ウォリアーズが示すディフェンスのコツ

噂によるとウォリアーズのディフェンスが良いとか。ウォリアーズの試合を観ていないこと以上に、観ていたとしても「ディフェンスが良い」というのは不思議な現象です。今回はスタッツを見てディフェンス力を改善するコツをウォリアーズから教えてもらいましょう。

なお、この記事は4/2に書き終わっていまして、その後にラプターズに信じられない敗戦を喫しました。個人スタッツをぶっ壊すレベルの負け方なので、今回の数字は大きく変化していると思います。ネガティブに言えば「信用できない数字」であり、ポジティブに言えば「極端な試合を除いた数字」なので、ポジティブに行きましょう。

〇ディフェンスレーティング 109.8(8位)

エースキラーであるクレイ・トンプソンを欠きながら8位というのは健闘です。そもそも昨シーズン開始時点でイグダラ、リビングストン、デュラントを同時に失ったことでストロングポイントはなくなり、チームディフェンスでは優れているけど、個人能力だけではディフェンスレベルを向上させることが出来ていないドレイモンド・グリーンの能力もある程度ハッキリしました。ウォリアーズというチームがあっての個人ディフェンス能力であり、ADみたいに1人で何とかはしてくれない。でも、ウォリアーズにいるんだからそれでいいじゃん。

個人のディフェンスという面では、今シーズンからのプラスはウーブレイとベイズモアくらい。もちろんウイングを守れるウィギンズ、センターのワイズマン、そしてチームディフェンスは得意なカリーの復帰があるので、昨シーズンと比べても仕方ありませんが、何かを劇的に変えてくれるレベルの選手補強はしなかったけど、ディフェンス力で上位に上がってきたことは、コーチ陣の修正が効いているのでしょう。

もともとACロン・アダムスのディフェンス構築能力は素晴らしく、個人を守れないカリーのような選手でも、チームディフェンスでは大いに貢献してくれます。対戦相手に応じた細かい対策にも優れているからこそ黄金時代を築けました。

アダムスはウィギンズの成長を褒めているという記事がありますが、実際のところはどうなんでしょうね。ウィギンズはそもそも能力のある選手で、スピードもフィジカルもあるので、そこまで対人ディフェンスが悪いこと自体が変な話です。ウォリアーズにきてチームディフェンスがあるからこそ、個人として「何を守ればいいのか」がハッキリしたからレベルアップしているのだと思います。もしもウィザーズにトレードされたら、また守れなくなるよ。

◎トランジション

でも、そんなウィギンズの事は置いといて、ウォリアーズというチームがロン・アダムスの存在もあってディフェンス構築能力が高いことは抑えておきましょう。特にカリー中心にトランジション3Pも多投するのに、トランジションディフェンスが良いことは特筆すべきです。

〇速攻での得点 14.5(6位)
〇速攻での失点 12.9(21位)

順位的には微妙ですが、速攻で+1.6点なので攻守のバランス的には良い方です。ウォリアーズの速攻以外も含めた得失点差は△0.9点なので、速攻でのプラスがなければ△2.5点となり、成績はもっと悪かったでしょう。速攻で稼げることがウォリアーズの強みです。

ディフェンスの基本はトランジションディフェンスからなので、まずはベースとして、自分たちが速攻に走るのが好きだからこそ、ハリーバックも徹底しているチームです。例えばシクサーズは速攻の得点が15.6点ありますが、失点も15.4点です。イースト首位でもこんな感じだったりするので、とても重要です。

この速攻の失点について、100ポゼッション当たりで比較していくと、ダミアン・リー、ベイズモア、ワナメイカーらが10点台と検討しています。もうワナメイカーはいないけどね。一方で主力たちは13点台になっていきます。

〇100ポゼッション当たりの失点
ダミアン・リー 10.2
ベイズモア 10.5
ワナメイカー 10.8

カリー 13.1
ドレイモンド 13.2
ウィギンズ 13.4
ウーブレイ 13.7
ワイズマン 15.2

トランジションディフェンスはベンチメンバーが優れている

こんなことが言えるわけですが、一方で単に「ベンチメンバーは速攻が少ないから、カウンターも食らわない」というのも事実です。上記の3人が出ている時間は速攻での得点も少ないのです。例えば、わかりやすい2人の比較だと

ダミアン・リー 11.1
カリー 15.2


これくらいの差があるので「速攻が多い選手=失点も多い選手」という図式が成立し、「失点が少ない選手=速攻が少ない選手」も成立します。ただこれだけの差なのかもしれません。

