レナードのBack To Back

史上初めて違うチームでの2年連続ファイナルMVPを狙う静かな男の選んだ道

NBAプレイヤーになってから優勝しか経験したことのないパトリック・マコーの1人4連覇にも注目が集まりますが、ラプターズでファイナルMVPを手に入れた男はクリッパーズで連覇を狙います。

そもそもクリッパーズに移籍した理由は「故郷のLAに戻りたい」だけだったのかどうか。その前にスパーズから移籍した理由が「チームスタッフへの不信感」だけだったのかも気になるところですが、スパーズ時代から役割を変えていっています。

今シーズンに触れる前に、昨シーズンのレナードの役割変化を捉えておくと、意外と一言で表現できます。

スパーズ時代:チームオフェンスの一部
ラプターズ時代:チームオフェンスから外れた個人技担当

ニック・ナースはレナードを異分子として扱う事でラプターズオフェンスを単なる「優れたチームオフェンス」ではなく「優れたチームオフェンスと最強の個人技」にて構成しました。ウォリアーズにいたデュラントに似ている構図です。デュラントが絡まない時の方が効率的なオフェンスだけど、それだけでは勝てない。

ニック・ナースによるレナードの使い方はベストチョイスに思えたし、エースとして期待を背負いながら、プレーオフではラウンドごとに役割を変えたので、相手からすると厄介極まりなかったと思います。

そんなレナードですがクリッパーズに来ると、キャリアハイの26.9点だけでなく、5.0アシストもキャリアハイとなりました。つまり

スパーズ時代:チームオフェンスの一部
ラプターズ時代:チームオフェンスから外れた個人技担当

クリッパーズ時代:オフェンス全ての中心

こんな感じに変わってきたと言えます。レナードから始まり、レナードで終わる。ここに関しては各HCの性格も出ています。

ポポビッチ:5人で成立する高度なチームオフェンス
ニック・ナース:高度なチームオフェンスと個性を組み合わせる
リバース:個性を重視した自然発生的なチームオフェンス

スパーズって1人でもチームオフェンスを理解していないと機能しないよね。それは能力は違えど5人が等しく重要な歯車であること

ラプターズは高度なのは確かだけど、難しい原則ルールがあるだけで異分子を混ぜることを推奨しているよね。

クリッパーズは特定の戦術というよりもコートにいる選手の個性次第で形を変えるよね。

ってことで、高い能力を持つレナードなのだけど、エースキャラ故にチームオフェンスに組み込まれる位置づけが変わってきました。面白いのは選手を放置しているようなリバースだからこそレナードはチームの中心になるって事です。

それではスタッツの変化を見てみましょう。今回って、ここまでですべての結論が出ているから、数字見るのめんどくさければ、残りは読まなくてもいいよ。

◎得点と効率性

まずは得点の推移を見てみましょう。なお、17-18シーズンは例のケガによって9試合しか出ていないし、本調子からは程遠いので丸ごとなかったことにしてグラフ化しています。

キャリアハイの得点を記録しているレナードですが、同時にFGアテンプトもキャリアハイとなりました。グラフを比べてわかるように、得点増はアテンプト増から生まれています。

当たり前といえば当たり前なわけですが、大事なのは「今シーズンが最もアテンプトが多い」ってことです。それだけ自由に自分でやって良い環境になりました。

しかし、スパーズファンからすると、ポポビッチは自由に仕掛けるのではなく、チームオフェンスの一部にすることで、より効果的なプレーをさせていたわけですから、アテンプト数よりも効率性を比較したくなります。ということでEFGとTSを比較してみましょう。

御覧の通り、14-15シーズンを除いて概ね

スパーズ > ラプターズ > クリッパーズ

みたいな効率になっています。冒頭の戦術の違いと、レナードに全権自由を与えない理由もわかってきます。この方が貢献度高いじゃん!

