ケルドン・ジョンソンは続くのか

スパーズの2年目はフォーブスのいなくなったチャンスで輝けるのか?

「バブルでは若手たちの成長を最優先にした戦いにします。てへぺろ♪」

という前振りを十分にしておいて、実際にはデローザン中心の高速バスケに活路を見出したスパーズ。あのバスケを新シーズンでもやるのかは注目ですが、あんなの1シーズンやり続けたら体がもたないぜ。まぁ付け焼刃でもあったのでバブルの終盤にはスローダウンしていましたが。

そんな「てへぺろ♪」な中で高速バスケに移行した1つの理由がケルドン・ジョンソンを起用したい事情でした。管理人が「誰だよ」と思ったくらいなので、殆ど試合には出ていなくて、2月23日のサンダー戦で13分のプレータイムを得たのがキャリア初の二桁プレータイム、そこから中断まで4試合に出たくらいでした。

2019年の29位指名なので、スパーズとしては待望の1巡目指名が戦力として台頭してきた時期に中断となり、再開後はローテの一角に組み込んできました。

最近のスパーズはロスターの迷走が酷いわけですが、ケルドンも198cmのガードタイプなので、なんでそんなにスモールを集めてしまうのかって感じでしたが、一方でそのスタッツはスパーズらしさが出ています。

オフにはフォーブスが移籍したので、ガードは1枚減りました。ケルドンには1年間ローテにはいって活躍することが望まれているでしょう。

◎NCAAとGリーグ

ケンタッキーからワン&ダンのケルドンは、タイラー・ヒーローの同級生。身長が同じなのでポジション的にもSGと同じですが、体重はケルドンの方が12キロも重く、よりパワープレーが期待できます。

〇大学1年時
13.5点
5.9リバウンド
FG46%
3P38%

全アテンプトの1/3くらいを占める3Pの確率が良く、ヒーローの35%を上回ります。得点も14.0だったヒーローと同等でしたが、リバウンドはケルドンが上回っています。

シューティングが良く、インサイドでも踏ん張れるガード

スタッツのイメージはこんな感じですね。ただし、シュート力がある割にはFG成功率が低く、そこまでインサイドで効果的に得点できていたとも思えません。ではハイライトを探してみましょう。

ケルドンは高さこそないものの、パワフルなファイターで、特にディフェンス面ではパワーとアジリティの両方を持ち合わせたエネルギッシュなプレーをしています。なので、実質的にはSFキャラとしてスパーズは指名したのでしょう。

シューティングが課題でしたが、3P38%を残したように既に改善傾向にあるため、NBAで伸ばしていける可能性が高いと判断できます。問題はチームオフェンスで適切な判断をするのが苦手な事かな。個人で決めきる能力はあるけど、パスアウトなどの判断がね。

つまりここには高速バスケの1つの理由が含まれています。ハーフコートが増えすぎるとケルドンは困ってしまうんじゃないか。

29位でスパーズに指名されたものの、出番は少なく、Gリーグを主戦場にしました。GリーグではNCAAからはイメージの違うスタッツを残しています。

〇Gリーグ(30試合)
20.2点
FG53%
3P25%
5.6リバウンド
2.4アシスト

「3Pは決まっているけど、2Pはイマイチだね」だった大学時代から、「3Pはイマイチだけど、2Pは決まっているね」に変化しています。NCAAルールよりもマンツーが基本のNBAルールの方がインサイドフィニッシュが楽だったのでしょう。

そしてリバウンドもSFキャラだと考えれば十分なスタッツを残し、アシストも及第点まで増えてきました。ただし、ターンオーバーが2.5もあったよ。

Gリーグなのでハンドラー的なプレーもありますが、ウイング・コーナーからのドライブが形になっています。ドライブからコンタクトしてパワーを使えているのと、NBAルールでカバーの人数が少ないことがフィニッシュを効率的にしているように見えます。

あと、スパーズ自体がスモールっぽいよね。サマニッチが守れたら、これをNBAでも出来そうなんだけどな。でもスモール向きのメトゥはいなくなったしさ。そこら辺はよくわかんないスパーズ。

