一家に一台、DJオーガスティン

DJオーガスティンはテキサス大学出身の32歳。テキサスでこの年齢ということはケビン・デュラントのチームメイトでした。1年生にしてNCAAを席巻したスーパースターを操るPGというバックボーンは現在のオーガスティンのイメージと変わらない部分があります。

それぞれの選手のバックボーンを振り返っていくとプレースタイルのカギがみえてくることもあって面白い。デュラントはアービングとコンビを組むわけですが、やっぱりオーガスティンのようなコントロールタイプと組んだ方が向いていそうだよね。そしてウインガーで勝負したいチーム全般に同じことが言えます。

FAになっただけに、ネッツやクリッパーズをはじめとして人気が出そうなのですが、本人はマジックに愛着を持っていそうな。というのも、Wikipedia先生をみると過酷なNBAライフを送ってきました。ホーネッツにドラフトされ4シーズンを過ごすものの、ケンバ加入からジャーニーマンに変貌したのです。

マジックに加入してからは4シーズンに渡って安定した成績を残してきたため、このまま残りたい希望があるそうな。しかし、この4シーズン目はフルツにスターターを譲っただけでなく、スタッツも落としてしまいました。そんな理由も考えながらオーガスティンの事を調べてみましょう。

◎優れたシューティング

キャリアを通して平均9.9点のオーガスティンですが、3P成功率が37.9%と高く、フリースロー85.6%と合わせて極めて堅実なシュート能力を持っています。シューター的な選手でないため、タフショットで打ちまくることはありませんが、PGなのでワイドオープンのキャッチ&シュート専門でもなく、プルアップを交えながらも高確率で決める安定感があります。

「必要最低限のシュートを打つ」ようなスタンスですが、逆に言えば自分のリズムで打つというよりは、ディフェンスに対するリアクションでのシュート判断なので、【堅実】と評したくなるのはシュートセレクションも含めたシュート力だからです。オーガスティンの能力としては

①エースからのパスをキャッチ&シュート
②エースが警戒されているのをみてプルアップ3P

この②が選手としての大きなポイントになります。①だけなら他にもいますが、主役たるエースのマークが厳しいと判断すれば、違うプレーを選択するPGなので、チーム全体をオーガナイズできます。

特にマジックで成功していたのは強力なエースがいないかわりに、全員がバランスよく得点を奪えること。ブセビッチとのコンビプレーが中心だけど、ガンガン打たせるのはフォーニエとロスなので、それぞれのパスコースとディフェンスの動きを見ながら判断することが出来ました。

プレーの選択肢が多い中で、適切にパスを振りながら、自らも堅実にシュートを決めるPG

とてもポジティブに書けば、こんな選手になります。パスファーストなんだけど、強気に自分でも打っていくぜ。オフボールでプレーを構築したいチームのPGとして適切な選手になります。

代わりにドライブで切り崩す系統のプレーはそんなに上手くない。基本的にはパスを選択します。ところでHCヴォーゲル時代はドライブが少なかったのですが、クリフォードになって少し増えました。増えた理由の1つはベンチメンバーのユニットだと自分で行く必要があるためです。オーガスティン自身はパス中心のヴォーゲルの方が向いているHCだったと思います。

特にフルツがスターターになってからは、プレーメイクに困った結果として自分でクリエイトすることが増えた印象です。その結果がFG39%に落ちることに。ただし、ヴォーゲル時代も37.7%ってことがありましたけどね。

いずれにしても優れたPGで、パスを中心に組み立てながら、自らも堅実にシュートを決めてくれます。その一方でチームメイトが優れていることで輝く選手であり、1人でなんとかしてくれるわけではありません。ラストピースとして活用しましょう。

◎堅実なアシスト

ドライブで切り崩すプレーが少ないこともあって、アシストは多くありません。かわりにミスもしないので、キャリアでのアシスト/ターンオーバー率が2.6を超えており、この点でも堅実さが光ります。日本人が好きそうなPGなわけです。

いわゆる「決定機」を演出してくれないので、パス数に対してアシスト数は少なく、あくまでも全体のオーガナイズがプレーの中心。マジックではブセビッチがいるのでビッグマンとのコンビプレーも目立ちますが、プレーメイカータイプのセンターじゃないと火力不足なのは否めないところもあります。

