オリンピック 日本vsナイジェリア

女子の3試合目です。男子は「1勝すれば決勝トーナメント」になったラッキーなグループでしたが、女子は「2勝しないと難しそう」なグループでした。グループっていうかアメリカに大敗したことが響いています。日本に負けたフランスはアメリカに大敗しなければOKなので、どっちが楽なのかはよくわかりません。

なんでもナイジェリアはスターターを大きく変え、ディフェンスもゾーンにしてきたらしいです。やっぱり解説の話は聞いておくべきですね。

◎3P

今日も日本はえげつないくらいに3Pが決まっていきます。1Qだけで7本だったかな。ほぼ林が決め続けたのでホーバスは起用し続けました。アシスト王の町田は宮崎や本橋と交代させていたけど、調子よく決めているシューターは変えないので「やばい、また失速するかな?」みたいな空気感

1Q30点だった日本は2Qは21点に下がり、そりゃあ3Pが外れ始めれば苦しくなるか。女子だと21点で十分な気がするけど。

しかし今日はベンチから出てきた宮澤も止まらない。後半は少し落ち着いた林に対して宮澤が打ちまくった。「ノッテいる選手を使う」のがホーバスの狙いみたいで、林と宮澤でトータル12/19でした。エグイな。その分だけ三好はプレータイムが少なかったり、長岡が短くなったり。後者は大した問題じゃないけど、前者は今後もホーバスが林ばかり起用しそうな。

〇3P 19/39

はっはっは。決めすぎ。可哀そうなナイジェリア。

延々と決め続けたのですが、ホーバスは「勝負が決まる」と読んだ3Qはノッテいる選手を使い続け、4Q開始でフルメンバーチェンジしました。なかなか大胆だけど、怪しそうな交代策でもありました。さて、これが接戦だったらどうしたのか。

入ったシュートってこれといって語ることもないよね。良く決まりましたが、そこにはちゃんとフリーになっている事情もありました。その理由の方が大切だ。

◎15アシストと本橋

さて、これらの一方で町田はオリンピックレコードの15アシストを記録しました。町田がアシストを記録したのか、チームメイトが3Pを決めたのかでいえば後者ですが、それがそもそもチームの狙いなので、アシスト王は確実かもね。なお、町田は0点。

ただ町田は「そこ打たないのかよ!」みたいなチョイスもあって、アシスト優先なプレーでした。ドライブもするのですが、ナイジェリアのウイングスパンと高さに苦しんでました。基本はパサーなので、もっと潰しに来られたらどうなるのかわからないのですが、ナイジェリアは潰すほどの個人ディフェンスはなかったです。

次に出てくるのが宮崎で、その次に本橋が登場しますが、この本橋がちょっと男子っぽいプレーチョイスで、基本はパスよりも、ハンドリングから自分で打ち切るようなプルアップ3Pを選びました。ってことで、対比としては宮崎よりも本橋の方が町田との差が大きくて面白かったです。

ケガあけながらメンバーに入れてきた理由がよくわかるプレーでした。このチョイスをする日本人ガードはWリーグの強豪にはいない気がする。怒られる気がする。トータルの能力が高いかはわからんけど、相手からすると嫌だろうね。町田や宮崎よりもプレッシャーをかけにくいPGでした。

◎男子との違い

「なんで女子の戦い方を男子はやらないのか?」

そんなことを一般層だけでなく、指導者も言い出しそうなのですが、このナイジェリア戦は「何故、女子では出来るのか」がよくわかる展開でもありました。日本はほぼアウトサイドのパス回しだけで3Pを打てています。アウトサイドに出すためのスクリーンはしっかりと活用しているので「動いているだけでフリーになる」なんてことはないし、ナイジェリアもマンツーに戻してプレッシャーをかけたりもしたけど、

スクリーン 
→ ウイング3P 
→ エクストラパス 
→ コーナー3P

ほぼこんな流れで構築出来てしまっていました。3Pを効果的に利用するため、ポイントセンターがインサイドのプレーメイカーになることで、ディフェンスに中・外・中と視界を動かしつつ、連続するパスゲームで3Pを打っていくNBAの流れからすると、これだけで3Pが打てるのは、それ以上に打ちまくれるのは奇妙でした。

大前提にあるのはシステム・タイミングを合わせていく長きにわたる合宿の成果です。確かにタイミングの良さは光っており、代表チームとは思えないほど、キレイにボールが動いていきます。ただし、それは「ボールが動き出したら」の話であって、動き出すことが出来ずに終わることも多々あります。ナイジェリアもPGへのプレスを強めることで阻害してもいました。

これではないホーバスのインタビューを探したけど見つかりませんでした。読むの大変だから断念した。
「世界は高さ中心のバスケをしており、男子のようなガード中心になっていない」なんてことを言ってたインタビューです。

この言葉を強く感じた試合でした。だって、こんなに3P決めているのに、ナイジェリアは出てこれなかった。アウトサイドのプレー構築に慣れていれば、ディフェンスもより対策できるし、しっかりとチェイスする習慣がついてくるはず。だから、さすがに外だけで回して打ちまくるのはムリなんだよね。でも慣れていないから対処しきれなかったんでしょうね。

しかも日本の場合はツーハンドシュートも多いので、低いモーションから打ち切ることが出来るわけだ。さすがにスコラおじさんですら3Pをおいかけてくる男子で、これをやるのは難しいというか、必ずチェックに出てくるので、その前にオフバランスでも打ち切るスキルか、カウンターのドライブを決める必要があります。

インサイドを攻められないなら3Pも打たせないよ

くらいの感覚があります。女子はまだそこまでのことが出来ないチームが多いのかな。一方でアメリカ戦は3P打っていたけど、途中から決まらなかったように、個人でのプルアップ3Pも打っていたアメリカは、ディフェンスでもやっぱり対応してきてた。あの試合は「苦し紛れの3Pが多かったなぁ」という印象です。ナイジェリアはキレイなボールムーブから打たせてくれた。

◎赤穂ひまわり

じゃあ女子はインサイドを攻めたかというと、うーん、微妙。ドライブは潰されていたし、ポストアップも有効ではないし。高田が上手く合わせてのミドルとか、トランジションはあったけど、全体的にインサイドには侵入していないし、それでも勝てる雰囲気でした。

ただ、イレギュラーなのが赤穂で後半になるとドライブで抜き去りまくりました。3Qに再び33点取った日本ですが、稼いでいるのは3Pだけど効いているのは赤穂のプレーでした。これでナイジェリアは出てこれなくなった感じ。

前半から赤穂はポジショニングが秀逸で「オフボールの動きとタイミング」で、このチームのキーマンに見えました。逆サイドにボールが動いたときに、エンドラインに飛び込んでフリーになったり、ハンドオフからスピード突破したり。アウトサイドにいるはずが、気が付いたらエンドラインを抜けている。スペースを見つけるのが上手い。

前半の途中でホーバスは「赤穂が色々できるからOK」な戦い方にも見えました。加えて言うと、途中で1ガード、4ウイングにしたいくらいナイジェリアの高さとフィジカルには困っており、「スピードで勝ちに行く」よりも「高さとフィジカルに負けない」を重視したような戦いぶりでした。

逆に言えばナイジェリアが日本に負けていても、日本のスピードに合わせることが出来なかったんだよね・・・今時スピード対応のオプションがないなんて男子ではちょっとね。

さて、赤穂についてはそういえばWリーグのファイナルを見た時に「このサイズでポイントガードを守り切れてしまうから、スイッチ誘導を無効化している」という感想を持っていたことを思い出しました。そしたら2年前のホーバスのインタビューでも、こんなことが書いてありました。

自信を得た新しいひまわりは、スコッティ・ピッペンみたいだ。鉄壁のディフェンス、リバウンドに強く、ゴール下でフィニッシュできる。また、ここ一番で得点できる勝負強さもあり、様々な面でチームに貢献してくれる。ひまわりの存在は、守備におけるスイッチでも重要だ。ミスマッチが大きく減ったし、逆に日本が高さで優位に立つミスマッチも作り出せる。大きくて速く動ける彼女のような180cm以上の大型ガードは、チームにとって重要な存在だ。