となると、重要なのは例外的に「速攻における得失点差が多い選手」ということになります。それが誰かというと

マルダー 得点18.3 失点11.5
トスカーノ 得点15.5 失点11.7

共によく走る選手としてトスカーノ・アンダーソンは14試合でスターター、マルダーは2試合ですが、彼らがスターターに混じる理由も見えてきます。2人は特別な得点を生み出しまくるわけでも、リムプロテクトしまくるわけでもありませんが、主力たちに組み合わせたいのは「リスクを減らしてくれる選手」ってことです。

◎レーティング

ウォリアーズのディフェンスレーティングはリーグ8位の109.8ですが、面白いことに主力たちは良いディフェンスを出来ていません。

〇ディフェンスレーティング
カリー 110.5
ドレイモンド 110.4
ウーブレイ 110.2
ウィギンズ 109.8
ワイズマン 110.7

ウィギンズだけが唯一チーム平均ですが、他の主力はそれよりも悪くなっています。とはいえ、著しく悪いわけではなく誤差の範囲です。主力は相手の主力と対戦するので、110台ならばリーグの平均は上回っています。

特別に優れたディフェンスではないが、全員が堅実なスタッツ

良い表現が思いつきませんでしたが、こんな感じです。スペシャルな選手はおらず、かといって悪い選手もいない。チーム全体がリーグ平均クラスのディフェンス組織を作れています。ここにクレイ・トンプソンが戻ってくれば、全体的に向上することが期待されます。

しかし、前述の通り、ベンチメンバーはトランジションディフェンスに優れていました。彼らのレーティングがどうなっているかというと

ダミアン・リー 106.9
ベイズモア 102.7
ワナメイカー 104.6

ベンチメンバーは著しく良いレーティングを叩き出しています。スターターは標準レベルだけど、相手も弱くなるベンチメンバー同士ならば圧倒的にディフェンスの良いチームになっているのです。なお、ベイズモア以外はオフェンスも悪いよ。

オフェンス力が低いならディフェンス重視

どうもこんな構図が感じられます。これは単純に個人能力ではなく前述の通り、トランジションディフェンス重視の姿勢など、チームとしての軸足の置き方にも見えてきます。実際、ワナメイカー、ベイズモア、リーと3ガードにしている時間帯は、レーティングが96.9まで下がっており、普通に考えるとサイズを小さくしているのに守り切っているわけで、リスクを減らせることがディフェンス向上に繋がるという考え方です。

◎トスカーノ

記事を書いている時点で592分のプレータイムとなっているトスカーノ・アンダーソンですが、その多くはカリー、ウィギンズ、ウーブレと一緒にコートに立っています。オフェンシブな選手と合わせることで、ディフェンスとのバランスをとれるようなタイプの選手だと判断されているかもしれません。

〇トスカーノとコートに立った時間
ウィギンズ 388
ウーブレ 378
カリー 346

〇コンビでのディフェンスレーティング
ウィギンズ 103.6
ウーブレ 107.6
カリー 105.3

ウォリアーズの中では珍しく1人でレーティングを上げている選手で、それぞれとの相性も良く、特にディフェンスに課題があるウィギンズとカリーと組ませると効果は絶大。しかし、スターターに混じっている時間は109.3とほどほどなので、ここでもベンチメンバー同様に「オフェンス力が下がるほど、ディフェンス力が上がる」構図になっています。もしくはドレイモンドが悪いのか。

スティーブ・カーがベイズモアを重視しないのは不思議なのですが、チーム全体のバランスを考えるとトスカーノの方がトランジションディフェンスが良く、オフェンス力のある選手と合わせるのに適した選手だと考えているのかもしれません。

〇トスカーノ
FG55.7%
3P43.8%

平均5.1点しか取っていないトスカーノですが、堅実なシュートチョイスをしていることもカウンターを減らすことにあっています。確かにベイズモアは果敢にアタックしちゃうタイプだしね。FG成功率は40%程度だけどシュートに行かないドレイモンドも含めて、ユニットの中にこういう選手を混ぜておくのは、ウォリアーズが王朝を作れた理由でもあります。

オフェンス時にディフェンスのリスク管理になる選手を混ぜておこう

単純にドレイモンド個人のオフェンス問題ともとれなくはないですが、当時はイグダラやリビングストンもそんな感じだったもんね。ハーフコートディフェンスではウィギンズとウーブレの方が良くても、彼らはオフェンスでドライブアタックするのもお仕事。そこにトスカーノを合わせておいた方がベターだし、トスカーノとドレイモンドを並べる必要性は低いのかも。

