新生ロケッツは良い

ウエストブルックに続いてハーデンも去ったロケッツ。最大のネックになったとされるのがオーナー。経営するレストランの採算悪化により資金面の不安が大きく、ケチな性格も災いしてダントーニの残留に失敗。そこから新HCを(安いサラリーで契約してくれそうな)サイラスに決めたことで、中心選手からの信頼を失いました。

しかし、新しいものが好きな管理人は、この変化をポジティブに捉えていて、リーグの中で最も変化したチームになっているのを楽しんでいます。過密日程もあって、各チームが戦術的な色を出しにくい中、振り切っているサンダーとロケッツは色んなチャレンジが出来そうです。

新HCサイラスはハーデンとゴードンが残っている状況を鑑みて、新たな試みと従来の戦術をソフトランディングさせていきました。ただ、欠場者も多い中で結果が伴わず、ハーデンにはそっぽを向かれたことになります。トレーニングキャンプに間に合わなかったのが悪いのにね。

しかし、ハーデンのいた頃に負けた相手はレイカーズ(2試合)、ブレイザーズ、ナゲッツ、マブス、ペイサーズと強豪ばかり。そんなに急いで結論を出さなくても良いのにね。まぁサイラスにとってはハーデンがいなくなったことは、自分がやりたいことをより強く打ち出せるチャンスになったかもしれません。

幸いなことに残った選手たちは、かなり前向き。そういう選手を集めたともいえるし、サイラスが信用を掴みつつあるのかもしれません。

◎オフの補強とトレード

ウォールとカズンズを揃えたことは驚きでした。さらにクリスチャン・ウッドを加え、中心的存在にしたのも驚きというかギャンブル。ハーデンとの相性の良さもあるし、ウッド本人も自信をつけたようで、ここまで上手く回っています。しかし、これらのメインどころよりも、地味な補強がサイラスのやりたいことを示している気がします。

テイト・ヌワバ・ブラウン

2018年のドラフトで指名されなかったテイトはオランダやオーストラリアで経験を積んでロケッツにやってきました。すっかり中心選手なのでサイラスがどうしても欲しかった選手だと思われます。さらにヌワバとスターリング・ブラウンという似たようなフィジカルファイターのガード兼ウイングを加えています。

クルッツとケビン・ポーター

さらにトレードではクルッツとキャブスで問題を起こしたケビン・ポーターを獲得しており、ここでもウイングの補強をしています。フィジカルファイターではないものの、スピードと高さを生かしたディフェンスにも定評があるクルッツなので、サイラスが重視しているものが見えてきます。

ネッツとのトレードではルバートやアレン、プリンスを手にするチャンスもあったわけですが、サラリーの関係も含めてスルーしているのも面白いところです。ルバートは取るべきだったと思うけどね。

メイソン・ジョーンズ(193cm 91㎏)
ケニオン・マーティンjr(198cm 98㎏)
ブロドリック・トーマス(196cm 84㎏)

ケガ人続出によって穴埋め的に出てきた若いガード達ですが、これまでクレメンス(175cm 82㎏)、リバース(193cm 91㎏)だったのが、サイズに拘っているようにも見えます。テイトがハンドラーの試合もありましたが、全体的にオールラウンドタイプで守れる選手を好んでいそうです。

なお、ダンテ・エクサム(196cm 97㎏)も獲得しています。シュート力に大きな課題があったけど、ディフェンス力の高さは若い時から高く評価されている2014年のドラフト5位。まだ25歳。

ロケッツのロスターで90㎏を下回っているのはトーマスとマクレモアの2人だけ。一番小さいのはウォール・ゴードン・マクレモアの191cmです。史上最高のショットブロッカーPGと呼ばれるウォールなんてこともあって、サイズの小ささを感じさせない選手たちばかり。

スターの動向以上にサポートキャストは色が出るよね。このメンバー構成はディフェンス・フィジカル・オールラウンドな構成になっているだけでなく、実はマイクロボールをするのにも適しているってのも興味深いよね。

サイラスのやりたいこと
ロケッツがやってきたこと

どっちをみても、このロスターでチームつくりの第一歩を踏み出すのは、とても良い感じ。ハーデンがいなくなったことで、ディフェンスという色味も強くなってきたよ。

〇ディフェンスレーティング
初めの9試合 110.9
トレード後7試合 102.9

サンプルが少ないのとハーデンのトレード後は対戦相手が弱くなっているので、これが正しい評価ではありませんが、とてもわかりやすい変化をしているんだ。本当はマイクロボールの良い部分(オフェンス)を残しながら、ディフェンスを強くしたかったのでしょうが、狙いたいことはよくわかる。

