さようならセルティックスとブラッド・スティーブンス

セルティックス’21

今シーズンのセルティックスを一言で表すと

ブラッド・スティーブンスのチームではなくなった

これに尽きますが、衝撃的なことに敗退から一夜明け、ダニー・エインジが社長を退き、ブラッド・スティーブンスはHCから後任に収まることになりました。本当にブラッド・スティーブンスのチームではなくなることに。天才HCがいたからこそ、今のセルツの成功があるだけに、かなりの衝撃的人事でした。

しかし、本人はバブルの頃から考えていたとのことで、チームの限界を感じていたのかもしれません。保険の外交員からバトラー大のHCとして2年連続でNCAAファイナルに進み、セルティックスを復活させた男は、意外にもHC職以外の道に進むことを選びました。

それは今シーズンに対する様々な憶測・邪推の必要がないことを示します。間違いなく何かしらの問題があったという事であり、セルティックスに感じていた違和感は正しく、そしてHC本人が最も悩んでいたとみるのが普通です。だからそこには触れずに進みましょう。

◎主役はテイタム

得点 23.4 → 26.4
FG 45.0%→ 45.9%
3P 40.3%→ 38.6%

主役の座はHCからテイタムに完全移行されました。プレーオフも含めると3試合で50点を超える爆発力を武器にエースとして奮闘させ、逆に1ケタ得点も3試合と不安定なエースでもありました。

テイタムと共に心中する戦い方はHCのイメージとはかけ離れているし、そのテイタムと心中するにも、チームオフェンスの効率性は上がりませんでした。エースを信じて戦うのみ、という構図でしたが、プレーオフになるとその問題点は明らかで、ほぼ対策をしてこないネッツ相手でさえ「テイタムにマークが集中したら終わり」という感じでした。

そして爆発力が重要だった理由として、ショートレンジのショートが上手くないことも挙げられます。3P能力は高く、ミドルレンジも決まることからアウトサイドのジャンプシュートが決まればハイスコアになるのですが、逆にドライブすると微妙なので「ディフェンスを収縮させてキックアウト」のキックアウト以上に収縮させる段階で怖さが足りなかった気もします。

3P多用はドンチッチにも似ているけどね。その先にあるスキルが足りていなかったし、やっぱりハンドラーとしてドライブさせると、得点力にもパス能力にも課題があり、逆にウイングでキャッチ&3P中心にしていると、ドライブしてもヘルプが少ないから決めきってくれる・・・気がする。それがルーキーシーズンだったし。

ハンドラーよりもウイングの方が向いているし、タフショットを決めきる能力もあるからキックアウト先にいた方が安定した能力を発揮する選手だと思います。もっと使い方があるだろうし、何よりもブラッド・スティーブンス自身がこういう使い方を好まないHCだろうと。

なんて言っても仕方がない。チームはテイタム中心に動いていく事だけは間違いなく、「テイタムの能力を最大限生かしきる戦術」にするか「テイタムから始まるオフェンス戦術」にするか、特に後者の場合はロスターの大改革が必要です。

◎整わないコンディション

ただジェイレン・ブラウン、ケンバ、スマートと豪華メンバーであることに変わりはなく、そもそもテイタムに頼る必要はなかったのですが、とにかくコンディション不良が目立つシーズンでした。

テイタムもコロナの後遺症に悩んでいましたが、それは他のチームも同じ。ただ、昨シーズンにカンファレンスファイナルまで進んだ疲労は強く、これは他の3チームも苦しんでいました。どうしてもリフレッシュできないままシーズンを過ごしてしまったことが、チームとしての不安定さに繋がっていました。

そしてこの問題はテイタムの件と関連して、コンビネーションを構築できない問題として大きく立ちふさがりました。酷かったラプターズなんかもいるし、セルティックスがとびぬけて悪かったわけではなく、みんな苦しかったね。

ケンバ、ブラウン、テイタム、トリスタン、タイス

このユニットが開幕当初でしたが、12試合131分しかプレーしていません。しかも131分でチーム最長のユニットです。トレードがあったとはいえ、タイスは42試合も出場しており、1/3もフルメンバーは揃わなかったわけです。

100分を超えたのは他にケンバ、スマート、ブラウン、テイタム、ロバートの組み合わせのみ。しかもプレーオフにはスマートとテイタムしか残らなかったわけで、さすがにこの状況で勝つには難しいものがありました。

テイタムに頼ったことは苦肉の策という面もあり、来シーズンも同じとは限りません。すっかり1年で評価が逆転したケンバが復活すれば済む部分も大きく、考え方はいろいろ。ただ、主力以外のメンバー構成がブラッド・スティーブンス的には厳しかった気もします。

