さようならダントーニ~モーローと限界~

ダントーニ&モーローの問題は何か

前回はダントーニのハーデン物語を語りましたが、しっかりと分けなければいけなかったことはダントーニのやるべきだったミッションです。それは

戦術で豪華戦力を倒す

かつてのダントーニ・サンズの潮流をくむウォリアーズが戦術でも戦力でも2,3歩先を行っている中で、集められる戦力に限界があるのだからハーデンを中心に戦術で上回ることが必要となりました。毎シーズン状況が変わり、進化を余儀なくされては答えを出し、戦力に駆逐され、戦術はマネされていきました。

ダントーニ・ロケッツは17-18シーズンに勝てなかったことが全てであり、「たられば」でいえば優勝してもおかしくない状況でした。ただ、この世界は結果が全て「ダントーニでは優勝できない」というレッテルを剥がすことは出来ませんでした。

今回振れる「ロケッツの問題点」は誰もが知っている事ばかりです。それは10人が語っても「端的に言えば」同じですが、語り始めると「理由が違う」のではないかということ。そして多くの場合

ダントーニの問題なのか、モーローの問題なのか、わからない

という気がしています。かつてのラン&ガンは時代の中で「浮いている戦術」だったことで、ダントーニ戦術では勝てないといわれても仕方がないかったかもしれませんが、現在はトランジションと3Pの時代なので、浮いている戦術ではありません。

そんなことも含めて、ダントーニ後のロケッツがどうなるかも考えながら問題点を挙げていきましょう。

◎戦術か、ハーデンか

初めにして最大の問題がモーローはどんな基準で選手を集めているのかということ。シクサーズのように相性とか気にせずビッグネームを集める手法もありますが、多くの場合は主力との相性や、足りない部分を補う選手を求めます。

スプラッシュブラザーズを中核としたウォリアーズは、シュート以外の武器を持つ選手を集めました。出来るだけ多彩にしていく狙いがあったわけですが、ディフェンス力を条件とする以外は、そこまでこだわっておらず、集まった選手をスティーブ・カーが調理するイメージです。

①全体のバランスから足りない選手を集めて戦術を調整する
②主力と相性の良い(仲の良い)選手を集めて戦術を考える
③HCの要請に応じた選手を集める

大体、この3パターンが一般的な集め方です。クリッパーズはリバースがフロント兼任で結果が出ず、役割分けたらすごいチームになったように、③は失敗しがちというのが近年のNBAでは話題になっています。もちろん、HC無視するわけではなく相談した上での話ですが。

ところがモーローボールの影響もあってロケッツは少し変わった集め方をしました。それがダントーニがどこまで絡んでいるのか不明なため、ダントーニが悪いのか、モーローが悪いのか難しいラインです。

④勝利に繋がる「見えない要素」をもった選手をデータで探して獲得する
⑤戦術にハマる選手を獲得する

④がモーロー理論、⑤が最近のロケッツです。④の問題については後述しますが、⑤は一見すると悪くないのですが、ここにロケッツ的な違う問題があって、「戦術にハマる」とか言いながら、ロケッツには2つのポジションしかありません。

・ハンドラーとして個人で違いを作れる
・ウイングとして質の高い3&D

前者は探してくるのが難しいですが、ハーデン、ウエストブルック、ゴードンで足りているので、あまり気にする必要がありません。つまり、実質3&Dのウイングを集めるだけだったモーローです。これって難しそうで5ポジション集めるよりはるかに簡単です。難しくなった理由もダントーニが「3&Dの価値を高めた」ことで奪い合いになっただけですし。

それぞれ個性の違いはあれど「同じタイプの選手を集めたロケッツ」という構図が成立します。それも1つのタイプだけを集めました。

これに対して普通のチームは①か②をやるわけです。特に「チームに足りない要素を求める」タイプのGMだと、多様性が生み出されます。ちょうど今シーズンのヒートがそんな感じでした。共通点は「ファイター」というだけで、ポジションも役割も違う選手だらけになってきました。

ダントーニが勝てない理由①「戦術的な多様性に乏しい」

プレーオフになって違うことが出来ないのは勝てない要素に繋がります。でも、それはロスター構成の時から始まっている問題のため、プレーオフになって突然修正は出来ません。まさにレイカーズとのシリーズがこれでした。

果たしてダントーニが悪いのか、モーローが悪いのか。どちらが悪いかわからないけど、結果は同じです。どうも戦術に引っ張られた気がするモーロー。④を前提に選手を集めた方が良かった気がします。

ロケッツはハーデンのチームです。だから「ハーデンに足りない要素」と「ハーデンと相性の良い選手」を集めるのが通常パターン。タッカーについてはハーデンの足りない要素を補っている感じはありますが、相性の良さってなると悪くないけど、よくもないってイメージです。

