サンズとクリス・ポール

世界最高のPGであるリッキー・ルビオとトレードされたポイント・ゴッドはサンズをどう変えるのか?

【加入】
クリス・ポール
ネイダー
クラウダー
ムーア
ダミアン・ジョーンズ

【放出】
ルビオ
ウーブレ
べインズ

バブル最強のサンズはオフになるとクレバーな補強で自分たちの良さを残したままバージョンアップすることを目指しました。今回はクリス・ポールを中心としてサンズの展望を考えていきましょう。なお、もっとも重要なのはエイトンというのが前回の記事でした。

そのエイトンとルビオはサンズにとっては、ブッカーと並びキープレイヤーになっていました。オン・オフコートのレーティング差を比べてみましょう。

〇レーティング差 オン/オフ
ブッカー  2.7/△3.8
ルビオ   4.0/△2.5
エイトン  4.0/△1.1
ブリッジス 2.9/△2.5
ウーブレ  0.2/1.8

ルビオとエイトンが最も良いレーティングを叩き出し、特にルビオがベンチに下がると△6.5なのでブッカーと並んで欠かせない存在だったわけです。

ちなみに38試合しか出場しなかったエイトンは20勝18敗と勝ち越し、ルビオとエイトン両方が試合に出た36試合は20勝16敗でした。ブッカーがいなかった3試合は全敗ね。

主としてブッカーが下がるとオフェンスが極端に悪くなり、エイトンが下がるとディフェンスが悪くなり、ルビオが下がると両方が悪くなりました。まぁ単純にルビオが両者と同時起用されている関係もあるのですが。そんなわけで実はクリス・ポールは

偉大なる前任者ルビオと比較される

という状況になります。ちょうどジャズが「ルビオからコンリーでバージョンアップに成功だ!」と喜んだら、実際にはチーム力が下がってしまった経緯があるので、クリス・ポールのイメージに騙されてしまうと危険です。

とはいえ、個人的には今回のトレードはサンズからみてポジティブだと考えてもいます。まずはそこから触れていきましょう。

◎バブルとスターター

バブルで突然強くなったと思われたサンズですが、実際にはスターターユニットの強さは中断前から光っていました。ウーブレがキャメロン・ジョンソンになっても違和感なく戦えたくらいの違いです。書いておいてよかったぜ。

そんなチームは「8試合しかない」状況で、プレーオフ仕様の戦い方に入り、見事に成功したのがバブルです。べインズとウーブレは離脱していたものの、少人数ローテによって勝ち抜いたのでした。

ただし、1つだけ大きく違った要素があります。それがキャメロン・ペインの存在。「スターターだけは強い」チームに登場したシックスマンは8連勝のキーマンでした。

〇ペイン
22.9分
10.9点
FG48.5%
3P51.7%
3.0アシスト

つまりルビオで十分に強いチームだったのだから、クリス・ポールが活躍したところでスターターは強くなりません。これらの事を踏まえた上でクリス・ポールの加入について考えていきます。

①セカンドエースとしてのCP3

サンズの「スターターが強い」におけるオフェンス面はブッカーが全てです。エースがコートにいるか否かで大きく左右されてしまうサンズ。言い換えればブッカー以外にエース格がいないのが問題でした。個人で打開してしまう選手が足りなかった。

その点でクリス・ポールの補強は2人目のエースとして最適です。基本はPGとしてプレーしてもらいながら、ブッカーをベンチに置いたときはエースになる。ルビオには出来ない役割を引き受けてくれます。

ブッカーのプレータイム 35.9
ルビオ+ブッカー 25.0
ルビオのプレータイム 31.0

試合数が違うので「大体」になりますが、
両方オンコート25.0分
ブッカーのみ 10.9分
ルビオのみ   6.0分
ブッカーのいない12分がサンズの課題ですが、6分はルビオがなんとなく埋めていました。バブルではもっと2人を分割していた印象ですが、いずれにしても「片方しかコートにいない時間」をどうにかするのが重要です。

ただし35歳のクリス・ポールも30分プレイヤーなので、ルビオと同じくらいしかプレータイムを割くことが出来ません。これだとブッカーの負担は大きいままです。

〇目標プレータイム
両方オンコート20.0分
ブッカーのみ 10.0分
CP3のみ  10.0分

新シーズンで目指すべきは両ガードがコートにいる時間を20分以下に減らし、片方しかいない時間でも戦える形にすることです。これはルビオよりもCP3の方が向いています。

CP3はブッカーに頼らないオフェンスを作れ
CP3&エイトンでプレー構築しろ

命令形ですが、クリス・ポールなので特に問題ないでしょう。いずれにしても結論的にCP3に最も大切な仕事は戦術ブッカーからの脱却です。既にシステム的には昨シーズンの時点で戦術ブッカーではなくなっていますが、能力的にはブッカー頼みなので、打開してもらいましょう。

課題:ペインは働けるのか?

