さようならヒート’21

まさか初めにヒートを書くことになるとは思いもしませんでした。イーストのファーストラウンドで最も注目されたカードはスイープという結果に終わり、ヒートのオフシーズンが幕をあけました。このオフにはチームオプションの選手が多く、『リセット』か『継続』かをチョイスできるわけですが、スイープという結果は、ほぼ間違いなく『リセット』に進むこととなります。

この「さようならシリーズ」は真面目に考えると、準備に時間がかかるのですが、プレーオフで忙しいし、勢いで書いてしまいましょう。ちなみに収益的な問題とテーマに応じた相互にするために「ちゃんとしたヤツはライブスタイルでやりたいなー」なんて思っているのですが、全く何も進んでいないのでノープランです。

まぁなんにせよ。負けた直後に殴り書き編です。スイープの要因を洗い出し、シーズンの何が問題だったのか、ざっくりと振り返ってみましょう。オフの話はしない。

◎必殺ゾーンが効かない

バックス相手にしたディフェンスとしてはヤニスに対してはしっかりと対応し、ミドルトンは変態タフショットだったので、総合で80点くらいつけられるものでした。だから、問題はオフェンスなのですが、先にディフェンスだけ触れると

必殺ゾーンが通用しなかった

これは地味に大きな敗因で、点が取れない時の「ディフェンスからの速攻」になりませんでした。昨シーズンはバトラー+クラウダー(デリック・ジョーンズ)を2-3の2にすることで、スティール狙いが機能したのですが、それが出来ませんでした。

またゲーム4では積極的にゾーンにして速攻を打ち出しはしたものの、むしろ2-3の「3」の問題を利用されて失点しました。真ん中のアデバヨは強力だけど、ドラギッチ、ダンカン、ヒーローあたりが並ぶ両サイドはフィジカルに弱く、その代わり運動量でコーナーまで出れるのが強みでした。

バックスはハイポストにヤニスを配置すると、エンドライン担当にブルックを持ってきて、徹底的にハイ&ローで攻略してきました。驚くべきはヤニスがものすごく的確にアデバヨと相対しながらパスを出したことで、3Pラインの外にいることが多いブルックもエンドラインにポジショニングすることで密着されず、ヤニスがボールを持った瞬間に内側のポジションを取りました。

その後、コーナーからフォーブスが3Pを連発しており、2-3の「3」はフィジカルの弱さを狙われた挙句、コーナーに間に合わなくなって粉砕されたのです。

つまり、バックスは「徹底したゾーン攻略」を準備していたわけなので、ゾーンは全く効かなかったといっても過言ではありません。これもまたシーズンを振り返る時に大きな課題だったといえます。

1年前と同じゾーンじゃん

これね。結果的にオフェンス面も含めて去年と同じだからバックスだって同じように負けるわけにはいかなった。そういえばカリー&ドレイモンドがダブルチーム作戦を攻略できなかった件について

リーグを席巻していたチームなのに、たった2年で戦術に追いつけなくなるなんて、あり得るんでしょうか?

こんな感じの質問が来ていましたが、1年前にファイナルに進んだヒートが「進化しなかったから粉砕された」ってことになったわけで、NBAとは怖いリーグなのです。

◎オフェンス

まずプレーオフにおけるチーム全体の数字をシーズンと比較してみましょう。

〇4試合平均とシーズン平均
得点 98.0 (108.1)
FG 39.5%(46.8%)
3P 33.6%(35.8%)
アシスト 21.5(26.3)
リバウンド 42.3(41.5)
ターンオーバー 14.0(14.1)

一番気になるのは「アシストが少なく、得点力が大きく落ちた」という部分です。FG成功率も悪いのですが、3Pはまぁ誤差の範囲かな。一方で守られたといってもターンオーバーは変わっておらず、問題点は2つに絞られます。

連携を遮断された
2Pが決まらなかった

これに尽きますが、内容的にはバトラーとアデバヨが1on1の状況で勝てず、それが周囲のチャンスに繋がらなかったので、概ね2人の問題です。もちろん、それだけではなくドラギッチが通用しなかったことや、イグダラを重視しなかったこと、そしてインサイドフィニッシャーが足りなかったこと等あるのですが、まずはエース2人から触れていきましょう。