いずれにしてもキレイにNBAルール仕様にお着換えしたようなGリーグ時代でした。大学そのままのプレーだと困ったかもしれませんが、ルールの違いからインサイドが薄くなり、そこを有効活用したことで、高確率のフィニッシャーとしてNBAに上がってくるのでした。

◎フィニッシャー

ケルドンがGリーグで無双していた頃、スパーズではデローザンが神がかっていましたね。FG60%オーバーは当たり前のミドルレンジシューターっていう新ジャンルを開拓中。オルドリッジがあと5歳若ければスパーズは強かっただろうな。

スパーズに上がってきたケルドンは3月の4試合で結果を残します。

〇3月のケルドン
16.7分
7.0点
FG62.5%
3P50.0%

その内容は超高確率のシュートで期待を抱かせるもので・・・というか、4試合じゃ「たまたま」な感じのスタッツでした。これで15点取っているなら話は違いますが、7点の選手が高確率で決めてもねぇ。

Gリーグで決まらなかった3Pが突如として決まっている事もあり、まぁ信用ならないスタッツなのさ。ある意味、ケルドンからすると好調だったのに中断でぶった切られた感じに。迎えたバブルでは主力の一部として起用されることになりました。

〇バブルのケルドン
26.1分
14.1点
FG63.8%
3P64.7%
5.0リバウンド
1.3スティール

8試合平均14点を奪いながら、FGは驚異の64%を記録したケルドン。大きく出遅れたドラフト29位でしたが、一気にまくってきました。結局、シーズン通してFG59%という異様な成績を残したのです。

超高確率だった3Pに関しては偶然の要素と必然の要素がありますが、いずれにしても重要だったのは「コーナーで仕事をする」こと。NBAにきてまでハンドラーは難しいでしょうが、そこはガードの多いチーム事情もあってケルドンの役割ではありませんでした。

Gリーグよりも「プレーを減らす」ことでさらに高いFGを記録したのは、役割分担のスパーズらしかったといえます。そして大学時代にあったウィークポイントは隠れてしまいました。改善したのか、NBAルールなのか、ウイング選任だからなのかはわかりませんが、スパーズのチーム戦術ならば密集地帯に飛び込むことはないよね。

1on1で抜くことは少なく、殆どがディフェンスが崩れたところに飛び込んでいます。ハンドリングや判断力で抜くのは微妙ですが、一瞬でも前に出てしまえばスピードとパワーを併せ持った推進力で突き進めてしまいます。そういうシチュエーションで輝く、ウイングらしいフィニッシャーになっています。

何よりもアンダーサイズながらウイングとして求められるリバウンドを奪えていたのは大きく、またディフェンスでもサイズのデメリットを上回るハッスルっぷりで1.3スティール。高確率のオフェンス以上に、ディフェンダーとして貢献できたことはケルドンの可能性を高めてくれました

ガードよりではあるものの、ウイングとして高確率のフィニッシュとディフェンスで貢献したケルドン。10分以上プレーしたのはたった13試合でしたが、期待が高まっている新シーズンです。

◎ショットアテンプト

ケルドンの高確率FGをもう少し分解してみましょう。いくつかテーマがありますが、まずはスパーズがトランジションゲームに移行したことを考えてみます。

ガードよりのウイングであり、プレッシャーディフェンスを得意とする選手なので、ハーフコートのチーム戦術よりも個人能力が目立つ形の方が好ましいです。また、1on1オフェンスでは強みを発揮していないので、アンストラクチャーなトランジションでフィニッシュしたいところ。結構ワガママな注文だな。

いずれにしても、トランジションゲームの方が運動能力が発揮されやすく、攻守にケルドンの良さは出てくるでしょう。あとロニー・ウォーカーもね。デローザンの登録をPFにしてまでスモール戦術にした理由のひとつが、選手の個性にありました。

〇ショットクロック別
15秒以内 2.0本 
7~15秒 2.4本
  ~7秒 0.8本

とはいえ、意外と普通のオフェンスで打っています。もっと15秒以下が多いかと思いましたが、「スパーズにしては少しトランジションが多い程度」って感じでした。速攻も0.6点なので、そこまでトランジションマックスな選手ではありませんでした。

