サンズvsネッツ 2006/12/7

まずは試合を見てみよう。

オールドゲームです。それぞれのスターターを書いておきましょう。

ネッツ
PG キッド
ウイング
 リチャード・ジェファーソン
 ビンス・カーター
ビッグ
 クリスティッチ
 コリンズ

サンズ
PG ナッシュ
ウイング
 ラジャ・ベル 
 ショーン・マリオン
 ディアウ
ビッグ
 アマレ・スタウダマイヤー

1Q序盤の印象ではありますが、それぞれのチームでポジションバランスが異なりました。ナッシュ以外はウイングっぽいサンズに比べると、オールドスクールなポジション攻勢をしていたネッツ。

◎アマレの脅威

初めに目立つのはアマレ・スタウダマイヤー。一応ビッグマン扱いですが、やっていることはウイングっぽい。アウトサイドのないウイング。単に走るのではなく、ボールを貰う位置はリングから離れていて、だけどスピードのあるドライブで切り崩していくし、時にはパスも出します。なお「時には」程度なのでポイントセンターって感じじゃないよ。

そのアマレと交代で出てくるのもカート・トーマス(多分)なのでセンターではなくPFタイプです。通常のビッグマンぽいプレーぶりですが、ゴリゴリインサイドプレイヤーは置かないわけで、マジ・ダントーニ。

ネッツは2人のビッグマンなので、アマレにタジタジ。どうにも止められず、完全なるハーフコートのスピード負けをしています。ところでサンズのクォーター別の得点が画面に出てきましたが

1Q 30.1(1位)
2Q 24.3(12位)
3Q 29.5(2位)
4Q 23.9(18位)

スターター同士の序盤にオフェンスが爆発する傾向ですが、おそらくスピードのミスマッチが出やすい時間帯に優位に立っていたのでしょう。ちなみにこれが12月の試合ですが、シーズン終盤に向かってプレータイム調整もあってバランス改善された感じです。そんなシーズントータルだと

〇アマレ・スタウダマイヤー
1Q 6.1点
2Q 4.8点
3Q 5.4点
4Q 4.6点

プレータイムも1分くらい違うので、一概にはいえませんが、アマレが元気な時間帯こそ強かった様子。ていうか、アマレの代役に困ったって事かもしれません。

そんなサンズなので、どこからでもドライブできる体勢のスターターは、ドライブ→パスアウトの繰り返しでチャンスを構築していきました。ダントーニは「あの頃、もっと3P打っておくべきだった」みたいな発言をしていますが、アマレにぶった切られたネッツがゾーン気味のディフェンスをしたこともあって、1Qだけで3P4/7と割と現代的な感じで構築していました。

そしてオープンコートではナッシュが5アシストを記録。ドライブで切り崩す形と、ナッシュから放たれる長めのアシストが効果的でした。なお、ディアウが3アシストしていますが、全く記憶に残らなかった。

7セカンドorレスのダントーニサンズ。そのハーフコートオフェンスはスピードのあるアマレによるインサイド破壊と、シンプルだけど機能的な全員ドライブ&パスアウトオフェンスがあったのでした。

◎ノーキッド・バット速攻

そんなサンズに対して、キッドによる速攻チームとなったネッツはカウンター速攻で対抗・・・ではなく、クリスティッチとコリンズのインサイドにボールを渡すオフェンスで対抗します。うーん、イマイチ。

どっちも知らない選手ですが、コリンズは12年もNBAでプレーしていますし、クリスティッチはこのシーズン平均16.4点を記録しています。ただし、26試合の出場に留まっており、この2週間後に靱帯断裂の大ケガを負ってしまうのでした。可哀そうに。

ちなみにクリスティッチはセルビア出身のセンターなので、ポイントセンター化しても良さそうな感じですが、そこにネッツの意外な不思議がありました。

非常にわかりやすかったダントーニサンズに対して、ネッツのハーフコートオフェンスは狙いがちょっとわかりにくい。キッド、ジェファーソン、ビンス・カーターがいながらインサイドにボールを入れてポストアップ大作戦。

