WCF⑤ レイカーズvsナゲッツ

レイカーズ3-0ナゲッツで迎えるゲーム5

「負けたら終わり」が7試合目というクレイジー・ナゲッツ。ゲーム4はナゲッツが勝つ流れだったのに、初めてと思えるくらいにクラッチ勝負で劣ってしまったマレー&ヨキッチ。さすがにお疲れ過ぎるのか、1勝3敗にしたかったのか。

そしてこのゲーム5もまるで「20点ビハインド」にしたいかのようなプレーを序盤から連発します。
・ボール運んだミルサップがパスを出す先を考える前にジャンプしてしまい、どこにも出せずパスミス
・スリップしたマレーがボールを掴まず、スティール速攻
・レブロンが突っ立っているところに、ユーロステップしてチャージングのハリス
なんだか意味の分からない、というか頭の中がお疲れに見えるナゲッツのプレーの数々は、速攻を止めるユーロファールと、ダニー・グリーンのドライブを止めるファールで早々に2ファールとなったヨキッチによって、もう酷い流れになっていくのでした。

◎何が粘りを生みしているのか

しかし、そんなナゲッツの狙い(?)とは裏腹に、20点差どころかリードして過ごす1Qとなります。ヨキッチとハリスがファールトラブルでベンチに下がるけど、代役のモンテとプラムリーが頑張るよね。ただオフェンス力が足りないのでMPJも登場。さっさとセカンドユニットになった。するとMPJが強気にアタックして得点を稼ぎ、一歩も引かない姿勢をみせます。

・・・が、残っていたマレーがミス連発。カルーソの速攻連発になってレイカーズが逆転。クズマもドライブで&ワン。こっちもベンチメンバー頑張るぜ。ADはレイアップ外したけどさ。

そんなわけで疲れているようにしか見えません。それでも関係なく戦えるってのが両者がカンファレンスファイナルまで進んできた理由。なかなか凄い話だ。共に2人のエースに頼り切っている感じなのに、実際にはいなくても頑張れるってね。

その中で唯一元気・・・というか控えめプレーだったレブロンが終盤に違いを作ってレイカーズ33-30で1Qが終わります。長い時間をベンチで戦ったのに、よくやるよねナゲッツ。

◎元気な御大

ヨキッチを戻したナゲッツ。ヴォーゲルはマギーを用意しますが、そこの1on1で決めきります。一方でレブロンもアタックしていきますが、ギリギリでクレイグがブロック。ただ、ヨキッチを狙われるとファールが怖いので何もできないしさ。

ところがマギーがベンチに下がると、ヨキッチがカルーソにオフェンスファールで3つ目。サイズ差があるのでターンするときにエルボーが顔の高さになるのを見事に利用したようなカルーソのディフェンス。ベンチに下がるヨキッチ。

相手がプラムリーになっても変わらずレブロンアタック。ピックプレーしてからスピードで突っ込めば勝てるっていう自信と計算です。

もう1つの狙いは同じく2ファールのMPJ。これも決めまくるレブロンおじさん。さて、これは「ファールトラブル」なのかどうか。ドノバン・ミッチェルにカモにされたMPJですが、以降は狙われませんでした。ここにきて同じようにピック後の判断の悪さを狙われているような気も。

苦しいのでヨキッチ以外のスターターが戻ってくるも、マレーが全く決まりません。レイカーズはマレーへの警戒は辞めず、ピックに対してはブリッツ気味にダブルチーム。だから1人空くわけですが、そこはローテの良さでカバーです。

ディフェンスの狙いがレイカーズの方がエースを止めて後はチームを信じ、ナゲッツはチームとして機能させないようにレブロンにはやられています。ところがキックアウトからマーキーフの3P、カルーソのドライブねじ込みで機能したレイカーズオフェンス。

徐々に、確実に点差が広がっていき、レブロンのダブルクラッチで二桁リードに。

ちょっとキレちゃったようなマレー。強引に突っ込んで、酷いタフショットを打って・・・決めるんだよね。うん。これで何とか助かったナゲッツ。ただレイカーズの勢いが止まるわけでもなく、例によってミルサップがADに対して良いディフェンスをするとファールコールされ。

・・・ところが、今度はADが3つ目をコールされます。なんてことないプラムリーへのアリウープパスに手を出してしまった。なので、やっぱりレブロンアタックのレイカーズ。そっちの方が怖い。

ほぼドライブで得点を稼いだレブロン。それが怖いからパスもきれいに通り、16点6アシスト。数字以上のインパクトがあったけどね。速攻が少ないとこんなものか。

一方で8分17秒しかプレーしなかったヨキッチ。チームハイの9点は奪っているんだけどね。前半は61-51でレイカーズが10点リードでした。元気がない以前にプレーできなかったヨキッチでした。

◎16点差と泥沼

後半も御大のシュートからです。始まったばかりなのに口で呼吸しているマレーだし、オジサンのスタミナが上回っているぜ。タイムアウトでは椅子に座らず、ずっとストレッチしていたマレー。さすがに限界っぽい。

そういえばシリーズ通じて鮮やかなチームオフェンスからアウトサイドを打っていたナゲッツですが、鳴りを潜めているゲーム5です。理由はもちろんレイカーズのディフェンス。KCPとレブロンが個人でマレーを守ってくれるから崩されない。

それでもなんとかしないといけないナゲッツは、ミルサップとグラントが3Pを決め、トランジションからヨキッチのダンクと必死に食らいつくのですが、レブロンがカウンターのワンパスでADのダンクをアシストすれば、ハワードはタフなフックショットを決めきって主導権を渡しません。クリッパーズとは違うんだよ。

ただレイカーズもオフェンスはレブロンとAD頼みの感覚が強くなってきます。結構苦しんでいるのですが、ADもタフショットをねじ込むし、何よりも連続では止めさせないことが出来ているので、ディフェンスで粘っていれば大丈夫て感じです。

ヨキッチのミドル→ハワードがフレグラントでフリースロー→MPJの3Pとナゲッツがオフェンスでラッシュ仕掛けると、空気読まないKCPが突然ジャンプシュート決めちゃったし。それでもレブロンがベンチに下がるとADはグラントにブロックされるしで流れはナゲッツに。

まぁレブロン戻すよね。敏感を超えて、それしかないヴォーゲルでもあるし。

するとMPJのダンクをブロックするAD。そして時間をかけたオフェンスをしているレブロン。ナゲッツのノロノロといい大事だよね。流れを渡さないためには。

だけど、シュートが決まらないレイカーズ。その間にマレーが例によってタフショット&ワンで残り1分2点差にします。ザ・ナゲッツな泥沼ゲームは健在なのか。

ロンドがゴール下を返すも、グラントがドライブからダブルクラッチ。さらにボールを奪ったナゲッツはマレーがドライブからファールドロー。なんと3Qで追い付いたナゲッツ。何点差を追いついたかっていうと16点差を追いついた。

ザ・泥沼ゲームのナゲッツ。16点ビハインドは通常営業。

が、ADが3Pで突き放して3Qが終わります。何でそこで決まるんだろうか?よくわからんけど、それが強さなんだろうね。

◎お疲れマレー

ヘロヘロで戻るのさえギリギリにも見えるマレー。それでもナゲッツオフェンスは死なず、モンテのドライブやヨキッチのショートレンジ、MPJのカッティングが出るのですが、MPJがフリースローを連続ミス。

そしてレブロンはコーストtoコーストで&ワン。フリースロー外すけど。この中で一番元気なのレブロン疑惑。そしてレブロンをリスペクトするレフリー。触ってんのかわからなくてもコールされているし、シュート前でもフリースローになる。うーん、これをやられると守れないわな。コールじゃなくて気持ち的にね。

だからオフェンスで取り返すしかないナゲッツですが、ダニー・グリーンがチェイス&チェイスでショートを止めていきます。それでも決めるにはトランジションのグラントくらいしかない感じのナゲッツ。パスアウトで思い切りの良い3Pを打たないし姿勢を崩さないから歯切れも悪い。

この歯切れの悪さで勝ってきたようなナゲッツですが、タフショットをねじ込むレブロンと、3Pを決めたADによって残り6分10点差。やっぱりマレーが限界って感じの展開です。

面白いことにヴォーゲルはハワードを残し続けます。これまで重要な時間はADをセンターにしてきたのに、ビッグマンを2人残すのは、それでも守れている事と「ドライブのイージーシュートだけは止めたい」という気持ちの表れっぽいです。

本来出れば、ここでマレーが3P連発ってのがプレーオフナゲッツなわけですが、それは出てこないと踏んでいる、あるいは出てくるまで対処しない判断です。それくらい沈黙しているマレー。とにかく打てない。

ミルサップとグラントのハードワークでファールを貰う事もあって、そこそこ得点もするのですが、逆転するためにはマレーかヨキッチがビッグプレーで崩してほしい。

動いたのはヨキッチ。スピードでハワードを振り切って&ワン
しかしダニーがトップから3P
対してマレーのキックアウトからグランドのフリー3Pは決まらず
そしてレブロンがステップバックミドル

ヨキッチがミドルを返しても
レブロンがドライブからフェイダウェイ。ファールトラブルもあって誰も手を出せず

そして残り2分半でレブロンがトドメのミドルで11点差。ほぼゲーム5はレブロンで立ち向かったような試合でした。全体が疲れていて、泥沼なナゲッツのゲームに持ち込まれるような時に、大体はレブロン。なんで元気なんだ。

マレーがやっとミドルを返しても、レブロンが3P。

マレーのプレーオフを終わらせたレブロンでした。

◎難しいシリーズだった

なかなか難しいシリーズでした。ゲーム3時点の振り返りで「ナゲッツ優勢に見える」とコメントがあったように、4勝1敗になるような差はありませんでした。響いたのはゲーム4の最後に試合を決められなかったジャマール・マレーとニコラ・ヨキッチ。その前のゲーム2も効いていたね。

クラッチの強さが支えてきたプレーオフのナゲッツでもあったので、この2試合の差が大きな結果の差になったわけですが、それを引き起こしたのが何かを考えると

ジャズと7試合も戦っちゃダメ!