◎足りないオプション

1年前のプレーオフの敗退時に感じたことは「ホーフォードがいれば」ということでした。もちろん良い選手なのでいるに越したことはありませんが、今シーズンになってその理由はさらにハッキリしてきた気がします。

ブラッド・スティーブンスが起こすマジックは様々で、前半にボッコボコにされていたのに、1つ2つの修正で後半に一気に逆転してしまったり、クラッチタイムにエース以外のシュートを選択して決めまくって劇的な勝利を重ねたりと、戦略面でもモチベーションでも、いろいろありましたが、そもそもが「マジック」なので普通に戻っただけ。しかし、「何故、出来なくなったのか」と不思議な能力もあって

勝てるマッチアップを有効活用する眼力

これでした。明らかな差があるならもちろんですが、「えっそこで勝てるの?」みたいなギリギリのラインを見極めてきます。今シーズンも豪華メンバーなのだから、発見できても良かったはずですが、どうしてもそれが出来ませんでした。

理由も色々でしょうが、ホーフォードのような万能型のセンターがいないことで、「マッチアップミスを誘導しにくくなった」ことも影響しています。それぞれの役割が明確だからディフェンスが迷う必要もなかった。タイスはピック&ロールからダイブもするし、3Pもあるセンターですが、マッチアップの優位性で個人技は出来ないので、例えばケンバとピック&ロールをしてのノーマルなスピードのミスマッチくらいしか用意できていませんでした。

それって他のチームからしても「想定されるミスマッチ誘導」なので、ある程度の準備はあるのだろうなーとね。でもブラッド・スティーブンスの能力は、こういうわかりやすいものではなく「これで勝てるのか」のマッチアップを見つけることであり、正面衝突で上回れるからディフェンスとしても想定外。

そう全体的にセルティックスらしくなかったことはマジックが発動しなかったことであり、それはセルティックス自身よりも

相手に想定外の事態を起こせなかった

「天才」ブラッド・スティーブンスを「天才だった」と過去形にしてしまう理由はここかもしれません。ついでにいえばスマートが目立たなかったのもこれなきがします。ヒートとは違う意味でセルティックスも「普通」になってしまった。マジックが起きない理由は「普通の戦い方で、普通にエースの爆発」で勝っていたから。

でも、この考え方で行くと「これで勝てるのか」のマッチアップが作れなかった理由も必要ですが、そういえばセルティックスのベンチメンバーを見た時に、オプション的に1on1を出来そうな選手がいません

ブラッド・スティーブンスはガード過多のロスターを好みますが、それぞれが一定のハンドリングスキルを持ち合わせているから、ギリギリ勝てるマッチアップでの勝負が出来ました。今シーズンはベンチからオプションで働けるのはプリチャードくらい。ティーグは「普通」を選びがちって事もあってね。

オプションになれる個人技が足りなかった

2年前だとホーフォードがいたスターターだけでなく、ベンチからヘイワード、ブラウン、ロジアー、ついでにべインズが出てきていたもんね。結局は豪華メンバーで勝つって事になるのかもしれないけどさ。

トリスタン、ロバート、グラント、オジェレイ、ラングフォード、ニスミスとみんな活躍するし、役割があるけど、ここでいうオプションとは違うんだよね。そういえばゲーム5でジャバリが活躍したけど、その方がブラッド・スティーブンスらしかったのかな。

ここ数年のセルティックスの成功要因は過去のネッツとのトレードで得た上位指名権が大きくスマート、ロジアー、ブラウン、スマートと実力ある若手が安いサラリーでいて、ホーフォード、アービング、ヘイワード、ケンバと高いサラリーの選手を同時に抱えていた事でした。発展途上の若手たちは個人技でも攻めることが出来る選手だったのでオプションとして機能していましたが、最近はグラントのような若手を加えていたことが響いているのかもしれません。

◎ズレたロスターとトレード

・テイタムのハンドラー化が進んだこと
・選手が揃う試合が少なかったこと
・オプションで個人技を出来る選手が少なかったこと

テイタムの件はかなりネガティブに観ているのですが、こうして考え直してみると違う事実も感じ始めました。ケガ人が多い中でハンドラーの役割をこなせる選手が足りず、ウイングやらせておきたいテイタムがハンドラーへと進んでいったということ。

もしもヘイワードがいたら・・・それは戦力的な部分だけでなく、ハンドラーが足りない時はハンドラーに、ウイングが足りない時はウイングにと、足りないポジションを補ってくれるから、ここまでテイタムがハンドラー化はしなかったかもしれません。

開幕からタイスとトリスタンを並べる謎のツービッグを選んでいたブラッド・スティーブンスですが、こうなれば当然テイタムはハンドラーになっていくしかありませんでした。そもそもハンドラーが多い戦術だからね。

