Not ハイパー, But ハイパー

振り向けばサンズ

まさかの5連勝で猛プッシュしてくるサンズ、まさかの高速バスケで一発逆転を狙うスパーズ。気の抜けない戦いが続くブレイザーズは、毎試合のように大接戦を演じています。

140-135 グリズリーズ
124-128 セルティックス
110-102 ロケッツ
125-115 ナゲッツ
117-122 クリッパーズ
124-121 シクサーズ

これで4勝2敗。強豪との戦いばかりが続く中では良い結果ではあるものの、期待されたほどの強さを発揮しているわけでもありません。問題だったのはクリッパーズ戦。ここを勝っていれば5勝1敗だったので、大きな敗戦となりましたが、その内容が問題でした。

この試合29点を奪ったマカラムの活躍もあって、残り3分で5点をリードしていながら、レナードとポール・ジョージがベンチに座っているクリッパーズ相手に反撃を受け、残り1分で同点にされます。

それでも残り41秒。見事なヘジテーションドライブからダブルクラッチ気味に行ったリラードのレイアップで2点リード。さすがの勝負強さ!

しかし、ディフェンスポゼッションでも選手交代しないブレイザーズは、カーメロがドライブのヘルプに行くと、あまりにも簡単にマグダーモットがフリーになり、3Pで逆転。

まだまだリラード。ドライブから無理っぽいフローターを打ちに行ってファールドロー。1点差で2本のフリースローを得たキャリア成功率88.8%のリラード
2本とも決まる確率 ・・・78.9%
1本決まる確率 ・・・19.9%
2本とも外れる確率 ・・・1.3%

・・・これがまさかの僅か1.3%の結果に!
この後、残り9秒で同点を狙った3Pも決まらず、まさかの敗戦を喫しました。

2本のうち1本決めればよかったフリースローを、リラードが2本もミスするとは誰もが信じられない結末でした。全ての責任をリラードに押し付けてはいけないけど、リラードにこんなシーンが訪れるとは予想もつきませんでした。

〇クリッパーズ戦
39分 22点 5アシスト
2P8/13
3P2/10
FT0/2

今シーズンを「ハイパー・リラード」と称したのは、チームがガタガタになった中で、さらなるハイパフォーマンスを発揮し続けたこと。ヌルキッチが戻ってきてチームは上手く回り始め、リラードの負担は大きく減り、ハイパーじゃなくても勝利に近づけるようになりました。

そんな中でのフリースローミスは「ハイパー」の称号をはく奪し、「スーパー」に格下げしたくなるものでした。しかし、この男の恐ろしいのは、即座にリベンジすることなのでした。

◎絵になる男

リラードは「絵になる男」それは単に勝負強いだけでなく、何故か最後にボールが回ってくるからでもあります。文字通り「ボール」のではなく、「リラードを必要とするシーン」がやってくるのです。

エースがハイスコアを奪う時には2パターンがあってリラードは完全に後者のタイプです。だからハイスコア=チームが大勝というパターンは珍しいかな。

・エースが得点しやすいくらいチームが上手く回っている
・チームがダメだからエースが得点しまくる

ヌルキッチが戻ってきて「チームが上手く回り」始めました。でもヌルキッチは悪い時に何とかしてくれるわけではなく、ワンポゼッションを争う中ではリラードは自分で行きます。

「ダメな時に活躍するのが素晴らしい」ってことでもなくて、ハイスコアなのに突き放せず、最後までもつれることにも繋がりがちです。3Qまでに50点とってしまえば試合終了の方が楽に勝てます。

ブレイザーズは「これで勝負あったな」という展開でも、何故か接戦になっていき、結局はリラードの出番になるケースが多くあります。オールドタイプの「4Q残り6分が重要」なゲームをしているともいえます。

実際、クリッパーズ戦は「マカラムで勝負あり」という残り3分の展開から見事に残り1分で同点にされました。この2分間でリラードはゲームコントロールはしていたもののシュートも打っていません。それで追いつかれても、最後は(フリースローを決めていれば)リラードの試合として記憶に残っていたはずです。

それが「絵になる男」、「絵になる事が多い男」なのかもしれません。

そして翌日に行われたシクサーズ戦。エンビードが早々に離脱するアクシデントもあって、ブレイザーズは2Qには最大17点のリードを得ましたが、ここから反撃にあって逆転される「らしい」展開に。