しかし、クリス・ポールなんてケガの多い選手を信じすぎてもいけません。その点でサンズはもう1人得点の取れるガードを加入させたいところです。なお、ディフェンスガードはジャボン・カーターがいます。オコボも残るのかな。

アイザイア・トーマスは1つの手段として面白いですが、どうせシーズンが始まってからでも獲得可能でしょうから、やっぱりバブルの立役者であるペインを信じましょう。長いシーズンを安定的に戦うためには15分前後のプレータイムで働けるサード・ハンドラーは重要です。

②エイトンとCP3

前回触れたとおり、エイトンはサンズが勝つためのキーマンです。個人としてのプレーが向上するほどに、チームオフェンスも倍々ゲームで効率的になっていきます。そして、これまでと違う形でエイトンを活用してくれそうなのがクリス・ポールです。

〇アリウープダンク
サンズ 44本
エイトン 34本

シーズンでチームとしてアリウープダンクは44本しかありませんでした。そのうち38試合しか出場していないエイトンが34本と大半を占めています。ゴール下に選手を配置せず、オープンを作っているチームとしては寂しすぎる数字です。ちなみに、かつての相棒であるデアンドレ・ジョーダンは

〇ジョーダンのアリウープダンク
19-20年  65本
18-19年  54本
17-18年 112本
16-17年 113本
15-16年 133本

こんな感じです。意外とCP3がいなくなったシーズンも多いですね。いずれにしても、サンズに足りなかったシンプルかつ豪快なプレーをコンビで増やしてくれることが望まれます。当然ですが重要なのは高さではなく「崩し」の部分であり、タメを作りギリギリのパスを通すスキルによって増加していきます。

CP3はピック&ロール、ハンドオフなどを駆使しながら、エイトンに新しいプレーを強いてくることでしょう。加えてエイトンの持つシュート力は、CP3が組んだことのないタイプのセンターだけに、CP3側も新しい可能性を見せてくれるかもしれません。

あとアリウープについてはダミアン・ジョーンズはジョーダンのようにぶち込みまくってくれるはずです。場合によっては単純なフィニッシャーであり、ウォリアーズでロブパスに慣れているジョーンズの方がCP3には扱いやすいかもしれません。

③ウイングとCP3

サンズはウイングに運動量と3Pのある選手を揃えることで成功したチームでもあります。ウーブレはいなくなったものの、クラウダーとネイダーを新たに加え、より手厚い布陣を作りました。ここが大きなポイントです。

ブリッジス
カム・ジョンソン
クラウダー
ネイダー

この4人は運動量、特にディフェンス面で働いてくれることが期待されています。クラウダー以外は気持ちの良いドライブも出来るので、キャッチ&3Porドライブはサンズを象徴するプレーになるかもしれません。

〇3Pに繋がったパス
ブッカー 7.7
ルビオ  7.1
ペイン  4.1

8試合だけペインが加わりましたが、他の選手は3本以下となっており、ほぼブッカー&ルビオのパスがあってこその3Pになっていました。サンダーでのクリス・ポールはルビオを上回る8.6本のパスが3Pに繋がりましたが、これを継続してもらう必要があります。

〇サンズの3P
キャッチ&シュート 
25.2本 36.6%

プルアップ 
6.2本 34.3%

ほとんどがキャッチ&シュートなのでパス能力は重要です。果たしてCP3はルビオのようにパスを出すことが出来るのか。
そこは微妙ですがCP3になることでプルアップ増は大いに期待できます。昨シーズンのプルアップは半分以上の3.3本がブッカーによるアテンプトとなっており、次点が1.1本のウーブレなので、極めて大きな課題でもあります。打つ選手がいなかった。

〇クリス・ポールの3P
キャッチ&シュート 0.7本 42.3%
プルアップ 3.4本 35.8%

ここにブッカーよりも多くのプルアップを打つクリス・ポールが加わるわけです。個人で得点できる選手が必要だったチーム事情に適した補強である証拠です。

一方で気を付けなければいけないのは、こうやってCP3がプルアップを打っていくとサンズらしさが失われること。ブッカーしかプルアップを打たないのに、あれだけ戦えたことをポジティブにも捉えないといけません。

