ピストンズ、調子を上げる

ここのところ4勝3敗となり、リーグ最下位を抜け出したピストンズ。正直、書くこともないチームなので、この7試合で起きていることを触れてみましょう。なお、試合は1つしか見ていません。

勝ったのはラプターズ、ウィザーズ、サンダー、キングスで、負けたのはブレイザーズ、ニックス、ナゲッツの3チームでした。勝率通りといえばそれまでですが、一定レベル以下のチーム相手なら通用するようになってきた、ということでもあります。

◎ジェレミ

新エースにジェレミ・グラントを迎え、グリフィンを手放した今シーズンですが、開幕からジェレミのアイソという恐ろしいプレーチョイスをしていました。しかし、ジェレミは期待に応え、予想外の活躍を見せたのですが、さすがに失速。現在のスタッツはこんな感じ。

〇ジェレミ
プレータイム 34.4分
得点 22.5点
2P 47.3%
3P 35.9%
リバウンド 4.8
アシスト 2.9

悪いスタッツではないのですが、時間と共にFG成功率が落ちてきており、3Pは悪くないけど2Pの確率が気になります。EFG49.4%と苦しんでおり、もっとジェレミにチームメイトが連動してアシストを増やすか、ジェレミがフィニッシュのみになれるのが理想です。

3月になると更に悪くなり、EFG46.0%まで下がりました。タフスケジュールだし、こんなに負荷を背負ってプレーするのは初めてだし、ジェレミとしては仕方がないのですが、勝てないチームでウイングエースの確率が悪ければ、そりゃあ成績も上向かないさ。

〇2Pの内訳(アテンプト・成功率)
ゴール下 4.5本 62.5%
ペイント内 3.0本 35.0%
ミドル 3.6本 37.2%

ジェレミの特徴としてはペイント内の成功率が悪いこと。ミドルはそこそこですが、総じて中間距離のシュートを多く打っているけど、4割決まっていないことになります。HCケーシーということも含めて、デローザンのようなエースっぷりを期待されている雰囲気ですが、ミドルもペイント内も48%を超えるデローザンとは比較できる内容ではありません。

でも、ここ7試合なら4勝3敗です。なお、ジェレミはキングス戦を欠場しているので6試合3勝です。まずはジェレミがどう変わったのかを知る必要があります。

〇プレータイム
35.2分 → 28.8分

〇得点
23.0 → 19.2

〇2P
ペイント内 28.6% 
ミドル 47.8%

ペイント内の確率が著しく悪く、ミドルの改善をカバーしきれていません。そんなことよりもプレータイムが7分も減っており、孤軍奮闘な雰囲気ではなくなってきました。

ということでピストンズはジェレミに大きな変化はないけど、他の選手で大きく変わってきたと言えます。7試合のプレータイムを並べてみると、なお面白い。

〇プレータイム(試合数)
ジェレミ 28.8(6)
サディック・ベイ 26.0(7)
スチュワート 24.8(7)
プラムリー 23.6(5)
ジョセフ 23.4(7)
ジョシュ・ジャクソン 23.1(6)
ディアロ 22.6(6)
ヘイズ 22.0(3)
サベン・リー 19.0(6)
フランク・ジャクソン 17.7(7)
デニス・スミス 17.3(3)

平均で試合の半分以上出ている選手が3人しかいません。それも2人はギリギリ。試合数にばらつきがあるので一概には言えないものの、2チーム分の戦力で戦っているようなイメージです。誰もが試合に出て、誰もが活躍しよう。そんな空気になってきたのは、ジェレミのアイソが多かったシーズン序盤とは大きく異なっています。

◎2Pと3P

ここ7試合のピストンズはオフェンスが好調です。それも特定の選手ではなく、チーム全体での好調さなのが面白いところ。7試合のスタッツと以前を比べてみましょう。

〇オフェンス
得点 106.9 → 112.0
2P 50.8本 → 55.2本
   50.7% → 51.4%
3P 34.8本 → 28.6本
   34.9% → 40.5%

FT 23.8本 → 22.4本

目を引くのは3Pの確率が40%を超えていることです。シュートが好調なことで得点を伸ばしたことになりますが、一方で3Pアテンプトは6本減っており、成功数は12.2本から11.6本へと減っています。3Pが好調なようで、それが理由ではないことになります。

3Pに比べると2Pの確率は上がっておらず、フリースローも減っていますが、単純に2Pの成功数が3本増えたことで平均得点を伸ばしました。今回のピストンズで最も興味深いのがここです。