ってことが全てだった気がします。それがクリッパーズとのシリーズを長引かせたし、マレーが疲弊してしまいました。最後まで戦う姿勢を崩さないのは凄いけど、どこかで勝ち切れるチームじゃないと、プレーオフを最後まで戦い抜くのはムリだよね。

同じことは2年前のレブロンが疲弊しきってファイナルに臨んだなんてのもありました。白熱のシリーズが続くのはプレーオフトータルでは苦しいって事だ。

一方のレイカーズは、結構ギリギリな勝利って事になりますが、何がすごいってディフェンス。ハワードが「リバウンドを取りに行かず、ボックスアウトを優先してファール」とか信じられないし、マレーを止めたのはレブロンのマンマークでした。

クラッチタイムになると、結構使っていたマレーvsレブロンのマッチアップ。一体どうして、ここまでのディフェンス力を積み上げてきたんだヴォーゲル。不思議で不思議で仕方がないぜ。

そしてナゲッツと違ったのはシーズン初めから異様に勝利に拘ってきたこと。1勝の重みみたいなものが強く、それがゲーム5で決着する3つのシリーズに繋がりました。終わってみればブレイザーズとのシリーズが最も苦労したけど、だからといってあのシリーズは負ける気がしなかったよね。

3つのシリーズ通して、あと3敗くらいはした上でファイナルに進んでもおかしくなかったと思いますが、そうはならずに勝ち切れるチームにしたことが、ナゲッツとの差だった気がします。

「勝てないHC」の1人でもあったヴォーゲル。果たして就任1年目での優勝という「あるある」に繋がるのかどうか。レブロンのディフェンス力で勝ちあがる不思議な戦術を作り上げて来ているのでした。

WCF⑤ レイカーズvsナゲッツ” への14件のフィードバック

  1. 確かにDFマインドが強く確実に守れる選手しか使わないヴォーゲルですが、まさかレブロンのDFのマインドまで変えてしまうとは…それもレブロンの体力をきちんとヴォーゲルがマネジメントしたからですが。
    やっぱり相棒がADだったのが大きかった。攻だけでなく守でも常に働き続けていた。しかも安定して。こんな選手と組むのは初めてだったのでは?
    開幕してからの11連勝?で、とりあえずみんなでヴォーゲルを信じてみるか、となったのかも。

    1. 確かに、攻守にADに任せられるから起きている現象だった気もします。
      特にペリメーターでプレッシャーかけまくるのは、キャブス時代は誰も守ってくれないゴール下を自分で防ぎたかったのと大きな差がありますね。

      ディフェンスが勝利を呼んだのではなく、勝利がディフェンスを呼び込んだのか。確かにね。

  2. ナゲッツ対レイカーズ戦だけ勝敗数がめちゃくちゃなのは、まさか何か深い意味があるのか………??

    1. 毎回思うんですけど、タイピングミスなんですよね。
      特にレイカーズ0勝にした時なんて、自分でも意味わかんなかったです。

  3. 守れる選手を起用したいなら守れる選手に仕上げればいいみたいなウォーゲルおじさん
    ナゲッツはもう満身創痍って感じが否めなかったゲーム5

    1. 最後にペリンカをカメラがとらえたのですが「お前の功績ってなんだ?」と思ってしまいました。ヴォーゲル連れてきたのが全てだったような。

  4. 前戦の4Qで存在感が無くなっていたヨキッチ。きょうはファウルトラブルで時間が限られていたにせよ4Qまで仕事をしていた印象でした。ラスト10分2点差までは試合になってましたが、結局、試合を決めたのはレブロン御大の神通力というか。肩でマレーをぶっ飛ばしてもノーコールだったのはちょっとなぁと思いました。

    1. そうですね。それがなくても最終的にはレイカーズが勝つシリーズだと思いますが、疲労困憊のマレーがあれをやられたら、もうどうしようもなかったです。グラントの頑張りばかりが目立ったなー

  5. ゲームレポートお疲れ様です。ファーストラウンドで覚醒したミッチェルはナゲッツにとって予想外だったでしょうね。

    昨年whynot さんはマレーを逆スーパーディフェンダーと評されていましたが、今年のプレーオフでは弱点がそこまで顕在化しなかった気がしています。一方オフェンスではよりアンストッパブルな存在になったので来シーズンに期待がかかりますね。

    1. ミッチェルは、もう3シーズン目ですから、止めきれないのは常識なのに、スカウティングしていないナゲッツが舐めすぎッて感じでもありました。
      ゲーム2以降も普通に「ミッチェルにはやられる」を選択していれば、ゲーム5か6で終わっていたはずなのに・・・。

  6. ここしばらく、マイクマローンの名前を見てないと思うんですけど、この先ゲスト解説として日の目を見ることはあるのでしょうか?

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