さようならシクサーズ’20

分析・反省編

さようならシリーズに登場するのはシクサーズ。全チーム書ければ理想的ですが、過去の経験からそれはムリって事を知っています。なので、需要がありそうなチームや、触れていることが少ないチームを優先的に書こうと思っています。

例えばブレイザーズは散々書いてきているから新しい要素はないし、ネッツはどうせ来シーズンとの接点がないし、そういうチームを積極的に書いてもね。

シクサーズについては話題になるのは大きく3要素で、それが噂になりまくっているから、意見を書いておこうという趣旨です。

①ブレッド・ブラウンはクビか
②エンビードはトレードか(シモンズ中心)
③シモンズはトレードか(エンビード中心)

しかし、これをダイレクトに書いていくと、ちょっと話が入り組んでしまいます。なので、前後編に分けようかなーと。前編はこの3年間の戦い方をおさらいし、それが3つの要素でどう響くのかを捉えておきたいと思います。

そして書き始めたところで①は終わってしまいました。早々にブレット・ブラウンをクビにしたのは、フロントの計画性のなさを示している気がします。②③をやらないことを示したのは悪いことではありません。

◎GM遍歴

まずシクサーズで押さえないといけないのがGMの話です。現在のGMはエルトン・ブランドで、就任したのは2018年9月20日なので昨シーズン開幕直前という実に微妙な時期でした。

これは前任のコランジェロと奥さんがTwitterにあることないこと書きまくた責任を取って辞任した故の緊急措置だったのです。ロスターが決まってから就任したエルトン・ブランドはシーズン中にバトラーの獲得に動いています。思えば、ここからおかしくなっているのも事実。

コランジェロが就任したのは2016年のオフ。この年はベン・シモンズをドラフト1位で指名した年です。そして翌年は3位指名権を1位に変えてフルツを獲得しています。両ドラフト1位を選んだのがコランジェロなわけです。

その一方で今では笑い話のドラフトになっています。PGシモンズなのに翌年もPGフルツ。テイタムをはじめとして有望株だらけだった年にポジション被りという愚行をしたわけです。

コランジェロがラッキーだったのは負けるのが1シーズンで良かったこと。前任のヒンキーは「トラスト・ザ・プロセス」と題して、タンクしまくりのシーズンを過ごさせ、上位指名権を手にいれまくりました。

2013年にGMになってから、ナーレンズ・ノエル、マイケルカーター・ウィリアムス(新人王)、エンビード、サリッチ、ジェレミ・グラント、KJマクダニエル、オカフォー、ホルムスなんかをドラフト指名しています。

一見、見る目があるGMっぽいですが、3年間でノエル、オカフォー、エンビード、ホルムズを指名しているわけでクレイジーです。そして今ではエンビードしか残っていないように、指名してはトレードするのがシクサーズ流になっています。

さて、長々書いていますが、一番大切なのは2013年から7シーズンの間に3人のGMが、それぞれの基準でトレードを繰り返してきたことです。そしてブレッド・ブラウンを選んだのはヒンキーだということ。大きな流れとしては

【ヒンキー時代】
2013年 ブレッド・ブラウンHC就任
2014年 エンビード指名
      その他、若手を指名
【コランジェロ時代】
2016年 シモンズ指名
      サリッチ以外の若手を放出
2017年 フルツ指名
【ブランド時代】
2018年 サリッチ、コビントン等を放出してバトラー獲得
      シャメット等を放出してトバイアス獲得
2019年 ホーフォード獲得
      フルツ放出

トレードを繰り返してきたシクサーズですが、シモンズとエンビード、そしてブレッド・ブラウン以外は「前任が獲得した選手を次々に放出」しています。短期的思考が強いのはもちろんですが、チームつくりの方針が細かく動いているということ。

その一方で最も大切なHCをコランジェロもブランドも連れてこようとしていません。コランジェロ就任当初は弱かったので、まだわかりますが、エルトン・ブランドは自分が作りたいチームに適したHCなのか、判断出来ていないことに。

実際、エルトン・ブランドがGMになったことで、ブレッド・ブラウンの粗が目立つようになってしまったんだよね。そしてクビにしたわけですが、これまでのブランドは「HCを決める裁量権」を持っていなかったという話です。決めていたのが父コランジェロらしく、チグハグなフロント。

◎動いていく特徴

①ブレット・ブラウンの特徴は、パスゲームとトランジションにあります。細かい戦略はない代わりに、チーム全体がポジションを変えていく中で生まれたチャンスを積極的に狙っていきます。

②シモンズの特徴も似たようなもので、自らは動き回ってパスを繋ぎまくることで、周囲に得点を促すタイプです。自分でプレーメイクしてパスをするPGは珍しくありませんが、シモンズの場合は「パス交換」が多いのが特殊。ポイントセンターみたいなポイントガードです。

③エンビードは2人とは真逆で、動かないしパスワークもありません。代わりにインサイドでの圧倒的な強さがあるので、周囲はエンビードのためにスペースを作るのが最適です。

シモンズとエンビードを中心にしたチームを作るというのは、真逆の特徴を持った2人をかみ合わせることになります。当初はシモンズ側にエンビードを寄せようとしたのですが、徐々にありかたが変わってきました。