カペラについてはハーデンのロブパスを押し込む存在として相性は良かった気がします。シンプルにハーデンに合わせることで生きる選手でした。あとネネイも面白かったしセンターとの相性が良い選手だと思います。

ロケッツはNBA全体に広がる先鋭的なダントーニ戦術を作りましたが、それは戦術に傾倒しすぎたロスター構成故に起きた現象もするのでした。

◎層の薄さとトレンド

昨シーズンのプレーオフでジェラルド・グリーンはロケッツの中で異分子的に働き、効果的な活躍をしました。ケガしていなくなったのが痛かった。3&Dと思いきやシューター的な選手だったこともあり、クイックショットが足りなかったロケッツに好影響を与えたわけです。

ここで考えたいのは、もしもモーローが「多様な選手をそろえていたら」ダントーニは困ったのかどうかです。もちろん、ディフェンスがダメだったり、シュートが決まらないとかはNGですが、ジェラルドの活躍を見ると、そこそこ何とかしているような気もします。

そもそもダントーニのスタートしたシーズンは
べバリー
ライアン・アンダーソン
ルー・ウィリアムス
サム・デッカー
モンテレズ・ハレル
なんかを使って、やっぱりセカンドラウンドまで進んでおり、別に3&Dが揃わなくてもダントーニはダントーニしていました。なお、下の2人はプレーオフではローテ外です。

実は「足りない要素をもたらす選手」だったり「ハーデンと相性の良い選手」を集めていたら、もう少し多様性のあるチームを作っていたのではないかと思います。フロントとHCを分けるのがブームですが、分けてはいるけど近すぎた両者なのか、どっちかが合わせようとしすぎたのか。

ただし、ウイングばかりを集めたことは一定のメリットも生み出しました。なんせポジションが2つしかないから、必然的に層が厚くなりました。初年度のプレーオフは7人ローテだったことを考えれば、奇跡的な進歩です。

ダントーニが勝てない理由②「特定の選手に依存している」

これは完全にダントーニ問題です。ハーデンがいなければ成立しないこと、そして薄い選手層。それでは勝てるわけがない。1つだけ言い訳をすると「戦術で戦力を凌駕する」のだから、ハーデンに頼るくらいは仕方ないだろうってことです。

『strength in numbers』のウォリアーズと対比するようなハーデン依存のロケッツ。ダントーニが悪いけど、そこを否定すると今度はそもそもロスター問題に跳ね返るっていうね。難しい世界だ。

そしてもう1つの「選手層」については、今シーズンのプレーオフはダントーニ批判を考えてしまう結果が出ています。なんせ、ヒートもセルティックスもラプターズもナゲッツも、最後にはクリッパーズまでぶ厚い選手層を使っているとは言い難い・・・。

特にセルティックスは主力4人が出ずっぱりなわけで、これでダントーニを否定するとブラッド・スティーブンスも否定しないといけません。一番マシなのがヨキッチとマレーを酷使しているマイク・マローンってのもウケるな。

ただし、彼らはプレータイムは長いけど、ハーデン依存のような形はなく、プレーはシェアしています。ニック・ナースを筆頭にダントーニとは違う「戦略」と「育成」がポイントになってきているのです。

◎育成できない

ラプターズ、セルティックス、ヒート、ナゲッツがプレーをシェア出来ているのは(ナゲッツは出来ているのか?)実は至極単純な理由でもあります。

サラリーの安い若手が主力になっている

これです。HCが手腕を発揮する前に必要なことは戦力が揃うことであり、そのためにはサラリーキャップ内で優秀な選手を集めないといけません。でも、実質的にそんなのムリです。例外が「ルーキースケールのスター選手がいること」なのです。

シアカム・アヌノビー、テイタム、アデバヨ・ヒーロー、マレー・MPJと各チームにルーキー契約のオールスタークラスの選手がいます。マレーはオールスタークラスだよね?

この中でセルティックスだけは例のトレード絡みで上位指名権を手に入れたので例外的なのですが、他のチームは普通に手に入れた指名権で手に入れた選手を活用しています。ここに関してはバックスも同じです。

それぞれシクサーズのようにタンクして上位指名を手にしたわけではなく、的確なスカウティングで自チームに適した選手を連れてきて育て上げました。ウォリアーズも同じです。

チームを強化するのにトレードやFAでスーパースターを連れてくるのは良いのですが、特定の選手に頼らないチームを作りたければ、ドラフトの有効活用は欠かせないということが今シーズンのプレーオフではハッキリと出ている傾向です。

それはある種のアンチ・ダントーニ、いや、アンチ・モーローなチームつくりが進んできている証拠です。特にラプターズは下部チームの育成力が優勝に繋がったといっても過言ではありません。ロケッツの問題点は

