戦士よ、戦え!
イーストはモンスター・ヤニスを除けば、試合終盤を制するザ・マンが不足気味。レブロン、レナードがウエストに行ったことで西高東低は今シーズンも続く。
ラプターズはシアカムがアイソでFG40%を切り、セルティックスはケンバとテイタムがラストショットを決めておらず、シクサーズはトバイアスに託す、そしてオラディポが戻ってこないことが決まったことで、上位チームの割には終盤勝負は曖昧さ。
ならばヒートにはジミー・バトラーというアドバンテージが!
そこでプレーオフ前にバトラーに触れてみよう。なお、マジックにはフォーニエとロスがいるし、ネッツにはクロフォードがwww
◎ファイターらしさ
独りよがりなプレーが多いバトラーですが、戦う気持ちの強さは一級品。ならば独りよがりをくっつけるのが得意技のチームに適した選手です。
ヒートは戦士を集めるのが全て。サボるやつは不要なザ・ファイティングチームにして、SGだらけで独りよがりを組み合わせた戦う集団。ならばバトラーはフィットするはず。
ってのは予想のついたことでしたので、実際にどうなったのかスタッツを見てみましょう。
〇得点 20.2
〇FG 45.4%
バトラーらしいスタッツです。エースとしてのスコアリングはするけど、25点に得点を伸ばすほどに圧倒的ではない。だから「イーストのエースとして、ヤニスに次ぐ2位」とはいえず、終盤に強いよねー、くらいの言い方になってしまう。
そして25点に伸ばせない理由もハッキリと。特にヒートに来たらハッキリと3Pが苦手になっていきましたとさ。
〇3P
アテンプト 2.2
成功率 24.8%
別にここまで苦手なわけじゃないかったのですが、今シーズンは面白いくらいに確率が悪い。もともとバトラーの問題は成功率っていうか、味方がボール回してチャンスになっても「気持ちよく打ってくれない」みたいな。
基本的に自分スタートのプレーを好むので、スポットシューターになるのが下手。シュートが下手というよりはスポットシューターが下手。
そこでヒートでは、そもそもスポット役にはさせず、インサイド担当にして3Pアテンプト自体を減らしました。そもそも打たないでOKなオフェンス構成で、25%と確率低いからってダメージはありません。
じゃあ3Pじゃなくて、どんなシュートを打っているかっていうと、こんな感じ。
〇エリア別アテンプトと成功率
ゴール下 5.1本 64%
ペイント内 3.2本 43%
ミドル 2.9本 31%
なんていうか、ショート~ミドルレンジが多いことは確か。だけど、すごく多いっていうほどでもない。ゴール下もにしっかりと詰めているし、それを60%以上決めているのは素晴らしい。
エースらしくミドルレンジでも躊躇わず打つ。のは良いのですが、確率は良くない。神ってたデローザンとは違うぜ。ペイント内も悪くないが、素晴らしくもない。そこそこやるよねーくらい。
3Pはそもそも打たず、ミドルやショートレンジの確率はそこそこ。ゴール下は高確率なエース
昔のPFみたいなスタッツ。実際に今シーズンのヒートは、ポイントセンターのアデバヨとバトラーの2人がインサイド担当なので、これだけならPFバトラーなんだよね。
そんなわけでPFだとしたらペイント内の確率が悪いので、EFGがとってもわるいバトラー。
〇EFG 47.4%
〇TS 58.3%
ディンウィディやディロン・ブルックス、ルビオ並みの低いEFGなのです。ところがフリースローも含めたTS率になるとレブロン、ドンチッチ並みの高い数字になります。なんせ今シーズンはフリースローが多い!