なお、14-15シーズンに何があったかというと、このシーズンからダンカン&パーカーに代わってレナードがファーストオプションっぽくなりました。「っぽく」ってのは16点しかとっていないけどチームのリーディングスコアラーだったからです。

チームの起点になった代わりに、得点効率は落とし、だけどアテンプト数が多いからキャリアハイの得点となっている今シーズンです。良いか悪いかはHC次第です。

◎レナード中心に回る

自由を与えられ、エーススコアラーではなく、全権を委任されたチームの中心となったレナード。アテンプト数もアシスト数も増やしたわけですが、どれくらいの中心度でオフェンスが構築されているのでしょうか。

〇パス数(レシーブ数)
19-20年 35.1(48.0)
18-19年 30.1(41.5)
16-17年 32.6(44.6)

15-16年 31.7(37.5)
14-15年 32.1(34.0)
13-14年 28.1(26.1)

もう16年以前の数字は要らない気がしてきました。上の3つのみ使って、クリッパーズ、ラプターズ、スパーズとして比較していきましょう。

見てのとおり今シーズンは、自分がもらうパス数も自分が出すパスも最も多いシーズンになりました。こちらもチームごとに並べると

クリッパーズ > スパーズ > ラプターズ

チームオフェンスの異分子だったラプターズでは、アテンプトは多かったけどパスは少なかったことになります。それよりはスパーズでチームオフェンスの一部だった方がボールは回ってきたわけだ。

ところでパスを受けた本数はクリッパーズが48本と圧倒的ですが、これだけみると「クリッパーズはチームとしてパスが多い」気がしてきてしまいますが、そういうわけでもありません。レシーブ数/チームのパス総数を並べます。

〇レナードへのパス/チームのパス総数
19-20年 48.0/271.4
18-19年 41.5/298.6
16-17年
 44.6316.3

クリッパーズ 17.7% 
ラプターズ 13.9% 
スパーズ 14.1%

クリッパーズはチームとしてのパスは少ないですが、レナードに出す機会は圧倒的に多いのがわかります。ちなみに、17.7%ですが、
レナードのプレータイムは32分
レナードが出したパスが35本
ってことを考慮すると、単純計算で3本に1本がレナードに対して出されたパスです。多いな。

何度もレナードに戻ってくるボール

それが今シーズンの特徴です。ボール貰いまくるレナード。そしてタッチ数のデータをみると更なる特徴も出てきます。

〇タッチ数(フロントコート)
19-20年 64.3(39.4)
18-19年 57.2(38.1)
16-17年 57.5(40.5)

「レナードへのパスが増えた分だけタッチ数も増えた」というだけならわかりやすいのですが、7タッチくらい増えているのでパス数以上の増加です。また、フロントコートのタッチ数はスパーズ時代が最も多いのも面白いデータです。

バックコートからレナードが突破していくプレーが大幅に増えた

これが今回最も興味深い発見でした。数字でハッキリしたのは、単にボールが回ってくるのではなくて「初めからレナードに渡す」ようなプレーが多いという事。戦術の中心っていうか、ボールの中心。

そんなわけで明確にレナード中心の体制となったクリッパーズでした。ポール・ジョージもいるんだけどね。

◎長くボールを持つ

ボールが自分に集まり、バックコートから運んでいく。それは当然のようにボールを保持する時間を長くします。1回のタッチにおける保持時間を比べてみましょう。

〇平均保持時間(ドリブル)
19-20年 4.60(3.44)
18-19年 4.24(3.64)
16-17年 3.71(3.06)

スパーズ時代と比べると1秒近く長くなりました。ボール持ちまくりのレナードです。ところが「ドリブルしている時間」だけみるとラプターズ時代の方が長くなります。

レナードにボールを渡さなかったラプターズですが、その一方で
「ボールを持ったら、自分で突破しろ」
みたいな構図でした。異分子として機能させるわけですから、ある種の自由があったわけです。

スパーズ:ボール保持時間が短く、次のプレーへのの判断を早くする
ラプターズ:パスが来る回数は少ないが、ボールを持ったら自由にプレーする
クリッパーズ:バックコートからボールを長く持ってプレーする

