さようならホーネッツ’20

【ホーネッツ’20 トップニュース】
台頭したデボンテ・グラハム
不要になったベテラン
ブリッジスとワシントンの伸び率
足りないエースとディフェンス

4チーム目はホーネッツ。これまでの3チームは
中堅を多用したニックス
若手とベテランを混ぜたキャブス
若手に経験を積ませたブルズ

と3者3様ながら、どれも戦術的な方向性がわからなかったことが問題でした。それに対してホーネッツは2年目となったボレゴの下で、戦術的にも起用法的にも明確な形を示したシーズンとなりました。

若手に経験を積ませ、全方位アタックの戦術を構築

レイカーズのGMとして2000年から働き、優勝も経験すれば、近年はドラフトで下位でも良い選手を指名し当てたことで成功したのか、でもチーム力に跳ね返らないから迷走したのか、何とも言えないカプチャックでしたが、ホーネッツの球団社長になっての2年間は及第点だったといえるでしょう。でもそれは3年後に評価すべきことかもしれません。

◎グラハムの台頭

ホーネッツ最大のニュースはデボンテ・グラハムの台頭でした。18年2巡目の選手を当てたのですから、カプチャックは就任直後から仕事をしたことを示しました。逆のポイントとしてホーネッツは3年目の選手(モンク・ベーコン)が伸びていないので、カプチャック前と後で差が出てしまったのです。

グラハムについては以前に特集しています。

「グラハムが伸びた」ことよりも「グラハムタイプのPGが伸びた」ことの方がホーネッツを語る上では大切な要素です。ケンバっぽさ。

プルアップ3Pを多く打つグラハムですが、一方でそんなにドライブするタイプではありません。パス&3Pであり、切り崩してアシストするよりも、チームメイトにパスを供給するタイプです。これがボレゴの考え方に合っています。

〇プルアップ3Pが武器
 ⇒ディフェンスを広げるPG
〇ドライブアシストよりもパス供給型
 ⇒広がったスペースに全員がアタック

ボレゴのオフェンスは「個人突破の組み合わせで、交代でアタック」スタイルではなく、複数のスクリーンを使い、オンボール・オフボールそれぞれでチームとして崩す形ではありますが、チームで崩し切ってシュートを打つわけではなく、

チームプレーでアドバンテージを作り、個人技でフィニッシュ

を狙っているタイプなので、スペースを構築できるタイプのPGが欲しかったと言えます。ケンバが移籍しても、ケンバタイプのPGを起用しているわけですから、ボレゴは純粋にホーネッツに来ることを楽しんでいたのかもしれません。

そして、やっていることは似ていないけど、根本にある考え方はスパーズと似ている気がします。スパーズもチームでボールを動かすけど、フィニッシュは個人技炸裂なので、デローザンとオルドリッジに頼っています。

2年目で平均18.2点に伸ばしてきたグラハムには「来年は更に活躍度を上げて」と期待したくなりますが、恐らくボレゴはそれを望んでいません。得点増のようなわかりやすいスタッツの向上ではなく「プレー精度を上げること」こそがグラハムの課題です。

FG15.3本(3P9.3本)のアテンプトがあったグラハムですが、このアテンプト数が増えよりも、むしろ減る方がホーネッツにとっては好ましくなりそうで、グラハムに求めるのは「パスの選択肢が増える」「自分で打つ以外のパターンを増やす」ことだからです。要はチームメイトの活躍度を上げることこそが、来シーズンのグラハムの課題になりそうです。

ここでいう「チームメイト」にロジアーが含まれるかは、かなり微妙な話です。考えてみればロジアーもグラハム的なプレーを期待されてホーネッツは手を出したかもしれません。しかし、グラハムがいるならPGとしては不要になり、代わりにSGで18点を稼ぎました。

高額サラリーということもあり、ロジアーには否定的なのですが、ポジティブに考えれば「6thマンとして、PGの控えとグラハムの相棒SGが出来る」という捉え方も出来ます。今シーズンを相棒として過ごしたわけですが、ホーネッツの補強ポイントは【ディフェンス力の高いSG】だと思うので、出来ればロジアーをベンチに置いてコンボガードの便利屋として使いたいところです。

それにしても本来は並び立たないグラハムとロジアーの存在については、ドラフトで成功しておきながら、トータルで成功した感じがしないのもカプチャックらしさな気がするのでした。