しかもビッグマン2人がいまいち決まらないと、今度はキッドがポストアップします。だったらビッグマンは1人にしておきたいぜ。いまいち何したいのかわからないHCローレンス・フランク。知らないHCだけど、ネッツを勝利に導いたことで長くHC職していました。今はクリッパーズのフロント職なのか。

総じてみれば、キッド化されているようなネッツです。ハーフコートでポストアップ利用なのもキッドらしさかもね。

面白かったのはキッドがベンチに下がって、一度休んでいたビンス・カーターが戻ると、突端にペースがあがりキッドがいなくて、キッドらしい速攻オフェンスが展開されました。不思議じゃん。

引っ張ったのはドラフト22位のルーキーPGマーカス・ウィリアムス。でも4年しかNBAにいなかったらしい。1Qだけで4アシストを記録します。特にビンス・カーターがオフボールで動いたところにパスを出す役割になっており、それまでのポストアップ利用とは全然違う感じさ。

キッドがいなくても速攻を意識し、キッドだけでなくビッグマンも減ったユニットになったことで、キッドらしいオフェンスになったとさ。ここだけ読んだら意味わかんない文章だね。それだけネッツはキッド前提の形になっていると捉えましょう。

【1Qで分かったこと】
・ダントーニはやっぱり「1PG4ウイング」が似合う
・特にウイングの縦横無尽な動きとポジションチェンジは重要
・アマレが欠かせない。代役不足

・キッドによる速攻ムーブメントが特徴のはずのネッツ
・2ビッグマンだとイマイチ機能していない
・キッドがいなくてもビッグが減ると走り始めた

なかなか面白くなってきたぞ。
なお、ネッツの控えセンターはニッキ・ムーア。知らん。この選手が走れる機動力ビッグマンとして、ワンセンターを張っているのが効いていました。このシーズンは平均26.3分でFG61%の9.8点、5.1リバウンド。クリスティッチがケガをしたことで、より走るチームになった可能性もあるのでした。

◎機動力ビッグマンと3P

2Qになるとノーガードの打ち合いと化していきます。ムーアのインサイドハードワークに支えられ、ミスしてもセカンドチャンスも出てくるネッツが走る気持ちを強めると、サンズもカウンター速攻を決めます。

ネッツの速攻は走るための形づくりが出来ていて、必ず両サイドに開く選手がいて、真ん中をPGとセンターが走ってきます。いいねムーア。まぁセンターは別にして、トリプルダブラーのキッドがコントロールする形が明確に表れており、そのキッドがいなくても同じ形です。

一報のサンズはリーアンドロ・バルボーサが驚異的に前を走っています。そこにロングパスみたいな。ウォリアーズの初期にもいたバルボーサの存在は大きかったよね。PGなんだけど、実際にはオフボールでウイング気味に振舞っているから、コートに置いとくとどっちの役割も任せられる。カリーやドレイモンドに合ったガードでした。このサンズでもベンチから複数の役割って感じです。ダントーニとカーの似ている点ですね。っていうか、この時はカーもサンズにいたんだっけな。

スターターが戻ってくると再びサンズの流れっぽくなります。ネッツがアウトサイドを確率良く決めていたので点数的には互角でしたが、やっぱりどうにもクリスティッチのところが・・・かわいそうなのは、気になるってことはそれだけ目立っているってことで、クリスティッチ本人はかなり奮闘しています。だけどそれがボールムーブを止めている感じ。

しかし、そのクリスティッチがファールトラブルでベンチに下がり再びムーアが登場。何が変わったかっていうとサンズのインサイドがスピードのイニシアチブをとれなくなりました。代わりにサンズのアウトサイドが決まっていくのですが、ネッツは次第にランニングゲームで取り返し始めます。やっとキッドっぽくなってきた。