◎ウッドとテイト

〇クリスチャン・ウッド
23.5点
FG53%
3P36%
10.8リバウンド

リーグ全体から注目されていたウッド。とはいえ、ここまでの成績は想像以上でした。スピードを生かしたドライブだけでなく、ピック&ダイブでインサイドに飛び込むプレーが秀逸。ただし、そこにパスが出てくるのはハーデンの空間把握能力の高さも大きく、得点の半分以上がハーデンのアシストからだったので、ここからどうなっていくのか。

ウッドが良かったのは3Pアテンプトは4.8本に留まり、ゴール下で7.9アテンプトもあること。しっかりとインサイドに押し込めるプレーをしており、なおかつ80%と高確率で押し込んでいます。ゴール下で止まってのシュートとなればフィジカルの弱さもあり苦しそうなのですが、殆どがスピードに乗った形で決めきっています。ここまでレイアップ系統が確率良く決まるとは思っていなかったので、自身に満ち溢れているなと。

しかし、やっぱりディフェンスレーティングは112と悪く、特にハーデンと一緒にコートに立つと123とさらに悪化します。リバウンドは稼げているので穴になったわけではありませんが、オフェンスの強みとディフェンスの弱みが明確に出てしまっています。

ウッドはスピードがある一方でフィジカルの戦いに弱いのが特徴。そのスピードも「マッチアップがセンター」ならば通用しますが、ウイング相手だとスキル不足で抜ききれず、かといってパワーで押し込むことも出来ません。

センターとしてプレーしないと輝かないウッド

でも、フィジカル負けするから守れないことが多いっていうネガティブな面もあるわけだ。良い部分は予想以上に良い形で成績に出ているウッドですが、弱みの部分は変わらずって感じでした。改善はしているよ。

ロケッツがジャレット・アレンを獲得しなかった理由もここにありそうで、2人を並べるのが難しいんだよね。どっちもセンターでプレーしないと価値が出そうにないんだ。

そんなウッドの不安ばかりを懸念していたのですが、埋め方が上手かったロケッツ。まずバックアップをカズンズにしたことでフィジカルタイプのセンターを置きました。ただし、計算通りには働いていない。こればかりは仕方がない。

そして前述のフィジカルファイターたちです。PJタッカーも含めて、センター相手でも苦にしないウイングがずらっと並ぶのは壮観。センター単体では弱くてもチームとしてはフィジカルな対応を得意としています。

その中でもテイトは圧巻。ここまでタッカーに次ぐ420分のプレータイムで、それもスターターとしてプレーしているのに、異常なディフェンスレーティングを誇っています。

〇ディフェンスレーティング
テイト 101.9
ハーデン 117.0
ウッド 112.1

アウトサイドでもインサイドでも守るテイトがコートにいるとキーマンを抑えるだけでなく、チームのリバウンド率が向上します。オンボールでもオフボールでも助けてくれているので、チームディフェンスとしての機能性を高めてくれます。

〇テイト
26.2分
8.3点
4.6リバウンド
0.8スティール
0.8ブロック

テイト本人のスタッツは凡庸ですが、この選手がいるだけで周囲がぐっと楽になる。これってそのままタッカーと似たような特徴です。ヌワバ、ダニエル・ハウス、ブラウンといったウイングと合わせて、常時2~3人がコートに立っているので、簡単には崩させません。

ハーデン+ウッドで2ポジションを埋めてしまうと、残り3人をディフェンダーにするのは難しかったのですが、ハーデンがいなくなってオラディポになったから、よりディフェンス面を意識したローテにも出来ています。

テイトを中心にずらっと並ぶディフェンダー

ハーデン、ゴードン、ウッドの弱点を補うかのようなロスター構成になっていたロケッツ。ハーデンのトレードでその傾向がさらに強まりました。ルバートではなくオラディポを選んだのは、再トレードの匂いが強いですが、戦術的にもフィジカルなディフェンスを強く打ち出したかったのかもしれません。