そして今シーズンの最後はシモンズをPFに持って行く、よくわからない形でフィニッシュしています。動かないエンビードの代わりにシモンズをインサイドに置いたのは、結果的にプレーオフのエンビード問題にもなりました。

まぁそれは置いといて、この2人の特徴を2軸で定義します。

縦軸 ・・・ 「積極」or「堅実」
横軸 ・・・ 「個人型」or「パス型」

縦軸は「シュートセレクション」の特徴です。シモンズのパッシングゲームは素晴らしいけど、それは人とボールが動いてチャンスが生まれた時に積極的に打って初めて成立します。

一方でしっかりとフリーになって打ちたいタイプの選手もいます。積極的に打ちすぎることでスキも生まれるので、どちらが正しいってことはありません。そして積極的ならトランジションが増え、堅実ならハーフコートが増えます。

横軸はシュートへの過程として、パスによって生まれたチャンスで打つのか、個人突破から打つのか、で表現しています。「チーム」だから正しいって事はありません。

エンビードはパスを貰って打つこともありますが、合わせるのが下手なので個人型です。これも2年前は合わせるプレーをやらせようとしていたのに、昨シーズンから辞めてしまいました。

選手の特徴はいろいろですが、この2軸にすることでトランジションに向いているかどうかも、なんとなくわかるし、何よりも

積極・パスがシモンズ(グラフの右上ゾーン)
堅実・個人がエンビード(グラフの左下ゾーン)

と両エースとの相性みたいなものもわかりやすくなります。これをこの3シーズンに在籍した主力を当てはめてみましょう。なお、本来は偏っているのもよくないのです。

17-18シーズンは明らかにシモンズ向きのチームでした。真逆にいるエンビードは時に良いアクセントになり、時にチームの邪魔をしました。

18-19シーズンはシモンズ向きを残しながらもバトラー加入でエンビードの方に大きく動きました。考えようによってはバランスがとれていますが、バトラーとエンビードの2人がいるので、かなり左下に偏っています。

19-20シーズンはそのバトラーがいなくなっただけでなく、シモンズ向きの選手が極端に減りました。じゃあエンビード向きかっていうと、右下のゾーンに選手がいるように「パス」が必要でもありました。

シモンズはパスをくれるけど、積極的に打たないから機能性が低い
エンビードで堅実に攻めるのは良いけど、パスが出てこないからシュートに行けない

なんとなく、こんなイメージです。とにかく選手のタイプが3シーズンの間に動きまくり、シクサーズのオフェンスには一貫性がありませんでした。

シモンズ寄り→エンビード寄り→間を取って双方から遠い

なんだかんだいってバトラーがいた昨シーズンが最も成績が良かった理由は、バトラーの存在だけでなく、バランスがとれていたからかもしれません。

一体どんなチームにしたいのか、中期計画の乏しさは3年間に選手を入れ替えまくって、シモンズとエンビードにマッチしないチームになっていきました。

◎プレーオフの問題

プレーオフにはいろんな問題がありました。シモンズ不在でリーダーシップがなく、チームがバラバラだったのは最たる例ですが、目に見えないことを書いていくとキリがないので、エンビードのプレー中心のみを書きます。

平均30点で「孤軍奮闘」と評されるエンビード。まぁそれはどう見てもセルティックスのゲームプランだったわけですが、そんな戦略は簡単にはわからないだろうね。

しかし、ワンプレーを切り取っても、エンビードのプレーが効果的だったかは疑問が残ります。特にアシストが1.4しかなかったのは、どれだけエンビードからパスが出てこなかったのかを示してもいます。

ちなみに管理人はエンビードは「オールラウンド」だとは全く思っていません。インサイドフィニッシャーとしてカペラみたいにプレーさせるのが最善なのですが、このシリーズではハイポストやミドルポストでボールを持たせ過ぎました。

結局、エンビードがボールを持つと次の展開がなかったわけです。しかし、それ以上に問題なのは、そんなことがわかっていながらトバイアス・ホーフォードと並べていた事でした。

3人が同時にコートにいた時のレーティングは最悪です。

◎レーティング
オフェンス 102.2
ディフェンス 133.3

これを受けて「孤軍奮闘のエンビード」と「トバイアスやホーフォードが情けない」なんてことも言われますが、実際にはシクサーズはエンビードがコートにいない方が攻守に良い結果が生まれています。

〇エンビードのオンコート
オフェンス 101.7
ディフェンス 120.9

〇オフコート
オフェンス 109.1
ディフェンス 100.0

数字だけ見れば「エンビードがいなければシクサーズがスイープで勝っていた」とすら言いたくなるわけです。もちろん、そんなわけありません。

ディフェンスについてはゲーム2が終わった時点で書いたように、セルティックスはエンビードを引き出し、走らせ、振り回してリムプロテクターとしての存在感をなくしました。テイタム、ブラウン、スマートがエンビードがいてもゴール下にアタックしていくのは、舐め切ったプレーでした。