ビンス・カーターは両サイドを走っては、中に絞る動きで得点を積み重ね、真ん中を走ってくるムーアにもキッドからアシストが供給されます。シュートが決まらなかったリチャードソンをハウスと交代させると、誰もフリーにできなくなってキッド自身がドライブ。一気にネッツのペースになりました。多分、キーポイントはアマレがベンチに座っていた事かな。

アマレの代役不足に困っていた1Qのサンズ
機動力ビッグマンで走り始めた2Qのネッツ

両チームが同じような悩みを抱えていそうなのが面白い前半となりました。ただし、これは見た目の流れの話でありまして、実際には「流れの悪い方が3Pを決めてリードする」みたいな展開でした。この時代にしては珍しいことですが、現代的に見れば「ハーフコートで困ったときは、とりあえず3Pうっておけ」みたいなリアリティある現象でした。

そんなわけで、走れる方がイニシアチブをとった2Qでしたが、それと点差は関係なかったな。キッドが8点6アシストと本領発揮し、サンズがリードを5店に広げて終わりました。だってショーン・マリオンが3P2本も決めて12点奪うんだもん。

キャリア平均で3Pアテンプト2.1本のマリオンですが、シーズン単位でみると2.1本を超えたのがサンズ時代の02-08シーズンの間でした。ダントーニは「あの頃、もっと3P打てばよかった」と発言していますが、マリオンを見る限り、他のチームよりも積極的に打たせていたっぽいです。

【2Qで分かったこと】
・役割万能系ガードは便利、バルボーサ便利
・速攻がうまくいかないときは3P絡ませようぜ
・この時代にしては3P打たせていたダントーニ

・機動力ビッグマン万歳!ベン・ウォレス欲しい!
・走るルールが出来ているネッツ
・両サイドに開いたら3P決めてくれる選手欲しい

つまりは両チームともに、現代的素養を理解していたわけだ。ただし、現代はもっともっと振り切っているだけ。

◎ディアウとコリンズ

後半開始からサンズは見事なオフェンスを披露します。ラジャ・ベルとディアウがオフボールで絡んでフリーを作り、そのディアウはそこからポジションを変えていって、インサイドのプレーメイカー的に振舞います。3Qだけで4アシストのディアウ。ナッシュとディアウの2つの起点で人とボールが動いていくサンズ。しかし、どうもシュートが決まらん。ナッシュまでがフリースロー外しているし。

あんなに目立っていたアマレが消えたサンズ。スタミナが持たない面もありそうですが、プラスしてネッツのコリンズがアマレを止めながら、高速ヘルプでドライブを止めるディフェンスが効いています。7フッターなのに12年のキャリア通算FG41%とひどいもんですが、ディフェンスやハードワーク担当なのね。

オフェンスでもコリンズがハードワーク担当、キッドがポストアップも使いながら起点になってコート全体にパスを供給する形でネッツのターンになります。ビンス・カーターの速攻がナッシュによってチャージングにされるなども挟むので一気に逆転とはいかなかったものの、同点に追いつくネッツ。

そんなこんなでアマレがベンチへ。ここでダントーニはカート・トーマスを出さず、ディアウにセンターを任せます。スモール化を更に進めたわけです。ネッツがムーアを出したこともあって、ダントーニの作戦が成功します。ディアウはゴール下にはいかずミドルレンジから打っていくので、ムーアはディフェンスで何もさせてもらえず。そしてオフェンスでも平面で守り切ってテイクチャージ。笑っちゃうくらいにダントーニ。

ところが残り2分から、アマレとカート・トーマスを並べます。特に何も起きませんでしたが、なんとも、なかなか、ビックリ。なるほど、何となく「アマレの代役にカート・トーマスが苦しい」のではなくて、単純に「マリオンの代役がいない」って感じがしてきました。アマレ、ディアウ、トーマスでビッグマンは足りているんだけど、ワンビッグマンの際にマリオンの役割を誰も出来ないってことかな。