〇デッドラインのトレード

【OUT】
タイス、ティーグ、ジャボンテ・グリーン

【IN】
フォーニエ、ワグナー、コーネット(ジャバリ)

デッドラインのトレードをみるとサラリー調整などがあったとはいえ、ハンドラーのティーグを放出し、シューター系統の選手を手に入れています。実質的にセンター陣は特に意味はなかったですが、考え方として

ハンドラーのテイタムに合うシューターを増やした

ってことになります。まだトリスタンとロバートが被っているし、グラントをどうするんだ問題なんかがあるのですが、ラングフォードやニスミスが起用されたことも、前述のブラッド・スティーブンスらしいオプション攻撃をやめ、テイタム中心の形に振り切った気がしています。

エース中心の普通の構成になったから、エースを助けるロールプレイヤーで構築したい

こんな事情があった気がします。ただし、ブラッド・スティーブンスがシーズン後に辞めたことも含めて「HCの目指す戦術とは方向性が異なる」のは事実なので、なーんか微妙な匂いがしていましたね。

単純にテイタムのパス能力にも問題がありますが、オフェンスとしても「流れるような連携」を作れていなかったので、ブラッド・スティーブンスの能力も問われるし、交代策で違いを作るのも難しかった。

◎どっちに進むのか

他にもディフェンス問題があるのですが、そこは気が向いたら別件でテイタム特集をやります。基本的にはデュラントやレナード方面になれば良いタイプですが、どうもレブロンやドンチッチ側に進みたそうなので、ディフェンス的にもポジション迷子。

さて、HC交代になったことで「エース中心の普通のチーム」に進むことも可能です。誰がいいかって?知らないけどさ。まずは色々と戦力を整理しないといけません。

【主役】
ブラウン、スマート、ケンバ

【わき役①】
ロバート、トリスタン、グラント

【わき役②】
プリチャード、ラングフォード、エドワーズ、ニスミス

契約下にあるのは、概ねこれらの選手達ですが、どうみてもシューターが足りません。一方でビッグマンが3人いて、3P37%決めているグラント以外はインサイド専任です。積極的にシューティングの良い選手を集めるか、ディフェンス優先でスポットで決めてくれる選手を求めるかです。

わき役②もプリチャードとエドワーズがアウトサイドで打つテイタムのようなタイプだと思えば、テイタムの控え的に考えられます。でも個人で得点させるには弱いし、逆にシューターなら他の選手を連れてきたい気持ちも出てきます。ラングフォートとニスミスならスポットシューターの3&Dタイプとして働けそうです。

テイタムにパス能力があればスポットタイプで十分ですが、ちょっと厳しい。厳しいけど、テイタムのパスを伸ばす、という手段もあります。そっちの方が現行メンバーに合っているのも厄介で、ブッカーみたいに上手くなることを信じたい気持ちもあります。でも、伸びる気がしないなら、そこそこメンバーを入れ替えないといけません。

あくまでもスマートがPGで操っていく方がベターに見えるし、ダンカン・ロビンソンやマグダーモッドがFAなので、動き回るシューターを加えてもよいはずです。ただ、今度はそうなると「本当にブラウンとのコンビでいいのか」なんてクエスチョンも出てきます。

なお、これはクリッパーズが悪いです。ウイング2枚エースにハンドラーもやらせると、いいのか悪いのか不安になってしまう。プレーメイカーを加えて、ウイングを生かす方法がベターに見えるし、そういうHCを連れて来るべきです。

ハンドラー(テイタム)からの展開を前提にしたロスター
   or
ウイングエース(テイタム)へと効果的に展開できるロスター

後者なら主役たちはそこまで手を付けずにいけるし、ケンバの処理に失敗しても大丈夫です。ブラウンとのコンビの強みも生かせそう。しかし前者ならケンバとスマートの必要性が微妙なので何らかのトレードが必要。でもケンバよりもブラウンを放出したほうが、かなりの見返りを期待できるので、大きな変動も出来るかもしれません。誰かってのは考えるとめんどいのでここでは触れない。極論はADを加えるってことね。もちろん、それはムリだけど、それくらいのインパクトある動きってことです。

つまりセルティックスはテイタムの役割が動いているので、目指す方向性を決め、ロスターを変更し、相応しいコーチ陣を選ぶ、ということで、かなりミッションの多いオフになります。それがブラッド・スティーブンス社長のお仕事です。

◎1年遅かった

ブラッド・スティーブンスが咲くシーン末から考えていたように、1年遅い再構築になってしまいました。とはいえ、ケガ人が多かったことが最大の問題であり、プレーオフにブラウンもケンバもいなかったので、どっちにしても勝ち進むのは難しかったです。だから、前を向くしかない。

