セルティックスは何が悪いのか

「考えてみよう」ではなく、「調べてみよう」

延々と5割前後で推移しているセルティックス。勝てない理由はシンプルで要するに「チーム戦術が構築されていない」ってことになります。

テイタム&ブラウンの個人技ばかり
効果的なキックアウトパスが出てこない
プルアップ3Pが決まらないとオフェンスにならない
ディフェンスが悪い

これがブラッド・スティーブンスのチームだから、なおさらタチが悪く、ちょっと批判しにくい一面もあります。ホーフォードやアービング、ヘイワードと毎年主力が移籍しているので「仕方ないか」と思われがちですが、そもそもスマート、ケンバ、テイタム、ブラウンと他のチームが羨ましがるような豪華戦力であることは間違いなく、これで5割ならHCの責任問題に発展するのが通常です。

なぜ、2年前までのようなプレーが出来なくなったのかは、正直わかりません。推測するしかないよね。でも、そんな憶測は面白くないので、今回は悪くなった理由がシンプルながら、それがどんな形でスタッツに跳ね返ってきているのかを調べてみましょう。

セルティックスはチーム戦術が出来ていない。それは試合を観ればすぐに感じる。でも、5割は勝っているわけだし、何かが悪いってのはスタッツに出ているんじゃないか。ってことです。

◎概論

まずは大きなところでの変化を見ていきましょう。

〇レーティング
オフェンス 112.8→113.0
ディフェンス 106.5→112.4

まずレーティングだけ見ると、オフェンスが僅かに向上してディフェンスが酷く悪化しています。試合を観ている感想としては個人技任せのオフェンスの悪さが目立っていましたが、実際にはディフェンスの悪化の方が大問題なわけです。これが今回の「調べてみよう」のスタートでもあって、意外とオフェンスは悪くないってのが気になるわけです。

得点 113.7→112.0
FG 46.1%→46.9%
3P 36.4%→37.6%
アシスト 23.0→22.9

失点 107.3→111.3
リバウンド 46.1→43.9
スティール 8.3 →7.9
ブロック 5.6 →5.1

ペースが落ちたことで得点そのものは減っていますが、3P成功率が微増したことがレーティングアップに繋がっていそうです。一方でディフェンスを見てみると、いろんな数字が微減って感じです。これが一番厄介なやつで、何が悪いっていうよりも「全体的に悪い」ってことになります。

そんなわけでまずはディフェンス面について考えていきましょう。しかし、今シーズンはヘイワードとカンター、あとはワナメイカーが抜けたくらいで、ティーグ、プリチャード、トリスタン・トンプソンを補強したわけなので、選手の顔ぶれだけ考えると、オフェンスが悪くなるならともかくディフェンスが悪くなるってのは違和感がありますね。

◎ディフェンス

主力の選手別レーティングを見てみると、ほぼ全員が110を超えています。オジェレイ(108.7)とティーグ(109.7)は少しだけ良い数字になっており、オジェレイについていうと最近のスターターユニットだけは、良い数字を残しています。

テイタム、ブラウン、オジェレイ、タイスにケンバorスマートが加わるスターターですが、こんな感じです。

ケンバパターン 82.2
スマートパターン 100.0

ともにシーズン通算で40分程度しか使われていないので、偶然の要素が強いですが、いずれにしても昨シーズンのヘイワードのところにオジェレイをいれるユニットなら、ある程度は守れるとみてよいかもしれません。ただし、オジェレイではなくスマートとケンバを並べた形は56分で120.7なので、やっぱり偶然的な感じかも。

ワンビッグでスモールラインナップが好きなブラッド・スティーブンスですが、今シーズンはツービッグにするパターンが増えており、それがセルティックスディフェンスの崩壊に繋がっているというわけです。確かにタイスとトリスタンを並べるのは気になる形でした。

〇タイス&トリスタン 
オフェンス 113.5
ディフェンス 113.1

数字的にもツービッグではディフェンスで困っています。一方で意外とオフェンスでは困っていません。でもオフェンスなら3PがないのにFG53%のトリスタンである必要性もないでしょう。この2人を並べる意味が何なのかは、未だに整理されていない気がするので、補強の失敗でもあります。

センターではなく、ウイングを補強すべきだった

1つ目の結論としてはこれです。ディフェンスのためにはウイングが必要でした。現在アーロン・ゴードンという話がありますが、セルティックスが困っているディフェンス問題を解決するには適した人材ではあります。別にゴードンじゃなくても、もう少し安い選手もいるのですが。