こんな感じかな。意外とラプターズの時はそれはそれで自由だったわけです。そしてこの違いはドライブ数の違いにも表れています。

〇ドライブ数(→パス)
19-20年 13.4(4.7)
18-19年 13.6(5.1)
16-17年 11.3(4.2)

ドライブの回数、そこからのアシストは意外にもラプターズ時代の方が多くなっています。スコアリングエースとしての自由だけでなく、ドライブからのプレーメイクもラプターズ時代のお仕事でした。

プレーメイカーとしては立派に役割を与えられていたわけなので、やっぱりクリッパーズにきて変わったのはバックコートからボールを持っていることになります。さっさとレナードに渡せ!

では、ボールを持ったレナードから出るパスはどうなのか。レナードのパスからシュート数を比較します。2P/3Pの数字ですが、両方ともクリッパーズで増えました。スパーズ時代は2Pが多いのは印象的ですね。時代。

〇レナードのパスからシュート数
19-20年 6.9 / 6.8
18-19年 4.5 / 5.1
16-17年 5.8 / 4.1

ドライブは減ったけどアシストは増えたわけで、仕掛けてのパスではなく、単純なパス回しでシュートに繋げることが増えました。ラプターズ時代はスコアリングエースとして「ドライブ中心のプレーメイク」だったのが、クリッパーズではもっと多くの形でプレーメイクしていることに。

まぁいずれにしてもボールの保持時間が示しているのは、レナード自身が行うプレーメイカーとしての役割が変わってきたことでした。

スパーズ:チームオフェンスの一部
ラプターズ:ドライブからのプレーメイク
クリッパーズ:多くの形でプレーメイク

ちょっとずつ成長する機会を増やしてもらっている若手みたいな推移をしているのでした。

あらゆる局面でプレーメイクまで担当する自由なレナード。このプレーをしてチームが優勝すれば、まず間違いなくファイナルMVPのBack To Backを果たすでしょう。

◎優れたHCとレナードの選択

ここまでの内容を無視するようなことを言うと、レナードってこんなにアシストしているイメージないんだよね。バックコートからボール運んで・・・ってのもスティール速攻くらいのイメージだし。

実際にNBAが出しているハイライト集を見ると、殆どがドライブからのフィニッシュだしさ。

これを見るとスパーズやラプターズの使い方も正しかったよね。強力なフィニッシュ能力こそがレナードなのだから、プレーメイクで疲弊させるのは勿体ない。疲弊しないんだけど。つまり、いろいろと述べてきましたが、レナードの使い方としては、

どのチームが正解かはHCのみぞ知る

って感じです。そして今回ってレナードなのか、ポポビッチ、ナース、リバースの回だったのかどっちだろう。

ニック・ナースはこのブログでは超天才HC的な扱いなのですが、そこには新しい戦略的要素がいっぱいありました。その中の1つが「5人全員がプレーメイカー」でしたが、それは同時に

自由はあるけど、全員がプレーメイカーだから、レナードの出番は減る

こんな現象を生み出していましたね。ボール持ったら自由を与えられていたけど、持つ機会は少なかった。先進的な戦術を生み出したナースならではの問題が発生したのだと思います。

ポポビッチ御大は、チームオフェンスの一部とした代わりに、レナードのフィニッシュ力を最大限に生かした使い方をしていたと言えます。スパーズらしさってのは間違いないけど、レナードの能力あってのスパーズらしさ

自由が少ない代わりに超効果的なレナードの使い方

これがポポビッチ流なわけで、フロントコートではパスがいっぱい回ってきていました。あと、ディフェンスでフル回転してもバテないであろう使い方をされていた。

リバースはノー戦術であり、プレイヤーズコーチなので、レナードがやりたいことをやれるように調整してくれるHCでした。他の選手ははみ出されることもあるけど、そこの調整能力こそがリバース最大の特徴

効率的ではないけど、自由にやらせてもらえるレナード

スーパースターにとってはありがたい環境なのでしょうね。スター以外にはありがたくなかったりするから、ロブシティは5人+クロフォードのみになってしまい勝てなかった感もあるけどさ。