ってことは新シーズンも似たような活躍を続けることが出来るのかな。「速攻で決めまくっていただけ」だと不安ですが、ハーフコートでも決めることが出来ていたなら、ちゃんとシステムの中で活躍していたってことです。

次にウイングとしてのシューティングを考えてみましょう。高確率の3Pはキャッチ&シュートがメインになっていそうです。なお、母数が少ないのでシーズントータルを載せます。

〇3P
キャッチ&シュート 20本
プルアップ 1本

〇ポジション別
右コーナー  3本
左コーナー 12本
その他 6本

左コーナー担当でのキャッチ&3P担当になっています。20本のみのサンプルとはいえ、高確率で決めることが出来たわけですが、NBAレベルなので余計なプレーはせず「自分の仕事場を限定」して成功した形。これは新シーズンでディフェンス側に対応されてしまう可能性があります。

ちなみに右コーナーはミルズとベリネリのシューターコンビ、そしてゲイとライルズのPFコンビが使っています。・・・といっても、この4人は左コーナーも使っているので、何故かケルドンだけが片方のコーナーを使いました。そこもどうするのかね?

左コーナーで待っている担当だったケルドン。プレーエリアを広げ、そのうえで高確率を続けることが出来るのか。プレーエリアよりも確率が未知です。

〇ディフェンスとの距離別3P
4フィート以内 0本
6フィート以内(オープン) 4本
6フィート超(ワイドオープン) 18本

そして当然のようにドフリーでのみ打っています。さすがに主力になったらこんな偏ったアテンプトでは通用しないので、タフショットも増え、確率は下がるでしょう。にしても左コーナー担当でこれだけワイドオープンになっているってのもスゴイね。

デローザンのアタックから出てくるパスが多いスパーズですが、デローザンも本来は左サイドから仕掛けることが多いので、同じサイド担当ってなります。うーん、ここもどうなるのか不安です。

新シーズンでスパーズがどんな戦術、どんなローテで戦ってくるのか、現時点では全く分かりませんが、ケルドンにとっては大きなチャンスがあります。ディフェンスでファイトし、オフェンスで堅実にシュートを決める。当たり前のことを当たり前にやるだけです。それが難しいんだ。

その上で、主力になるのであればプラスの要素を生み出さなければいけません。一番大きな課題は「安定した3P」になりますが、加えてオープン以外のシチュエーションで、プレーをクリエイトすることや、オフボールムーブからの3Pを決めるような形までいけると好ましい。

【ケルドンの課題】
・安定した3P
・プレーエリアの拡大
・ウイングからのクリエイト
・ムービングシューター

この中で2つ達成できれば良い感じになるでしょう。シュートが上手いのか、上手くないのか、イマイチよくわかんない選手ってのも珍しいかも。高確率で決めているんだけど、じゃあ「シューターのように」ってなると苦しそう。

特にクリエイトする選手を目指すのか、シューターを目指すのか、ここが大きな分岐点になりそうです。マレー、ホワイト、ロニー・ウォーカーがいるのでチーム事情としてはシューターなんだよね。

スパーズはデローザンにとって相棒だったシューターのフォーブスがいなくなりました。そこにディフェンスの良いケルドンが3Pでも貢献し、ウイングとして台頭できればチーム力はアップします。とはいえ、昨シーズンの高確率を維持できるとは限らないので、まずはシーズン通して40%決めるのが目標です。

プレーオフでタイラー・ヒーローが輝いたように、ルーキーの1年間は大きく成長する期間です。バブルでみせた輝きを2年目にも見せられるか。ヒーローと肩を並べるように頑張りましょう。

ケルドン・ジョンソンは続くのか” への10件のフィードバック

  1. 最近の流れでいきなりのケルドンはビックリでした!つにその存在がバレてしまいましたか、、笑

    そんなわけでスパーズファン誰もがケルドンほかヤングコアに期待をしているシーズンなんですが、ケルドン怪我してキャンプでてないんですよね、、
    軽症とのことなんですが普通にギブスしてるレベルでして、いつ戻ってこれるのやら。

    ちなみにバブルの要だったホワイトも怪我で、こちらは手術明けなんでもう少しかかりそうで、
    どういうかたちでシーズン戦っていくのかファンでも想像できません。

    1. ギブスの写真はみました。大怪我では無さそうですが、大事な時期だけに、頑張るべきだけど、ケガを長引かせるのは最悪。ハイペースも含めてコンディションはスパーズの大きな課題なんですよね。

  2. GMもポポビッチもバブルでのバスケを継続させると言っているのでスパーズファンとして若手の活躍が見れそうなので楽しみです。ケルドンは開幕間に合いそうらしいですがホワイトが遅れるらしいのでマレーの成長に期待しています。OKCのSGAのようなガードにマレーもなってくれると嬉しいのですがwhy notさんはどうおもわれますか?