CP3は新たなパターンをもたらしてくれる
CP3は良かった部分を壊しかねない

ってことです。まぁ後者の「壊す」は言い過ぎ。さすがにそんなレベルまでやりすぎることはありません。言いすぎなんだけど、ウイングにボールが回ってくるのがサンズの良さなのは間違いないので、ボールムーブは止めないでくれ!ってことですね。

課題:ボールムーブを止めるな

昨シーズンのサンズは292本のパス数でした。CP3はロケッツ⇒サンダーとあまりパスを回さないチームにいました。これは戦術的な部分なのでCP3が悪いわけではありません。ただし本人はパスをしない選手ではありませんが、ボールを止める傾向があるのも事実です。

〇パス数
サンダー 289本(18位)
ロケッツ 246本(29位)
     254本(29位)
クリッパ 302本(12位)

パスは出すのだけど、ペースは止めてしまう。それがCP3の表現としては適切かもしれません。ものすごくスローダウンするのが好きなPG、ワンプレーを切るのが好きなタイプですね。

〇ペース
サンダー 99.4(21位)
ロケッツ 98.4(27位)
ロケッツ 98.0(13位)
クリッパ 96.8(15位)

遅いというよりは、時代が早くなっているのに自分は変わらないタイプだな。サンズは3年前までのように走りまくることはしませんが、それでも101.7(9位)だったので、スローダウンが何をもたらすのかは不安要素です。

運動量があり、エネルギッシュなウイング達とCP3の関係性はパターン増&キックアウト3P増でものすごく上手くいくかもしれないし、プルアップ3P増&ペースダウンで上手くいかないかもしれません。

「やっぱりルビオの方が良かった」となる可能性があるのがウイングとの関係です。CP3はスタッツを残しているのに・・・となったら、それは『ルビオが素晴らしすぎた』ってことなのです。

◎ムーアとサリッチ

チームの主役としてブッカー、CP3、そこにエイトンが加われば核がしっかりするサンズ。周囲を運動量とソリッドなウイングで固め、機能すれば面白いチームになりそうです。

そんなウイングの中には、タイプの違う選手が混じっているのも好印象。それがムーアとサリッチ。サリッチの方は残留組なので、多くを語る必要はないでしょうが、PFとして51試合でスターターになっただけでなく、べインズがいなかったバブルではエイトンの控えになりました。

前回触れたエイトンの特徴とハイポストプレーを考えると、実はそのままサリッチに引き継がせることは面白い形であり、特にスクリーン&ポップのアウトサイドが増えることはディフェンスからすると嫌らしいプレーでしょう。実際、スターター時とベンチ時でサリッチのスタッツも変わってきます。

〇スターター/ベンチ
プレータイム 26.9/17.5
得点     11.1/9.3
FG     46%/56%
3P     35%/42%

センターとしてプレーしたほうがアウトサイドでフリーになりやすい面もあり、3Pを中心にFG成功率が大きく上がっています。その結果、プレータイムが10分近く短くなるのに、得点は2点くらいしか下がっていません。

サリッチも打ちたがりな選手なので、5人の中の1人になるよりはベンチユニットで中心的な役割の方が向いていそうです。この形での起用はキャリアの中で珍しく、昨シーズン後半になって初めてだったので、新シーズンで本格化してくるでしょう。

PFタイプが他にいないので相手との兼ね合いでは重要だし、センターの控えとしてルーズなディフェンダーを相手にさせたら大活躍しそう。上手い起用法をすることで輝くし、変化をつけてくれる存在になりそうです。

ムーアの方はガードでも起用できるタイプの選手。ウイングとしてはアンダーサイズなのですが、割と苦にしないので、どっちのポジションでも使えます。サリッチがセンター側、ムーアがガード側ってことです。

この5シーズン全てで3P37%を上回っており、うち3シーズンは42%オーバーと安定したシューティングが持ち味。ブッカーのようなプレーは出来なくてもシュートなら上です。

そんな安定感を生みだすのは「ディフェンスから離れる上手さ」が抜群だから。とにかくフリーになるのが上手く、ディフェンスの逆・ボールの逆を突くような「視界から消える」オフボールが秀逸な選手です。

ブッカー、CP3、エイトンが輝くほどに、ムーアは上手さを発揮していきます。特にカズンズ&ADがいた時代のペリカンズでは無双していたね。殆どボール持たないで得点奪っていた。

そしてムーアとサリッチはサンズお得意のカッティングを頻繁に生み出してくれます。オフボールで強みを発揮できる選手が混ざることは、いろんなプレーを楽にしてくれるぜ。

良いウイングを揃えたサンズで、モンティ・ウィリアムスがこの2人をどうやって活用するのか。ベンチから出てくるアクセントになれば、サンズ強し!って言いたくなるでしょう。

◎楽しみだね!