さて、こう見るとポポビッチが選手からリスペクトされるHCなのに、ポポビッチの下でプレーしたいスーパースターが生まれにくい理由が見えてくるし、リバースなんて無茶苦茶だったりするのにスーパースターが集まってくる理由も見えてきます。

だからHC能力と勝てるかどうかって微妙に異なったりする。移籍の自由がなければレナードはスパーズに残っていて、超効率的なプレーで勝利をもたらしていただろうけど、「オレはもっといろんなプレーをしたい」ってクレームしていたかもしれません。

戦術で選手を生かすHCが最適(人気)とは限らない

実際、レナードとポール・ジョージがスパーズにいたら、今のクリッパーズよりも勝率高いと思うしね。

レナードのBack To Back” への7件のフィードバック

  1. スーパースターに自由を与えながら、高度な戦術を合わせているダントー二って本当にすごいなとブログを読んで感じました。ダントー二には1回でも優勝してほしいです。あとカイリーはリバースの元でプレーするのが一番輝きそうだなと思いました笑

    1. ダントーニの場合はハーデンは自由ですが、他のスターと組ませるとどうなるのか不明です。
      まぁそれはハーデンのプレースタイルの問題でもありますし。

      ダントーニは2年前に優勝しないといけなかった。ちょっと賞味期限が切れていますが、それをウエストブルックが救ってくれるのかどうか。って感じです。

      カイリーはルーがいなくなったらクリッパーズ似合うかも。ティロンの方のルーもいますし。

  2. クリッパーズというかドックリバースはレナードにどんな役割をさせたいんだと思いますか?クリッパーズは優勝候補だと思いますが結構謎なチーム(どういう風に勝ちたいのかよくわからない、ポールジョージの使い方など)ので、クリッパーズについてのお話を聞いてみたいです。スパーズファンですが去年のプレーオフでのラプターズのレナード の使い方には感動しました。ポポビッチでもレナード の成長を促進するためかわからないですが完全にチームオフェンスに溶け込ませることができなかったものなので。

    1. クリッパーズは、もうただただ個人技アタックです。
      でもそれは相手からすると止めきれないし、読み切れないメリットも。

      レナードは出来るだけ温存しておいて、本当に困ったときにやらせまくると思います。
      サイボーグはスタミナも満点なので、これまでと違い4Qのプレータイムが長くなるのではないしょうか。

  3. 去年はMJだなぁと感じたしそういう意見が多かったですが、今年はこれAIですね。
    前期と後期のコービーの違いとも言えるかもしれませんが。
    どこかのコメントでラリーブラウンを語ってくれっていう人がいましたが彼がシクサーズでAIにやらせたのがこれだったと思います。
    ただシクサーズはAIがいなかったらPOすら無理なチームでしたがクリッパーズにはポールとルー&ハレルというウェポンがあるのが違いますかね。なんかオフェンスのスタイルがRS中からPO的な感じしますよね。エースアタックごり押しみたいな。

    1. シクサーズのAIはどっちかっていうとカリーなイメージです。
      まぁそれはサイズとフィジカルの問題ですが。
      ボールいっぱい持たせるけどPGやらせないのは基本だったりしますね。

      クリッパーズはあれで上手くいくためにプレータイム短くなる不思議さがプレーオフでどうなるんでしょうかね。

  4. 10代のガキです。NBAの試合見た期間が3ヶ月にも満たないくらいなのですが再開の前に少しでも情報得ようとこのブログ読み始めました。かなりの情報量でついてくので精一杯です。昨年クリッパーズの試合見てて攻撃が単発な印象があったんですけど監督のやり方っていうのもあったんですね。レナードと使い方がどのチームが正解かはHCのみぞ知るというのは多少のスタッツ、効率性の変化があったとしてもチーム、監督として勝ちに繋がるような形になっていれば良いってことなんですかね?(次回はもう少しまともなコメント書けるように頑張ります。)

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