ただ、昨オフだと1巡目が3つもあっただけに、もっと動きやすかった。今のメンバーだとトレードするのに一苦労って感じです。テイタムのスーパーマックス契約が始まることもあって、サラリーもいっぱい一杯。かなり上手に振舞わないとトレードも大変です。

新社長がHC時代のようにマジックを披露してくれるのかどうか。

ドラフト3位ながらルーキーシーズンから強豪チームの一員として戦ってきたテイタムは、いよいよ自分が勝たせないといけない時期に入ってきます。1年目からそんな状況でエースを担ってきたドノバン・ミッチェル、ドンチッチ、ヤング、そしてモラントが活躍しているプレーオフ。あるいは長く苦しみながら奮闘して成長を続けてレブロンに勝ったブッカー。彼らとは違う道を歩んできたテイタムが、時間を戻してベーシックな戦い方を学ばないといけないのかもしれません。天才の弊害もあるかもね。

◎余談

次回はブレイザーズ編ですが、テリー・ストッツは「リラードを信じ、リラード中心のオフェンスをを作り上げた」HCなので、テイタム中心で行くなら向いているHCだと思います。今シーズンの内容くらいにテイタムばかりになるなら、ロールプレイヤーにも役割定義してくれるHCは向いている。

また、トレードしない前提でもセンターにはFAで、いろんな改革を考えやすい人材がいます。先に誰を獲得できるかでHC選びも変わってくるかもしれません。

【ストレッチタイプ】
イバカ、ブルック・ロペス、タイス(笑)、ザック・コリンズ

【ポイントセンタータイプ】
ドラモンド、カズンズ、ジャイルズ

他にもホルムズやジャレット・アレンなんかがいますが、そこはトリスタン・トンプソンを信じるかどうか。個人的には信じられない。また、ポイントセンターにすれば、いろいろと便利なのでテイタムの同級生だったジャイルズなんかはサラリーも安くて影響力も大きすぎず、エースも満足なので進めやすい気がします。ドラモンドはレイカーズよりもセルティックスの方が向いていると思うし。

ブラウンを出すならジョン・コリンズだって獲得できるし、更に幅は広がります。だからブラッド・スティーブンスが「何が一番の問題だったか」を知ることにも繋がって面白いオフになりそうです。

さようならセルティックスとブラッド・スティーブンス” への4件のフィードバック

  1. 1年目からクラッチワンオン丸投げだったドノバンがここまで成長したのが感慨深いです。
    スター候補生は場数さえ踏ませれば信じられないほど成長しますね。
    目立つのはテイタムだけど、堅実なのはブラウンなので、この記事の前提(テイタム中心で考えている事)自体が怪しいな~とは思います。
    そういうのも含めて新社長の選択が楽しみですね。

    1. そうですね。ウイングエースにテイタムを持って行くのは、テイタム中心だけど他の選手も生かすって事なので、そっちに進むべきだと思います。
      ポイントセンターを連れてきたら、その方向性ですが、シューター型を連れてきたら・・・ってことで社長が初めに何をするか楽しみです。

  2. 潤滑油的な選手の不在がオフェンスの単調さに繋がったと思うんですよね。勿論ホーの存在もそうですし、ヘイワードもそうですよね。ヘイワードなんかは確かハイポにもスッと入ってくる事もあったりと空いたスポットを活用してくれる選手でしたよね。マブスとかに足りないのもそれだと思ってます。ドンチャンにダブルマークが来てもボバンにポン入れ以外の選択肢が無い。後は5アウトで外から打つだけ。
    今シーズンは全体的に2ビッグとスモールに別れた気もしますがその間のバランス型が本来強かったと思ってましたがどうなんでしょう。ここ2.3年で躍進したチームには共通していたとは思うんですよね。ヨキッチ、ホー、アデバヨ等。セルティックスは地味に3&Dも居ないような感じですよね、ITがエースでチームが躍進した時はクラウダーなんかが居ました。似たような選手ばかりでそれもフィニッシャータイプなので手持ちのラジコンセンター達も活かしきれてませんでしたし。結果的にはこれだけテイタム任せならケンバよりPGらしさのあるガードで良かったと思います。
    ホーのいた時の七色のセットオフェンスに魅了されていただけにこの2年の単調さは残念でした。

    1. ラプターズから5人全員が複数の役割を果たしつつ、それぞれのポジションの強みも使う形になっていますよね。
      セルティックスもスモール好きでも、いろんな形を使っていたはずが、エース・テイタムが増えすぎました

      ただ、ホーフォードの件は、結局はホーフォードの個人能力になってしまうのかなーという矛盾というか、個人技頼みは同じって事になってしまい、再び同じタイプの選手を探すしかないですよね。長く考えるならジャイルズあたりを試すって事になるのかと。

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