クリス・ポールだけなら、興味をひかれなかったでしょうが、うまいアクセントも加えただけにサンズは楽しみなチームになりました。いずれにしてもエイトン次第ではありますが、プレーオフチームになれるのかどうか。今回はクリス・ポールの視点から考えてみました。

バブルでは強かったものの「同じことをやっている」ことで勝てるのが8試合です。8連勝は出来すぎだけど、多様性がなくてもいける試合数だったよね。しかもサリッチのベンチ起用とペインの爆発で、予期せぬ効果も生まれた。

実際、サンズはどの試合を切り取っても、そこまで大きな変化はありません。それが新シーズンになって、パターンをどれだけ増やしてこれるのか。ルビオへのPG変更が上手くいった昨シーズンから、さらなる飛躍を目指したクリス・ポールなので、失敗するわけにはいかない。

ということで開幕直後に確認したら、相手に戦い方がバレた来る20試合くらいしたところで見るのが良さそうです。そんなことも考えながら、シーズンに備えていきましょう。

これを30チームやっていったら、開幕の頃になっても終わっていないですね。適当に書いていきましょう。

サンズとクリス・ポール” への12件のフィードバック

    1. 正直、CP3だけだとダメになる気がするのですが、幸いにも周囲を主役ではない選手で固めたし、そもそも若手が伸びそうなので。

  1. CP3は単純な本人の得点力ならルビオより上ですが得点力のあるPGは得てしてボール持ちすぎな問題が出ますよね
    PHXはエイトンにブッカーとOKCと比較してエースを任せれる選手がいるだけに失敗するかも含めてどうなるか楽しみです

    1. サンズはオフボールの連携を重視していましたが、CP3がそこを強化してくれるのか、それとも持ちすぎて消してしまうのか。ウイングたちにとっては大きな変化が出てきそうです。
      ブッカー中心だったのがボールの出所が変わる可能性があるので、どうなるんでしょうね。

  2. 西はウルブズキングススパーズ以外全員プレーオフ出れそうなのがヤバすぎます。昨シーズン以上に混沌としそうです。東西カンファレンス無くしたら面白そうなんだけどなあ

    1. ウルブズなんかは立地的にもウエストって苦しいんですよね。そろそろ改編時な気はします。
      プレーオフを集中開催にするなら東西はいらないし。

  3. 昨シーズン通して見た印象通りの記事でした。ブッカーとルビオしかプレイメーカーがいなかった。特にクランチタイムでブッカーがボールを持てない時のOFは絶望的でした。あと1本入れれば、守れればというシーンでことごとく失敗していた印象があります。ルビオ、ウーブレは個人で打開できていなかったので、CP3が来るのは大歓迎です。個人的にはカンパッソで弾き出されるナゲッツのドジアーが欲しいなー

    1. いかに試合の印象そのまま書けるかなので、そこにCP3を混ぜ込むと、個人突破が増えそうですね。

      カンパッソはともかくRJハンプトンでドジアーをはじき出すのは勿体ない

  4. 少し話がそれますが、アリウープってもらう側と投げる側どっちの技術が重要なんですかね?
    一般的には投げる側がすごいとは言われるような気がしますが、ディアンドレとグリフィンを扱ってきたクリスポールですが、カペラとの関係でそこまでアリウープが多かったイメージはないですし、アダムスはそもそもそのタイプじゃないし。。
    ディアンドレもアリウープの数を見て、衰えたなって思いましたが、今シーズンは20分ちょいしか出てない数字なんですね。それを考えると昨シーズンからかなり増えたので、ディンウィディーが優秀なんですかね?

    1. 基本的には「受け手」の能力ですよね。ジョーダンにしろ、アデバヨにしろ、通常ではぶち込めないロブを決めてしまいます。
      ただ、一定の高さを超えると、あとはポジショニングとパスのタイミングが重要になってきます。そうなるとパサーが、いつパスを出すかが重要ですね。

      ディンウィディはアリウープパス上手いのですが、そもそもネッツが促すオフェンスしているんですよね。

  5. ルーキーのジェイレンスミスもかなり多才なプレイヤーで、ゴール下の強さとポジショニングの良さがあり、ロブをあげればリングに叩きこみ、P&Pからスリーも射抜けるタイプです。エイトンとサリッチの足りない部分を補える存在で、ハンドラーがクリポなら良い成績を残せそうな気がします(本当はBOSに欲しかった)。

    1. サリッチをエイトンの控えにしたら面白そうですが、同時にジェイレン・スミスの方が可能性を感じさせる面もありますね。
      どんなプレーをするのか楽しみです。

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