〇06-07シーズンのマリオン
37.6分
17.5点
FG52.4%
9.8リバウンド

有能OF有能。これで3Pが決まればね。9.8リバウンドはウイングの数字ではありません。しかもFG50%超えなんだから。オフにシャックとトレードされることになるのですが、実はアマレよりも重要だった空気がしてきます。1Qは暴れまわっていたアマレが大人しくなり始めると、ディアウがカバーしていましたが、マリオンのカバーは誰も出来なかった。

ネッツはここまで眠っていたリチャード・ジェファーソンが突如10点を取って対抗していました。こちらはオフボールでうごいておけば、そこにキッドのパスが来る状態。1点差まで詰めて3Qが終りました。

【3Qで分かったこと】
・マリオン有能、そして貴重
・ダントーニには代役(ディアウ)がいたアマレよりもマリオンが重要だったかも

・ディフェンス、ハードワーク担当がいたネッツ。ベン・ウォレス欲しい!
・ハーフコートでもオフボールムーブからチャンスが作れる
・そのためにキッドは、もう少し自分で点を取りにいかないと

最後はちょっと難しいのですが、キッドって「トップからパス出しておしまい」みたいなプレーをそこそこやるんだよね。ノビツキーがいればそれでもよかったけどさ。
だけど、2Qはドライブが増えてよくなったし、3Qもキッドが動くからジェファーソンの動きも生きた感じ。クリスティッチもミドル決めたし。ナッシュが動き回るのに対して、キッドの動きは寂しいね。

◎逆をとれるPG

そんなことを書いていたら、4Q序盤にキッドが仕掛けるゲームメイクからビンス・カーターのミドル、ディフェンスがキッドのパスを警戒したところで自らミドルと自らのプレーでディフェンスを手玉に取っていきました。一方のナッシュはアウトサイドからプルアップで決めていきます。シュート力はこの2人の大きな違いです。

4Qなので互いディフェンスが強まっているのですが、キッドとナッシュそれぞれがディフェンスの動きを見て逆を取っています。そのため、むしろフリーが増えていき、アウトサイドからも決まっていくのでハイスコアに動いていきます。キッドはトリプルダブルです。

この試合はここまで全般的にはサンズの方が良かったのですが、4Qになるとネッツの方が良く見えてきます。理由は変わらずプレーしているサンズだけど、ネッツが慣れてきたので対応し始めていること、逆にネッツのオフェンスはキッドが仕掛ける形が増え、さらにビンス・カーターの個人が混ざるから、サンズからすると止めにくくなっていきました。

なんだけど、ナッシュのプルアップ3P、ディアウのアシストからラジャ・ベルの3Pとアウトサイドから決めまくりのサンズ。ネッツはビンス・カーターが外さないのだけど、2P3本決める間に3P2本決められている感じ。

残り3分からビンス・カーターに託しまくるキッド。期待に応えるビンス・カーターがミドルを決めるし、ダブルチームされたらキックアウトしてキッドが3P。ネッツの方が明確に良い終盤。

そして残り10秒もビンス・カーターがドライブを決めてネッツがリードを得ます。ナッシュはディアウへのパスを狙い、それがズレたもののディアウは慌てずパスアウトでベルの3Pに繋げますが、これが決まらず。サンズのファールゲームに対しても、リバウンドを取ったビンス・カーターが確実に決めて、残り5.3秒3点リードに。

サンズのインバウンドがディアウに入ったところで、ビンス・カーターがファールで止めます。3点差なので逆ファールゲームの判断ですが、3Pラインの内側だったし別にファールしなくてよかったのでは。しかもこれで6ファールとなり退場です。