そして4Q残り4分23秒、ジョシュ・リチャードソンの3Pでシクサーズが6点リードになったのでした。

◎ラッシュするリラード

前日の敗戦についての責任を重く受け止めたようなリラードは、試合開始からラッシュしました。

〇前半
22点 5アシスト
2P8/10
3P0/4
FT8/8

クリッパーズ戦では最後の最後にしか打たなかったフリースローを前半だけで8本打っており、果敢にリングにアタックしていきました。ただし、不調だった3Pは継続しており、全く決まっていません。

3Qになってやっと3Pを決めるも、ここで失速した形になったことでシクサーズに反撃され始めました。

〇3Q
9点 2ターンオーバー
2P1/4
3P1/4
FT2/2

得点こそ伸びたものの、同じく12分プレーしたJリッチ(12点、4アシスト)の前に失速してしまいました。

そして2分40秒休んだ後の4Q、残り4分23秒でシクサーズの6点リードとなるわけですが、そこまでのリラードはチーム12点のうち9点を自ら奪いました。自分が勝利に導く強い気持ちがあるエース。エースが良いからと言ってチームが良いわけではないブレイザーズ。

◎VIPの時間

そういえばバブルでリラードの部屋がスーパースイートだって話題になっていたっけ。全員に同じ部屋なんて用意できないんだから、そりゃあ自然とそうなるでしょ。同時にVIPたるだけの働きもしてくれないとね。

リラードのドライブからマカラムを経由してコーナーのカーメロ3Pで3点差。さらにマカラムが個人技ミドルで残り3分1点差にします。

1点差の状況でのプレーは、ヌルキッチのハイピックを利用し、背中でJリッチを抑えながらの3P&ワンという離れ業でした。これで逆転。

ホーフォードの3Pが外れ、次のプレーは同じくヌルキッチを使いながら、Jリッチを振り回してシュートを打てる状況を作って、注文通りの3Pで6点差。

トバイアスに返されるも、今度は3Pではなくドライブレイアップを返して、残り1分半6点差に戻し、ゲームをクローズさせました。

試合開始からラッシュしてリードを広げておきながら、最後にやっぱり追いつかれ、そして自分の出番とばかりに勝負を決めるリラード。勝負所でミスした翌日に51点+クラッチショットでアンサーしたのでした。

◎シクサーズとリラード

では、この活躍をシクサーズ目線で見てみましょう。リラードのハイライトを観てディフェンスの状況を考えると頭が痛くなります。

前半は3Pではなくドライブ系で切り裂かれ、リラードのキックアウトをカットしたトバイアスの自殺点という観た事のないプレーまで飛び出しました。

初めはエンビードをコーナーに連れ出されてのドライブでしたが、エンビードがいなくなるとリムプロテクトが出来ない状況でアタックされていきました。

相手がリラードということもあって、かなりチェイスしていたマークマンがはがされると全く間に合わなくなっています。

ブレイザーズはヌルキッチがかなり高い位置からスクリナーになるので、実質的な5アウトになっています。しかもスターターこそザック・コリンズでしたが、メインはゲーリー・トレントに変更されたのでPFカーメロになっており、コートを広く使っています。

これがヘルプが間に合わない環境を作ってしまいました。シモンズがいればポジションによってはチェイスしてきたかもしれませんが、エンビードいても間に合わない形が多かったでしょう。

見事に切り裂かれたこともあって、後半のシクサーズはエンビードの抜けたところにはサイブルがメインで起用され、より全体でチェイスする形を強めていきます。

これでヌルキッチのマークは基本的にホーフォードになるわけですが、ヘルプ担当もホーフォードなので、あからさまにスキが生まれました。

ハイピックを連発するヌルキッチでしたが、これでリラードはマークを剥がしても3Pラインの外にいます。しかし、ホーフォードはペイント内で待ち構えます。

はい、ドフリー3Pの誕生です。いや、「リラードのドフリー3P」の誕生です。何故か知りませんが、リラードが打てる環境を作っていたシクサーズです。

Jリッチにしろ、サイブルにしろ(シモンズにしろ)優れたディフェンダーであるため、この環境でもかなり頑張って守っていました。特にJリッチのスクリーンをかわす動きは素晴らしい。

でも限界があります。一瞬でも良いからショーディフェンスで止めてくれれば違ったのに、誰もやってくれない。やってくれたと思ったらJリッチとサイブルだったしね。ここで違う問題も。

「ホーフォードがショーディフェンスをしてくれない」

?????