3Pを減らし、2Pを増やしたことが、成績アップに繋がった

先日のホークスvsペリカンズ戦で「3Pは怖い」と書きましたが、ピストンズは弱いチームだからこそ、原点に立ち戻ったように3Pを減らして成功したと言えます。

〇エリントン
プレータイム 23.3分 → 14.6分
3P 42.9% → 23.5%

象徴的なのがエリントン。3P43%決めていたエリートシューターは、ここ7試合は出番を減らし、ついでに成功率も落ちています。トレードでスヴィ・ミハイルやデロン・ライトを放出したことも3P減に関係しているので、偶然7試合で少なかったというよりは、そういう方向にチームのかじ取りが変わった結果と捉えても良さそうです。

〇速攻での失点 11.5 → 13.9

2Pが多くなったことで速攻を食わらなくなったのかと思ったら、ターンオーバーが増えているので、逆に失点も増えてしまっていました。今のところデメリットを上回るほど、得点でカバーできているということです。

OR 9.9 → 9.0
アシスト 24.1 → 27.0
ターンオーバー 14.6 → 15.3

シュートが決まっていることもあり、オフェンスリバウンドは減りました。そしてアシストは大きく増えています。平均得点が5.1点増えた中で、アシストは3.9本増えているので「良いパスが通ってイージーシュート」という形が出来てきていることが伺えます。

〇エリア別アテンプト
ゴール下 28.1本 → 24.7本
ペイント内 14.4本 → 21.0本
ミドル 9.1本 → 11.0本

〇エリア別成功率
ゴール下 62.8% → 63.0%
ペイント内 36.0% → 46.3%
ミドル 35.8% → 40.3%

と思いきやゴール下のアテンプトは減ってしまいました。しかし、ペイント内は大きく増え、しかも成功率も上がっています。ジェレミが外しまくっているのに、チームとしては向上したわけだ。

ゴール下が減っていることはマズいですが【3Pかゴール下か】とは違う方法論で成功していることになります。この点は最近の成功チームであるグリズリーズやニックス、そしてサンズと同じ系統なので、時代が行き過ぎた中で戻ってきたチームの優位性かな。まぁジャズは真逆だけど。

デローザンみたいなことをしていたジェレミは調子を落としているけど、チーム全体はデローザンみたいなことをして成功しているわけだ。オフはデローザンに手を出そうぜ。

◎ジョセフとディアロ

そんな冗談は置いといて、調子を上げた理由はトレードで獲得した2人にあります。前述の通り、ミハイルやデロン・ライトを放出したことで3Pを減らしていますが、この2人は明らかに違うタイプであり、これまでの数字に適応する選手です。

今シーズンはサンダーでハンドラーもやるようになり、セカンドユニットを個人技で引っ張っていたディアロはジェレミに次ぐ得点源として新天地でも活躍しています。ここ7試合のスタッツは(ディアロは6試合)

〇ディアロ
22.6分
13.5点
2P59.4%
3P53.8%

恐ろしい高確率マシーンになっています。2Pはほぼ10FT以内なのでミドルよりもペイント内に攻め込んでおり、ジェレミがコートにいなくてもディアロがいれば効率よくディフェンスを押し込んでくれています。

ちなみにリバウンドがジェレミよりも多い点も勝率アップに繋がっています。オールラウンドなディフェンダータイプでサンダー出身ということで、ジェレミとの共通点も多いですが、ピストンズとしてはこういう選手を使って勝ちたいということなのでしょう。GMが知っている選手を集めただけかもしれないけど。

ただし、ディアロはサンダーでEFG50.2%だったのが、ピストンズに来て62.3%なので、この点では一時的な好調といえます。サンダーで最後に試合に出たのが2/24で、そこから1カ月休んで3/26から復帰しており、長い休みが体力面でプラスに働いているだけかも。

〇コーリー・ジョセフ
12.9点
FG58.6%
3P40.0%
5.7アシスト

ディアロ以上に好調なのがジョセフ。特にアシストがチームハイとなっており、PGの獲得がチーム全体に好影響を与えています。ジョセフ以外にもサベン・リーが5.0アシストしており、ちょっと似ているタイプのPGが2人になったことで、やりたいこともわかりやすくなったのかも。ヘイズも復帰してきたから、ここからプレータイムも変わると思いますが。

もともとがデロン・ライトにPGやらせていたくらいなので、チームにとってはベテランPGが加わったことは、非常に大きな変化でした。個人ではなくチーム全体で好調さを作り上げていることと、ジョセフの加入には関係性が強いです。

しかし、この好調さはキングスファンから怒鳴られそう。キングス戦はFG10/14で24点、7アシストと勝利の立役者となっており、しっかりとお礼参りしてしまいました。キングス時代は6.6点、FG44%、2.5アシストだったのにね。