◎アデバヨ

バックスのアデバヨ対策は「ミドルレンジは放置し、ゴール下だけは分厚く塞ぐ」でした。これをすることで、ブルックが余り、常にリムプロテクターとして活動できたことで、単にアデバヨを止めるだけでなく、ヒート全体の2Pを減らしています。

〇ブルック・ロペス
1.3ブロック
2Pコンテスト 19.0

ブロックはそこそこですが、2Pに対してチェックに行ったコンテスト数19は驚異のスタッツです。そもそもシーズン中もリーグ最多だったブルックなのですが、それでも13.4回です。10回以上を記録しているのがゴベア、パートル、ターナーの4人しかいないので、イメージとしてはリバウンド数みたいなものです。平均19リバウンドだと思えば、恐ろしい数字でしょ。

ヒートが点を取れなかった最大の理由はブルックのリムプロテクト
それを可能にしたのが、ゴール下から引き出せなかったアデバヨのプレー

これにDPOYの高速ヘルプ担当ヤニスまでいるチームなので、手に負えませんでした。インサイドで負けないためにはアデバヨがブルックを圧倒するのは最低条件でした。ちなみに1年前は13.2だったので、明確に今回のプレーオフでブルックが優位に立ちました。

元々アデバヨは自分で打つよりもチームメイトを生かすことを優先し、それがヒートにリズムをもたらすのですが、ここまであからさまにやられると、アデバヨが行くべきでした。ちなみに確率的にもチームメイトが決まっていないから、なおさらでした。

振り返ってみるとバックスが1年前にやっていても良かった対策ですが、言い換えれば1年前の分析と同じ対策を獲ればOKということでした。ゾーン同様にアデバヨも進化していないとジャッジされたかもしれません。

ただ、アデバヨはモンスターな身体能力のイメージとパス優先のスタイルから「シュートが下手」と思われていますが、実際はそんなことありません。リングから8ftのショートレンジはもちろん、16ft以内のショートとミドルの中間くらいの距離でのジャンプシュートは、1年前から進化しているのですが、とにかく決まらなかった今回のプレーオフ。

見事にバックスの策にハマってしまったアデバヨですが、それは何故なのか。「あまりにも空いていた」ことがシュートへの迷いを生んでいました。チームプレーから入りたがるアデバヨの手法を大胆についてきたバックスだったといえますし、ゲーム1の時はここまであからさまではなかったので、決まらないから離していったのも事実です。

もしもアデバヨが「シュートが苦手」ならば、それはもうトレーニングを積むしかありませんが、実際にはリーグ平均以上に決められるわけで、むしろ積極性に欠けている事や、外した時のマイナスイメージから恐れすぎたといえます。だから

足りなかったのは「エースの自覚」

ってことになります。最近のモラントをみれば、アデバヨが物足りなく見えてきますね。とにかくバックスが連携を消したがっているのだから、自分からアグレッシブに打ちに行くべきでした。それが出来なかったのは普段からやっていないからであり、1回外したら次は打たなくなるチームオフェンス重視の姿勢にあります。

本当はアデバヨがやれば、なんでもチームの責任として良いくらいの存在なんだけどね。自分がエースならそんな覚悟で打っていたはずです。

もうひとつ問題があるのは、同じことがゲーム4の前半まで続いたことです。ここに関しては本人ではなくスポルストラが「外れてもアグレッシブに打て」と指示をだせば、もっと早く解決していたわけです。しかもゲーム2からは大差で負けているのだから、負けゲームで打たせ続けてリズムを掴ませることも出来たはず。

スポルストラも個人で攻め切ることを要求しなかった

だから、この問題はアデバヨ本人の問題である以上に、チームとしての問題でもあります。もっとアデバヨをエースとして捉え、アデバヨと心中する気持ちで戦うべきでした。これがシーズン全体の問題にもなってきます。

ケガで出場しなかったオラディポがいれば違う展開だった可能性もあるシリーズですが、逆に言えばオラディポの獲得は「エース・アデバヨへの期待の小ささ」でもあります。ヒートがステップアップできなかった理由がここにある気がするのでした。