シクサーズはとにかくエンビードが全くチームディフェンスを出来ないので、簡単に穴が生まれてしまい、チェスゲームに弱い特性があります。そういえばミルトンと揉めていたのは守り方だったとか。エンビード酷いもん。

ところがホーフォードも「リラードの3P」を放置に近い形で打たせてしまいました。ということは、明らかにチームディフェンスに問題があります。

インサイド重視で守るのはバックスが有名ですが、あちらは3Pをいっぱい打たせてくれるものの、前提としてはスクリーンに対してアンダーで守って、そこそこのプレッシャーはかけるし、「打たせるならビッグマン」みたいな考え方もあります。

ブレイザーズ相手ならヌルキッチには打たせて良いので、放置するならヌルキッチを放置すべきでした。っていうか放置されているんだけど。リラードすら守らなかったんだよね。何を守りたかったのか意味不明。

リラードの最後の得点は3Pではなくレイアップでしたが、この時ヘルプに来ていたのはサイブル。だから3Pではなく突破を選んでいました。ディフェンスがほぼ個人任せのシクサーズ。そんなに甘くないぜ。

◎ヌルキッチとホワイトサイド

ヌルキッチになってから、チームが回っていますが、その1つが頻繁にスクリーンに来てくれることで、しかも、こうやってしっかりと引き離してくれるので、リラード&マカラムはやりやすいでしょう。

ただ、今日のハイピック連発については、ホワイトサイドの時はどうだったのかなーと思います。ちゃんとスクリーンには来ていたよね。頻繁ではなかったけど。

でもめんどくさいのでおしまい。51点でアンサーしたリラード。グリズリーズとは0.5ゲーム差だそうです。

Not ハイパー, But ハイパー” への8件のフィードバック

  1. ホワイトサイドはスクリーンかけきらずにスリップand急いでスクリーンに来てくれない事もあり、かつボール預けてらんないのでリラードとマカラムどちらかがボールをすぐ貰う→貰った方が1on1みたいなシーズン通して酷いオフェンスだったので、きっちりスクリーンをかけた上でダイブでき、ボールも預けることができてアングルも変えられるヌルキッチの存在はゲーム通して大きいと思いました。

    1. なるほど。
      ヌルキッチはマカラム→リラードとワンプレーで2回スクリーンかけたり、右と見せかけて左にスクリーンしたりと、細かい工夫と回数がありますから、ホワイトサイドとは違いますね。ヌルキッチが異常に多いのですが。

      しっかりかけるのが大事なブレイザーズもあれば、グリズリーズはスリップが特徴なので、スクリーンもいろいろです

  2. リラードとマカラムのプルアップスリーをウェポンとして見せたい以上、ブレイザーズはしっかりスクリーンをかけてくれるビッグマンが必要だったわけですね。ザックコリンズもオフェンス面で怪しいですがしつこくスクリーンかけてる印象です。

    1. ガブリエルも一生懸命スクリーンしてますし、ここの重要性を感じますね。ヌルキッチとホワイトサイドを観ていると、地味な能力ながら「スクリーンをかけるスキル」が非常に重要なことがわかります。
      最強はアダムス!

  3. シクサーズ戦を見ていたのですがシクサーズはデュオ解体の前にHCを変えたほうがいいと思うんですがどうですか?あれだけリラードにやられているのですからダブルチームを指示するべきだったように感じました。ブレットブラウンは育成には長けたコーチだとおもいますがあのダイナミックなデュオは彼には荷が重いですよね。

    1. HC交代は2年前からの課題です。当時は戦術ではなくて、試合中の采配が不味かったので、優勝するためには特に必要な事でした。
      それから毎シーズンのように方針を大変革させるGMに振り回されているようなブレッド・ブラウンなので、HCも被害者なのです。

      GMがやりたいバスケをハッキリと定義出来ないから、HC交代をしてないんでしょうね。

  4. 土壇場でシュートでなく、FTを外すとは目を疑いました。初めてではないですか?勝っていれば8位確定となっていたはずです。LACはどうぞ勝ってくださいという試合だったので、余計にショックが大きいです。
    でも、これで終わらないのがリラードで次の試合で51点、昨日は61点で見事チームを勝利に導きました。これで明日勝てば8位ですが、プレーインがまさかのサンズだと嫌ですね。ここまで好調だとは?

    1. リラードどうなってんだ!

      っていう8試合でした。
      まだ終わっていませんが。

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