モーローの問題点:データ主義のため実績のない選手を評価するのが下手
トレードで指名権をバンバン放出している

ダントーニの問題点:若手を育てられない

ただ皮肉にもロケッツが最も頂点に近づいたのはカペラのルーキー契約最終年であり、近年のロケッツで唯一といってよいドラフトからの育成成功例でした。

今シーズンはダニエル・ハウスの成長が目立ちましたが、経緯をたどればマジックに行ったクラークのために契約解除させ2WAYを結びなおしたりしており、ここはハウスが頑張ったとしか言いようがありません。そして結果を残したはずのクラークはあっさり見限られたことも忘れてはいけません。

カペラにいろいろと仕込んで「使える選手」にしたのはダントーニですし、ハウスやクラークも使ってきました。サンズ時代を見ても、若手大嫌いというわけではありません。そもそもロケッツには1巡目ルーキーが加入しないのだから、育てる若手がいなかったんじゃないか。

ただ、ことモーローと組めば悪い部分ばかりが出てきました。どちらが悪いのかわかりませんが、「ハーデン頼み」になって「プレーシェア」出来ないのは間違いなく、今シーズンのプレーオフを見る限り、

時代から遅れ始めている

ってことは事実なのでした。若手を重視する必要はないのだけど、多様な選手を集めて補い合うためには、サラリーの安い優秀な選手を連れてこないといけないのでした。

◎天才過ぎるオフェンス

こうしてみていくとダントーニは「ハーデン&ウエストブルックの限界」ではなく「モーローとチームを作る限界」を感じていた気もします。批判されがちな要素も、GMが多彩な選手を連れてくれば、選手の良い部分を生かすHCですし、若手にも仕込んでいくことが出来るHCです。

だからモーローボールとの相性の良さがあった反面で、相性の良さが固定的なチームを作ることに繋がってしまい、プレーオフで勝てない要素を生み出している気もします。

多様な個性も若手も生かせるのが本来のダントーニ

これが正しいかどうかは別にして、仮にこうだったとしましょう。現在のロケッツの真逆を行くようなロスター構成をすれば、弱点とされた固定された選手起用も、柔軟な戦術構成も発揮される気がします。

しかし、絶対にダメだと思う要素もあります。それは

ダントーニが勝てない理由:「自分たちの戦術」に絶対の自信を持ち、「相手に合わせた対応」をしない

結局のところ、ダントーニの問題はここに帰結します。起用する選手が少ないのも「自分たちの戦術」が一番大事だから、それに適合性の高い選手を優先するし、出来ない若手が序列を挙げるのは難しい。

ただ、ここにはダントーニが天才過ぎる故のジレンマもあります。3つの例示を上げながら考えましょう。

【レイカーズとウォリアーズに負けた事】
レイカーズに負けたことについて「戦術ではなくレブロンとADに押しつぶされた」と捉えていますが、このシリーズはターンオーバーも少なく、3Pは確率が落ちませんでした。ただただペイント内で押し込めなかったことが際立つ結果に。

ペイント内でシュートを打てる場面まで作ったけど決まらないことをHCの責任にするのは難しいです。そこはもう戦力として言いようがない。ADを避け続けて勝てるなら苦労しませんが、どこかで倒しに行かないとムリでしょ。

つまりはダントーニ戦術そのものは機能した上で負けました。果たして「相手に応じた違う戦術」を採用すべきだったのか。採用するにしてもどうすればよいのか。

これはウォリアーズに負けた17年も同じことが言えます。

クリス・ポールのケガを除いても、ロケッツは最後までフリーの3Pを打って、そして外しまくって負けました。これがデュラントとデートし続けたアリーザに決めろというのも酷だったので「元気な方が強い」にも繋がってくるわけですが、これまた「ダントーニ戦術が負けた」とは言えないわけです。

あのシリーズはチェスゲームとも呼ばれたように、お互いに細かい対応をしていく中で、どうしてもジョー・ジョンソンやライアン・アンダーソンを起用するしかなかった事情から、より「穴」が増えたことで負けたシリーズでした。

確かにダントーニは「相手に合わせた柔軟性」には欠けるわけですが、だからといって「自分たちの戦術」が負けたって事でもありません。これがとっても厄介な話です。

【バックスが負けた事】
同じくプレーオフに弱いとされるブーデンフォルツァーですが、ホークス時代は置いといて、今は「不完全だけどモンスター」なヤニスを使って強固な戦術を作りました。それでリーグ最高勝率なので、ダントーニと似ているように思えます。

しかし、弱点の多い戦術を採用しており、メリットとデメリット総合して上回れるのがバックス戦術です。プレーオフでは完全に「戦術」の部分で負けました。なお、ちょっと難しいのは2シーズン続けて「ヤニス」という個人のことも含まれるので、一概には言えませんが。

