若きブルズの話
開幕3連敗でスタートしたブルズは1月半ばまで4勝8敗と今シーズンも低調な成績でした。ラビーンはハイアベレージを記録し続け、ホワイトの成長もあるものの、ケガ人も多く、HCビリー・ドノバンによる新たな戦術も浸透しない状況です。
しかし、1月中旬からは7勝7敗と持ち直しており、イースト全体が低調なこともあり、9位につけています。そもそも1位シクサーズから最下位ピストンズまで9.5ゲーム差だから10連勝したら首位にいけるかもしれない。
〇1月15日までのレーティング
オフェンス 110.3
ディフェンス 115.3
〇1月16日からのレーティング
オフェンス 111.5
ディフェンス 109.7
ブルズに出てきた変化は、ちょっとだけディフェンスが良くなったこと。これがチームに勝利をもたらすようになりました。この先、ディフェンスの改善が続けばプレーオフも見えてきます。
その前に1つ付け加えなければいけないことは、そもそも昨シーズンまでのブルズはディフェンシブなチームだったこと。それが今シーズンになってオフェンス面が大きく改善してきました。レーティングを比較すると違いは明らかです。
〇オフェンスレーティング
105.8 → 111.0
〇ディフェンスレーティング
108.9 → 112.4
昨シーズンのブルズはクリス・ダンとヴェンデル・カーターがコートにいれば守れるチームでしたが、一方でこの2人がいるとオフェンス力は低下しています。特にダンは難しかった。
今シーズンはダンが移籍したことでディフェンス低下は予想されていたことですが、それ以上にオフェンス改善が目立っています。ラビーンやホワイトの個人突破が主体だった形は、そこまで大きく変わらないものの、その先の合わせる部分が改善しており、コーナー3Pはリーグで5番目に多いチームになってきました。
〇コーナー3P
昨シーズン 8.2本 39.0%
今シーズン 9.7本 44.3%
フロアをワイドに使うようになってきたため、3P成功率は34.8%→38.3%と改善しています。まぁコーナー3Pを増やすと速攻でやられるようになるのも「あるある」だしね。そしてこのコーナー3Pをチームで最も多く打っているのがテンプルです。そういうポジショニングをしているってことだ。
いずれにしてもチーム全体が高確率の3Pを達成できるようになっており、昨シーズンよりも「どこで3Pを打つのか」という判断基準が改善しているのでした。
〇アシスト数 23.2 → 26.3
そんなわけでアシストも増えてきました。これはサンダーでアダムスを重用したようにドノバンがインサイドのセンターにあわさせる形を好むことも関係しています。インサイドでもアウトサイドでもパスを引き出すイメージは強くなっています。
◎強豪並みのレーティング
話を戻すと、ブルズはこの1か月が勝率5割と奮闘しました。その理由はディフェンスの改善にあるわけですが、ここで大きな意味があったのがテンプルとサディアス・ヤングを主力にしていったことです。マルカネン、カーター、オット・ポーターが離脱していったので、仕方がなくって面も大きいですが、この2人がコートに立つとブルズは一気に安定感が増してきます。
それは数字の上でも大きく出ていて、この2人のオン/オフコートのレーティングは、なかなかすごい差異が生み出されています。
〇テンプルのオン/オフ
オフェンス 112.8/106.2
ディフェンス 107.8/114.2
差異 5.0/△7.9
〇ヤングのオン/オフ
オフェンス 115.8/105.4
ディフェンス 109.0/112.5
差異 6.8/△7.1
テンプルの方がディフェンス面で、ヤングの方がオフェンス面で特に大きな差を生みだしていますが、いずれにしても攻守に2人は効いています。オンオフでのレーティング差異はテンプルが12.9、ヤングが13.9と2人がコートにいるかどうかでブルズには極端な違いが出ているわけです。
ちなみに、これが他の主力だとどうなるのか。ラビーンがコートにいるとオフェンスで大きなメリットがあるかわりにディフェンスが悪く、パトリック・ウィリアムスはその逆になるなど、個人でいろんな違いがあるのですが、レーティング差異だけを並べてみましょう。
