セルティックスのリーダー
各チームを2000字くらいにまとめていく作業をしていると「書くことはいっぱいあるのに難しい」チームに出くわします。今シーズンはセルティックスとナゲッツ。共通点は全員に個性とミッションがあって活躍すること。誰もが活躍するから、書くことが多過ぎるし、絞ろうにも個々の活躍度では他のチームのエースよりも地味。
ケンバ、テイタム、ヨキッチ、マレーがいるのに「地味」ってことはないだろう。と思うかもしれませんが、じゃあ「セルティックスの紹介記事なので、ケンバが中心です」って言われても違和感あるでしょ。
実際、ケンバいなくても成立するセルティックス。しかし、ある1点でケンバの必要性が際立つことがあります。今回は本題を書くと一瞬で終わるので、少し遠い要素から書きましょう。
◎ドライブチーム
カイリー、モリス、ホーフォードが移籍したセルティックスですが、カイリーのところはそのままケンバが納まりましたが、残りの2人は丸々マイナス要素になっています。これがオフェンス面で言うと
モリス・・・PFでのポストアップや3P
ホーフォード・・・ピック&ロールの中心、ポップしての3P&プレーメイク
ざっくりとこんな感じ。ホーフォードのポストアップ分はカンターとかで埋まるのですが、ピック&ロールから「もうワンプレー繋ぐ」みたいなことはタイスやカンターには出来なことでしたし、最後をホーフォードのシュートに託すことは出来ても、タイスに託すことは出来ないよね。
モリスの方はあまりスクリーンしないし、ドライブもないけど、ミドルから3Pレンジを積極的に打つPFという重要性でした。これらがなくなったことは
よりドライブ担当(ハンドラー)がフィニッシュまで辿り着く可能性を高めたい
こんな事情があります。つまり選手の質としてはヘイワードやブラウンがいるから、そこまで落ちないのですが、ハンドラータイプなのでドライブで決めきるorキックアウトなどで構築する必要が生じました。まずは、セルティックスのこの変化について触れてみます。
〇ドライブ
回数 38.4 →45.5
得点 22.0 →27.5
パス 14.5 →19.2
アシスト 3.5 →4.0
得点は5.5点増と結果が出ていますが、7回ほどドライブが増えた中でパスが4.7本増なので、ドライブを決めることとパスを散らすことを目指したことが分かります。
ブラッド・スティーブンスなので、もちろん「お前らドライブしろ」なんて選手任せな形ではなく、しっかりとスクリナーを増やしてアタックさせています。
〇スクリーンアシスト 20.0 →26.8
スクリーナーはビッグマンですが、ダイレクトに得点に関わる形が増えました。いろんな工夫がされていますが、その一方で明確に減らすことになったのが、スクリナーがパスをもらって打つ形です。
〇キャッチ&シュート
2P 4.3 →2.3
3P 25.5 →19.1
ドライブからのパス(アシスト)は増えているけど、キャッチ&シュートは減ったわけですから、合わせの多くはインサイドにダイブする形になりましたし、パス回しからのシュートも減ったわけです。今シーズンの志向は
シュート能力に優れたビッグマンがいなくなったので、ドライブで決めきる形を増やす
この前提になるわけですが、ちなみにこれだとケンバよりもカイリーの方が向いていますね。だからケンバはドライブではない仕事が大切かもしれません。
◎ピック&ロール
この流れではピック&ロールにおけるプレー選択の差は対比しやすい事例です。ハンドラーが行く判断が増え、ロールマンにパスする(ポップ)判断は減っているはずです。
〇回数の変化
ハンドラー 16.3 →24.5
ロールマン 7.5 →5.8
〇得点の変化
ハンドラー 14.7 →24.1
ロールマン 8.9 →6.4
ロールマンが減った以上に、ハンドラーが増えていることがわかります。総じてセルティックスはピックプレーを増やしました。理由はドライブさせるためとわかりやすい。得点数はリーグ22位から3位に急上昇しています。
ところで、ロールマンプレーですが、昨シーズンまではホーフォードやべインズの役割であり、ビッグマンが担当することが明確でした。しかし、チーム構成がハンドラータイプばかりに変化したことで、誰もがスクリナーをやるようになっています。
〇ロールマンのプレー回数
テイタム 0.4 → 0.7
ブラウン 0 →0.5
ヘイワード 0 →0.4
スマート 0 →0.3
1試合に1回もないプレーではありますが、これまでと違い誰もがロールマンを担当していることがわかります。ロールマンの得点数が大きく減っていなかった理由は、こんな理由でした。なお、多くがポップして打たせる前提のプレーです。
ハンドラープレーが大きく増加したが、ロールマンにも工夫をしている
これも今シーズンの特徴です。個人アタックさせるのは好きじゃない戦術チームとして色んな工夫が細部に施され、それが個人志向のカイリーが出ていった理由でもあるかな。そんなカイリーとケンバを比べると
〇ピック&ロール ハンドラー
カイリー 6.6回 6.5点
ケンバ 10.1回 10.9点
回数・得点共にケンバが大きく上回ります。理由は2つ
・カイリーの方がロールマンに合わせるのが上手い
・ケンバはプルアップ3Pで完結させる
前者は良いとして、後者はこれまでのドライブ理論と少し離れもします。どちらも超絶ハンドリングスキルを持っていますが、カイリーは超絶シューティングスキルもあってゴール下でも決めきってしまいますが、ケンバの方はインサイドでのフィニッシュ力が低いです。