まぁ少なくともバックスはヒートに「自分たちの形」をなかなか出させてもらえず、最後はミドルトンの個人技に頼ることになりました。同一視されそうなダントーニですが、負け方としては結構違います。

【柔軟ではないウォリアーズ】
実はこのダントーニと似ているのがウォリアーズ。「自分たちの形」しか持たず、柔軟性に乏しい戦術をしています。ロスターは多様性を持とうとしているのですが、戦術そのものは一本調子です。ただし、その戦術が止められる経験にも乏しいのです。

よくデュラント不要説として「スプラッシュブラザーズが得点していくほうが強い」といいますが当たり前です。あれが「自分たちの形」であり、その形が出ていれば強いし、そこにはデュラントは不要です。

ロケッツもウォリアーズも柔軟性があまり必要とされない理由があって

「相手が何をしてきても、それに応じた対処方法が戦術に組み込まれている」

というのがあります。要するにオフェンスの天才は、いろんなケースを含めて使える戦術を構築しているわけです。弱点が多かったヤニスのバックスとはちょっと違います。とはいえ、どこかで効率的には簡単ではなくなるわけだ。

そんな時ウォリアーズはどうするか。答えはシンプルで「デュラントの個人技に託す」ことをしています。えぇ戦術関係ない個人技です。これで連覇したのでした。そしてデュラントを攻守に酷使したスティーブ・カーによってスリーピートは出来ませんでした。

まぁウォリアーズは多様な選手を抱えているので、それなりに形を変えているし、なによりも一番弱いポジションのセンターが誰になるかで大きく変化します。そういう工夫はマイクロボールに足りない。かつてはあったんだけどね。

【まとめ】
戦術的多様性がないダントーニですが、一方で戦術そのものが対策によって潰されることもありません。ウォリアーズに負けた時も「3Pが決まらないから負けた」だし、レイカーズに負けたのも「インサイドを押し込めなくて負けた」という状況です。なので、多様性はなくても問題ないのも事実です。

しかし、それだけで勝てれば苦労しない。いろんな相手に勝ち、戦術だけで勝てない時もある。クリアするためにはどこかで個人技ってのが最も簡単です。デュラントだけでなく、ラプターズもレナードを「戦術の異分子」にし続けました。あくまでも例外で得点を取らせた。

ハーデンを中心にしたダントーニ
ハーデンを異分子にした方が正解だったロケッツ

そんな気もするわけですが、それをするには戦力が足りません。だからステップバックで異分子もすれば、中心にもなっていたハーデン。ステップバックが多い時は危険信号だったのは、そういう理由であり、36点平均の時が最も弱いロケッツでした。

「相手に合わせた対応」が不要なのが天才のオフェンス
だけど、やっぱりそれじゃあ優勝(3回)は出来ないぜ!をスティーブ・カーが示しているのでした。

言い換えれば「運が良ければ1回は優勝してよかった」と思うんだ。勝ち続けるのが出来ないだけ。それが18年。ここで優勝できなかったから、次はない。

ラリー・ブラウンも強いチームであり続けたけど優勝したのは1回だったしね。圧倒的な個なくして、優勝し続けるのはかなり大変だ。

ちなみにダントーニにも「自分たちの戦術」よりも「相手に合わせた対応」を明確に優先したことがあります。それが「アリーザをデュラントとデート」させることでした。あの時だけはスイッチ対応をさせなかったのは非常に印象的な出来事でした。

◎少人数ローテ

そんなダントーニの「よくできた戦術」は、これまた違う問題を引き起こしていて、柔軟に戦術を変える必要がないから、起用する選手も多様である必要がありません。だから、どんどん少人数化してしまう。

今のプレーオフを見ても、殆どのチームが選手は7人か8人で固定しています。そんなに多くの選手をローテに入れてくるチームはありません。ただし、「こういう時にはこの選手」みたいな使い方で、毎試合ではないけど出番が来る選手がいます。柔軟であるためにはロスターには一芸の選手だって必要です。ホートン・タッカーは衝撃だった。

相手に合わせるために必要な選手層
相手に合わせる必要がないダントーニ戦術

結局のところ、どうしてもダントーニはこうなってしまいます。柔軟な戦術でないことはマイナスではないのですが、プラスを生みだしてもくれません。苦しい時に「何でもよいから変化を」すら出来ないことが出てきてしまいます。

シーズン中には発生しない事態だけど、プレーオフになると出てきてしまうよね。ケガだけでなく「オジェレイが苦手なヤニス」とか「マシューズが苦手なレブロン」とか「ブラウンに手も足も出ないシアカム」とかさ。こうなったときに解決できないのがダントーニスタイルですし、ニック・ナースはなんとかしてしまう。