ロバート・ウィリアムスがベンチにいるわけだし、ヘイワードのようにセンターを守れるウイングってのが欲しいでしょう。アーロン・ゴードンを獲得できれば派手なダンクではなく、ディフェンスでの高い貢献を期待しましょう。

〇被FG
2P 50.9% → 53.4%
3P 34.0% → 36.6%

被FG%をみると、どちらも悪化しています。特に3Pディフェンスが得意だったチームらしさが失われているのが大きい気がするので、ウイングが欲しいわけです。

〇被ターンオーバー
15.2→14.1

〇ブロック
5.8→5.1

プレッシャーをかけられていないからか相手のターンオーバーが減ったうえで、センターを補強したのにブロック数が減ってしまいました。この点については誤算だったかもしれません。個人別のブロック数を見てみると

〇ブロック数
タイス 1.3 → 1.0
テイタム 0.9 → 0.4
ブラウン 0.4 → 0.6
スマート 0.5 → 0.5

トリスタン 0.7 → 0.4
ロバート 1.2 → 1.8

トリスタンの数字はカンターからの変化です。リムプロテクト能力の低さを示していますが、ロバートがカバーしてくれているのでセンターの数字としては、実はそんなに変わりません。ただ、タイスとテイタムが落ちているのがブロック数の微減に繋がっています。

リムプロテクト能力の高いロバートがいれば守れるか、といえばそんなこともないので「待ち構えてリムプロテクトする選手」がいることよりも、「チェイスしてブロックする選手」の方がセルティックスのディフェンスシステムでは重要です。つまり

見た目でブロックしている選手が、システムに合っているとは限らない

なんていうスモール好きなHCならではの事情も垣間見えます。3Pまでチェイスしながら、ゴール下のヘルプにも来れる選手の方が重要ってことです。さぁこいゴードン・・・ヘルプ役がゴードンでいいんだっけ?

20年ドラフトで3つも1巡目指名権を持っていたのに、トレードでの補強をしなかったセルティックス。それが一番の問題だった気がします。ルーキーがベンチに増えるばかりでさ。指名権でPJタッカーをとっておけばよかったのに。

◎プリチャードとトリスタン

このディフェンス問題については誰もがレーティングが悪いので「全員が悪い」というのが結論ではありますが、その一方でDIFF(平均FG%からどれだけ下げるか)だけを見ると特定の選手に問題があるスタッツが出てきます。それがプリチャードとトリスタン。

〇3P DIFF
プリチャード 8.8

〇2P DIFF
トリスタン 6.3

3Pについてはほぼ全員がマイナスの中でプリチャードだけが、異常なプラスになっています。フットワークは良いものの、かなり離して守っており、サイズがないことも含めてチェックできていないことになります。

しかし、それ以上に問題なのはセンターなのに2Pでプラスがデカすぎるトリスタン。タイスの次に打たれることが多いのに、59.3%も決められてしまっています。前述の問題は「センターを補強した」ことが問題でしたが、さらにその補強したトリスタンが悪いという悪循環です。ちなみにタイスは△3.2なので、トリスタンと比較すると「相手のシュートが1割悪くなる」という大きな差が出ているわけです。

ちなみにパートル △10.4、ターナー △10.3なので、指名権使ってトレード狙うなら、こういう選手ってのもあったよ。アーロン・ゴードンは△8.2なので選択肢としては間違っていない。

〇スマート
DIFF 
3P △2.2 → △3.8
2P △0.8 → 4.0

ただ、実は明確にやられるポイントがあるだけでなく、切り札スマートがインサイドで機能していないという事情もあります。「スマートの欠場が多かったから守れない」ならわかるのですが、そのスマートも悪いっていうね。

最近の試合でもパッとしないので、コンディションが悪いのでしょう。3月に復帰してからはそれまで6.1本あったアシストも3.7本まで減っています。攻守に効いていないスマート問題はかなり頭が痛い事実です。

ヘイワードとカンターが移籍したくらいで揺るぐことはないと思われていたディフェンスは、スマートの離脱+コンディション不良に加えて、新加入選手が大きな穴になっていることが関係していました。マジで補強失敗としか言いようがないわけですが、それでもブラッド・スティーブンスがここまで修正できないとは意外でした。

そういえば昨シーズンも最後までカンターを改善できず、起用されなくなっていきました。じゃあなんでトリスタンのことは起用しているのか。そういう内部の謎みたいなのも渦巻いているよね。単に欠場者が多い中でヘイワードの穴が埋まらないんだろうけどさ。

◎オフェンス

オフェンスについては印象が悪い一方でスタッツは悪くないのが特徴です。ヘイワードがいなくなってベンチのプレーメイカーがいない上に、ケンバとスマートの欠場が多い事情を考えれば、むしろこの状況は

昨シーズンよりも良いオフェンスをしている

ってことになります。印象は悪いけど、平均得点を4.4点伸ばしたブラウンってこともあるし、共に3P40%を超えるプリチャードとティーグが3Pオフェンスをけん引できていることも重要です。他にもFG73%のロバートがいるので、苦しい中でも両エースが引っ張って、周囲が高確率で決めるオフェンスを作れています。

実際、シーズンが進むにつれてチームオフェンスは悪くなっており、それは言い換えると「テイタム&ブラウン頼みが進んだ」ってことであり、ケンバとスマートに欠場が多かったからそうせざる得なかったし、そんな苦しい中で「両エースが結果を残したことで成立している」とみれます。

そんなわけで今回は悪い要因を「調べる」のが目的なのですが、オフェンスはプレータイプやトラッキングを見ても、いろんなのが少しずつ悪くなっているだけで明確な欠点なんてのは見当たりにくいです。「もうちょっとアタックしてフリースロー貰え」ってのはありますが、負担の大きいエースが頑張っているのだから、批判するのも違うような。

しかし、ディフェンスが悪化して成績が5割ってことも含めてですが、「悪い」「良い」ということよりも「安定」「不安定」の視点では、明らかに「不安定」になりました。

「テイタム&ブラウンがスゴイ」と感じる試合と「チームオフェンスが出来ない」と感じる試合がハッキリしている

多分、こういうことなのだと思います。スタッツが悪化しないほどに両エースは活躍し、だけど活躍できなければメチャクチャなチームになっている。コロナの後遺症があるというテイタム本人が安定性を欠くことも含めて、見る試合によって大きく印象が変わってくるチームになりました。

そこで勝ち試合と負け試合におけるレーティング差を調べてみました。それぞれの上位チームを並べてみましょう。まずはオフェンスから

〇オフェンス
ウォリアーズ 17.1
クリッパーズ 15.9
セルティックス 15.7
ブレイザーズ 15.3
ロケッツ 14.4
シクサーズ 12.6
スパーズ 12.6

3P中心のウォリアーズやブレイザーズ、個人技主体のクリッパーズやシクサーズ、それとそもそも勝っていないロケッツが並んでいます。スパーズがいるのは意外です。セルティックスも個人技に左右される部類になってきています。

〇昨シーズンとの比較
勝ち試合 117.4 → 120.7
負け試合 103.7 → 105.6

特徴的には勝ち試合のレーティングが120を超えていることです。オフェンスが爆発しないと勝てない構図ですが、同じようなチーム(クリッパーズ、ブレイザーズ、ネッツ、ペリカンズ)と比べると、爆発する可能性が低めな気がします。気がするだけだけどね。

ディフェンスが悪化したから点を取らないと勝てないわけですが、ネッツみたいに「守れない前提」のロスターではないのが苦しいところ。そこでディフェンスを比較してみると

〇昨シーズンとの比較
勝ち試合 104.4 → 109.0
負け試合 110.7 → 115.7

ディフェンスが悪化しているので、数字が悪くなっているのは仕方がないさ。ただ、それよりも勝ち試合と負け試合でオフェンスのように大きな差はないのが気になります。要は110超えちゃっているから、相手の事情よりも自分たちが点を取れるかどうかにかかっているのかな。

今度はチーム別でディフェンスレーティングに差がある上位を並べてみましょう。

〇ディフェンス
バックス 18.1
グリズリーズ 16.9
キャブス 15.4
ジャズ 14.4
ナゲッツ 14.4
ニックス 14.4

ウィザーズ 9.0
ネッツ 8.8
ブレイザーズ 6.8
セルツ 6.3

実はセルティックスは30位です。勝ち試合でも負け試合でもディフェンス力に最も差が出ていないチームってことになります。似たようなチームがブレイザーズ、ネッツ、ウィザーズなので完全に「オフェンス主体のチーム」になったわけです。それも見事に個人技で押してくるチームばかりだな。

これで何がわかるかというと・・・何がわかるんでしょうね?
まぁチームスタイルとしては、これまでとはかなりイメージが違うってことだけは確かです。これを個人技が多くて「不安定」としたならば、オフェンスにおいて昨シーズンよりも爆発した試合が多いのかも調べてみましょう。

〇オフェンスレーティング120以上の試合数
昨シーズン 12試合(72試合)
今シーズン 11試合(42試合)

〇オフェンスレーティング105以下の試合
昨シーズン 17試合(72試合)
今シーズン  9試合(42試合)