◎バトラー

ゲーム1では止められていたものの、同点となるブザービーターレイアップを、ヤニス相手の1on1で決め、一時的な不調はあってもカムバックしてくると思われたバトラーですが、結局は酷い成績に終わりました。

〇バトラー
得点 14.5点
FG 29.7%
3P 26.7%
アシスト 7.0

完膚なきまでに叩きのめされたバトラーですが、一番苦しかったのはPJタッカーに止められたことです。「ディフェンスが良い」というイメージとは違い、そこまで1on1を守るのは得意ではなく、特にスピード突破に弱いタッカーなのですが、バトラーが苦手とするタイプらしく、完封されたといってもいいくらいです。

とにかくバトラーはプレーパターンを読み切られていました。ディフェンスの外から打つシュートへはあまりブロックに来ず、プルアップ3Pを打ち切れないことを読み切られていました。また、ドライブ時もゴール下でブルックが待ち構えていれば「打てないと見るや、変なところで止まるクセ」を読み切られ、止まった瞬間に追い込まれ、周囲へのマークが強まるからパスを出す先がないケースが多発していました。

ホリデーに止められた、のであれば、大したことないですが、誰がマークに来ても止められていたのは、バックスの対策が大幅に上回っていたことを示します。

バトラーのプレーはバックスに読み切られていた

ゲーム4ではピック&ロールが少し増えて、打開できそうな空気もありましたが、それはそれだけプレーパターンが少なかったことも示しています。FG30%にも届かないのは「不調」では済まされないし、「個人が負けた」レベルでもありません。ってことで、それはまるでヤニスのように追い込まれたわけでして、バックスからすると

ヤニスを止める?
バトラーの方が簡単に止められるぞ!

こんなことを突き付けられました。これって言い換えれば、例えヒートがヤニスを止めても「エース対決ではヤニスの大勝利」に持ち込まれています。そう考えると、バックスがヤニスの個人技でアタックしていた意味も変わってきます。だって同じようにエースがアタックしていたら勝てるって事だもん。多少ヤニスが止められようが関係ないよね。バトラーよりは優位なんだもん。

その上でヤニスはゴール下での強みはもちろん、ゾーン攻略の役割は見事にこなしていたので、力押しではない部分も持ち合わせていました。これもバックスによるヒート対策だ。

ってことで、実はバトラーの件は個人の問題ではなく、バックスがチームとしてヒートに勝てる計算が成立することを示していたのでした。アデバヨは完全に空けられていたので、決めるかどうかの勝負ですが、バトラーは複数のマークマンに1on1で止められるから、バックスのゲームプランの勝利です。

これに加えて7アシストを記録したものの、ヒートオフェンスにも疑問を投げかけました。

バトラーが個人で止められたらオフェンスにならないだろ!

チーム戦術で圧倒的にヒートが上回っていると思っていたけど、結果を見れば違ったよね。バトラーが点を取れなきゃどうにもならないんだもん。それはオラディポがいても「オラディポに頼る」ってだけだから、何も変わらない。

チームオフェンスのヒート
 vs
個人技のバックス

このイメージのシリーズでしたし、管理人もそう思っていましたが、現実はバトラーさえ止めてしまえば、ヒートはチームオフェンスが出来ないのでした。ゲーム1から止められていたバトラーが、ゲーム4になっても打開できないのだから、それはチームの完敗。

この点については、今シーズンのヒートを考えれば、そりゃそうかなって感じです。昨シーズンは面白いから記事を書きまくりましたが、今シーズンは何も書く気にならなかったもんね。

昨シーズンの成功が、そのまま通じると勘違いしているだろ

なんていうか、ブーデンフォルツァーが考えていたのはそういうことだったのかもしれません。ヒートはバトラー中心で、むしろ昨シーズンよりもバトラー中心になっていて、戦術的に進化していないんだから、通用するわけないだろ。とね。

アデバヨよりも根が深いバトラー問題。パット・ライリーはこのままじゃダメだと感じていたからトレードに動いたわけですが、全く解決しませんでした。オラディポがいないこと、ヒーローが活躍できなかったこと、いろいろあるけど、固定化されてしまったオフェンスは、オフに大きく変革しないといけません。