「ダントーニがプレーオフで勝てない」ってのは短絡的過ぎる結論だと書いてきましたが、こういう部分があるから、変化をつけられないし、それが勝機を広げられないというのには賛同します。

ダントーニが勝てない理由:オプションとなる選手を活用できない

これが最大の問題。そしてスティーブ・カーはこれをやります。フィル・ジャクソンの影響らしいです。ある種の戦術ではない部分で、やる気を引き出し、予想外の好結果を生みだそうとする努力は足りないぜ。

そんなわけでダントーニは勝てないのですが、これって誰か指摘するスタッフいないのかな? オプションくらい用意しとけ!って思うけど。

で、やっぱりモーローはモーローで、オプション用意しないんだよね。冒頭の通り「足りないものを補う」という補強が苦手。それはダントーニとモーローの関係性も同じで補い合うことが出来ない。

◎次どこ行く?

まぁそういうことで、ダントーニとモーローのコンビは辞めた方が良いってことです。戦術を進めていった両者ですが、進むほどに多様性が消えてしまう。そしてオプションが足りない。

もっとも、スイッチングディフェンスをしている限り、弱点となる選手を獲得するわけにもいかず、「オールラウンドに守れて、オプションとなり得る選手」を探さないといけない・・・誰だよ!?

そんなわけでダントーニとロケッツのストーリーはおしまい。じゃあどんなチームが向いているのかっていうと、こうなります。

・オプションを含めた多彩な選手を集めるGM
・ディフェンス組織を作るのが上手いAC

面白いもんだよね。ダントーニ戦術は凄いし、面白いからこそ、それを阻むようなGMがいいんだよね。ダントーニ×ディフェンスACは基本だけどね。そして、この条件で最も良いチームってのが

クリッパーズ

ノー戦術で戦ってきたリバースで負けたので、ダントーニってのも面白そうだな。しかもカラミアンもいるし、GMは頭痛いくらいにいろんな選手を連れてくるし。そういえばヴォーゲルは変な選手ばかり連れてこられて、規律とハードワーク埋め込んでるから面白いよね。

「戦術で戦力を凌駕する」がダントーニのテーマでしたが、クリッパーズだと純粋に戦力があるので、ちょうどよい感じです。あとは噂に出ているチームですね。

シクサーズ

こちらもダントーニっぽくないわけですが、問題は選手が「多彩」ではないことです。個人能力も多彩じゃなければ、ロスターも偏った集め方をしてしまった上にダントーニっぽくない。でもダントーニがエンビードをどう処理するのかはちょっと気になります。

ペイサーズ

こちらは多彩な選手を集め、ディフェンスACもいるので、結構面白そうにも思えます。サボニスの存在は現在の3P戦術には合わない反面で、ダントーニは「インサイドのプレーメイカー」は好きそうなので化学反応おきたら面白そう。

問題はマクミランが重用していたファイターにダントーニが出来るのかっていう事。オラディポとTJウォーレン。中心選手だけに存在が消えてしまうならダントーニを連れてくる意味がありません。

ブルズ

実はかなり面白そうなのがブルズ。ラヴィーンにエースやらせているのはどうかと思うわけですが、シュート能力が高くドライブの切れ味もあるので、オフボール中心の点取り屋としてはダントーニに合いそう。そしてマルカネンもまた、ビッグマンシューターとして輝けそうな気がします。

PGは問題ですが、総じてオールラウンドな選手を集めてきた傾向があり、ポジションレスオフェンスを実行するだけの素養はあります。ノーエースでやってみて欲しいわけですが、最後にハーデンを加えたくなるな。

ネッツ

愛弟子みたいなナッシュがHCになったネッツのオフェンスコーディネーターになってみないか説。デュラントを異分子的に活用すれば戦術は完成だ!

でもムリだ!ダントーニはHCだろ。カイリーってのも戦術嫌いだから合わなそうだ。

ブレイザーズ

どう?ありそうじゃない?
マカラムの存在はゴードンの上位互換。もともとオフボールで動いてからボールを受けるプレーコールを使っていたし、3Pを中心にしながらも、そこに拘り過ぎることのない個人能力を持っています。

そしてリラードによってコートを広く保つ工夫もあれば、ヌルキッチはインサイドのプレーメイカーになる。アリーザもいる。カーメロはまぁ頑張ってくれ。トレントやザック・コリンズも3P路線を継続できる素養がある。

問題はGMがダメってこと。こちらもあまり足りない要素を埋めに来てくれないGMなので、またも「勝てないダントーニ」と言われてしまいそう。あと守れない選手揃えすぎ。ブレイザーズもまた昨シーズンがピークだったよね。

◎ロケッツはどうする?

面白いことに後任候補がティロン・ルーとサム・キャセールらしい。ダントーニとトレードしようぜ。リバース付きで。

要するにロケッツは「選手の自主性を重視したい」という路線を継続したい雰囲気です。それはダントーニがハーデンやウエストブルックに与えていた自由を継続するって事。ここのバランス感覚は抜群だったよねダントーニ。

ある程度の戦術が出来ているチームを、選手任せのHCが引き継ぐと割と良いことが起きます。なのでハーデンで勝ちたい以上はルーという選択は否定するほどではない。

問題は「ハーデンにあう選手」を集めてきたわけではないので、どのタイミングで崩壊するかって事。さすがに今のロスターはマイクロボールだから普通のHCは扱いが難しいよ。まぁウエストブルックが何とかするんだろうけど。

同じ選手任せならビリー・ドノバンの方がハードワークも徹底するから、このロスターにはあっていると思います。ドノバン×ウエストブルックは見飽きたけど。アダムスが不在の時のサンダーが強かったってのも事実じゃ。

さて、彼らは基本的に現状を引き継げるタイプのHCです。なので後任としては適しているのも事実。モーローがロスター自体を大きく弄る気持ちがないなら、ルーで落ち着くのもわからなくはない。

とにかくハーデン、ウエストブルック、そしてゴードンの3人で100Mを払うチームなので、トレードでロスターを大きく変えるか、3人を扱えるかってことになります。

そう考えるとHC交代よりもGM交代の方が大切でした。敏腕モーローは何とかするのでしょうが、戦術的な特性が強いHCだと苦しそうなんだよね。とりあえず2年くらいは、現ロスターでも受け入れられるHCを探すってのが現実的な気がします。

この路線を引き継げる大穴はジェイ・ライトだけど、あの人NBA来る気ないでしょ。

◎プレーオフで勝てない

「単調で勝てない」

ダントーニが勝てない理由は端的に言えばコレ。ところが単調でも成立してしまう戦術力を持つのが恐ろしい所なわけです。紐解いていけば、ロスターに多様性を持たせておくのが大切だし、「ダントーニを困らせる」ようなロスターの方が向いているのかもしれません。

かといって走れないシャックを連れてくのは違うので、あっちをとれば、こっちがとれず。難しいよね。難しいよ。

結局のところ、スター選手だけでは勝てないし、HCだけでも勝てない。巧みなGMがコストパフォーマンスの良いチームを作らないと勝てないし、ケガをしないコンディショニングもないと勝てない。

だから最高の戦術をみせたロケッツで勝てなくなった時点で、お互いにとっては違う道を進むほうがベターなのだと思います。次のHCがハーデンを異分子に設定してくれるかもしれないし、崩壊させるかもしれないけど、このままでは前には進めなそうだった。

さようならダントーニ・ロケッツ

マジで超スゲーチームだったぜ。
おそらくNBAの歴史的にもスゲーチームだったぜ。
でも優勝していないから歴史には残らないぜ。

そしてスゲーチームで、スゲー戦術して、スゲープレーコールがいっぱいあって、スゲー興味深かった

・・・だけど、毎日見るのは飽きちゃうバスケだったよ。単調過ぎる。

2年前はよかったけど、ずっと続くから観る方も飽きちゃったよ。ただし、マイクロボールになってからは再び面白かったよ。

だからロケッツっぽくないチームに行って欲しいダントーニ
ダントーニ路線を継続しながら変化して欲しいロケッツ

どうしてもこうなってしまうのかな。って感じなのでした。凄いからこそ捨てにくい。でも捨てないと前には進めない。

さようならダントーニ~モーローと限界~” への22件のフィードバック

  1. 今回も面白く読ませてもらいました。

    こんなことは言いたくないよ言いたくないですけどロケッツの今後を考えるよりダントー二がどのチームに行くか考えるほうがワクワクするというね…
    個人的にはホークスですGMはどんな人か知らんけどヤングをMVPにしよう
    有望な若手も多いので自分好みにチューニングできるわけですしカペラのトレードにダントー二がどれほど関わってるかは知らないがそこの気まずささえ解消できれば

    クリッパーズは…ダメダメ
    実をいうとこの数日頭の片隅に思い浮かんだことが数度ありすぐ振り払いました、だめだめ最強すぎる来シーズンどんな気持ちで見ればいいのかわからん、東へ行ってください

    ファンとしてはロケッツの次の監督が決まるまではしばらく無心で過ごすことにします、ルーちゃんになったら来シーズン丸ごと無心で過ごすことになります。

    1. ホークスは若手育成したいので、ダントーニに変えたい気持ちはない気がします。
      ロイド・ピアースも仕事しているので、よっぽどヤングから嫌われていない限りは、このタイミングはないかな。

      結局は「タイミング」なんですよね。それこそ2年前に空いていたらバックスが触手を伸ばしたでしょうし、レイカーズだって1年前なら手を出したかも。クリッパーズは来年だったら・・・。

