ラメロのトリプルダブルとヘイワード

題名が長くなってしまった。

ラメロ・ボールが史上最年少のトリプルダブルを達成しました。セカンドユニットの主力でありながら、トリプルダブルは脅威であり、開幕10試合の平均スタッツは素晴らしいものになっています。

プレータイム 24.9
得点 12.8
FG 43.5%
3P 35.6%
リバウンド 6.3
(OR)  2.0
アシスト  5.9
ターンオーバー2.1
スティール 1.5

ラメロをみていて思うのは、HCボレゴの下でプレーすることで余計な部分をそぎ落とすことと、チーム戦術の中で何をするべきかを学んでいること。つまりは、良いコーチのいるチームに加入しているという印象です。

今シーズンはドラフト上位指名達がセカンドユニットのことが多い特殊な雰囲気ですが、最近はワン&ダンで未熟な選手も多く、この形で修業を積んでいるのはポジティブです。特にドラフト前においてラメロは「天才的」と称したくなるプレーの一方で、とにかく粗さばかりが目立っている選手だったので、ボレゴによる負荷をかけすぎない起用法が好結果を生んでいそうです。

一方でホーネッツについては、ロスター構成は疑問だらけでした。

ラメロを獲得したものの、そもそもグラハム&ロジアーのツーガードシステムを採用しており、さらにヘイワードを獲得したものの、そこにはブリッジス&ワシントンがいました。マーティン・ツインズなんかもいるので、選手はダボ付き気味。特にハンドラー過多にも思えます。

ただし、ラメロについて個人的に思っていたのは「PGじゃなくて、ウイング系をやらせた方が面白そう」でした。ハンドラーをやらせすぎない方が、ソリッドなプレーをすると思えましたし、実際にここまで最も評価できるのはリバウンドかもしれません。

そんなわけでラメロのトリプルダブルについて、思うことを書くためには、ホーネッツについても書かなければ、分かりにくい気がするのでした。

◎リバウンドと速攻

ここまでのラメロの起用法をみてみると、グラハム・ロジアー・ヘイワードのハンドラー達とユニット構成するのが通常になっています。

①ロジアー&ヘイワードと同時起用 10.6分
②グラハムと同時起用 9.2分

こんな感じになっており、ハンドラー単独で起用はされません。3ハンドラーの一角か、PGグラハムとのコンビです。そのためハンドラーではあるものの、完全にラメロ起点のオフェンスというのは、ポジションの割には少なくなっています。

粗さが目立つラメロにボールを持たせすぎないことが、成功の要因になっているといえます。

しかし、これはむしろ「ラメロがアジャストできている」ことに驚きがあります。ハンドラー一直線で育ってきた19歳が、NBAに来てすぐに違うポジションをこなせていることを高く評価したいです。同時に、そんな形でも「自分の良さ」を発揮できているわけです。

そんなラメロの良さの中でも【リバウンドが最大の武器】に見えていますが、そのポジショニング・反応力は特に素晴らしく、「なんでもないリバウンド」を多くとっています。

〇リバウンド
本数 6.3本
チャンス 10.1回
奪取率 62.4%

ラメロが取れる範囲に落ちてきた回数に対して、なんと62%も奪っています。すごい数字なのですが、最近はウエストブルック、ドンチッチ、シモンズだけでなく、デジョンテ・マレーなんかも増やしているので、彼らと同じようなタイプです。

〇リバウンド時のリングとの距離 9.1

一方で特徴的なのは、リバウンドを取る位置。平均9.1フィートとリングからかなり遠い位置で奪っています。他の選手を並べてみると

ウエストブルック 5.8
ドンチッチ 5.2
シモンズ 7.2

こんな感じなので、ロングリバウンドをカバーするのが極めてうまいわけです。そしてロングリバウンドが上手いってことは、そこからワンパス速攻になりやすい。リバウンドの上手さがアシスト数増加に繋がっています。

ところで、兄のロンゾはどうなっているのか。もともと、この上手さがロンゾの持ち味でしたが、アシスト数が7.0→4.4と激減しています。イングラムに任せることが増えたチーム設計の問題ですが、リバウンド数も6.1→4.3と減っています。

ラメロをウイングにするというのは、単なるポジションではなく、リバウンドを取らせることと「他の選手が走っている」状態を作ることです。今のホーネッツはハンドラーが多いというよりは、走る選手が多いことがメリットありそうです。

〇ホーネッツの速攻 11.6 → 17.6

ラメロ効果が大きく、リーグ最低クラスだった速攻の本数がリーグ3位まで上がってきました。点を取っているのは、ヘイワード、ロジアー、グラハムの順です。特にリバウンドに参加するはずのヘイワードが走っているのは見逃せません。

ラメロにリバウンドを取らせ、ヘイワードやロジアーが走る

この構図が上手くいっています。それはラメロがいなければ出来なかったし、ラメロだけでも出来なかった。それぞれの特徴に合わせて、ボレゴが上手く役割調整しているわけですが、同時にチーム全体が走ることで、ラメロに突破させるよりもパス能力を存分に使っているといえます。そぎ落としている。