基本的にジョセフはFG成功率の低い選手です。PGとしてゲームメイクは出来るけど、自分で強気に行きすぎる面もあり、だけど3Pはそんなに打たない。基本はドライブをしていって考える選手です。キングスは戦術不足だったから能力を発揮しきれなかったのは事実ですが、こんなにシュートが決まる選手じゃないよ。

ということでディアロとジョセフの加入が勝率アップに強く関係しているのですが、その一方で「この2人の好調さって信用できるのか?」といえば、NO!です。

◎ベイとスチュワート

ピストンズはジェレミを中心にし、中堅どころの選手を並べて再建という開幕から中途半端なことをしていた印象ですが、トレードも経てロスターが変わっただけでなく、プレータイムシェアで多くの選手が活躍する土壌が出来そうなのは、とても良いことです。

若手だけを揃えても、ジョセフのようなPGがいた方が活躍しやすいこともあるし、ジェレミのような大黒柱がいた方が安定するし、完ぺきからは遠い状況ではあるものの、少しずつ楽しみも出てきた。

そんな中でプレータイムの2位と3位になったのが、ルーキーのサディック・ベイとスチュワート。ベイの方はシーズン通して25分くらい出ていますが、スチュワートは最近になって増えてきました。

どちらもルーキーとしては十分な才能を見せており、大きく期待したい選手ですが、一方でエースタイプではなく、出番の少ないドゥンブーヤみたいに何もないところから生み出す感じではありません。でも、共にディフェンスで奮闘しつつ、確率の良いフィニッシュをしてくれます。

まだまだ「再建のベース」を作るところまでも辿り着いていないものの、アシスト増が示すように、それぞれの仕事を高い精度で出来るならチームとしても強くなるよね。そんな時に3Pが多いオフェンスよりも、コンビプレーでしっかりとオフェンスを組み立てる方が成長にもなるさ。

つまりはデローザンっぽい個人技を求めているんだけど、チームとしてはスパーズっぽい合わせ方をしていきたそうな匂いがする7試合だけのスタッツでした。

ピストンズ、調子を上げる” への8件のフィードバック

  1. 以前より提唱しているキングスでキャリアハイ、シーズンハイが発生する説がより信憑性を増しました。
    ピストンズはリムを攻めたときは頑張ってオフェンスリバウンドにも飛び込んでましたね。そこも良かったです。

    1. ということはキングスの選手はスタッツを稼げる試合がなくて、他のチームの選手より、ちょっと不利ですね。

      ちなみにペイサーズ戦のウルブズもディフェンス力ゼロでした。

  2. ケイシーは以前にも、「ラウリー・デローザンのアイソ祭り→最強セカンドユニット込みのチームオフェンス」という順序でチームを組み立てた経過がありますが、それをピストンズでも繰り返しているのかもしれませんね。
    偏見ですが、ケイシーはラプターズ時代からデロん・ライトを寵愛している印象があったので、今回のトレードは少し意外でした。

    1. ライトのトレード指名権を集めておきたかったGMの判断かもしれませんね。かわりに元ラプターズのPGを手に入れたからケーシーも納得させたような。
      でも、ライトを寵愛しているのはチームにとってマイナスなので、そういうのもトレードの理由だったりして。

  3. サラリーの柔軟性を保つためにディアロのトレードは仕方ない決断だったとは思いますが、ヤングスクワッドのビデオが流れるたび寂しく思ってしまいます。でも、ピストンズでも活躍してくれているようで何よりでした。
    ディアロは今季終了時RFAですが、3年25~30Mくらいの契約はもらえそうでしょうか?

    1. 実に微妙なラインですね。ピストンズなら出せると思いますが、他のチームはそこまでディアロを欲しがらない気もします。ブルズあたりが手を出すかどうか。
      3年20Mくらいの気もしますが、今が伸び盛りのディアロがそれを望まず、単年契約で次に大きい契約を狙うかもしれません。
      ピストンズが長期的にキープしたければ3年30Mを出しそう。

  4. あと課題はキリアンヘイズですかね。メンター役のジョセフとライバル役でハングリーなDSJが加入して環境は整いましたが、復帰3試合じゃパッとしませんでしたね。最近の3P%の差でDSJの方が有利ではありますが、サイズのあるPGなので長い目線で育成したいです。

    1. ちょっとヘイズには厳しい戦術になっています。
      PGは個人技で突破するのが仕事なので、タイプ的にも違うんじゃないかと。
      3Pはそのうち上手くなりそうですが、何をすればいいのかゲームメイクに困っていそうで。

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