ところでウォリアーズ

ってどうなのよ?

「ブラッドリー・ビールをウォリアーズに加入させれば、デュラントに変わる3人目のアタッカーとして機能する」

「ジョエル・エンビードがウォリアーズのシステムに加わることを考えてみてくれ。これほど魅力的なことはない」

「サージ・イバカを獲得しろ。ディフェンスでもオフェンスでも的確に貢献してくれる」

「ラメロはウォリアーズでしかプレーしない」

「アスレチックなビッグマンが必要だ。マイルズ・ターナーはぴったりの存在」

辟易してしまうウォリアーズの話。イバカについてはFAなので理解も出来るけど、よくわからん補強話ばかりをでっちあげられて、どっと疲れてしまうよね。その一方でスティーブ・カーも言っているように、ウォリアーズは必要なピースが足りていない状況です。ただし、噂話と違って「ロスターを厚くしないと」という表現なので、ビッグネームが欲しいわけでもありません。

そんなウォリアーズについて、状況を確認しておきましょう。「ところで、どうなっているのかな?」がテーマです。

◎スプラッシュ

ウォリアーズが誇るゴールデンコンビについては考えすぎる必要はありません。ケガの影響から衰えているかもしれないし、いないかもしれない。それはわかりませんが、シューティングを中心としたプレースタイルだけに、普通の選手に比べたら影響はないはずです。

それぞれが休養期間を経て臨めるシーズンと考えれば、スタートダッシュは出来なくてもシーズントータルでは形にしてくるはずです。とはいえ、敢えて懸念事項を並べてみましょう。

①カリーのオフボール

ディアンジェロ・ラッセルと組んだカリーは意外にもハイペースで動いてからのシュートタッチがイマイチでした。単純に「ディアンジェロと合わなかった」ともいえますが、5試合49本のアテンプトのうち19本がタフショットになりました。振り切れないことが多かった。

そういえばこれまでカリーにパスを出す選手はドレイモンド、イグダラ、デュラント、ルーニーとビッグマンばかり。クレイ→カリーというパス自体も少ないので、ガードコンビでの崩しは得意ではありません。

またスクリーナーになってから動くのが得意技ですが、「誰にスクリーンをかけるのか?」問題が発生していました。こちらはカリーの問題ではなくドレイモンドとディアンジェロの相性が悪すぎたことの方が大きいです。プレーコールはしっかりとあるのに、役割分担が曖昧で、チームとしてバックドアが不足していました。

要するにカリー個人というよりは「チームとしてオフボールで崩す」形がイマイチでした。そうなるとカリーも輝きにくくなるわけです。まぁ所詮は5試合の話なので気にすることではありませんが、従来のウォリアーズと違う構成だったことはスーパーシューターであるカリーにも影響していたわけです。

②クレイのディフェンス

クレイ・トンプソンという選手をオールスターにしているのは、単なるシューターではなく、オールラウンドなスキルレベルが高いことです。全体のレベルが高い中でシュートスキルは段違いに高いのが特徴。

その中で唯一、ケガの影響を強く受けそうなのがディフェンス。その得点力とは裏腹にオフェンスでの仕事が少なめに設定されているクレイは、ディフェンスでハードに戦いまくるファイターでした。リトルリーグのチームメイトであるケビン・ラブのポストアップを止めるような万能性も持っています。

いずれにしてもクレイの負荷は抑えめにしてシーズン前半を過ごす必要があります。ディフェンスでエース担当ばかりをさせていくのは辞めた方が良い。ところが相棒がカリーなので、これまた悩ましくなります。

スプラッシュブラザーズをコンビとしてみたときに、エースキラー役のクレイとチームディフェンスの読みが鋭いカリーというのはディフェンスでもよい組み合わせでした。これをどうやってカバーするのかは考えないといけません。

③サード・スプラッシュ

かつてスティーブ・カーはニック・ヤングをベンチから起用して3人目のスプラッシュとして利用しました。カリー&クレイは個人で打開するタイプではないため、3人目はどうしても欲しくなります。

同時にシーズンを通してダミアン・リーやジョーダン・プールを試してきました。もう1人いた気がするけど名前を忘れた。かつてはクイン・クックもいたわけで、ガードにシューターを持ってきたい意向があるはずです。

ここで、そのレベルが問われます。カリー&クレイが元気なら、そこそこの選手で良いわけです。クックで十分。しかし、さすがにそれは危険なので、そこそこを用意したい。そこそこって誰だ?

何もジョー・ハリスを連れてくる必要はありませんが、考えないといけないポジションです。ダミアン・リーとジョーダン・プールを信じぬくのか、それとも3人目を連れてくるのか。

なお、ここを強化するならビールやエリック・ゴードンなわけですが、前者はともかく後者にサラリー払いすぎたら死にます。ねらい目のFAは

コートニー・リー
ラングストン・ギャロウェイ
ブリン・フォーブス
ドゥエイン・ドットソン

こんなところでしょうか。他にもいるのですが、現実的に獲得できそうなラインで考えています。いずれにしても高いサラリーを払うくらいならば現行のメンバーを信じるでしょう。

◎ドレイモンド・グリーン

クレイ・トンプソンのいないシーズンは「ドレイモンドの化けの皮が剝がれる」というか「ドレイモンドの真価が図れる」と思いましたが、その期待に存分に応えたような応えなかったような微妙なシーズンでした。

そもそも「スプラッシュブラザーズありきの選手」だと考えていましたが、予想以上に「ありき」でした。それはディアンジェロ・ラッセルとの関係性が酷かったこと。トップでPGもどきのプレーをする以外に選択肢を持っていないかのような単調さでした。

そこまでは事前に想像できたのですが、ディアンジェロがオフボールで動いてフリーになっても、パスのタイミングが合わないことも多く、いまいち適応できていませんでした。なお、ウォリアーズ殆ど見ていないので、シーズン後半に調整できていたかもしれませんが。

ただし、良かったことは6.2アシストを記録したこと。スプラッシュがいなくてもアシストできることは示せました。ディアンジェロとの相性の悪さは「使いたいスペース」が同じで「ドレイモンドが動かない」からディアンジェロが困ったことです。逆にPG的に振舞うなら、スプラッシュがいなくても結果を残しました。

悪かったことは6.2リバウンドしかないこと。センター陣がいなくなり、デュラントもおらず、(実はリバウンドが多い)カリーもいないけれど、個人で奪い取る本数を増やせなかったのは、あくまでもチーム全体の中で与えられた役割を高レベルでこなせる選手でしかなかったことを示しています。

要するにあっちもこっちも穴がある中で、個人能力でカバーしまくれるようなタイプではなかったってことです。穴が減れば確実に埋めてくれるけどさ。

FG39%、3P28%と得点面も散々。単にシュートが下手なのではなく「スプラッシュに引き付けられ、空いたところで決める」にならないと得点力を示せませんでした。スプラッシュがいなければ「ディフェンスは良いけど使えない選手」になっていた可能性があります。

・・・とはいえ、スプラッシュブラザーズが戻ってくるなら、それでいいじゃないか。トレード価値が下がったくらいさ。オフェンスは気にしても仕方がない。パサーになれるPFは貴重。

問題はディフェンス面です。スモールラインナップで威力を発揮するディフェンダーでしたが、果たしてデュラントやイグダラがいなくても同じことが出来るのか?という問題への回答はイマイチでした。やっぱりルーニーが必要になるのか。より大きな役割を担わなければいけない中で22Mのサラリー価値があることを示せるのかどうか・・・あれ、もっと高くなかったっけ?

以前はヘルプに出ても、次のローテが自分のマークを抑えてくれたし、ペリメーターで奮闘していれば後ろにカバーが来ていたドレイモンド。同じ役割を与えることが出来れば問題ありませんが、チーム構成としては難しそうなんだよね。

◎4人のセンター

その昔、ウォリアーズはセンターを使い分けることで戦術的な違いを生み出す見事な柔軟性を持っていました。

スプラッシュ2人+パチュリア(スクリナー)
カリー+マギー(ロブパスフィニッシュ)
クレイ+ウエスト(ミドルシューター)

そしてオールラウンドなルーニーという構成です。ジョーダン・ベルもいました。時代と共にわき役たちは移籍したり、引退したり。逆にボーガットが戻ってきて助けてくれたり。そうね。ボーガットだけは万能だった。

さて、現在はどうなのか。ルーニーが残り、身体能力系かつアウトサイドもあるマーキース・クリスも契約があります。あまり信用のおけない選手ではありますが、オフェンスではマギー+ジョーダン・ベルくらいの活躍は期待できます。

しかし、これでは戦術的な違いを生み出すのは難しいロスターです。謎なのはコーリー・ステインを放出した事。高さと強さのあるコーリー・ステインが残っていれば、3人で違いを生み出すことは出来たはず。

そして最も欲しいのはスクリナータイプです。ルーニーで補完も出来ますが、そのルーニーにはアウトサイドから打たせることも増えているので、スティーブ・カーが何をしたいのかはわかりません。いずれにしても欲しいセンターは

①スクリーンとゴール下で気が利くタイプ
②3Pまで打てるシューター系

この「どちらか」です。個人的には前者が欲しい。ポストでボールキープしてくれる選手が足りないこともあって、変にアウトサイドに出てくるよりもインサイド仕事を的確なポジショニングでして欲しい。

冒頭にエンビードの話がありましたが、この発想から言えば戦術的には全くフィットしません。ボールない時に空気になるセンターをいれたところで意味はなく、かといってシュートも上手くない。まぁエンビードがいたら、そんな細かいことは関係ないのですが。。。

FAでイバカというのは両面を補完できそうです。なのでアリですが、イバカにどれだけのサラリーを払うのか次第なので、現実的とは言えません。基本的にはここもルーニーがいるので、サラリーを使わずにタイプの違う選手を連れてきたい。

ところで、2位指名権があるのでワイズマンというのが、半年前までの有力な補強でした。

ただコンバインが実施できておらず、ワイズマン自身も殆どプレーしていない中で、未知数の案件に手を出すことを避けたい意向がある様子。というのも2位だとサラリーが高くなります。高いといっても9Mくらいですけどね。

ワイズマンが万能型なのも、ウォリアーズが直近で欲しいタイプのセンターではないので、将来性を取るか、現実を取るかで悩んでいるわけです。もう1人の候補が万能型ではなく、フィジカルファイターであることも関係しています。

正直、マイルズ・ターナーを取るならサラリーの安いオコングの方が今のチーム事情に合っています。アスレチックなセンターで、リムプロテクター。そしてインサイド担当。

でも出来れば2位じゃなくて、もう少し下の順位で獲得したい。だって他のチームは指名しそうにないし・・・。

おそらくウォリアーズはセンターはルーキーでも構わないと考えているでしょう。ただ大切なのは「多様なロスター」「安いサラリー」です。デュラントがいない中でスプラッシュブラザーズの威力を最大限に発揮するためにも、スモールラインナップは有効なだけに、変にセンターを主力にはしたくないはず。

ラプターズでベンチだったイバカは、その意味でも問題はないのですがサラリーがね。

さて、今回の企画は何も補強の話ではありません。ウォリアーズってどうなの?ってことなわけです。ちょっとまとめましょう。

◎ビッグマン問題

ドレイモンドでは解決しきれない
ローテ&カバーが重要
スクリナーが足りない
ロスターと戦術は多様にしたい

便利なイグダラとデュラントがいなくなったことで、ウォリアーズのインサイドは攻守ともに大きな課題があります。思った以上にドレイモンド単体では解決してくれなかったので、もう1人を作り上げる必要があります。

ルーニーは素晴らしい選手なので、一定のレベルには達していますが、最後の「多様」というところでオールラウンダーは困ってしまいます。これは主にオフェンス面の問題です。ちなみに

ルーニーを起用する
→オフェンスの武器が限定的
→デュラントが何とかする
orイグダラが何とかする

こんな構成でもありました。デュラントは個人で、イグダラはボールの中継役になりまくって、何とかしていました。おそらくシーズン中は大した問題ではないでしょうが、プレーオフを考えるとビッグマンは問題です。

もっとドレイモンドが多様ならよかったのに・・・
ルーニーに何か武器があればよかったのに・・・
イグダラかデュラントがいればよかったのに・・・

どうしてもちょっとずつ足りなく見えます。そしてGMボブ・マイヤーズは多様性を重視するタイプなので、強く感じ取っているはずです。

良い選手をロスターに加えたいのではなく、良いチームになるようにロスターを埋めたい

STRENGTH IN NUMBERS

多分ね。そうだと思うんだ。だから飽き飽きしてしまうトレードの噂。このチームが掲げる言葉を考えれば、そんな単純なことはしてこないはずです。

ということで次回に続きましょう。まだ触れていないウィギンズの話から始まるわけですが、ウィギンズ必要かな?っていうのは「もっと良い選手が欲しい」ではないんじゃないかな。

◎エリック・パスカル

今回の内容で触れておかないといけないのがパスカルの存在。ドレイモンドよりもプレータイムが長かった似たような体格のルーキーは、ドレイモンドよりも多彩であり、得点力に優れていることを示しました。

ここまでだと誉め言葉っぽいですが、そうではありません。スプラッシュブラザーズを中心とするならば、どう考えてもドレイモンドの方が使える選手であり、特殊な武器を持っています。

とはいえ、オールルーキーチームにも選ばれたわけですから、スモールラインナップでも使える存在になれ・・・というか、ここでチーム方針は大きく変わってきます。つまり、

・ドレイモンドと並べた時に「センター不在でも成立する」のかどうか
・ウインガーとして複数のポジションを埋められるのか

この両者を成立させることが出来るなら、ロスター集めは結構楽になります。特に後者は重要ですが、難しそうな空気を出しており、かといって前者もオフェンス面が微妙。現時点では2人を並べるメリットを出せそうにありません。

ならば思い切って「サラリーの高いドレイモンドをトレードする」手段もあるわけですが、そこまでするほどパスカルを信頼は出来ない。

パスカルがどこまでプレーできるのか、個人としては頑張れるけど、コンビとして、チームとしてはどうなのか。それ次第でロスターの埋め方は変わってきます。おそらくウォリアーズはテストするために、しばらくパスカルは残したいでしょう。

チームのキープレイヤーではないけど、ロスター構成のキープレイヤーな気がしています。

ところでウォリアーズ” への14件のフィードバック

  1. ドレイモンド+指名権でベンシモ獲得してスプラッシュと組んだところが見たいです。絶対にドレイモンドの上位互換になれると思います。クレイのディフェンス負担も肩代わりしてくれるはず。
    あとGSWに来たらスリーもたまには打つ気になるのでは…(笑)
    どうでしょう、管理人さん

    1. それはまぁシクサーズが許さないでしょう。そんな対価でプリンスを強奪されては・・・

      シモンズがウォリアーズに来たら、もうそのままですね。
      ウイングやらせることで、パスカルも使えるし、便利かな。

      ウォリアーズは3P打たない選手を使うチームなので、たぶん打たないと思います。

  2. サラリーパンパンだからウィギンズ切ってそこそこの補強しようぜ!
    って話ばかり聞きますがそんなにウィギンズ不要ですかね?
    サラリーに見合った活躍とは確かにいえないかも知れませんが
    ウィギンズ切ったらそれはそれでウイングが不足するのでは?と思うのですが

  3. パスカルについて、

    ・ドレイモンドと並べた時に「センター不在でも成立する」のかどうか。
    ・ウインガーとして複数のポジションを埋められるのか。

    がポイントであるというのはすごく腑に落ちました。そしてそれらは成立しない感じもすごくします。
    パスカルを使って必要なインサイドを補強っていうシナリオはなさそうですか?いったい誰を獲るんだって聞かれると分かりませんが。

    1. パスカルで獲得できる選手ってなると、うーん、ポジション変更のトレードくらいでしょうね。
      そうなるとビッグマン同士ってのもイマイチ。
      だったらインサイドはルーキーに任せて、ペリメーターのディフェンダー探しましょう。

      などなど、GMは、どこからどう埋めたら、最後に全部埋まるのか、大変なんだと思います。

  4. カリー トンプソンとヒートと違いウイングが主役なので、ディフェンスをどうにかしないと波のあるチームになりそうだなと思います。ルーニーとトレイモンドのフィニッシュだけでは不安です。だからウィギンスなんでしょうけど。

    1. ディフェンダーは厚くしたい。あっちもこっちも厚くしたい。
      なんで、この1年でディフェンダー探さなかったのか?と疑問です。

  5. いつもsweetなコメントありがとうございます。読むだけでイメージがふつふつ沸いてきます。
    ところで勉強不足なので教えてください。スモールボールとマイクロボールは本質的にどこが違うのでしょうか?
    前者がtransition attack を含む以外に相違点はあるのでしょうか?

    ご教示いただけますと幸いです。!

    1. かつて「センター」を使わないのがスモールラインナップでした。
      今では一般化しただけでなく、「PFをセンターにする」ことが増えました。
      AD,カペラなんかもPFの選手です。

      なので、なんとなーくビッグマンが1枚なら「スモールラインナップ」に含まれる印象です。
      マイクロボールは0枚確定です。そのうえ、ベンチにすらビッグマンをほぼ置きませんでした。

      と、いうのは後付けで、ロケッツの極端なロスターをわかりやすく表現するための言葉ですね。まだ一般化はされていません。

  6. Gリーグのデヨンタデイビスを昇格させるんじゃないかという話もありました。上半身がしっかりした良いスクリーナーで、速攻でも先頭を走るシーンもあり、ゴール下の決定力もある。ルーニーとは違ったタイプのセンターなので注目してます。

    1. ちゃんと作っているならすごいですね。
      Gリーグはサポートキャスト育成に欠かせなくなってきました。
      ナンもウォリアーズでしたし、1年違えば3人目のシューターになっていたかも

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