  2. ダントーニはアーティストですからね。自分のやり方が最高だと思ってなければあそこまで振り切れないですし…エリートビジネスマンみたいなヴオーゲルのような実利を取り続けるリアリストと違って、それもいいですよね(笑)

    ブルズとクリッパーズは自分も妄想しました。特にブルズならラビーンの能力を限界まで引き出すんじゃないでしょうか?マルカネンも当然として、ウェンデルカーター、ポーター、ヤング、サトランスキーなんてダントーニ好み。サトランスキーはCかな?ダンも含めて組み合わせ次第で守れるポテンシャルはありますしね

    ホークスはカペラしだいですかね

    1. 言い得て妙ですね。
      アーティストのダントーニ
      エリートビジネスマンのヴォーゲル、ブラッド
      エリート秘書のスポルストラかな?
      ナースはちょっとアーティストっぽい。

      ブルズ良さげなんですよね。ディフェンス担当さえ見つけられれば。

  3. たぶん一番やりやすい選手が揃ってるのはウルブズじゃないですか?色々な事情でHCのクビを切るのが難しいチームですが、オーナーが変わるので、ワンチャンあるかと期待してます。

    1. あーすっかり忘れていた。タウンズ×ダントーニは是非みてみたいです。

      でも、HC変えるならアトキンソンでしょ。完全にネッツ路線に進んでいる上にACもPGもネッツだし。

  4. やはり2018年のプレイオフが大きなポイントでしたね。。
    ・怪我明けのバーアムーテの不調とCP3の離脱
    ・それを除いてもチャンスは作ったもののシュートが外れて負けた。
    ・そしてその相手が最強のGSWだった。

    振り返ればこれがその後のチーム作りが柔軟にできなくなった要因だったんじゃないかと思います。
    ハーデンも確か試合後のインタビューで、「俺たちは雑魚に負けたわけじゃない。それに惜しかったんだから、来季も大きな変更は必要ないと思っている。」のようなことを言っていました。
    個人的にも、特に今季に入って「アイソでは勝てないのにHOU(ダントーニ)は何でそれが分からないんだ」という意見を目にする度に『いや違うんだ、、このアイソオフェンスであの最強のGSWをあと一歩まで苦しめたんだ。次は優勝できるはずなんだ…!』と内心では思っていました。笑
    なのでモーローの気持ちは分からんでもないんですが、、

    ダントーニには優勝して世間的にも評価されて欲しいなと思います。
    ありがとう、ダントーニ。

    1. あぁなるほど。でも、そこに加えてマイクロボールでアイソ減らしたのもスゴイ話ですね。
      結構なスピードでダントーニは変化してくるんですよね。ただ、どうしても肝心なところでエースが働きにくくなってしまう。
      18年はカリーがアイソでライアンを仕留めたのが印象的なんですけどね・・・。まぁ瞬間の話と試合通してやるのは意味が違うか。

      世間的な評価は低くても、専門家だけでなく、ファンの評価もメチャクチャ高いHCなので、優勝という観点だけで何言ってんのかなーって感じもあります。
      あと、ちゃんとブラッド様も否定しろ!ってね。

      1. コメント返しありがとうございます!

        18年のカリー-ライアンは僕も印象深いですね。バーアムーテがアレだったせいでライアンが…
        今でもたまーに、18年のGSW-HOUのゲームレポートと、カーくんとダンくん談義の記事を読ませてもらって楽しんでます。笑

  5. とても面白い考察でした。

    ダントーニがナッシュ、ハーデンに次ぐ、次世代のシンデレラボーイを生み出すのか、またそれは誰になるのかは楽しみです。

    1. 確かにそう考えるとイーストに行ってMVPを生み出してほしいです。
      オラディポ、サボニスじゃ苦しいか・・・それでもやるのがダントーニか。
      ヤングは現実的に出来そうだし、デュラントは問題外に出来るし。
      シモンズとエンビードは・・・未知数っす。

  6. これを読んだらハーデンのロケッツとダントーニの次の3年間が非常に楽しみになりました。

    マイクロボールから急に5cmくらい平均身長が高くなるシクサーズでどういった戦術を組むのかは見てみたいですね。
    シモンズがすこしでもスリーを打つようになって、2年目シーズンの続きの成長曲線を描いて欲しいです。

    それか前回LALを離れた後にネッツで1.2年ACとして少し休むのもありかもしれないと個人的には思います。ナッシュがインタビューで「自分は戦術云々なことをチームに持ち込むHCときたわけではなく、経験と対話でチームを導くようなHCになりたい」と言ってたみたいです。はじめの2年だけお願いダントーニをする可能性はもしかしたらあるかもしれません。今季プレーオフに進んだネッツのメンバーはおそらく全員維持できますから、そのメンバーでチームの戦術的なものを作って、オプションでカイリー、KDをなんとか組み込むといったような。(激激務)