◎ボールシェア

ハンドラーを増やした上で、走る形も設計してきたホーネッツですが、ボールシェアも1つの特徴になっています。ただし、これは従来からの特徴でもあります。

タッチ数 427.8→439.9
平均タッチ秒 3.00→2.76

それが更にタッチ数を増やしました。最大の特徴は1回のボール保持時間が劇的に減ったことです。ハンドラーがボールをもって考える時間が削減されたとも言えます。

ハンドラーは増やしたが、1人がボールを持つ時間は短くなった

これが出来ているのは素晴らしいことです。速攻が増えたのも1つの要因ですが、ハンドラーがダボついていると思っていたのに、むしろ好転するとは予想外でした。

ハンドラーそれぞれのタッチ数と平均保持時間を並べてみましょう。

グラハム 74.2回 4.13秒
ヘイワード 71.3回 2.67秒
ラメロ  64.2回 3.63秒
ロジアー 55.6回 2.93秒

グラハムとラメロが長くなっています。グラハムがもう少しテンポよく回せると、さらに改善しそうです。ラメロはプレータイムに対して、タッチ数がとても多いのですが、これがフロントコートになると減ってきます。

〇フロントコートタッチ数
グラハム 34.1回
ヘイワード 45.5回
ラメロ  29.4回
ロジアー 36.3回

フロントコートではヘイワードが何度もボールをもらい直しており、そこにロジアーが続きます。セルティックスかよ・・・あっちはボール回らなくなったけど。しかもヘイワードはパスをもらった本数よりも、出した本数の方が多い稀有なエースです。

いずれにしてもヘイワードの存在が、ハンドラーが多いロスター構成でもボールシェアを実現させているといえそうです。速攻の件も含めて、エースとして以上にヘイワード効果の大きさが光っているわけです。

そしてラメロはボールシェアのチームにいることで成功しています。「ウイングにした方が良い」とはいったものの、オンボールプレイヤーなので、ボールを持たないと不満も出そうですが、ホーネッツではむしろヘイワードの方が多くのパスをもらっているので、PGとしてボールを持ちまくらない方がリズムが出ていそうです。

ヘイワード効果はラメロに大きな恩恵を与えている

そしてチームはここまでリーグ最多の29.0アシストが冴えわたっています。ハンドラーを増やし、ボールシェアを進め、オフボールのランニングも増やす。HCボレゴは難しいと思われたチームバランスを見事にコントロールしています。

◎継続する課題

3シーズン目のボレゴですが、成績に反して内容は素晴らしく、このまま継続してチームを成長させていくことが期待されます。しかし、昨シーズンに勝てなかった要因が全く改善されていない問題も残っています。

フロアを広く使い、スクリーンとオフボールムーブを混ぜながら、アタックするチャンスを作れるオフェンスシステムは優秀でしたが、肝心のドライブフィニッシュに課題がありました。

グラハム、ブリッジス、ワシントンと若い選手を中心にアタックさせていたため、個人の成長待ちだった部分です。しかし、今シーズンもFG成功率の悪さは悩みどころになっています。(EFG)

グラハム 26.9%(36.6%)
ワシントン 43.0%(48.9%)
ブリッジス 43.6%(53.2%)

それぞれ3Pは悪くないのですが、勝てるチームになるには安定して決めてくれないと苦しいよね。逆にこれでも5割勝っているのもすごいのですが。オフェンスではなくディフェンス力で勝ち切るのがパターンになっています。それは守り切ってカウンターの機会も増えるってことかな。

ラメロが好成績を残していけるのであれば、上の3人をトレードして、確率の良いフィニッシャーを探すのも1つの手段かもしれません。

ヘイワードとラメロ。新たに加わった選手の特徴を生かすために、戦術バランスも変更しているホーネッツ。昨シーズンからの課題も解決できれば、もっと伸びてくるのですが、伸びないのかもしれないのでした。

ラメロのトリプルダブルとヘイワード” への4件のフィードバック

  1. ホーネッツは今年は8位ぐらいに滑り込めそうでしょうか?
    ジャズ時代のヘイワードは好きでしたが、健康に不安が。。

    1. ヘイワードの健康は不安ですが、今シーズンに限っては他のチームもコロナなんかで欠場も多く、絶対的な問題にはならない気がします。

      とにかく「健康第一」のシーズンですので、8位になるのに大事なことは健康。マジックやホークスがケガ人で苦しんでいるので、チャンスはありそうですね。

  2. 開幕10試合を過ぎたところで、平均リバウンドをいちばん稼いでいるルーキーがラメロ・ボールというのは想像出来ませんでした。アシストも1位、スティールも1位、efficiencyも1位、得点は2位。ベストPGはハリバートンだと思ってましたが、effも含めてラメロが上回っているのは意外です。ただ10試合なんでまだ何とも評価できませんが。

    1. ハリバートンはスタッツよりも「ここで決めるのかよ」という印象の方が強いですね。
      派手なラメロと地味なハリバートンが、同じような輝き方をしているのも面白いです。

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