2つのフリースローを決めたディアウ。今度はサンズがファールゲーム。キッドが2本決めて残り4.4秒で3点リード。

タイムアウトで作られたプレーはナッシュをフリーにすることでしたが、2つのスクリーンでフリーになれなかったけど、すかさず動き直して3つ目のスクリナーを使って空いたナッシュ。これってプレーコールだとしても、ナッシュの判断だったとしても凄いわ。見事に3Pを決めたナッシュで同点のオーバータイムに行くのでした。なんで3P優先で守らなかったのか謎だったネッツですが、時代だろうね。

◎キッドとナッシュ

試合はオーバータイムに行きますが、その前に4Qで象徴的だった両PGについて考えてみましょう。

キッドにはリバウンドというプラスアルファがあるとはいえ、ほぼナッシュが上回っていました。シュート能力はもちろん、プレーメイク能力、ディフェンスの先を読む能力などなど。その中でも特に象徴的なのは、

常にプレーに関与しているナッシュ

という構図です。要するにスタミナ抜群。ワンPGで構成されるチームなので、これは戦術的にも当然ですし、現在のダントーニにも通じる部分です。「プレーシェアって何ぞや?」みたいな構成だし、ここまで個人でやるとスタミナもたないから、ハーデンにはサボらせるし、ダブルPGを導入したし。

しかし、ナッシュはディフェンスもサボらないし、1人でPGしています。驚異的なタフネス。まぁハーデンと違うのは、あくまでもプレーメイカーであり、全てが自分で行く想定ではないことですね。チームとしてもボールを回して、ドライブ&パスアウトで上手く構成されていました。

4Qになるとネッツディフェンスはパス回しについていけないけど、プレーはなんとなくわかってきたから、適切なヘルプでインサイドを塞いでいきました。するとナッシュはプルアップ3Pで得点するように。最後のクラッチショットも含めて、FG6/8、3P3/4で15点を稼ぎました。お見事。

ディフェンスの読みを外し、正確に決めていくナッシュ

ほとんどのプレーに関与しながら、最後を自分の得点で締められるナッシュは素晴らしい以外の言葉がありません。さすがは2年連続MVP。

しかし、ここにダントーニ案件を加えると、ちょっと見方も変わってきます。アマレが暴れていた1Qから大人しくなっていった後半と、それなりに違いはあれど、延々とナッシュのプレーメイクで同じことをやっていたダントーニってイメージは現在のロケッツから感じる流れです。

1つひとつのプレーは素晴らしいダントーニですが、うーん、試合の中で変化をつける発想には乏しいよね。ナッシュが素晴らしすぎて消えていただけで、本質的には足りないものがあるのかもしれません。

ナッシュに劣っていたキッド。しかし、4Qになると自らの突破でチャンスを作りまくりました。それでいて、終盤はビンス・カーターに託しまくりました。ここまでの流れをまとめると

・速攻の形など、キッド仕様のチームつくり
・でも2ビッグマンで走れなかったり論理的ではない

・クリスティッチで攻めまくった1Q
・ベンチのシューター役を活用した2Q
・眠っていたリチャード・ジェファーソンが輝いた3Q
・ビンス・カーターに託した4Q

あれっこうみると、キッド仕様な割に論理性はなかったけど、いろんな選手を順番に輝かせて行った感じがします。これが終盤のビンス・カーターを輝かせることにも繋がりました。その中でキッド自身は試合を通して、真ん中を走っていたのか。

ということで、よりインパクトがあったのはナッシュですが、チームメイトをうまく使っていったのはキッドだったのかもしれません。それが4Qに繋がった感じ。チームとしての狙いなのかは微妙ですが、ノってきた選手にパスを供給していったよね。

常にチームをリードしたナッシュ
常にチームメイトをリードしたキッド

そんな印象の4Qになりました。

◎ファールアウトとキッド

ビンス・カーターとクリスティッチがファールアウトしていて不利と思われたネッツですが、オーバータイムの2分半でアマレがファールアウト。さらに1分後にラジャ・ベルが続けざまのファールでこちらもファールアウトと、お互いに主力を欠くことになったオーバータイム。