あと、これってオフェンス力が低いアンドレ・ロバートソンがいた方がウエストブルックが本領発揮できていたサンダー理論とも似ているかも。シュート力の低さよりも、リスクマネジメントしようぜ。

〇トスカーノのDIFF +3.9

トスカーノはディフェンスの良い選手だとは思いますが、劇的に良い選手ってわけではありません。実際に被FG51%もあるので、腕が長そうなイメージの割に決められている。少なくともウーブレよりも遥かに優れているってことはないので、その中で違いを作れていることは組織としてディフェンスをよくするコツがありそうです。

◎ワイズマン

それぞれのディフェンス力は置いといて、ウォリアーズのディフェンスレーティングの良さは、よくあるディフェンス力ではなく、攻守トータルで何を狙って、何を避けるか、という視点での話でしたが、最後はやっぱり個人の差で守れるかどうかが決まってきます。

ここまで1.0ブロックでチームのブロックリーダーになっているワイズマンは、5.9リバウンドも記録し、及第点の活躍を見せています。でも残念ながら「及第点」であって、かつてのボーガットに比べたら苦しい。ルーキーらしさ。

一方でルーニーが登場すると一気に引き締まります。スペースを埋める意識が強く、危険地帯を抑えてくれるし、オフボールスイッチやローテーションも的確。かなりコンディションが悪いのか、平均15.4分しかプレーしていませんが、FG59%とオフェンスでも結果を残せてはいます。

この2人のディフェンスレーティングの違いを個人だけでなく、スターター4人(カリー、ドレイモンド、ウーブレ、ウィギンズ)との組み合わせでも比較してみると(試合のスターターという意味ではないです)

〇個人
ワイズマン 110.7
ルーニー  107.6

〇スターター
ワイズマン 113.3
ルーニー  106.0

ちょっと面白いのは単に「ルーニーの方が上」なだけでなく、
ワイズマンは「スターター以外」の方がレーティングが良い
ルーニーは「スターターと一緒」の方がレーティングが良い

こんな感じで逆になっていることです。プレータイムも短いから偶然ではありますが、前述のトスカーノの件も含めて考えると、オフェンスでアタックするワイズマンに対して、オフェンスはほどほどのルーニーなので、ここでもユニット構成における差異が出ています。

ルーニーはオフェンシブな選手たちを支えてくれる選手であり、かといって強烈なブロックやリバウンドを記録するわけではないので、周囲がある程度守れてこそ本領を発揮してくれます。

攻守に置いてルーニーの方がチームに大きな影響を与えているのですが、ワイズマンを育てることを優先しているような雰囲気です。1Q開始、3Q開始、そして4Q終盤だけでもルーニーにすれば、優れたディフェンス力でウォリアーズの成績は向上しそうですが、それはやらないスティーブ・カー。

さすがにルーニーの起用を控えすぎなので、本人の体調もあるのでしょうが、ルーニーに限らず、もう1枚頼りになるビッグマンがいればディフェンスは一気に跳ね上がるかもしれません。それはワイズマンなのか、来シーズンの補強なのか。

ウォリアーズのセンターの違いが示しているのは、よほど圧倒的ではない限り、個人で止める選手よりもチームディフェンスに優れた選手の方が重要だということ。特にこのチームの場合は、全員でリバウンドを取りに行けるので、センターというよりもリスキーなスペースを埋められる方が大切です。

ロン・アダムスの作るウォリアーズのディフェンス。個々が最低限の個人ディフェンスをすることを大前提にして、チームディフェンスを重視し、その上で攻守のバランスを考えた選手起用をすることが、ディフェンスレーティングを上げていくコツなのかもしれません。


ウォリアーズが示すディフェンスのコツ” への2件のフィードバック

  1. スタメンにトスカーノを混ぜて失点のリスクを減らすというのは試合を見ていて的確なご指摘だと感じました!
    強豪との試合でブローアウトされる時は大概走られてボコボコにされているので、トスカーノの使い方でリスクヘッジをさらに測ってほしいです

    1. スティーブ・カーのこだわりは、周囲からはよくわかんないですからね。
      あえて正解を取らないこともあれば、かつては終盤にニック・ヤングを投入し、シューター並べる明らかな失敗作を好むこともありましたし。

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