◎オフェンスオプション

そんなディフェンス色が強いサイラスですが、それはオフェンス面での課題にもなります。ハーデンのアイソに頼りすぎていたことを反省するかのように、オフボールでの崩しを増やしていきましたが、前任が天才・ダントーニってこともあって、オフェンス面での強いインパクトを残すには至っていません。戦術がダメなのではなく、前から良かっただけだね。

〇オフェンスの変化
得点 117.8 → 110.5
3Pアテンプト 45.3本 → 37.5本
3P成功率 34.5% → 35.3%
アシスト 21.6 → 22.7
ターンオーバー 14.7 → 15.8

レーティングで112.5→108.3と下がっているわけですが、3P減が特に目立ちます。ハーデンがいなくなってから3本近く下がっているので、この先は35本くらいまで落ちていくでしょう。

ウォール、ハウス、ヌワバ、オラディポが成功率30%を下回っており、純粋に個人の戦力不足なのは否めません。ブラウンが47%も決めてくれて助かっている面もあり、平均は悪くないものの、チームとして改善しないとダメダメよ。

まだオフボールからの崩しと、オンボールでのプレーメイクが噛み合わさっておらず、連携構築にも個人の判断力にも課題が大きそうですが、ディフェンダーを集めてきた事情もあるので、長い目でみてあげるしかありません。

ところでオールラウンドタイプのウイングをベースにしたロスター構成において、どんなオフェンスを組み立てるのかビジョンを作るのは難しくなります。みんなが何でも出来るので、ドライブも3Pもカッティングもあるのは良い部分だけど、「何を強く打ち出すのか」が見えてこないことがあります。

離脱者だらけの試合を観ていると、かなり物足りないロケッツのオフェンス。しかし、ロスターを眺めていくと、オプションとなる特徴的な武器を持った選手を抱えていることも分かります。

起点&ドライブのウォール
個人技のオラディポ
シューター系ドライブのゴードン
ムービングシューターのマクレモア
ポイントセンターのカズンズ

これらの武器は現状では全くかみ合っていません。特にオラディポとゴードンがハンドラーとしてボールを止めてしまうので、噛み合いそうにない。でも、違う武器を揃えているってのは面白く、似たようなオールラウンダーとオフェンスオプションの組み合わせになるようです。

まぁ次のドラフトを見据えている動きがメインなので、現段階では明確な形を求めていないのかもしれません。だからいろんなことが出来るようにしておきたいくらいかも。オフェンスは全然ダメだけど、その代わりに色んなことをしておこう。選手がキレなければいいね。

◎ベースを作るシーズン

そんなわけで新生ロケッツはディフェンスとハードワークをベースにしたチームつくりを進めており、オフェンス面は全員がアクションするけど、それをチームとしての形には出来ていません。現段階ではそれでよいのでしょう。ベースを作るシーズンなんだ。

ハードワーク好きの管理人的には、触手が動くチームです。サンダーほどのわかりやすさはないけど、いろんなことを試したい雰囲気なのも良い。ただ、わかりやすくないから停滞している試合は、何がしたいのか全く分からず、見てられない。

再建に定評のあるHCって自分のやり方を通しやすい環境の方が跳ねるよね。サイラスもハーデンがいなくなったから、自由度が高まったはず。とはいえ、オラディポとウォールがいるので、気は使いながらの采配です。

シーズン終盤までにいろんな変化をしていくでしょうが、ロケッツとしては新しい風なので、変化を楽しんでみましょう。

新生ロケッツは良い” への4件のフィードバック

  1. 普段注目されないチームにスポットライトを当てていただいて、感謝してます。すごく勉強になります。ロケッツとウィザーズは共にスタートは悲惨なチーム状況だったのにもかかわらず、差が出てますね。積み重ねの重要性を感じます。

    1. NBAは注目度の低いチームの方が、思い切ったことをして立て直すことがあります。なので、そういうチームを探していくのも面白いです。
      ウィザーズはつまらないけど・・・

  2. KPJは使われるんでしょうか?昨シーズンのTS%は53.5%で、問題児ではあるものの、個人技(ステップバック)やP&Rハンドラーからの崩しでは目を見張るようなプレイもあった印象。プレイスタイル的にはハーデンに近いんですが、DRtgが115と悪くて、エリックゴードンもいるのに使われるのかなぁと。やっぱりオラディポを再トレードするんですかね?

    1. 使わないと思うんですけどね。ウォールもゴードンもケガで離脱も多いし、オフェンスオプションを増やしておきたいのかなーと思います。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA