ヒートの「ショート」とレイカーズの3P

ゲーム4の日程を間違えていた管理人。ゲーム3については語る要素が多くあったので中2日で準備しようと思っていたらゲーム4が始まってしまいました。ミスった。ミスった。

そしてゲーム4については、そんなに語りたい要素がありません。面白くなかったわけじゃないよ。ただちょっとね。戦術的っていうよりもメンタルの戦いっぽくなってきたから、曖昧な語り口になるなーって思っています。

そういえば「曖昧」でいえば、ゲーム3と4になってから「レブロンがキャブス時代っぽくなってきた」のも印象的でした。そんなわけで、ここから触れてみましょう。

◎達観しているキング

キャブス時代には超ウルトラハイパーであったと同時に「弱点」としても利用されていたレブロン。1人で全てを背負っていたオフェンスとサボりディフェンスの対比はキャブスというチームそのものでした。なので、あまり肯定的に捉えていなかったよ。

それに対して今シーズンのレブロンは完全無欠。ハードワーカーでありキラーディフェンダーでもあるレブロンは常に脅威として存在していました。そして達観したようなプレーぶりで心を動かさないようなプレーぶりでしたが、ファイナルになってエモーショナルになっています。

ところでレブロンとMJ論争なんてものありますし、コービーから時代を受け継いだ選手としても対比されますが、実際にはMJ&コービーに比べるとレブロンの役割は大きく異なります。

例えばスタッツ面でいえばレブロンが史上最高なのは疑う余地がありません。しかし、度々批判されてきたのは「重要な局面でパスを選び、自分で試合を決められない」ことです。よりオールラウンダーな存在であるレブロンは正しい選択を選びがち。だけどリングを手に入れるためには「強引でも決めきる能力」が求められます。

つまりMJ&コービーはスコアリングによって勝利をもたらし、レブロンはトータルの能力で勝利をもたらします。それは勝負弱さにもつながるのでレブロンの印象を悪くしているし、まぁ実際そうだったし。3年前のファイナルでドライモンド・グリーンとの1on1でシュートを打たずパスアウトしちゃったのはダメだよね。

しかし、今シーズンのレブロンは・・・やっぱりパスをします。だけど、それはレイカーズというチームでは「ダメ」なプレーにはなりません。レブロンの判断に全フリしていたティロン・ルーと違い、チームとしての約束事があるため、レブロンも1on1の状況でパスをすることは稀であり、だからこそ必ずヘルプが来ます。

ちなみに「ヘルプを使わない」選択を出来るのはスポルストラですが、それがゲーム4の終盤でした。バトラーによって封じ込みを狙ったスポルストラの策は半分成功しましたが、レイカーズはレブロンをプレーに組み込まず、KCPのドライブ、ロンドのドライブ、そしてADの3Pで試合を決めました。

KCPのドライブはレブロンがバトラーを抜けずに生まれたドライブでしたが、ロンドとADについてはヴォーゲルのプレーチョイスでした。

今回もレブロンは勝負所でスコアしませんでしたが、レイカーズというチームはマークが厳しいレブロンを囮に使いつつ、広いスペースを利用して勝利を得たわけです。レブロンという選手を正しく使えるHCならば、スコアしないことはマイナスにはならないということであり、また恐らくこのシーンでレブロンがボールを貰ったらヘルプが来ないので「強引でも自分で打つ」ことになっていたはずです。

要はゲームメイカーもフィニッシャーも全てレブロンに丸投げしていたキャブスとは違うって事であり、違う選手にゲームメイクさせておけばレブロンだって自分で行ったかもね。(2つめのプレーはロンドがパスしなかったのがなぁ・・・)

ということで「レブロンがキャブス時代っぽくなってきた」というのは、勝負どころの話ではありません。ここはヴォーゲルがクレバーな判断をしていただけって事。問題はどうも不機嫌に見えるって事です。

◎決まらない3P

レブロンが不機嫌に見える理由はシンプルです。インサイドに侵入してもファールコールしてくれないから。でも、これは事実であっても真理ではありません。本当の問題はヒートがガッチリとインサイドを手厚くしていることであり、それはレイカーズの3Pが決まらないことから発生している問題です。

つまりレブロンからすれば「お前らが3P決めとけば問題ないんじゃボケ」って感じです。これがキャブスっぽく感じるわけです。正しくは「ファイナルのキャブス」っぽく感じるわけです。イーストではオフェンスで粉砕していたのにウォリアーズ相手だとキックアウトが通じないじゃないか!?ってね。

そんなわけで本当にキングが不機嫌かどうかはどうでもよく。レイカーズの3Pを見たいわけです。前置きが長かったな。

〇ファイナル前の3P
オープン 37.2%
ワイドオープン 39.5%

〇ファイナルの3P
オープン 29.9%
ワイドオープン 38.4%

御覧の通り、確率が悪いです。ワイドオープンはそこそこですが、ワイドならそもそももっと決めて欲しいし、オープンショットが30%切っているのは痛いです。これがさらにアテンプト数を比較すると酷いことになります。ファイナル前→ファイナルで並べます。

〇3Pアテンプト
オープン 13.1本 → 16.8本
ワイドオープン 14.3本 → 21.5本

そりゃあこれだけオープンショットを作っているのに外しまくられたらキングじゃなくても怒りますよ。レブロンのパスから13.8本の3Pが生まれ、30%しか決まっていません。

誰が外しているかって?ワイドオープンのアテンプトと成功率を並べましょう。

〇レイカーズのワイドオープン3P
KCP 4.3本 24%
モリス 4.0本 56%
グリーン 2.8本 27%
クズマ 2.5本 40%

アテンプト上位4人が見事にウインガー4人っていうのは、非常によくできているレイカーズ。モリスが重用されている理由もよくわかりますが、KCPとダニー・グリーンが酷すぎる。だったらモリスとクズマをスターターにしたいけど、そうもいかないんだダンカン・ロビンソン。

そんなわけで考えようによっては、この惨状で良く勝っているぜレイカーズ。勝てる理由はKCPのディフェンスだから、そういうチームって事だ。キャブスとは違うぜ。

決まらない3Pに対してプレーしているキングはお怒りになられるでしょうが、だからといってディフェンス優先は崩さないヴォーゲル。発言権は小さそうに見えても有無を言わさぬ結果をもたらした采配です。レブロンが完全無欠に見えるのは本人にハードワークとディフェンスを徹底したことだけでなく、チームとしてもディフェンスを基盤とした構成を選んだことと終盤の的確なプレーチョイスも関係しています。HCとの相性がとてもよかった。

◎ヒートの「ショート」

しかし、本当に触れたいのは「レイカーズが外していること」ではなく、「オープンショットが多いこと」であり、最も重要なのは「ヒートディフェンスが何をしているのか」です。

ゲームレポートを書いていると
・レイカーズがフリーで打ちまくり
・レブロンが打ちまくれば良いのに

なんて簡単な文章で済ませるし、そうせざる得ないのですが、ディフェンスが良いはずのヒートが本当にドフリーにしているのかっていうと、そんなわけありません。

もちろんインサイド優先だからチェイスが間に合わないのも事実です。ただし、単に間に合わないのではなく、シューターを一瞬迷わせ、気持ちよく打たせないようなチェイスはしています。簡単に言えば選択肢を減らすことで「打たされている」ような気分に持って行っています。まぁその程度で外すな!とも思いますが。

それを動画にするのめんどくさいなーと思っていたら、例によってダニエルがまとめてくれています。ヒートディフェンスの様々な動きをまとめてくれているのですが、3Pについて特に重要なのは2:55からの「ショート」という守り方です。

まぁこれもゲーム3なんですけどね。パスアウトを追いかけはするものの、ストップしてドライブに備えるヒートによってエクストラパスの連続とドライブが混ざるレイカーズオフェンスの流れは止められることになりました。

これがフェイクを禁止されているダンカン・ロビンソンならば決めまくるのですが、レイカーズは「シューター」がダニー・グリーンのみなので、効果的に決まっています。さすがにワイドオープンを打たれ過ぎなので、リスクも伴いますが、それも織り込んだうえでのショートなのでしょう。

ゲーム4の終盤はマンマークを強めたことでヒートディフェンスはドライブを許してしまいました。全てを守り切ることは出来ない中で捨てるべきは何なのか。捨てる中でも少しでも確率を落としたい思考がみえてきます。

ゲーム5は前半のダニー・グリーンがキーになりそうです。ここを決めきることが出来ればヒートはゲームプランの変更も考えてくるでしょう。ゲーム3以降はゾーンを捨てたヒートですが、その理由は単に攻略されただけでなく「3Pもインサイドも止めるためのゾーン」にする必要がないからです。マンツーでインサイドを塞いでおけばOKさ。

◎ハワードとAD

この状況の中でスターターをダニー・グリーンにすることは変えないものの、プレータイムは20分程度に減らしていき、モリスの出番を増やしたヴォーゲルの選択は論理的です。

その一方でゲーム4では後半にハワードの起用を辞めました。ハワード本人のプレーが悪かった気はしないので、「3Pを打たされている」中で「3Pを打ちに行く」選択をしたのは奇妙でもありました。決まっているモリスを信じたのか。

狙いは固いインサイドからディフェンダーを減らすためのノーセンターだったのでしょうが、それはレブロンのドライブ頼みにも見えてきます。決まらないキックアウト3Pとノーセンター。レブロンのドライブを有効に機能させることが出来るのかどうか。

ゲーム5のスターターをハワードにするのか、モリスにするのかは1つの注目点です。モリスを選ぶとレブロンの負担が増える面もあるのでスタミナ的にはリスクもあります。

しかし、ここでそもそもの話が出てきます。ADがセンターやれば済む話だろうとね。しかし、ゲーム4のADは41.5分プレーしながらオフェンスリバウンドはゼロ。運動量も減っておりアデバヨが復帰した中ではインサイドでの強みを発揮できていません。

3Pアテンプトが4本あったように、アウトサイドで構えさせており、ヴォーゲルはなかなか難しいプレーチョイスの中でギリギリで勝ち切ったゲーム4でもありました。代わりにディフェンスでは4ブロックでペイント内失点を減らしているので、攻守の比重も変えてきています。

・ハワードを起用しないことでADとレブロンの負担増
・3Pを高確率で決めるモリスと有効なドライブ

メリットとデメリットがわかりやすく出るため、後者が成功すれば一気にリードを得られますが、前者が強く出れば終盤に失速する可能性もあります。

◎スポルストラとヴォーゲル

スポルストラについてはたびたび触れていますが「いろいろなことを実行して、相手にプレーを読ませない」のが特徴であり、毎試合少しずつ変化を加えてきます。それはメリットもデメリットもありますが、読ませないことは慣れさせないことでもあるので、状況判断の出来ないチームは飲み込まれてしまいます。

一方ヴォーゲルは情報が少ないので何とも言えませんでしたが、ロケッツとのシリーズでビッグマンを辞めたこと、そしてこのファイナルでもハワードの起用を辞め始めたように、「徹底して強みだけに絞っていく」ような采配の特徴があります。

レブロンとADには負担がかかっていますが、逆に弱点として認識された部分は全く使わないので、全てのシリーズを1敗のみで切り抜けてきました。逆にゲーム7まで行ったときにどうなるのか不安もありますが、そこは未知数です。

そして、この「強みを徹底」「弱点を使わない」という意味ではADのポストアップをどうするのかも気になります。ゲーム3でフルフロントで守ろうとするヒートに対して、どんどんアウトサイドに出てきてしまったADのポストアップは機能しないどころかジャマになり始めました。

ゲーム4の序盤も同じ形からアデバヨにスティールされています。そして後半になると極端に回数を減らし、遂にゲーム4はポストアップからのFGアテンプトが1本もありませんでした。ペイント内でのボールタッチも4回のみと完全にアウトサイドからスタートさせる形に移行しています。

これまでの傾向からいえば、ヴォーゲルはこの形を続けてきます。しかし、さすがにADにそれをやらせるのはやりすぎです。

ポストでボールをもらえていないADをどうやって使っていくのか。何かしらの工夫をしてくるのか。アデバヨの反応力が加わったディフェンスを攻略するのは簡単ではないだけに、囮としてのADの利用法も気になります。

これまでのヴォーゲルの修正はダメな要素を「減らす」ことが多かったですが、今回については新たな要素を「増やす」ことが求められそうです。

HCとして、いや「勝てるHC」として何を持っているのか。あるいはレブロンが全て解決してしまうのか。もう少しヴォーゲルの奥にあるものを観たいゲーム5です。

◎終わるのか、続くのか

さぁゲーム5です。ドラギッチの復帰が難しそうなので、ヒートはアデバヨの役割をもう少し増やすか、逆に減らしてバトラー中心に切り替えるのか。ヒーローがゲーム4もクラッチショットを決めているので、スタミナを気にせずバトラーに任せることも出来そうなのはポジティブです。

しかし、やはりダンカン・ロビンソンを何とかしないといけません。そこにはアデバヨが必要になるでしょう。いろいろやってくるスポルストラなので、ここの工夫は期待しておきましょう。

そしてコロナの中で、プレーオフをフルスケジュールでやりきれるNBAに感謝。同時に終わったら一気にオフモードが始まるのも毎シーズンの事です。

HC交代の噂がありながら、決めたのはブルズ、シクサーズ、ニックスくらい。キングスって決まりなのかな?

次の話題はゲーム6についてなのか、それとも補強についてなのか。両チームのファン以外の関係者は「いい加減、休みたい」と思っていそうです。

ヒートの「ショート」とレイカーズの3P” への1件のフィードバック

  1. ロンドがラストプレーでレブロンにパスしなかったのは、ゲーム5に取っておくためだと思いました。コーナーでパスアウトを受けたレブロンは、外から打ってくるのか、中に切り込んでくるのか、逆サイドではどんな動きをするのか。そこまで見せてしまうと、ゲーム5の手の内が分かってしまうので、残り40秒の6点差があるし、そこまで展開しなかったんじゃないかと。逆にゲーム5で一番読めないのがここのところで、接戦で4Qに入ったら切り札的に仕掛けてきそうな予感がします。

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