いどころも重要になってくるのかなと

    1. ただチャレンジしても、レフリーの解釈だとあまり意味がないですね。
      「意図的な」はおそらくルールブックにはないと思います。
      それでも揉めそうな。

  2. うーん、全体的に言えることですが、ルールを細分化しすぎていて、逆に穴抜けを考えてくる選手も出てきそうな。例えばシュートハンドをわざとディフェンスにぶつけて来る選手が増えたり、逆にディフェンス側がボールをホールドする瞬間に腕を差し込んでオフェンスファウルを狙ったり。ジャンプの角度や足の捌き方だけが問題という気もするんですが、上手く言語化できないし難しいですね。

    1. ディフェンス側が意図的なファールドローを狙うのは出てきそうですね。
      サマーリーグでは「飛んでしまえば問題ない」になっていたので、ちょっとルール改正が難しいなーとも思いました。

  3. ジャンプした着地点に脚入れるのも無条件ファールにして欲しいですね。

  4. 「フィジカルなディフェンスが増えて怪我に繋がる」
    確かにこれが1番最悪な展開ですが、オフェンス有利な判定も多過ぎたと感じているので全体的には今回のルール調整に賛成です。
    ↑ファールドローをする選手に不満があるわけではなく、ルールの偏りに不満が少しあったので。

    KDやCP3の腕を振り回してのシュートがノーファールになることを祈ってます。

    僕としてはとりあえず審判を増やしてくれって思ってます。
    誤審は仕方ないので、なるべく少なくなるように数自体を増やして欲しいですね。
    メイン審判3人はもう限界だと思います。

    あと個人的に使ったチーム側が損する気分になるチャレンジシステム周りを変えて欲しいです。

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