◎その他

今回のプレーオフはほぼバトラー問題に集約される気がしています。だからそれ以外はまとめて紹介していきましょう。

〇バトラーのパス数
シーズン 54.9
プレーオフ 65.3

とかいいながらバトラーの件ですが、パスがシーズンよりも10本も増えており、それだけボールに絡んでしまいました。結果としてチームのアシストが激減しているので、ボールをもたせすぎました。

〇ドラギッチ
16.0点
FG42.6%
3P34.6%
2.8アシスト

問題を改善するためにゲーム3でスターターになったドラギッチですが、解決できませんでした。ただ、それでもチームハイの16点を奪っており、FG成功率も納得の範囲です。スーパーなプレーは出来なかったけど、ドラギッチ自身は一定の活躍をしたことになります。

〇ダンカン・ロビンソン
10.3点
3P37・0%

ゲーム1の24点が大きかっただけとはいえ、ダンカンの怖さはバックスに十分伝わっており、プレーレベルは通常通りだったと思います。むしろチームメイトがダンカンを使いこなせなかったようなプレーだったので、こちらも及第点だと思います。欲はいいたくなるけどね。

〇ナン
10.3点
FG39.5%
3P27.8%

ナンは逆にゲーム2のFGが悪かっただけで、こちらも及第点程度です。まぁダンカンよりは物足りないけど、仕方ないじゃん。得点はゲーム4が多かったってのもありまして、もう少し安定性が欲しいですが、そもそも安定はあまりない選手。

〇アリーザ
4.8点
3P29.4%

アリーザはゲーム2と3で無得点だったこともあり、こちらは完全に「物足りない」です。ディフェンダーだからって許される数字ではないし、なによりもディフェンスからの速攻を作って欲しかった。

3Pはパスが来ないから打てないのは仕方ないけど、そんな時に他のパターンも出来るのがアリーザの良さだったので、結局はプレーオフになってから、ここ数年の衰えを感じさせてしまいました。かつてのロケッツはチームが悪い時に、アリーザの得点が多かったのにね。

〇ヒーロー
9.3点
FG31.6%
3P31.6%
1.8アシスト

ヒーローは「失格」です。昨シーズンのプレーオフで魅せた姿から、かなりバージョンダウンしました。バトラーがダメで、ヒーローもダメなことはヒートオフェンスを困らせまくったことに。ヒーローはわりと自分の仕掛けからオープンになって打ったので、そこまでバックスに警戒されていたわけでなかっただけに、決めきるチャンスはあったはず。

ただ、ヒーローについてはシーズン後半を考えると予想された結果でもあります。シーズンを通してヒーローに何をさせ、どうやって伸ばしたかったのか。オラディポの獲得も含めて、成長プランが足りなかったのでした。

そんなわけで、割とロールプレイヤーに関しては及第点で、中心選手がしっかりと結果を残せば、スイープはなかった気がします。そもそもヒーロー以外は、チームオフェンスの中で相乗効果で力を発揮するわけなので、「バトラーが止められたら崩壊してしまう」のが大問題って事です。ファイナルまで進んだことで存在感が強くなりすぎており、スポルストラが「手を変え品を変え」が得意だった自分自身の良さを思い出さないと、行けなかったのでした。

手を変えず、品を変えられず、バトラーに託しすぎたヒート

シボドーからしたら「これで成功しないなんてありえない」というかもしれませんが、HCの特性に合わせてやるべきことも変わるしね。少なくとも昨シーズンのヒートは、こんなにバトラーのチームではありませんでした。そもそも個人の力で勝たせるという点で、ヤニスとは大きな差があるし、チームがあってバトラーがいるスタンスに戻さないと厳しいです。

◎短かったオフとシーズン序盤

ファイナルまで行ったヒートは最も短いオフを過ごし、シーズン前半は欠場だらけでコンディションも整わず、苦しいシーズンでした。終盤になって巻き返しましたが、単に選手がそろってきただけでもあったしね。この点では仕方がない。

しかし、苦しい時にはポジティブなことも起きがちです。出番の増えた若手たちがいろんな可能性を示し、仕事量が多過ぎて倒れる心配があったアデバヨ以外は、今シーズンのプラスアルファになりそうでした。1月までの成績から個人の事を考えてみましょう。