シーズンハイライトも得点シーンばかりだもんな。

PGなので当たり前といえば当たり前なのですが、ハンドリングスキルは高く、アシスト数やドライブ数を考えると「上手いのにもったいない」くらいのスキルを持っています。どちらかというと身体能力で振り切れないので、ディフェンスの逆を取ったり、スキルで翻弄したときに抜け出すことが出来ます。それは頻繁には出来ない。

ある意味、スキルをひけらかさないようなところが魅力であり、デュラントと組んでいただけあって球離れが良く、自分で決めに行かない良さはミスを減らし、スターを輝かせ、共存していく特徴があるのでした。

主役たちと共にプレーするのが一番の活用法

◎セカンドガード

こんな選手でありながら、キャリアではベンチのPGとして活躍してきたのも面白い部分です。主たる役割はPGの控えとして、他のスターターたちと絡むことなわけですが、同時にシュート力を持っているためスターターPGとも共存することが出来ます。

ということは「5人目のスターターとして周囲を操る」以外にも起用法があり、むしろこっちの方がオーガスティンのキャリアとしての形だということです。

PGがエースのチームは多くあります。その問題は長い時間ボールを持つエースがベンチに下がると急激にチーム力が落ちることです。この対処としてダブルPGなんてものをダントーニが生み出しました。オーガスティンの場合は主役クラスの役割は引き受けれらない代わりに、他のスターターに気持ちよくプレーさせることが出来るわけです。

「エースを休ませている間だけ」の選手にサラリーは払えませんが、共存も出来るなら話は別です。ということで、非常に使い勝手の良い選手になるわけです。1チームに1人DJオーガスティンを加えよう。

最も驚くべきは12年のキャリアで平均24分もプレーしながら、シーズン通してスターターだったのは2シーズンしかないこと。素晴らしく高く評価されているわけではないし、ジャーニーマンでチームも変わりまくるけど、どこに行ってもしっかりとプレータイムを与えられる。ベンチスタートなのに20分を超える選手です。

加えてケガらしいケガが少なく、安定した戦績を残し続けました。主役じゃないんだからケガされたら、どうなるかわかんないもんね。丈夫で長持ち、安定して便利、一家に一台欲しい選手です。

◎特効薬ではない

マジックに行ってから主力としてプレーできていることで輝いているのはわかるし、本人がマジックに残りたい気持ちもわかる。でも、こんなタイプの選手なのに競争力のあるチームにいないのも不思議です。サラリーも7M程度でお手頃。マジックってバーチとかアミヌとか、地味系の良い選手を引っ張ってくるのが上手いけど、他のチームから欲しがられないのは不思議です。

現状でもオーガスティンの噂は上がってこないわけで、個人での打開に乏しいからなのかもしれません。そうなるとレイカーズのGMペリンカあたりにはターゲットにはされないでしょう。あとカルーソいるから微妙。

前回のネイピアーと比較するとシュート力があって使いやすい選手ですが、ネイピアーのおすすめをシクサーズとホークスにした理由は「変革が必要」だからです。スローダウンしてコントロールしようぜ。
一方でオーガスティンに同じことを求めるのはどうなのか。個人での打開も含めたプレーが中心のネイピアーよりも、より周囲のメンバー次第っているイメージのある選手です。だから「何かを変えたい」には向いていない。

代わりに戦術的にはガード中心でさえなければ、複数の形に対応できそう。それはキャリアを通してジャーニーマンなのに20分以上のプレータイムがあることからも示されています。そんな前提でおススメチームを考えてみましょう。

バックス

「PGが欲しい」というけれど、ヤニスの存在は誰を当てはめるのか難しくさせてくれます。そんな中でオーガスティンならば3Pをしっかりと決めた上で、ゲームを作ってくれたり、ディフェンスの逆を突く選択をします。自分では行くことよりも、ヤニスと違う事をするタイプのPGなのです。

クリス・ポールを希望しているバックスだとしたら、獲得できなかった時に狙いたいオーガスティン。そしてサイン&トレードでブレッドソーがマジックに行くのは、どうだろうか。でも、そこまでするとバックスは戦力低下な空気もするしね。他のポジションにもサラリーを割きたいのであればオーガスティンとトレードしよう。

※この記事はトレードの1週間前に書いています。

クリッパーズ

同じようにPGが欲しいチーム。一時期はレイカーズと共にダレン・コリソンなんて話がありましたが、イメージとしては近いよね。基本的にはウイングにボールを供給し、パスアウトをしっかりと決める役割。