    1. ダントーニがロケッツとは全然違うタイプのチームに行った時に、今のような戦術ではないものを仕込んでくることを期待しています。
      その意味ではシクサーズなのですが、ただ、どうしても動かないエンビードと、ホーフォードやJリッチが並ぶと「武器」が少ないし、戦術的じゃないので苦しく見えてしまいます。オプションもないし。

      ネッツは行っても良いのですが、行ったところで面白くなさそうで。結局、アトキンソンの流れがあるので、今でも戦術的なんですよね。

  7. サブスクリプションの「アナタ好みな○○はコレです」「これを買ったを人はこれを買ってます」みたいな役割を果たしているダリル・モーリーとユーザーのダントー二みたいな関係なのかなって思ってたんですけど、相性が良すぎるからこそ凝り固まってしまうのは、なんか面白いですね。

    それで今度組むGMがダントー二の思想と似通らないタイプのある種「アンタはこの栄養(選手)が足りてないからコレを取り入れなさい!!」みたいなお節介なおかんタイプのGMで優勝したら面白過ぎますけどね。

    1. あーわかります。
      YouTubeのおすすめとか「こんなの見るわけねーだろ」と思うんですよ。例えばNBAのハイライト観ているから、解説しているユーチューバーが紹介されますが、「いやハイライト観てるのに、こいつらの解説なんて不要だろ」って思うタイプです。それって同じものは2つ要らない性格って事です。
      逆の性格だと似たようなものを集めちゃうんでしょうね。モーロー理論自体が、そんな匂いがするので、どうしてもそうなるのかも。

  8. まあ誰を信じるか。その一点に尽きるのがモーローや大都市チームの特色ですよね。レブロンを信じるのは当然簡単だけどまぁそれはラスやハーデン、ヤニス、カワイを信じるのとは違うわけで。
    ナッシュを信じてもPOでは駄目だったし。
    信じた選手に合わせる戦術とロールプレーヤー。
    この時点で柔軟性無しな分けで。
    レブロンという存在自体が柔軟性をもたらすスキルを誰よりも多く持っている。レブロン以外だとオフェンス面ではドンチッチがその様なタイプかなぁ。
    ダントーニ最高でしたね。でも数学は得意でどんどん方程式を単純化させられたけど科学者では無かった。カリー、ドレイモンド、クレイの様な化学反応を産み出せ無かった。ドレイモンドもアデバヨもクレイもダンロビも化学反応の選手。カリーですらそう。ダントーニにはいなかったしやれないだろうし。極端な進化は楽しいですが明確な答えもでますね。

  9. ダントーニブルズはとても見てみたいですね。
    ダントーニがラビーンとマルケネンをどう扱うかは凄く気になります。さんざん融合が難しいと言われてきたこの二人を天才はどのように調理するのか。
    単にハーデン役をラビーンにやらせるみたいな事にはならないと思いますし、ただ想像もつかない事をしてくるだろうという確信だけがあります。

    1. ホイバーグはうまかったんですけどね。
      選手は論理だけじゃなく気持ちもあるので、上手くのせてあげないとダメ。ダントーニは割とそれが上手いHCでもありますし、面白いかなーと。

  10. いつも面白い記事ありがとうございます。ロケッツのGMとHCの関係性を考えさせられる記事でした。個人的にはこの2人の限界に加えてオーナーシップが不安定であったこともロケッツが失敗した理由だと思います。サンズ時代もそうでしたがオーナーのケチや運営への口出し等でチームに変化を付けられず変化球不足に陥っていた印象があります。次のチームでは彼の良い部分も悪い部分もしっかり扱えるオーナーシップのもとで頑張って欲しいです(そんなところはあるかな…

    1. オーナーは大事って言いますね。
      最近、買収したロケッツのオーナーが、こんなにケチだとは。

      おじいちゃんが残っていたら優勝できたのかもしれません。

  11. さすがにブレイザーズはディフェンス出来る選手連れてくるんじゃないですかね?TPE使ってハークレスとかミニマムでジェフとか。カーメロとはリサインしない気がします。てかしない方がいいでしょう。ホワイトサイドやカーメロとリサインしてたら多分GMに勝つ気がないんだと思いますのでそれなら別にいいですがリラード脱出してほしい…

    1. ホワイトサイドとの継続はないと思いますが、ヌルキッチがよかった一方で、ホワイトサイド的な人材も必要なことを示したプレーオフでした。そういう多様性をGMが感じ取ってくれたなら良いのですが、ディフェンスからオフェンスに走ったり、SFいないチームがSFばかり集めたりと、ちょっとね・・・。

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