①ヒーローはエース格

17.5点、FG45%、7リバウンド、4アシストくらいのスタッツに上がってきました。バトラーが戻ってきたらシックスマンに戻るのが前提とはいえ、エースみたいになれる時間があることで、成長が期待できます。

だから、ヒーローについては、失速した理由がなんなのか知りたいところです。プレーオフで活躍させるための土台を作れていたはずが、結局は「2年目の若手」程度の活躍に留まりました。途中でオラディポを獲得したことも、ヒーローへの信頼がないことを示してしまったかもしれません。

②ルーキー・アチュワ

プレータイムを得られたアチュワは、まだまだルーキーレベルではあったものの、アデバヨのバックアップを手に入れたことを明確にしていました。初めの20試合で7.5点程度でしたがFG64%決めており、継続して育てる価値がありそうでした。

でもデッドモンにベンチの座を譲りました。デッドモンはキングス時代とは別人のような働きをしましたが、だからといって、そんなにデッドモンが良かったかい?

③若手の突き上げ

プレシーズンでKZオクパラが良いプレーをしましたが、シーズンになるとビンセントやスタウスも出てきました。ヒーロー、アチュワとあわせて若手が全体的に頑張ろうとしていたのは、勝てない中での光明でもありました。

しかし、最終的にこれらのことはプレーオフには関係ありませんでした。それが最も悲しいことです。見限られたのか、思ったほど伸びなかったのか。あるいは「今シーズンの勝利には足りない」とみなされたのかもしれません。それならそれでもいいのですが、だったら先にベテランを補強しておけよ。

そのベテランについても、最終的にアリーザを連れてきたことも含めて、いまいちよくわかない事もありました。

④使えなかったハークレスとブラッドリー

ブラッドリーに関しては、ロケッツ移籍後も欠場を繰り返しており、平均22分も出場しながら、6試合以上でたのが4月のみ、という状況だったので、コンディション問題ってだけかもしれません。あとオラディポのために放出しているから、活躍していたとしても嘆く要素はありません。

でもハークレスについては、何がそんなにダメだったのか?
これが後にアリーザを重用しまくった事実がなければ、そこまで否定的にならないのですが、ハークレスとアリーザでそこまで大きな差があったのかどうか?

基本的にアリーザの方がディフェンスがよく、万能性もあります。かわりにハークレスはポストアップしたり、ドライブダンクしたり、もう少し得意技を持っています。ヒートの特徴を考えれば、どっちが優位って事はなく、ハークレスの良さを利用して良かったのでは。

まぁチーム事情もあるので、どっちでもいいんです。ただ、最終的に起用されなくなった若手たちが経験を積み、ベテランは使えなかったからトレードで交換することになってしまった。そこが苦しかった部分でした。

シーズン前半の経験値は、どんな意味があったのか?

バックスが「お前ら1年前と変わってないだろ」と突き付けてきたプレーオフでしたが、本当は変わることが出来るはずでした。でも、それを選ばなかったヒート。シーズン序盤の苦しみをプラスに変えられませんでした。

アチュワなんかは来シーズン以降への繋がるから、まだ良いけどビンセントやスタウスについては必要に応じて切るでしょ。「今、勝ちたい」なら揃えるべき選手に失敗したのか、この時点では何も気が付かなかったのか。トレードは別にして戦力の底上げに成功したようで、プレーオフを見れば失敗しているのでした。

ちなみにホークスがマクミランになってからオコングを信用し、プレーオフでも出番があるんだぜ。4試合で7点しかとっていないけど、ディフェンスでは5分間のつなぎ役を出来ています。

◎バトラー傾倒

成績が振るわない中、バトラーが復帰します。あまりにも勝てないのでバトラーに頼ることが多く、2月は21.8点、8.8リバウンド、8.8アシストを記録していますが、やっぱり「バトラーに頼りすぎ」になっていました。

ところで、「ヒートに来る前のバトラー」が嫌いな管理人ですが、今シーズンのヒートに面白みを感じなかった違う理由として、「ヒートに来る前のバトラー」に戻りつつあったからです。いくつか数字を並べて昨シーズンと比較してみましょう。