〇オン/オフのレーティング差異
ラビーン △3.6/5.1
ホワイト △4.4/5.9
パトリック △5.7/2.8
マルカネン △9.5/3.1
これは間違いではなく、本当にこの数字なのですが主力がコートにいる時間は全員がマイナスです。オンコートの数字が全員悪すぎる。オフコートについては(特にホワイトとラビーンは)ガベージタイムにブルズが勝っているだけの面もあるので、気にしすぎる必要はありません。いずれにしても
主力のオンコートが軒並みマイナスなのに、テンプルとヤングはプラス
というのが大事です。ブルズにとってメインではない選手だけど、だからこそサポートキャストとしての重要性が高く、コートにいることで主役たちが輝くことに繋がっているのです。
ちなみにテンプルとヤングの両方がオンコートだとレーティングは強豪並みになります。1月半ばから、この両者がコートにいる時間が増えてきました。
〇テンプル+ヤング
オフェンス 115.1
ディフェンス 105.0
こうなる理由を深堀り出来れば良いのですが、なんてことはなく、単純に両者の個人ディフェンス力が高いことで成立しているだけです。それを細かく書いているのは難しいぜ。
◎何が違うのか
とはいえ、何も書かないわけにはいかないので、チームの平均数字とそれぞれのオンコート時に起こる変化を見ていきましょう。基本的には%か100ポゼッションでの差を比較していきます。
〇オフェンスリバウンド率 25.8%→28.0%
〇EFG 55.6%→57.9%
チーム最多の2.4オフェンスリバウンドを稼ぐヤングがコートにいるとオフェンスリバウンド率が大きく向上します。しかも、ドライブへ合わせていくヤングは3Pが25%しか決まっていないけど、FG59.7%と高確率で押し込んでいます。
強力なフィニッシャーというよりは、ムリならパスアウトっていう点も含めて、ヤングがコートにいるとEFGも向上しているわけです。つまりシュートが決まる確率が高くなっているのに、外した時にオフェンスリバウンドを取る率も上がっているわけです。一挙両得。
〇100ポゼッションあたりの速攻での失点
テンプル 10.3 → 8.8
ヤング 10.3 → 8.4
シュートが決まって、オフェンスリバウンドもとれるってことで、ヤングがいると速攻を食らう可能性が減ります。ここはディフェンス力向上に大きく寄与している部分です。ヤング本人はリバウンド後にダッシュで戻れる選手なので、攻守の切り替えの部分でメリットが大きくなります。
一方でテンプルも速攻での失点を減らしてくれます。その理由は純粋にトランジションディフェンスが良いこと。ラビーンとホワイトが中心のチームということで、2人はリングにアタックしていくわけですが、そんな時に先に戻るポジションを取ってくれるというのが大きく、危険地帯を埋める役割をしています。超地味ながら大事なこと。
なお、サトランスキーの方がオンコートで速攻を食らいません。もちろん、同じように危機管理できるわけですが、ラビーン&ホワイトの両社と同時にコートに立つことがないポジション事情も関係しています。
〇100ポゼッションあたりのスティール
テンプル 7.0→8.0
ヤング 7.0→8.0
チームとして1試合当たり1つくらいスティールが多くなることになりますが、現在のブルズでスティールが多いのがテンプルとヤングです。
テンプル 1.0
ヤング 1.4
2人ともブロックで力を発揮するタイプではなく、コースを先読みするディフェンス力が売り。その上でスティールでボールを掻っ攫ってくれるので、攻守のレーティングに大きく関係しています。
〇ディフレクション
テンプル 2.7
ヤング 2.6
〇チャージドロー
テンプル 0.04
ヤング 0.5
※この項目は個人スタッツ
またスティールだけでなく、ボールに触れるディフレクションもテンプルとヤングがブルズのトップ2です。3番目のラビーンが1.5なので、この2人の優秀さがわかります。
チャージドローはヤングの得意技。2試合に1回はチャージドローしている計算で、ラウリーとならんでリーグ2位です。1位がグリフィンなのはビックリだよ。