また、ケンバの平均得点は21.2点ですが、そのうち10.9点と半分以上がピック&ロールから奪っています。だから、このプレーがケンバとセルティックスの生命線になっているのでした。
ピック&ケンバはセルティックスのオフェンスを左右する重要なプレー
回りくどく説明してきましたが、要はこういうことです。得点の半分がピック使って自分で行くパターンってだけですよ。
◎効率の良いプレー
ピックプレーにおけるケンバのEFG56.8%はクリス・ポールの57.6%に次ぐくらいの良さですが、ポイント・ゴッドと比較することでケンバの良さも分かりやすくなります。
〇ケンバ―CP3
回数 10.1 - 8.2
得点率 1.08 - 1.09
FG 46.4% - 54.9%
EFG 56.8% - 57.6%
FT率 8.3% - 13.3%
TO率 10.1% - 13.9%
大きな特徴は2つ
・インサイドは圧倒的にCP3が上手くファールももらう
・ケンバはターンオーバーが少ない
前者のとおりFGが9%違うのですが、EFGは1%なのでケンバが多くの3Pを打っていることがわかります。何本打ったか計算するのはめんどくさいから察してください。
そして3Pを多く打つからターンオーバーにもなりにくく、セーフティに得点しているケンバです。ローリスクじゃないと、主役が多いチームではプレーしにくいしね。
ケンバの3P本数8.8本はリーグ9位ですが、上位8人は全員ケンバよりもターンオーバーが多いので、このプレーに特化したような特徴があります。つまりインサイドへの侵入が少な目。
〇プルアップ3P
アテンプト 6.2(5位)
成功率 36.4%
4番目に多いハイパーリラードが40%も決めてしまっているので形無しですが、多くのシュートを打ちながら確率が良いのもケンバらしさです。
ではケンバの3Pが勝率にどれくらい関係しているのか調べてみましょう。
〇3P成功率と勝敗
~20% 3勝8敗
20~30% 5勝2敗
30~40% 9勝5敗
40%~ 16勝2敗
当たり前ですが、決まれば勝率がグッと上がります。そして40%を超える試合が18試合もあるのね。ケンバが決めればセルティックスは勝ったようなものです。それだけ重要なピック&ケンバ3Pなのでした。
◎スピードとケンバ
ドライブ中心のオフェンス
プルアップ3Pを確率良く決めるケンバ
周囲とは少し違う役割を背負っているケンバ。ただ欠場してもチームは勝っており、そこまで大きな問題にはなっていません。テイタムが元気なので戦力充実する中では、仮にケンバのプルアップ3Pがなくてもドライブは機能している。
※テイタムの欠場はポジション的にも替えが効きにくいので、より困りそう。
そこまで大きな影響がないケンバの欠場ですが、試合を見ていた管理人のイメージはちょっと違いまして、特定の相手に対してケンバの不在は大きく響きそうです。
ドライブ中心のオフェンス
→ インサイド固めのディフェンスを攻略できるのか?
これがセルティックスの大きな課題となっていて、ホーフォードがいればピック&ポップを活用してアウトサイドから簡単に射抜いていましたが、前述の通りキックアウトはあるものの、ピックからのコンビプレーが限られてしまう事情があります。
困りそうならテイタムやブラウンなんかをロールマンにしてポップさせるわけですが、それですべてを解決させるのは簡単ではありません。
次に「プルアップ3Pを他の選手が打つ」パターンがありますが、ディフェンダーは一瞬遅れるとはいえ、ピック1つで簡単に3Pを打たせてはくれないし、セルティックスの面々はこのプレーが上手いイメージがありません。
テイタムやブラウンはパスキャッチ→ドリブルで外して3P
スマートやヘイワードはスクリーンから複数の選択肢を示しておいての3P
こんな感じなので、ディフェンスの対応次第みたいなプルアップ3Pが多く、ケンバの代役は難しいです。昨シーズンまではカイリーだけでなくロジアーもいたけどさ。
ケンバにあって他のチームメイトにないものは「スピードで振り切ってプルアップ3P」です。要は時にはスピードでディフェンスを困らせるプレーが必要だけど、ケンバしか出来ない役割になっています。
ケンバのスピードとプルアップ3Pはシンプルにディフェンスを困らせる武器
いろんな工夫をしてくるブラッド・スティーブンスなので、こういったシンプルな個人能力はあまり必要としないのですが、時にはシンプルに困らせてくれる存在が欲しくなります。特に読み合いが始まると「わかっていても止めきれない」武器が必要なんだ。
ケンバのピック・スピード・プルアップ3Pはセルティックスの貴重な武器にして、これが決まることでディフェンスを困らせ、ドライブオフェンスが楽になります。エースという以上にキーマンなケンバでした。
バックス対策を書く前にこれを見たかった笑
確かに今が全盛期のケンバの個人能力が打開に必要な場面てのはありますよね。
POでどんな風になるか分かりませんがテイタムがもう一段階変身を残している可能性もあるかと思ってます。ポール・ジョージクラスまでいったら面白いかなって感じてます。
テイタムはステップアップするかもしれませんが、ケンバに求められるのが違うプレーなのが面白いと思っています。
ケンバが決めればチームメイトは楽になるのですが、ケンバ本人は自分でやりまくるのを良しとしないタイプでもあるので、プレーオフでどんなバランス感覚を見せるのかも気になります。