ちょっと苦しいのはクリッパーズにはインサイドの中継役がいない事。オーガスティンはパスを供給するしかやらなくなる可能性があります。ポストにいるプレーメイカーがいなかったのがナゲッツやレイカーズとの差だったので、本質が解決されない気もします。

マブス

控えのPGであり、ドンチッチとも共存できるPGとしては適している。でもセス・カリーがいるじゃないか。シュート力で下回るからカリーの方が優先されそう。

ネッツ

こちらもディンウィディがいるからね。でもトレードの駒として使えそうなディンウィディなので、放出する可能性もある。そしたらデュラントとのコンビを復活させましょう。カイリーとも同居させやすいわけで、ぴったり当てはまる気もします。

が、ナッシュ率いるサンズ路線だとPGのタイプとして違いすぎる。

ウォリアーズ

高いシュート力でカリーの控えとなり、トップからのパサーとしてドレイモンドの控えとなる。多様な形に対応できるだけにベンチメンバーとしてフィットしそうな匂いがします。特定の形に絞られるわけではないし、オフボールムーブとポジショニングを考えてもフィットしそう。

若手たちを整理するのかどうか次第ですが、プレーオフを考えた戦力としてはオーガスティンの方が断然良い選手だ。

ヒート

イーストのチャンピオンにはハンドラーは充足しているので不要です。しかし、もしもドラギッチが移籍を選んだら?
アデバヨとコンビプレーをさせながら、シュート能力も発揮できるオーガスティンは次善の策に思えてきます。他のチームよりも大きな貢献が出来そうな上にイーストというのもプラス。

こう考えてみるとクリス・ポールやドラギッチの代役みたいなのがオーガスティンかもしれません。逆に言えば、この2人のような実力はないので、チームの中心にはなれないし、スパイスってほどパンチも効いていない。でも堅実に血を巡らせてくれます。

果たしてマジック残留を選ぶのか、それとも優勝を目指すチームに誘われるのか。それ以外だったらウケるけど、優勝が最優先ではなくて、自分の仕事が出来るチームを選びそうなんだよね。堅実な選択をしそうなオーガスティンでした。

一家に一台、DJオーガスティン” への5件のフィードバック

  1. お疲れ様です。
    トレードも気になるのですが、オーガスティンは好きな選手なので、この記事は嬉しかったです。(好き故にtwitterの票は詳しくないネイピアーに入れてました。)
    オーガスティンいい選手ですよね。
    フェルトンが抜けた後のボブキャッツで張り切っているのを見て、ジャンプシュートは高確率だし、プレイメイクもできるし、TOも少ないしで、なんて素晴らしいPGなんだろうと思ってました。
    自分としては、当時の1/3くらいのスターターPGよりは、オーガスティンの方が優れてるとまで思っていたので、その後のジャーニーマン的な扱いがびっくりでした。
    オーガスティンの件を受けて、どんなにスキルがあってもアンダーサイズのPGはスターターとしてチームをけん引できない、と思うようになりました。
    惜しかったのはBOSのアイザイアくらいでしたよね。アイザイアも一瞬の輝きだったイメージがあるしなあ。
    オーガスティンにとってはORLが雰囲気あってそうですが、ORLはフルツでいくでしょうし、納得できるチームに行ってほしいですね。

    1. アンダーサイズというばカリーもいますので!
      とはいえ、180cmくらいまで行くと流石に苦しいですね。クリス・ポールですら苦しいのに。

      ドラフトでガード指名してしまったので、本当にオーガスティンはどうなることか

  2. MILがちょっとお高いですが獲得しましたね
    ただホリデーいるのにとは思いました
    違うタイプのロンドやティーグの方が良かったんじゃないかと
    PFのポーティスも獲得しましたがロースターバランスはどうなんでしょうか

    1. 3年は長かったです。PG足りないので、良い補強だとは思いますが。
      ポーティスの方は、全く想像つかない。

      ロスターバランスはとれていると思うのですが、ディヴィチェンゾはヤル気出してくれるかな?
      センターは補強したいですね。イリャソバ出しちゃったし。

  3. 関係ない話で申し訳ないですが、オーガスティンといえばレトロバッシュプレイヤーですよね

    アップテンポとかjordan4とかそっちに気がいっちゃいます…それだけですw

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA