ショートコラムです。
ホリデーを補強しながら、12勝8敗と低調なスタートになったバックス。その要因は様々あれど、特に目立っているのがディフェンス面の弱体化です。ロビン・ロペスがいなくなったことでバックアップのセンターが弱くなり、補強したクレイグが出場していないこともあって、考えすぎても仕方がないのですが、ブレッドソー→ホリデーで弱くなったと思うと悲しいよね。
実際の試合では、単調な戦術面が気になり、それ故にディフェンスにもリズムが生まれていないように見えます。そこを考え始めるとキリがないので、今回はスタッツだけを追いかけてみるショートコラムです。スタッツを確認して、試合での現象が何かを考えた方が面白いと思うので。
◎3P
最大の問題は3Pを決められていること。自分たちが一方的に決めていくのが強みだったのに、決めても決め返されるので、ヤニスが打たされる形になると簡単に停滞します。とはいえ昨シーズンまでもバックスは被3Pアテンプトの多いチームでした。
〇被3Pアテンプト
昨シーズン 39.3本(30位)
今シーズン 38.6本(27位)
このディフェンスの構図については変更されていないわけですが、成功率については雲泥の差が出ています。
〇被3P成功率
昨シーズン 35.5%(15位)
今シーズン 39.2%(29位)
プレーオフで「打たせる」弱点を見事に利用されたバックスですが、そんな戦術をどこのチームも実行できるわけではありません。ただ、今シーズンは見事に3Pを決められまくっています。確率にしたら4%程度なので大した影響はないのですが、今や「バックス相手には3P打っておけばOK」みたいな空気が出来つつあるのです。
そもそも昨シーズンまでに打たれまくっていても問題なかった理由は「成功率の低い選手に打たせる」形を作っていたからです。これはターゲットを定めるというよりは、相手のビッグ役に打たせることを優先していました。基本的にピック&ポップのプレーに対してノーガードなディフェンス戦術です。
VSバックスにおいて1試合平均10本以上の3Pを打った選手を並べると、昨シーズンからの変化は明らかで、ハンドラー役に多く打たれるように変わってしまいました。
確率の悪いビッグマンに打たせる作戦が通用していない
実際にこの傾向は強くなっていて、スタッツとしても各チームがピック&ロールからロールマンに打たせるプレーを減らしています。バックスがディフェンス時のロールマンプレーを比較してみましょう。
〇ピック&ロール ロールマン
昨シーズン 9.5回 9.3点
今シーズン 7.2回 7.7点
1つには戦術がばれていること。もう1つにはぶ厚いインサイドを攻めたくない各チームの思惑が、バックスのディフェンスへの攻略法を変えさせました。ちなみにハンドラープレーも25.4回→23.6回へと減っており、バックス相手にピック&ロールを選択しなくなりました。
なお、バックス相手というだけでなくリーグ全体で減少傾向にあります。多分。
代わりにバックス相手に増えたのがアイソレーションです。コンビプレーを減らして個人技を増やすというのは、なかなか不思議な気がしますが、対戦相手の関係もあって、顕著になっています。
〇アイソレーション
昨シーズン 4.9回 3.8点
今シーズン 7.4回 6.7点
回数にするとそこまで大きな変化ではありませんが、実は昨シーズンはリーグで最も少なく「バックス相手にアイソはするな」になっていたのですが、今シーズンは逆にリーグで6番目に多くなっていて「バックス相手にはアイソをしろ」に変わったのです。
これはなかなか面白い変化なのですが、被3P増、それもハンドラー相手の被3P増と合わせて、直近のホーネッツ戦におけるヘイワードのハイライトを見てみましょう。ヘイワードのプレーで興味深いのは、ポーティスがハンドラープレーを守れていないことと、ポーティスorブルック相手のアイソがあることです。つまり、ディフェンスの連携不足+ビッグマンを引き出されてのプルアップ3Pをやられているわけです。
ヘイワードらしい落ち着いた攻め方が目立ちますね。相手のビッグマンに打たせていたはずのバックスが、自分たちのビッグマンを引き出される展開を食らっているのでした。
◎続・被3P
続いて個人ごとの被3Pアテンプトを見ていきましょう。昨シーズンは「ビッグマンに打たせていた」ってこともあり、最も多くの3Pを打たれていたのがブルックでした。それが今シーズンはハンドラーにやられるのでホリデーが最多になるなど、やはり大きな変化があります。
①ホリデーやミドルトン、ディヴィチェンゾのところから打たれている
②ヤニスを含めて高確率で決められている
戦略がハマっていないことに加えて、ブレッドソーに比べてクローズアウトで「シュートを落とさせる」ことが出来ていないことがわかります。全体的に3Pに対するチェックは遅れがちになり、DPOYのヤニスまでもが決められまくっています。
〇被ワイドオープン3P
昨シーズン 20.9本(30位)37.5%
今シーズン 19.1本(26位)44.2%
しかし、ワイドオープンの本数は減っています。確率良く決められているのだから「打たせる選手」の設定に失敗しているわけです。相手がハマってくれなくなったともいう。
〇被コーナー3P
昨シーズン 8.3本
今シーズン 7.0本
面白いことに普通は「ワイドオープンを打たせるな」と「コーナーから打たせるな」で成功するはずが、バックスの場合はワイドオープンもコーナー3Pも減らして失敗しています。単に確率良く決められているだけではありますが、一般的なコンセプトを採用して失敗しているってどうなっているのか。
プルアップで打たれる本数が増えたら3Pを決められまくる奇妙なバックス。そうなってくるとブレッドソーがいなくなったことに大きなデメリットが生じていることになります。ホリデーがもっと頑張れってことか。まぁむしろマシューズの穴埋めが出来ていない問題なのだろうけど。
ところでブレッドソーの被3Pに対して、ホリデーの被3Pが多い理由の一つがプレータイムの違いです。ブレッドソー27.0分に対してホリデーは33.2分もプレーしています。ヤニス&ミドルトンも3分ずつ増えており、楽勝にならないからプレータイムが増え、プレータイムが増えるからディフェンスが悪化している面も否めません。
ブレッドソー→ホリデーで悪化したというよりは、「ブレッドソー+ヒル」⇒ホリデーで悪化したのかもしれません。マシューズも含めてガード陣の総合的なディフェンス力低下は痛そうです。
3Pへのディフェンスに課題が出てきてしまったバックス。それが勝率低下に繋がり、勝率低下するからパフォーマンスが落ちているって可能性もあるわけだ。
◎その他
過密日程で管理人自身が網羅的に試合を観るのが大変なことと、試合間隔が短くて、この手の記事を書くのにスタッツも変動すれば、チームも変化するのが早くて困っています。ショートコラムと銘打ったのはそういう理由です。いろいろ書いていくのは時間的に厳しいだけでなく、現実と乖離することが多くなりそう。
さて、バックスの場合は、各スタッツが大きく悪化したわけではないのにレーティングには大きく響いているのが苦しいという面もあります。カバーすべき部分を達成できているのに、トータルが悪い。
〇レーティング
昨シーズン 102.5
今シーズン 110.0
シャレにならない落ち方ですね。3Pだけではこんなことにならないのでトータルディフェンスが悪化したなぁ。
〇速攻での失点
昨シーズン 13.6
今シーズン 9.1
〇セカンドチャンス
昨シーズン 11.3
今シーズン 12.3
セカンドチャンスでの失点は増えたけど、速攻からの失点を減らしています。それも4.5点と大幅に減っているのだから、本来はディフェンスが良くなってもいいくらいです。
〇ペイント内失点
昨シーズン 49.3
今シーズン 47.3