わかりやすいスティールだけでなく、テンプルとヤングがコートにいるとハッスルスタッツが大きく向上していることがわかります。ヴェンデル・カーターも頑張れる選手ではありますが、ブルズの若手たちは全体的に苦手にしている部分であり、特にラビーンはディフェンス難ってのもあって、この2人と組んだ方がチームとしての機能性が高くなります。
◎オールラウンダー
総じてラビーンとホワイトを中心と考えた時に、テンプルやヤングを合わせるのほ弱点を補う上でも長所を目立たせる意味でも効果が大きいといえます。オフェンスではインサイドで合わせるヤングとコーナーで3Pを打つテンプルがコートを広く使わせてくれ、守っても相手のパスコースを読んでボールに触れ、ドライブコースを読んでチャージドローしてくれます。
テンプルとヤングがコートにいることでブルズのレーティングが劇的に良くなっているのは偶然ではなく、そういう選手が必要だということ。良い選手を揃えたはずなのに、なんだか上手くいっていないというイーストの多くのチームが抱えている悩みは、こういう選手が解決してくれるってことです。
ところで「ロールプレイヤー」といえば、一芸的な選手が多くなります。そこに判断力が優れていることでチームの助けになっていく。だから突破力のあるエースに対してはシューターが欲しくなるし、強力なリバウンダーで助けていくってのも一手です。
テンプルとヤングはディフェンスという一芸を持った選手ですが、オフェンスを考えると、ちょっと異質な気もします。
何でもやるけど、これといった武器がないオールラウンダー
一方でこの特徴がブルズでハマっている印象もあります。つまり主役たちに足りない部分が結構多いチームなので、いろんなことを埋めてくれる選手の利便性が高いわけです。時にプレーメイカー的にアシストもしてくれるし、時にポストアップもしてくれる。そもそも今のヤングは昨シーズンとは違う役割しているしね。
ケガ人が多いことで、足りないポジションが試合によって異なるブルズ。それらをいろんな形で埋めてくれているテンプルとヤング。オールラウンダーであることが役に立っているのはタフスケジュールのシーズンであることも関係しています。サンダーのケンリッチも全ポジションを埋めているしね。
果たしてケガ人が戻ってきたら、この2人の役割はどうなるのか。起用されなくなったららブルズの勝率は落ちてしまうのか。ポジティブにもネガティブにも動きそうな2人の活躍なのでした。
ラビーンとホワイトが主役のチームで、将来に向けてはパトリックウィリアムズを育てたいと思うのでマルカネンは不要になりませんか?
不要というかディフェンスが良くないのでスターターとしては使えなくなるんじゃないかと。セカンドユニットでなら使っていいかもしれないけどそれはチームにとっても本人にとってもあまり意味がなさそう。
マルカネンは放出したほうが良いです。でもそれは2年前から発生している問題なので、どうするのかな。
GM変わったので動くかもしれませんが、ケガが多く、価値は低いので、なかなか成立しないかもしれません。
グリフィンとでも交換するか・・・
ただラビーンは契約が来シーズンまで。延長できないなら崩壊してしまう件もあって、判断は難しい。
「主役たちに足りない部分が結構多いチーム」という文章に感服致しました。
個々を見ると悪くないのになぁとずっと思っていましたので。
今後ですが、この二人+サトランスキーも重視するのだろうと思っています。
今年のブルズは接戦で負けることが多いと思いますが、4Qでの失点が多いからですかね?それとも得点が入らなくなるからですか?
マルカネン出すならニックス来て欲しい〜。
気にするほどではないと思います。勝つときもあれば、負けるときもある。
強いていうなら時間と点差をコントロールする感覚は乏しいですね。この試合ではトランジションからミドルなんて意味ないことをしていたウエストブルックも、最後は時間を使ってコントロールしてビールに渡しつつ、ディフェンスをみて八村にパスを通してました。
そういう部分はブルズからは、あまり感じ取れないです。
ペイサーズ戦をみて、この記事を書くことを決めたので、本当にヤングの貢献がデカかったと思います。ペイサーズファンはみんな戻ってきて欲しいと思ってますね