    1. マレーはトニー・パーカー路線のPGやらされてますが、本当はレナードがいたシーズンのようにウイングからのスラッシャーでしょうね。オフェンスはホワイトをハンドラーにした方が良いので、あとは5人のバランス次第。

  3. こうして見ると去年のドラフトは本当に豊作だったのですね
    正直29位って契約保証がある分2巡目31位より価値が低いなんて言われる指名順位ですがこのままローテーションに入ればルーキー契約でしばらくいる以上育てがいもありますし大得です
    3Pが課題と言ってもシュート力自体は改善しそうなタイプなのもいいです
    ハーフコートでのオフィンスクリエイト力だけはセンスもあるので難しいかもしれませんがディフェンスを頑張るので最低限でもロールプレーヤーとしてチームに貢献しそうですね

    1. ダニー・グリーンになるか、レナードになるか。
      路線としては前者にみえますが、進化の方向性が気になる選手です。

  4. 何と言うか「若くエネルギッシュなPJタッカー」みたいなキャラですよね。
    このサイズの選手としてはフィジカルが並外れて強く、ディフェンスでのハッスルとリバウンドで貢献し、オフェンスでは合わせの動きからの高確率フィニッシュとコーナースリーを担当と。
    現状でも既に、充分良いロールプレイヤーだと思います。
    ただ仰る通りNBAではハンドラー的なプレイと言うか、自分起点のプレイはあまりありません。
    現状ではそれを封印しているからこそ効率的なプレイヤーでいられているのでしょうが、それができるようになるかがスター選手として台頭できるか、ハッスル系ロールプレイヤーに留まるかの分岐点かなあと。

    1. でも、まずはハッスル系で1年戦うことが大事かなと思います。本人が未知数なのもあれば、チームもね。ハンドラーばかりなので、変にそこに参加するよりも、リバウンド取りまくって欲しい。
      シーズン終わる頃に、どんな選手になっているかが楽しみです。

  5. 他の人も仰ってますがスパーズはバブルでの高速バスケを継続する考えのようです。ケルドンをはじめマレーやロニーもハーフコートオフェンスでの判断がよくないという事情からでしょうが1シーズン続けるのは無理な話。ただでさえ現時点でホワイトとケルドンを怪我で欠いているのに。ポポは一体どう考えているんでしょう。

    高速バスケとも関連してスパーズがスモール化している話。今ドラフトでもヴァッセルという200cm弱のSG/SFを指名してさらに拍車がかかってます。ヴァッセルくん自体は何も悪くないのですが、アンダーサイズのウイングであることといいプレイメイク力がイマイチであることといい、どう考えても似たようなタイプを集めすぎだと思います。サイズのあるウイングについては2wayでKBDと、Exhibit10でCam Reynoldsと契約したのでこの二人のどちらかだけでいいのでローテーションに食い込んできてくれることを願ってます。

    話は変わって。ケルドンはバブルでの活躍によって国内外のファンからの期待が一気に高まりました。それはマレーやロニーを上回るほどです。4つの課題を挙げていただきましたが、それらをすべてクリアすればオールスターも見えてくると思います。ファンとしてはぜひそこまで期待したいですね。バブルでの活躍がマグレではなかったことを証明してくれ!

    1. 『バブルと同じ戦い方をする。てへぺろ♪』

      をやりかねないので、信じてなかったり。バブルも結局はペース落としていきましたし。アイデア不足に陥るのでダントーニをACに呼ぶべきでした。

      ビッグマン問題は解決していないので、どーすんのか?
      と、言い続けることになりそうな。

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