〇パス数 49.4→54.9
〇アシスト 6.0→7.1
〇タッチ数 71.3→77.4
〇ポゼッション時間 5.4→6.0

見ての通り、パス数が増え、アシストも増え、それはチームオフェンスへの貢献度が高くなったようにも見えますが、最後の通り、ボールを持っている時間が長くなっています。つまり、バトラーはより自分が決めるようなプレーを増やしました。

ちょっと独りよがりに見え始めたわけです。これに加えてボールタッチが増えたけど、その中身も変わってきてしまいました。

〇エルボータッチ 1.9→1.3
〇ポストアップ  3.1→2.9
〇ペイントタッチ 4.3→3.8

つまりタッチ数が増えたけど、インサイドでボールを貰う回数はグッと減ったわけです。よりPGっぽく振舞うようになり、それは1人でボールコネコネしていたウルブズ時代へと近づいています。もう少しインサイドにいれば、シューター陣との絡みはスムーズになっていたと思いますが、プレーオフでもインサイドへの侵入を封じられるとチームオフェンスに流れが生まれませんでした。

〇ヒートのパス数 292.4→285.2
〇ヒートのアシスト 25.8→26.3

なんとかアシスト数が増えたので、そこまで気にならなかったものの、チームとしてはパス数が減っている中で、バトラーは増えてしまったので、バトラーに傾倒してしまったヒートです。

プレーオフではこの弱点を思いっきりバックスに突かれたことになります。もっとバランスの良いチームだったはずが、バトラーが止められたらチームも止まってしまいました。逆に言えば、この戦い方では「エースは止められてはいけない」ってことになります。実際に自分が止められたら終わり、っていうエースはいるわけで、バトラーはそのレベルで打ち破ることは出来ませんでした。

昨シーズンのバトラーは良かったが、個人スタッツをあげてはチームとしては崩壊する

こんな危険性があったわけです。それはバックス相手じゃなければ出てこなかった弱点かもしれません。シクサーズでも出たかも。だから相手が悪かったし、ブーデンフォルツァーはこれを確信していたからこそ、シーズン最後の戦いで勝ちに行ったのかもしれません。

〇バトラーからアデバヨへのパス
14.7→11.9

〇アデバヨからバトラーへのパス
12.2→ 9.3

この数字は「全パス数/出場試合数」で計算されていると思うので、片方が出場していないと数字がズレてしまいのですが、バトラー側の数字なので「ほぼ正確」くらいの感じで見てください。それくらい差が出ているし。

単にバトラー傾倒しただけでなく、アデバヨとバトラーのホットラインが減ったことも問題でした。ヒートのオフェンスは基本的にこの2人から始まるし、インサイドを担当しているのがこの2人です。2人がパス交換することで、起点が入れ替わってオフェンスが繋がり、インサイドを攻めるからアウトサイドへのプレーも繋がります。

前述の通り、バトラーはインサイドプレーを減らしてしまっており、そのうえでアデバヨとのパス交換が減ったことは、チームオフェンスがアウトサイドでのボール回しになってしまったということ。いろいろと問題があるのでした。

ヒートオフェンスは少しずつ単調になっていった

これが今シーズン最大の問題であり、デッドラインで動いた理由だったかもしれません。オラディポの件は関係なく動いたかもしれないけど、アリーザの件はね。どうしてもウイングが欲しくなってしまったんだ。

◎オプション不足

話を1年前のデッドラインに遡ると、クラウダーとイグダラを獲得したのは納得する部分もあれば不思議な部分もありました。納得するのは勝てそうだったから、マルチなウイングを連れて来て対戦相手に応じて柔軟に戦えるようにすること。実際にクラウダーの存在はファイナルに進むにあたり重要でした。イグダラも。

不思議な部分はインサイドのプレーメイカー役になれ、一応アデバヨの代役だったジェームス・ジョンソンとチームで2人しかいないPGの片割れウィンスローを放出した事。つまりマルチウイングを連れて来て、特殊タイプを減らしました。良いこともあれば、悪い事もあるのは当然なのでトレードが失敗なんてことはないよ。