サンズは相変わらずコートを広く使い、見事なドライブ&パスアウトで繋いでいけば、インサイドが空いたところにナッシュが直線的なドライブで&ワン。理にかなったオフェンスを展開しますが、アウトサイドが決まらなったり、アマレがオフェンスファールをコールされたりと、一気に試合を決めることが出来ませんでした。

この辺りもロケッツっぽいというか、勝負所でエースのアイソって感じでもないから、一昨年のプレーオフ・ゲーム6を思い起こさせる展開。あのシリーズ面白かったから見直そうかな。

一方で勝負どころのエースを失っているネッツは、キッド・キッド・キッド。「これまではチームメイトに敢えてやらせてましたよ。誰もいないなら自分で行きますよ」と言わんばかりにドライブからゲームを作ります。

ファーストオーバータイムのキッドは6点、1アシスト、2ターンオーバー。ムーアが2本のフリースローを決めた以外はキッドがらみの得点でした。ミスもキッド。ここまでの展開とは全く違うエースとしてのキッドがオーバータイムで出てきたのでした。

お互いに10点を取ったオーバータイムでしたが、サンズが6人がシュートを打ったのに対して、ネッツは3人だけ。キッドが打つか、キッドのパスから打つかって感じなのでした。

そのキッドが放ったラストショットはリングの上を4回跳ねてからこぼれ落ち、勝負は決まらずダブルオーバータイムに。

◎スタミナ

ダブルオーバータイムのジャンプボールにはマリオンっていうサンズ。コビントン状態。そしてナッシュの3Pに対して、キッドが3Pを返すスタートです。

しかし、ここからキッドはマリオンのディフェンスに苦しみ、タフショットばかりになります。元々、ネッツはキッドを空ける仕組みには乏しく、起点となるキッド以外のところでスクリーンからフリーを作るチームだったこともあり、能力の高いマリオン相手だと1on1は楽じゃない。

そのマリオンはキッドを守るエースキラーをやれば、リバウンドもとるし、ブロックもします。

〇この試合のマリオン
49.5分
33点
9リバウンド
3スティール
2ブロック

これだけ働きながらダブルオーバータイムでも、更に速攻の先頭を走ります。ちょっと恐ろしきスタミナ。その走りまくるマリオンにロングパスを通すナッシュは、3Pにレイアップも決めて40点。残り2分17秒で6点リードとして、この試合は終わったかに思えました。

もうリチャード・ジャファーソンに託すしかなくなってきたネッツ。しかし、点差が開いたところでHCローレンス・フランクはセンターのムーアを下げ、4ガードに移行します。これでグッとインサイドが広くなったところで、キッドのアシストからジェファーソンのレイアップ。さらに3Pも追撃すると、キッドもマリオン相手にドライブ&ワン。インサイドがノーヘルプになっており、スモールの効果がハッキリとでた形で執念のようにキッドが倒れこみながら決めきりました。

これで残り33秒で再び同点に。

しかし、ナッシュはこの4ガードに対して、ディアウのポストアップでミスマッチを攻めていきます。対するはキッド。ビッグガードの類になるキッドですが、さすがにもうお疲れだったのか、インサイドに押し込まれてレイアップをねじ込まれてしまいます。

2点ビハインドの残り14秒。ネッツのラストオフェンスはキッドがドライブ・・・だったのですが、まさかのドリブルが足に当たるミスで、決着がついたのでした。あまり1on1を得意としないキッドが、意地をみせたようなオーバータイムでしたが、最後に攻守でスタミナが切れたような感じだったのでした。

◎終わってみれば

〇スティーブ・ナッシュ
48分
42点
13アシスト

〇ジェイソン・キッド
47.5分
38点
14アシスト
14リバウンド

終わってみればナッシュ以上のスタッツを残していたキッド。このことは両チームの考え方の違いにも関係していたのかもしれません。お互いにPG中心に作られたチームであり、速攻で威力を発揮しましたが、ハーフコートになると