「スコッティ・ピッペン」は本当にそう。スペシャルな便利屋。

3Pを決めまくった日本の中で赤穂は3Pは1本もなく、それでも12点を稼ぐし、今日もチームハイの7リバウンドでした。日本のリバウンドを支えているのが赤穂。オフェンスでも素晴らしい飛び込みリバウンドを見せ、タイミングの計り方が頭一つ抜けています。たぶん、世界レベルで見ても、ここまでタイミングの良い選手はトップクラスだと思う。多分。

そして「スペースを埋める感覚」が強く、誰よりも早くスペースを見つけ、そこに飛び込んでいくスピードがあります。インサイドがボックスアウトで対人のリバウンドさえ確保しておけば、落ちてくるボールに一番早く飛びつける赤穂がいるので、10センチくらいの差なんて関係ないって感じでした。

ということで3P決めまくった試合で、最も目立ったのは3Pを決めなかった22歳185cmの赤穂ひまわりでした。0点の町田と3P以外で攻め切った赤穂。どっちかというとこの2人の方が大事なんだよね。

◎東藤

んー、でも赤穂の代役がいないから大変だよなー。という4Qで東藤が見せたプレーも圧巻。ある意味で「185cmあって動ける」赤穂はわかりやすいモンスター。でも東藤の場合は174cmの20歳なので、一般的には普通ではないけど、バスケの世界では普通。NBAなら190cmくらいの感覚かな。

当然スピードはあるのですが、東藤の場合は20センチ負けている相手にも戦えるフィジカルがありました。ナチュラルフィジカルなタイプだろうね。といってもフィジカルで戦うわけじゃなくて、スピードで対処し、コンタクトされても身体がブレないから負けない感じ。

これでナイジェリアがインサイドに入れてくるパスを何度も奪っていました。10分で3スティールしているぜ。サイズ関係なくマークマンを受け持てそうなので、マーカス・スマート?あんな岩じゃないしなぁ。

根本にあるのが足腰の強さでとにかくブレない。体幹と足腰と両方強いから、どこにでも顔を出し、コンタクトしながらボールを奪っていた。ナイジェリア戦は4Qがフルベンチメンバーだったので、よりビッグマンに困りそうでしたが、それ故に東藤が目立ちまくりました。ビッグマンにボールを入れられそうになると飛んでくる東藤。非常に面白い素材。

そして赤穂同様に鋭い切り返しでドライブを決めており、3P以外は非常に面白かったです。まだ20歳だけどWリーグでは豊田紡績のエースとして躍進させたんだってさ。本橋も東藤もWリーグの強豪にいないからこその良さがありました。コマの1つじゃなくて、1人でやりまくれる能力が必要になるチームの方が個人は伸びるよね。

https://www.wjbl.org/standings/

今回のメンバーではトヨタ、デンソー、富士通、ENEOS以外から選ばれているのが本橋と東藤なのですが、こういう選手がいた方が良いことを示していたのでした。まぁ男子の場合はウィザーズとラプターズがいるからBリーグの弱いチームから選ぶ意味もないだろうけど。

ということで22歳の赤穂と20歳の東藤。2人ともスピードで勝り、フィジカルや高さで負けない戦い方に適した選手でした。28年のロスオリンピックまでは、何の問題もなくキーマンを確保できる様子です。そういやステファニーもいるな。ベーシックラインの枠外にいる選手達は、想像を超えてくるから大事です。

◎普通に勝ったね

今日の感想はこれかな。序盤に抜け出したとはいえ、ナイジェリアの高さには苦労していたんだけど、もう普通に勝った。同じことを続けていればOKな勝ち方。

男子はスペイン、スロベニア、アルゼンチンそれぞれに善戦しながらも、後半に置いてかれたわけですが、あれも勝つ匂いはしなかったわけで「普通に負けた」わけです。まるで逆の勝ち方をしたのが印象的でした。フランスに勝ったのはこんな感じではないよ。

しかし1位通過は出来なかったのでトーナメントは強い相手になることが想定されます。どっちにしてもノックアウトラウンドになり、アメリカとは当たりません。あと3つ勝てば金メダル。どこまでいけるかね?

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