オフにはディフェンダーのデリック・ジョーンズが出ていきました。引き止められるようなオファーじゃないから、それはいいよ。そして問題を起こしたレナードを放出し、アリーザを手に入れました。こちらもマルチなウイングです。オリニクも出したけど、ビエリツァ手に入れてるから、それはいいや。

気が付けば特殊なタイプの選手がグッと減ってしまいました。特にレナードの件はどうせ出れないから良いのですが、センターでシューターする選手がいなくなり、アデバヨは必ずセンターになることに。

ゲーム3でビエリッツァを出して得点を取りましたが、特殊な選手がいると意外なことが起こります。あとデリック・ジョーンズがいないから2-3ゾーンの破壊力が落ちたことも否めません。オラディポじゃなくてホーフォードをとれれば・・・なんて気もしないでもなかったりして。

ベースとなる強さはバージョンアップされたのですが、戦略的には狭くなりました。これもまたプレーオフで「閉塞感を打破する」ことに繋がらなかった理由です。バックスのバトラー止めにハマったら、違う手段を作れなかった。

捉え方によっては「ヒートはダンカン・ロビンソンのチーム」です。特殊なオプションを有効活用して、的を絞らせないオフェンスが持ち味。バトラーに傾倒したことは単に単調になっただけでなく

手数の多かったヒートが普通のチームに近づいていった

こんな問題もありました。ディフェンス力はそこまで問題ないのですが、とにかくオフェンス力がなかった。それは昨シーズンよりも落ちたからではなく、そもそも昨シーズンもオフェンスは課題でした。ただ強力ではないけど、多彩だったからプレーオフには強かった

パット・ライリーがどう考えているのか不明ですが、バトラーを主役に置くのであればオプションを増やす戦い方にしないと苦しくなると思います。だからカワイ・レナードを獲得するような奇跡が起きない限りは、オプション重視だとおもうんだよな。

・ダンカンと再契約
・シューティングPG
・マルチなエースキラー
・カッティング担当ウイング
・ビッグマンシューター

もう1人ドライブする個人技担当が欲しいから、そこにオラディポってのは理解できますが、それはヒーロー次第でもあります。ヒーローも他の役割できないしね。オラディポよりもカリーが欲しい。

そしてジョン・コリンズなら下の2つを同時に得ることも出来ます。マルカネンでもギリいけるかも。まぁ何はともあれオプションは随時切り替え可能な方が好ましく、スタークラスじゃなくても上手い集め方もあるかもね。

◎アデバヨはエースなのか

オフにやるべきことの、もう1つがコレ。納得できなかったなぁ。アデバヨはエースでいいじゃん。シーズン序盤に「もっと点を取りに行け」と言いましたが、最終的にそれがプレーオフで問題になったのだからさ。

基本的なプレースタイルを変更する必要はなく、今まで通りのポイントセンターとしてシューター陣を活用していくのが基本。でもエースはアデバヨ。自分で打つのも仕事です。

・ハンドオフからのドライブ
・ポストムーブでのフィニッシュ
・コーストtoコースト
・ドライブ1on1

別に3Pなんて打たなくていいので、自分で突破する形を増やせないといけません。それは短期的な話だけではなく、マックス契約のエースとして長い目で見て許されない。

実際、昨シーズンのカンファレンスファイナルはアデバヨが自分で試合を決めに行ってます。今シーズンは序盤から働かせすぎでしたが、スタミナが戻ってこなかったのかもね。ファーストラウンドでの敗退なので、ゆっくり体を休めて、再びモンスターになって戻ってきて欲しい。オリンピックきたら疲れちゃうかな。

アデバヨが打たなかったことも、スポルストラが強く促さなかったことも、どっちもとても残念なプレーオフでした。とにかくエースとして戻ってこなければいけない。バトラーからボールを奪い取らないといけない。アデバヨのパスやキープが増えてもチーム力は落ちないと思うので。

ということで「さようならヒート’21」は心の中で思っている事

バトラーとアデバヨはどちらが重要なのか

1年前はエースじゃなくてもアデバヨの方が大切でした。でも今シーズンはバトラーの方が重要になっていました。それがとっても気に食わないシーズンでもありました。もう一度、アデバヨがその座を奪い返さないといけません。


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