120以上で爆発する試合の割合は明らかに増えました。でも105以下の試合は大差ありません。レーティングの平均は変わっていないので、微妙な試合が増えてきたことになります。そこでディフェンス力がないから勝ち切れないってのは当然でもあるね。

オフェンスは安定感はなくなったが、爆発力は増した

こんな状態で勝っているようです。何を取って何を捨てるかのなかで、チームオフェンスよりも個人の爆発を選択したってことなのかな。良い悪いのジャッジではなく、好みになりそうですね。見る試合によって印象は大きく変わるわけだ。

◎テイタムとブラウン

最後に両エースの勝ち試合と負け試合のスタッツ差だけ確認してお別れしましょう。この成績では「チームを勝利に導いている」とは言いにくいけど、「活躍している」とはいえる2人。ブラウンが点を多くとる時って、速攻が増えている試合だから、ブラウンの方が勝敗を左右していそうだけど、実際にはどうかな。

〇テイタム
得点 24.8 ↔ 25.1
FG 46.4%↔ 43.0%
3P 43.8%↔ 32.0%
アシスト 4.7↔ 3.9

勝ち試合↔負け試合で並べています。
テイタムの場合は負け試合の方が得点が多くなっていますが、その一方で3Pの確率に大きな差があります。19勝18敗なので、ほぼ半分ずつの試合数ですが、3Pが不安定なのはテイタムの特徴かもしれません。っていうか、3Pは誰でも不安定だから気にすることはなく、むしろ43%決めれば勝てるっていうことかもね。

ただ他のスタッツは殆ど変わらないのに、アシストは減っています。これは負け試合の方が自分で打ちに行くからです。成功率が低下しているのに得点が伸びているように、負け試合ではFGアテンプトが2.3本増えています。

テイタムが自分で行きすぎると負ける

こんなことが言えるので、チームオフェンスが出来ていない感じが伺えます。なお、昨シーズンも3P成功率は同じ傾向がありましたが、負け試合の方がFGアテンプトが少なく、得点も5.5点減っていました。つまり「テイタムが決められないと負ける」でした。この方が自然な感じです。

〇ブラウン
得点 24.2 ↔ 25.2
FG 51.2%↔ 46.6%
3P 47.9%↔ 31.5%
アシスト 4.0↔ 3.9

テイタムよりもFG成功率が高いブラウンですが、3Pの差がテイタムの比ではなく離れています。より不安定なのがブラウンになっていますが、それは不安定であり爆発力でもあるから、良くも悪くも勝利に関係しているのはブラウンの3Pってことになります。

でも、そこまで成功率が違うのに、ブラウンも平均得点が増えています。こちらは3.2分もプレータイムが増えるので点数差は許容範囲ではあるものの、FGアテンプトが3.8本も増えるのが問題です。テイタムと合わせて6本増えています。

テイタム&ブラウンは負け試合ほどFGアテンプトが多い

ということは、負けている試合ほど「個人技ばかりでダメなオフェンス」に見えるってことです。勝ったときは個人の確率も高ければ、他の選手が打つ回数も多い。個人技が多い程負けているのか、負けているから個人技が多いのか。両方なんだろうな。

ちなみに2人とも連戦の試合で確率を落としています。共に3P成功率が33%台になっており、それでもテイタムが27.6点、ブラウンが25.4点と普段以上に得点を取っています。

負荷の大きい両エースに適切な休養を与えてください

タフスケジュールのシーズンなのに、なぜか個人への負担が大きいチームになっているのでした。通常スケジュールなら、もう少し勝率が良かったかもしれません。

セルティックスは何が悪いのか” への3件のフィードバック

  1. 今日のグリズリーズ戦ですが、セルツのディフェンスってこんな緩いっけ?と感じましたね。
    前半は3Pを非常にテンポよく、まんべんなく決められましたが、いくらなんでもどこかで落とすようになるだろうし、ペイントで点取れてるから、最終的には勝てるやつや!!!と思いながら観てました。
    結局クラッチタイムにケンバとテイタムがいなかったことで助かったところがありますが、3P48%決まってグリズリーズに負ける現状に、フロントは何を思い、どこに手をつけるか楽しみですねー

    1. セルツがゴードンに動くならディフェンス考えているのかなーと思いますが、オフェンスに動いたら問題点を理解していないってことになるでしょうね。

      ディフェンスは個人個人も緩くなっているので、よくわかんないっす。

  2. ハリバン先生の噂もありますね。
    ホームズ君の再契約の為にサラリー空けたいので引き取ってくれないかな~w

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