〇フリースロー 9.1(キャリアハイ)
ドンチッチに次ぐリーグ5番目のアテンプト数で、低かったEFGを大いに補いました。要するにインサイドアタックからのファールドローが今シーズン最大の持ち味。以前よりもインサイドに侵入しやすくなったことで、ファール貰うのも楽になりました。
なんだかバトラーっぽい。
30点とる試合が連発されるわけではなく、EFGなんかの得点効率が低いから試合中の印象はスーパースターレベルではないけど、ファールドローまで含めたらレブロンやドンチッチと変わらぬ効率性をもっている
華麗に決めるよりもフィジカルコンタクトして武骨に得点するファイター
ファイト&バトラースタイル。PFみたいなスタッツになったのも、こんなバトラーの特徴を生かしきるためにインサイドの人数を減らしたためでした。上手くいったヒート。
「独りよがりな選手を組み合わせるのが上手い」と書きましたが、今シーズンはバトラーの良さを存分に発揮させるため、インサイドは大きく開けさせました。
「ロング3Pなんか逃げのシュート打ってんじゃねーぞ、男ならファイトしろ!」とでも言いたげなバトラースタイルです。
◎分業とアシスト
インサイドファイターの度合いを深めたのはナン、ダンカン・ロビンソン、メイヤーズ・レナードと3P役を並べた事でした。要はスポルストラは予想外にバトラーにあわせたメンバー構成にしました。
ブルズではローズのサポート役から始まり、エースになったらウェイドとロンドを連れてこられ、ボールを持たせてはもらえず、ウルブズではエースなんだけど、ウィギンズとタウンズという違うエースキャラと並び、シクサーズに至ってはサードオプションなのに終盤のエースみたいな難しい役割でした。
初めて本当のファーストオプションになったシーズン
戦うヒートのチームカラーに合っているだけでなく、自分に合わせた選手を揃えてくれたのだからバトラーにとってもやりやすさを感じているのかもしれません。自らはインサイドファイトし、ディフェンスが寄ってきたら、しっかりとアウトサイドに打たせます。
〇アシスト 6.1(キャリアハイ)
ちょっとプレーメイカー役に近づいたことで、必然的にターンオーバーも増えました。といっても得点もアシストも担当するキャラとしては少なめです。
〇ターンオーバー 2.2(キャリアハイ)
こうしてアシストが増えたわけですが、同時に3Pシューター系が増えるって事はチームとしてはインサイドが弱くなります。だからリバウンドもバトラーが担当すべき理由が増えました。
〇リバウンド 6.6(キャリアハイ)
自分のために揃えられたような構成の中で、足りない要素を埋めたとも言えます。ポイントセンターのアデバヨとエースのバトラー。どちらもアウトサイドでのハンドリングスキルを持ちながら、インサイドで得点したい。そのために作られたようなヒートの構成。
得点だけではなく、戦術的な中心になったヒートのバトラー
そんなポジティブな部分をしっかりと確認したわけですが、今回の趣旨はプレーオフの勝負所での活躍。これまでスコアラーとして動いていたバトラーが、チームの中核になったことで起こった変化です。
◎クラッチ・バトラー
既に勝負所の実績を残してきたバトラーだけに終盤の強さは信じたくなります。ファイトスタイルは終盤でも負けないメンタルを示しています。
ところが、今シーズンはバトラーのクラッチに陰りが見えています。スコアリングエースからチームの中心になったことで起こった変化は何か。ここではバトラーの数字で「レブロン並」としたTSで比べてみましょう。
〇Q別の得点とTS
1Q 6.5点 67%
2Q 4.5点 59%
3Q 4.9点 54%
4Q 4.7点 52%
試合後半になるほどに効率が落ちています。どうやら負荷が増えたことでスタミナロスも大きくなった様子。ところが得点は1Qは多いけど、他の3Qは大きな違いはありません。なのでチームのオフェンス効率も落ちてきます。
〇オフェンスレーティング
1Q 122.8
2Q 114.2
3Q 108.3
4Q 102.7
こんな感じで終盤になるとオフェンスが弱くなっているヒートです。得失点差は前半が+4.2で後半が△1.6なので、先行逃げ切り型となりました。
最後にまくる戦い方は志向していないヒート
さて、それではバトラーのクラッチタイムの成績はどうなっているのか。残り5分±5点の成績を昨シーズンと比べてみましょう。
〇クラッチタイム
得点 2.7→2.4
EFG 52% →31%
TS 60% →46%
FT数 1.1 →2.3
アシスト 0.4→0.8
ターンオーバー 0.3→0.3
アシストは増えていますが、TSがえらいことになっています。フリースローはもらえているのですがFG28%と散々な感じに。
昨シーズンの活躍からすると信じられないようなスタッツですが、これがエーススコアラー限定の役割とプレーメイカー兼任の違いなのか。
実際にプレーを見てみましょう。残り1分±5点における全ショット集です。ファールドローも集められれば良かったのですが・・・
24本打っていますが、他にフリースローが33本ありますので、この動画内ほどにミスしているわけではありません。ただ決めている印象にはならないわな。
ファールドローはしっかりと出来ているが、FGが決まらない