今回はオフェンスについて考えてみましょう。

問題は「エンビードは得点を奪った」し、「トバイアスとホーフォードはイマイチだった」にも関わらず、エンビードがいない時間の方が良かったという事です。そして3人がコートにいるとダメダメでした。

◎プレーエリア

まずエンビードのショットチャートを見てみましょう。左サイド寄りでローポストは少なく、ミドルポスト中心に攻めていったのがわかります。

次にトバイアスのショットチャートを見ると、ビックリするくらいエンビードと被っています。2人のエースが同じプレーエリアを利用していたら、効率が悪いのは当然です。

エンビードとトバイアスのプレーエリア被りすぎ問題

次にホーフォードを見てみましょう。このマルチな男がシクサーズでは全く活躍できない理由が4試合に詰まっていました。それはホーフォードには「いろんなことが見えていた」ように思えてきます。

見てのとおり、ホーフォードのショットチャートは、「エンビードとトバイアスがいないゾーン」に限られています。2人のエースに対して、ホーフォードはフロアバランスをとって適切にプレーしていたようにも見えるわけです。

これに加えてJリッチとミルトンはトップから45°で止まっていないといけなかったので、シクサーズのオフェンスは固まり切っていました。ある意味、そんな状態で30点取っているエンビードもおかしいわけですが、固定化された形は守りやすかったと思います。

ホーフォードは本来コートのどこからでもシュートを打つタイプです。しかし、ど真ん中にエンビードがいるものだから、許されませんでした。

ホーフォードは適切にプレーしようとし、何もできなかった

多分、こういう表現が正しい。シクサーズはエンビードに点を取らせるために、多くのものを犠牲にし、犠牲にしただけ非効率なプレーをしていたわけです。

それにしてもトバイアスとエンビードが被っているのは謎です。トバイアスの得意ゾーンってわけじゃないので、チームオフェンスがこうしたかったということになり、それはブレット・ブラウンの指示なのかもしれません。

◎方向性は決まったのか

こうして次回に続こうと思うのですが、その前にブレット・ブラウンがクビになったことについて触れましょう。クビになったこと自体は想定内なので仕方がないさ。みんな、そうなると思っていたよ。

しかし、敗戦で即クビにしたことは、シクサーズのフロントらしさが溢れています。「次をどうするか」「何が悪かったのか」という反省をして、方針を決めないうちに動いた感じが否めません。

なんせ2年前のシモンズ路線で行くならブレット・ブラウンで良いわけです。現時点でその路線を否定したなら早期の決断は悪くないのですが、決断したとは思えないし。

今回触れてきたシクサーズの問題は
・GMに計画性がない
・選手のタイプを考えずに獲得している
・シモンズとエンビードを融合させる算段がない
こんなチーム構成そのものの問題から、

・プレーエリアが被っている
・適切なプレーが結果にならない
といった試合の中で起こっている問題もあるわけです。

そして実はこういった「悪いこと」ばかりにフューチャーしていて、「何が良かったのか」という反省も欠けている気がします。まぁそれはオフにブランドが何をするか次第ですが。

わかりやすいのはミルトン。シューターとして頭角を現したのに、何故かPGやって良さが消えていきました。「シモンズが悪い」からスタートして、自分たちの良さを消したわけです。

ホーフォードを批判の的にするのは自由ですが、ちゃんとバランスとってくれているからね。そこに気が付くなら、もっと活かされたんじゃないのかい。そういう戦術眼は学ばせていないけどさ。

ということで、問題だらけなので、いろんなことは無視して来シーズンの事を考え直そうぜ!ってのが次回です。次回とか言いながら、プレーオフ再開なので延々と書かないかもしれません。

さようならブレット・ブラウン。パッシングスタイルは面白くて好きだったぜ。運が悪かったのはGMが変な補強しまくったことさ。

さようならシクサーズ’20” への7件のフィードバック

  1. 執筆お疲れ様です。いつも楽しく読ませてもらってます。
    ところで、記事とは一切関係ない話ですが背景が黒色なのはもしかしてBlack Lives Matter仕様ですか?

  2. 結構言われてる事ですが、
    エンビードチーム
    シモンズチーム で分けて出せばいいって単純なことでは解決出来ないんですかね

    1. シモンズチームは何とかなるのですが、エンビードチームはメンバー構成の正解が難しいですね。

      特に今回のようにセルティックスが相手なら、エンビードの長所を優先するのか、短所を埋めるのか、それで顔ぶれが変わっちゃいますね。

  3. YouTubeで「シモンズ&エンビートに未来はあるのか?」の動画を拝見しました。
    「シモンズとエンビートはトレードしない」と示したことは悪いことではないと書かれていますが、主さんはシモンズ&エンビートの継続に賛成なのでしょうか?
    2人に合った戦術と選手を整えたとしたらどこまで勝ち進めると思いますか?

    1. 良い話があればトレードしていいのですが、「良い話」って思いつかないので、下手に動くよりも未知数過ぎるコンビを何とかしてみるのが先決かと。
      動画みたいな事をしていれば、そこまで悪いコンビではないと思うのですが、やらなくなりましたよね

  4. エンビードが天下を取るイメージが全く湧きません。いずれ怪我をして…という予感しかないです。

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