同時にペイント内の失点も減らしました。潰すべきリスクは潰せているわけです。これでレーティングが信じられないくらいに悪化するとかHCとしては、やってられないぜ。
〇スティール
昨シーズン 7.2
今シーズン 8.3
そしてスティールも増えました。ホリデー効果に加えてディヴィチェンゾも良い数字を残しています。その一方でロビンの移籍もあってブロックは減りました。ただブルックの個人スタッツなんだけどね。
〇ブロック
昨シーズン 5.9
今シーズン 4.8
〇ブルック・ロペス
昨シーズン 2.4
今シーズン 1.5
ブルックのブロックが減ったけどペイント内の失点は減っているので問題はありません。むしろ減った理由が、ブルック本人が引き出されているからって可能性もあります。3Pに対する守り方を考えないといけないのか、インサイドをもっとブルックとヤニスに任せるべきなのか。
〇被フリースローアテンプト
昨シーズン 21.2
今シーズン 19.0
フリースローを与える本数も減りました。ペイント内の失点が減って、フリースローも与えず、でも失点が増えるっていうね。バックスが目指してきたインサイド重視の形は健在なのに結果は真逆に出てしまったのでした。
これらの数字は「相手のオフェンスが停滞すれば」ディフェンスレーティングそのものが大きく改善する可能性ももっています。ここまでは決められまくってきたけど、シュートは相手の事情でも外れるじゃないか。20試合なのでたまたま悪かったけど、バックス流のリスクマネジメントが機能すれば一気に改善するのかも。
〇被2P成功率
昨シーズン 45.5%
今シーズン 49.0%
〇被ミドル成功率
昨シーズン 39.3%
今シーズン 46.0%
ただ実は3Pだけでなく、2Pも確率良く決められています。ペイント内の失点は減ったけど、確率は上がっている。3Pだけでなくミドルを46%決められているのも響いていて、外を攻略されることで苦しんでいます。
ガード陣全体のディフェンス力低下
バックス対策が進んだ
バックスのディフェンス力低下には自分たちの事情と、相手チームの対策強化が関係していそうです。この先、改善していくのか、それともさらけ出された弱点を利用されまくるのか。強化されたと思いきや、苦しんでいるバックス。シーズン前にヤニスと再契約できて良かったね。
ガード陣のDFで1番気になるのはカナトンですね。スクリーンの対応からドライブから何から何まで守れてません。昨季まではここまで目につく事は無かったのですが、今季は顕著です。更にクレイグの怪我の影響なのかブーデンホルツァーはカナトンを使いたがるんですよね。ホリデーの代わりにエースハンドラーに付かせたり、果てはADに付かせたり。もう訳が分かりません。
クレイグが復帰したのでここら辺のバランスは変わってくるのかもしれませんがそれでも彼を長く使うのであれば監督の交代を希望したいですね。
ハイライトを見るとカナートンはかなりやられているんですよね。そこは気になっていましたが、ハイライトでしかないので。
ブーデンはかなり便利屋として起用していますが、便利なんだけど強力ではないので、良い試合と微妙な試合がわかれます。
逆にビッグマンの層が薄いのを試さず、カナートンで誤魔化すのはどうかなーと思ってます。
最後の方で言っているガードの層の問題が大きそうですね。ベンチのガードがオーガスティンとフォーブスなのはサイズとか強度の面で厳しそうな気がします。カナトンもSFとしては小さいですし去年と比較してガード〜ウィングのサイズダウンが気になります。あと個人のレーティング見ると他のメインローテの選手はみんな110切ってるのにフォーブスが114.1でした…
まあ結局サンプルがまだ足りないですし相手チームのシュートの振れ幅による部分も正直大きいと思うのでシーズン終わりにまた取り上げて欲しいです。
フォーブスは守れないです。その上でシューターとして活用するわけですが、さすがに周囲がこんなに顕著に落ちてしまうと厳しいですね。
ガード陣の問題な気がしますが、もう少し様子見で。