さて、単にシュートが決まっていないだけでなく、クラッチタイム故の特徴として3Pの多さが目立ちます。
〇エリア別
ゴール下 2/5
ペイント内 0/4
ミドル 0/3
3P 1/11
勝負所なのでディフェンスも厚くなり、3Pが増えるのは致し方ないことなのですが、約半分が3Pになっているのは、PFみたいなシュートバランスで、インサイド担当になった姿とは大きく異なります。
メインのシュートゾーンと、クラッチタイムのゾーンが違う
ここがクラッチタイムのバトラーの特性であり、確率を落とすことになった要因なのかもしれません。ファイトスタイルを発揮できる環境になったことで、3Pは苦手になってしまった。ちなみに昨シーズンは同じ条件で2P7/12、3P4/8と高確率で決めています。
クラッチタイムの成績が極めて悪くなった
まぁプレースタイルの変化なので、ちょっと致し方ない気がするわけですが、今シーズンの特徴はプレーオフに向けた不安材料にもなっています。
◎どうなるプレーオフ
イーストで残り5分からのクラッチタイムで最も点を取っているのはエンビード。その次がバトラー。でも、これくらいのスタッツでした。
やはり自分が起点でもあり、フィニッシャーでもある形は負荷が大きい様子。バトラーも試合序盤から次第に効率が落ち、終盤に弱い結果になってしまいました。一方でパスを出せばチームは機能しているので、本当はプレーメイクとスコアラーは別の方が良いのかも。
この理論は「ウイング最強説」みたいなのにも繋がっています。結局は優勝するのはウイングだ!ってね。
それはウイングがどうこうではなく、プレーメイクしないエースがいるチームが勝つ可能性が高いって事だと思います。例外がレブロン・・・と言いたいところですがスコアしていたのはカイリーだった。ポジションと役割が通常と逆。
ヒートにはドラギッチとアデバヨがいるので、スポルストラは終盤にはプレーメイクからバトラーを外すかもしれません。動画の中でもvsニックス戦ではドラギッチのパスからレイアップに行ったバトラーというシーンがありました。
スポルストラは終盤のワンポゼッション勝負で何を仕掛けてくるのか。
ドラギッチ起点でバトラーがフィニッシュ
バトラー起点で周囲がフィニッシュ
今のところ、効率的に見えるのはこのどちらか。でもそれってファイト&バトラーの魂とはちょっと違う気もします。
自分のためのチーム構成を与えられてリバウンドとアシストを増やしたバトラーは、最後まで起点として機能することを目指すのか、それともエースとして勝利をもたらす得点を狙うのか。
ヒートの終盤はプレー選択に注目してみましょう。
『エースPGチームは優勝までは至らない。』証明し難いですが、根拠が過負荷とバリエーション欠如とカウンター速攻だから、論理性があるし理解しやすい。
けど、核心突くと、『極めて優秀な選手が2人必要。』というのも味気ないし。
ラプターズはレナード1枚で負荷を落とし、バリエーション増やしたので、あれが現代バスケの最高峰だと思っています。
その次のシーズンでスーパースター抜きでどこまで勝てるのかも楽しみです。連覇して欲しい。
バトラーはイグダラでいいんじゃないかなと思います。GSWの最初の優勝の時はファイナルでカリーもクレイも波が激しかったです。RSと違ってPOはチームの機能性を維持しにくい。フィジカルゲームになることや各チームが対策を被せてきますし。そういう時にジョーカーとしての役割って必要なんじゃないのかな?なんて。
今年のバトラーって得点もアシストもチーム一位なのに妙に存在感を感じないんですよね僕は。
このままPOに入ってよりディフェンシブに振る舞うのが一番チーム力を上げそうな気がします。あくまでもバランスアタックの中の選択肢って扱いでないとヒートも限界があると思うんですよね。
パットライリーはバトラーをまだ全盛期と思って託す気があるかもしれませんが…。
バトラーがイグダラしてくれるなら、ファンは逆にガッカリじゃないですかね。もっと全力ファイターですから。
イグダラはどんどん頭が良くなっている印象ですが、そんな部分をバトラーも吸収できるといいですね。
管理人もヒートはバトラーじゃなくてアデバヨのチーム感が強いので、これまで記事の主役にしてきませんでした。あとは終盤の主役にさえなってくれれば良いのですが。
現役では1番、私が観てきた中ではアイバーソンに次いで大好きな選手のバトラーの回!楽しく読ませていただきました。
今シーズンのヒートの試合は全て観てますが、バトラーのクラッチシュートの確率は気になってました。選択肢としてバトラーが撃つ形があるのは良いですが、もっとシューター陣に撃たせる形も見たいですね(ホームなら)。クラッチタイムのバトラーはシュートよりDFでの良いプレイを期待してます。あとはFTをちょいちょい落とすのも気になります。
シーズン通して観ると、ヒートも色んな戦略を打ち出してますが、プレイオフではどんな風になるのか楽しみです!
今シーズンはホームが存在しないプレーオフなので、どうなるんでしょうね。
クラッチタイムのプレーとか、ファンの声援がないことで見えない違いが生まれそうです。
スポルストラはいろいろやるの大好きなので、ここまでバトラーにやらせていたことを急激に変化させるかもしれません。そういう引き出しがどこまであるのかも楽しみです。