◎不要になったベテラン

ロジアーを捨てずに活用する道を選んだボレゴでしたが、一方でマービン・ウィリアムスとマイケル・キッド・ギルクイストについては不要にしていきました。マービンの方はそこそこ起用されましたが、キラーディフェンダーやスモールセンターにしていたMKGを不要にしたのは驚きです。バトゥームについては、よくわかりません。どこまでがケガだったのか。

ただ、ホーネッツは「描いた未来にいない」選手を切ったという意味合いでは、やろうとしていることは明確でした。負けに行くような戦略は取らないけど、手元にいるベストな選手を起用するわけでもありません。3年後を見据えて、3年後にも残っている選手で戦う事にしました。

ただし、若けりゃOKってことはないし、ちゃんと結果も残せよって感じでした。

例外的にセンターはコマ不足かつエルナンゴメスがいまいちだったので、ゼラーとビヨンボで戦いました。まぁこの2人はサラリーをガクッと落としても残ってくれる可能性あるので。だって他のチームが高いサラリー提示するとは思えない。

逆に未来を考えてマーティンツインズが登場しており、この方針は明確だったと思います。ここでベテランを切ったのは「ボレゴの5年間」に投資するような意味も持っていたと思います。

キャブス、ニックス、ブルズがHCで揺れている中で、同じように勝てないまでも、ボレゴを中心に計画を練って動いたホーネッツでした。

ちなみにベテランのケガは例年通りのイメージなホーネッツでしたが、若手たちは元気に働きました。コンディショニングが良く、チームを成熟させる時間は作れたはずです。だからもっと伸びないと!

◎ブリッジスとPJワシントンの伸び率

チームオフェンスを展開し、ボールシェアしてアドバンテージを作り、最後は個人技でフィニッシュ
3年後の未来を見据えた計画でプレーしたシーズン

こんな中で期待をかけられたのがマイルズ・ブリッジスとPJワシントンのウイングコンビでした。確かにグラハムはエースになったけど、PGのポジションで考えた時にグラハムにはアドバンテージはありません。「PG対決」では絶対に未来はやってこないホーネッツ

ブリッジスとワシントンも単体では殆どアドバンテージを得られませんが、「ウイングコンビ対決」となれば、勝率が上がってきます。現時点ならバレット&ノックスより上です。

そう「現時点」ってのがミソになります。未来を見据えたシーズンの中でこのウイングコンビは成長していったのかどうか。シーズンの中で比較するためにオールスターの前後で比べてみましょう。

なお、54試合がオールスター前で11試合がオールスター後です。11試合だと偶然の要素が強いですが、観たいのは「シーズンの中で成長したか」なので、偶然ではなく必然でスタッツを伸ばしてほしい。

〇ブリッジス
得点13.0→12.6
FG44%→35%
3P34%→28%
リバウンド5.5→5.7
アシスト1.7→2.1
ブロック0.7→0.7
スティール0.6→0.5

〇ワシントン
得点11.7→14.6
FG46%→43%
3P38%→37%
リバウンド5.5→5.4
アシスト2.0→2.5
ブロック0.8→0.5
スティール0.9→0.6

ワシントンが得点を伸ばしましたが、他にはアシストが少し見れるようになったくらいでした。11試合で2回20点オーバーになったワシントンは3Pが好調で積極的に打ち、1回しか20点オーバーにならなかったブリッジスはシュートを外しまくりました。

この2人は良い選手ですが、「良い選手」だから起用されているのではなく「若くて伸びる選手」だから起用されているわけで、シーズン後半になっても、爆発する試合が少ないのは寂しい限りです。少なくとも全試合でどちらかは20点オーバーになりましょう。

ちなみにスタッツとは違い、アタックを増やして決まらなかったブリッジスの方がまだ可能性を感じさせます。ワシントンは「上手くやっている」が過ぎる。そういうことじゃないんだ。ミスしても良いからチャレンジしないと。このままグッドプレイヤーで終わりそうなワシントン。

そんなわけで「ウイングコンビ対決で勝つ」という図式を作りたそうなホーネッツですが、今シーズンの中で将来性を感じさせるまでには届きませんでした。

アドバンテージを作ってから個人がフィニッシュという形を作れているなら、もっと高確率で決めてくれないといけません。未来への構図として

「形を作る」のはグラハムの仕事
「高確率で決める」のはブリッジスとワシントンの仕事

ウイングが伸びてこないとグラハムが得点仕事を意識しすぎる結果に繋がるかもしれません。ドライブ迄は良くてもフィニッシュスキルを欠くブリッジスと、良い子ちゃんなワシントン。

3年後までに形になるのか。来年には違う選手を試されるのか。良いプレーはしたけど、伸び率として物足りなかった今シーズンでした。

〇オフェンスレーティング 105.9(28位)

とにかくこれを何とかしないといけません。「戦術が整理されていて、若手の構図が描かれていて、良いプレーをした」といっても、これならセクストンに好き勝手やらせて個人スタッツを伸ばしたキャブスの方がよいわけです。

本当にボレゴの方が良いならば、来シーズンにはウイングコンビが結果を残さなければいけません。果たしてブリッジスは「自分がエースになる」という強いメンタリティを持っているのかどうか。持っていないなら、判断力に課題があっても「オールスター級のプレーをしている」と言い張るラビーンやセクストンの方が伸びることになるでしょう。

◎足りないエースとディフェンス

グラハムは頑張っているけどエースとして君臨するよりもプレー精度の高いPGになって欲しい
・ロジアーは点を取っているけど、6thマン向き
・ブリッジスはフィニッシュスキルが低く、メンタリティも不安
・ワシントンはグッドプレイヤー止まり

どうしても「エースになる選手」が足りないホーネッツ。これまで長いこと大きく負けるシーズンが少なく、トップ3の指名権を得ることが殆どありませんでした。唯一持っていた時はMKG指名だったし。

そんな事情も全員が得点していく戦術に繋がっているかもしれません。もっともエース的な選手の指名を避けているような感じもあります。

2019年12位でPJワシントンを指名
 →13位のヒートは同じケンタッキーのヒーローを指名
2018年11位でSGAを指名しブリッジスとトレード
 →14位まで残っていたのでナゲッツはMPJを指名
2017年11位でモンクを指名
 →13位でジャズがドノバン・ミッチェルを指名

当たり外れはあるので、そこを悔やんでも仕方ありませんが、17年はエース系のモンクで失敗しただけですが、18年は元ドラフト1位候補で同じポジションのMPJをスルーしたし、19年は足りていないSGのヒーローよりもワシントンに行ったのは「エース系での冒険はしたくない」傾向があるように思えます。

ドラフトでエース系を狙え!

これが今年の課題ですが、傾向的にはエースにはいかないでしょう。ロッタリーに当たって3位以内の指名権を得ない限りは、グッドプレイヤーを探しそうです。

そうなると弱点を埋める予想です。足りないのはとにかくディフェンス。次回はマーティン・ツインズの視点から「ホーネッツは何で守れないのか?」を考えていきたいのですが、まぁわかり切っている結論は2つです。

①グラハムとロジアーを並べている
②リムプロテクターが弱い

①はサイズもフィジカルもデメリットなので、わかりやすい。②はオフェンス面は及第点だったゼラーよりもビヨンボを優先した理由でもあります。リバウンドとブロックは大きな悩み。ホーネッツはブロックが非常に少ないので、ここを改善すればレーティングがあがりそうなライン上にいます。

ということで、ドラフトで狙うのは
①フィジカルなディフェンスを持つSG(得点力も必須)
②リムプロテクトするセンター

このどちらかになりそうです。そんな予想の下で、恒例にしているモックドラフトサイトを観てみましょう。管理人はドラフト候補の情報をほとんど知らないので、この予想で学んでいます。

http://www.tankathon.com/mock_draft

https://www.draftsite.com/nba/mock-draft/2020/

PF/C Onyeka Okongwu

http://www.nbadraftroom.com/p/2020-nba-mock-draft.html

SF Patrick Williams

そんなわけで3つのサイトがOnyeka Okongwu予想です。順当な予想でして、いわゆる能力系のビッグマンなので「平面でも守れるリムプロテクター」が欲しいチーム事情に合ってます。なお、8位のホーネッツですが、Onyeka Okongwuはウォリアーズがトップ3で指名するんじゃないか予想すらあります。ブレまくるドラフトです。

ホーネッツとしては欲しい選手像としてパーフェクトな上に、ウォリアーズ以外はセンターを取りに行かない予想もあります。それがわかりやすすぎるから、これといって欲しい選手がいないホークスやブルズが指名してトレードを吹っかけてくるかもね。

予想は予想でしかありませんが、Onyeka Okongwuが「8位に残っている予想」が多いならば、ホーネッツとしては狙いを絞ったドラフトになりそうです。

なお、ロッタリー当たったらどうするのか?なんて疑問もあります。「SGかセンター」「エース系かディフェンス系」だと1位予想もあるSGのAnthony Edwardsがいます。1位指名権を得たら、こっちを指名してくるんじゃないかな。3位以下なら結局はOnyeka Okongwu。3位でも8位でも一緒。

◎ボレゴとチームの課題

方向性や計画性が整い、コンディションも整えて戦えたホーネッツなので、悪い印象はありません。やっていることは正しい。ところがブリッジス&ワシントンの項目で触れたように、どうも

「内容が良い割には伸びてこない」印象が強い

のは、若手だけでなくボレゴがこの2年間でみせてきた姿です。昨シーズンも開幕からチームはしっかりと整備され、非常に面白く注目していたのですが、途中から飽き始めました。シーズン開幕時と終了時であんまり変化がないんだもん。

今シーズンは開幕からグラハムがブレークしましたが、グラハムだけで終わってしまった。あっマーティン・ツインズがいたか。1試合だけでも良いから30点取る選手が出てくる空気が足りないぜ。

この先、グイグイ選手を伸ばせるかどうかがホーネッツに与えられた課題です。ある意味カプチャックらしさでもあります。クラークソン、ランドル、ディアンジェロ、イングラム・・・ってね。才能は初めから示すけど、花開かせるのはかなり先。

もう少し戦術を弱くして選手に負荷をかけるべきなのか?
シーズンの中で意図的に変化を仕掛け、伸びる選手を探すべきなのか?
このままグッドプレイヤーを少しずつ育てるべきなのか?

ホーネッツ’20は「ボレゴ2年目にして新たなスタート」のシーズンとして、計画性に満ち、若手を積極的に使い、グラハムの台頭が起きるなど良いシーズンでした。だけど思ったよりも伸びないシーズンでもありました。

準備期間はあるけどゲーム勘が薄くなる来シーズンの開幕をどんな形で迎えるのでしょうか?

いよいよ来シーズンでバトゥームの27M契約が終わります。ゼラーの15Mもラストです。再来年で最も高額なのが18Mのロジアーという状況なので、1年かけてチームを作り上げ、FA戦線にも打って出れます。ていうか、今年のオフにマックスを手に入れる事すら可能です。

スーパースターがホーネッツを選ぶことはなさそうですが、十分なキャップスペースは有力選手を集めることも可能となります。コア人材は若手を育てるとして、周囲を固めるベテランは狙っていきましょう。

【ビッグマン】
ドラフト
フェイバーズ
ハレル
パートル

【ウイング】
ガリナリ
ハークレス
バータンズ

【ガード】
コートニー・リー
ジョー・ハリス

こんな感じかな。シューター系が足りていないので、そこはFAでベテランを補強しておきましょう。あとは守れるガードが欲しいですが、めぼしい選手がいなかったのでハークレスなんかを取りたいね。

なお、ダメなのは100も承知でイングラムにはマックスオファーを出しましょう。

カプチャックの2年目は及第点でした。それはサラリーキャップが苦しくトレードに動けない中では悪くなかったという事。来シーズンからは自分たちから動いて仕掛けられるので、ドラフト前から画策しないといけません。

やっていることは悪くなかったけど、次の成長まで時間がかかりすぎないようにしていく必要があるのでした。

さようならホーネッツ’20” への2件のフィードバック

  1. このブログで取り上げてもらう度にチームがいい感じな気がして気持ちが上がるのですが、実際にはさほど伸びた選手がいないというのもうすうす感じていました。
    グラハムとロジャーはよくやってくれましたが、体格という攻守に活かせる武器がガードには欲しく、モンクとベーコンが悔やまれます(欲張りな考えですが。。)
    ウィングはマーティンツインズ含め、成長できる(と信じている)ので、長いオフシーズンの中で個人スキルを磨いて欲しいです。
    今の関心はドラフトでどーするかです。
    オブザーバによるとチームのニーズよりその順位でベストな選手をドラフトすると考えているようで、安牌はオコングなのでしょうが、エースを育てる方向のSG系も考えたいところ。
    ただ上位ではエドワーズ以外にビビっとくる選手を見つけられず、2巡目ぐらいで掘り出し物がいないか探しています。。

    1. もうちょっと成長しないと!

      ホーネッツについては「ベストな選手」の基準が、【現時点で優れた選手】になっている傾向なので、将来性まで考えるかどうか。結局はセンターを埋める指名になる気がしています。
      2巡目については、誰が良いかは知りませんが、狙いたい系統について、次回に続きます。

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