ナッシュ中心に連動するサンズ と キッドの配給から個人で得点するネッツ

どっちが良い悪いではなく、オーバータイムになったのでネッツの方が疲れちゃうよねって話です。とはいえ、この試合はナッシュとラジャ・ベルが共に3P6/7というスペシャルだったので、そこんトコロ差し引いてあげたいね。

HCローレンス・フランクは現在クリッパーズのフロントですが、そう思うとクリッパーズ色が見えてくるから面白い。みんな走るし、コンビプレーもあって、チームとして連動していないわけじゃないけど、基本的には個人アタックの組み合わせ。

ダントーニの方は、ハーデンよりもナッシュの方が適切なPGなんだろうなーって感じもありました。同じように負荷をかけるにしても、基本が得点のハーデンよりは、基本がパスのナッシュの方がチームとしてはベターだよね。そこはマリオンがいるかどうかかな。でもウエストブルックもいるしなー。ロケッツが(ハーデンが)困りだしたらウエストブルック劇場になるわけだし。

さて、サンズはディフェンス力がないと評判のチームだったわけですが、ナッシュは読みが良いし、ラジャ・ベルもエースキラーとしても優秀。マリオンなんてスーパーだし、アマレも身体能力高い。スマートなディアウはチャージングドローしていた。なんでディフェンスが悪いんだ?と言いたくなるユニットでした。

調べてみると、このシーズンのディフェンスレーティングは105.5で15位なので、ディフェンスが悪いってのは失点が多いから受けた風評被害でした。翌シーズンにシャックを手に入れたら107.0になったので、ビッグマンは関係なかった。

ちなみにオフェンスは112.9でダントツ1位です。スモールで個々が守れるってのは今でも同じ構図なので、時代がダントーニに追いついてきただけで、ディフェンス面は変わっていないよ。

その一方で両チームがピック&ロールを守れないのが気になりました。ネッツは特にムーアになってからショーディフェンスで止めて自分のマークを追いかける形にしましたが、次のヘルプが悪く、ロールマンにパスを通されまくり。サンズはマークの受け渡しが意味不明で、ポップされると簡単にフリーに。どちらも、何年後かに起こるピック&ロール戦術の進化を待たないといけません。

ということで面白い試合でした。そして両チームが優勝できず時代を変えられなかったのも同じでした。サンズは優勝できるだけのポテンシャルを感じさせてくれましたが、ネッツは最後に個人能力次第って感じなので、それはキッドには難しかったかなー。

サンズvsネッツ 2006/12/7” への4件のフィードバック

  1. バスケの形態が良くも悪くもエンタメっぽいですね。
    スリーがポンポン決まっても盛り上がらないというか、、。
    スリーも面白さの味付けの1つみたいな感じですかね。
    雑みがウケる時代にムーブを詰めたチームが勝つのも納得出来ました。

    1. 3Pを守る意識の関係で、ディフェンスが緩いですね。
      PGに求めている役割がカウンターの起点でもある両チームなので、インサイド側を守る気持ちが強かったです。
      ディフェンスを疎かにしているわけではないですが、捨てる部分をハッキリとさせておき、切替を早めるような戦略なので、ファイトではなくエンタメって感じかもしれません。

  2. お疲れ様です。
    マトリックス懐かしいです。大好きな選手です。
    自分はマブスに移籍直後あたりからNBAを見始めたので、サンズで躍動している姿は新鮮でした。
    マブス時代の印象はオフェンスはいつの間にか点数を積み重ねている印象があり、ディフェンスではエースキラー、そしてリバウンダーと不思議かつユニークな選手で、ノビツキーとの補完関係も良かったと思っています。
    マリオンみたいなスリーはないけど走れるハードワーカーなウィングが好きで、一時期よく追っかけてました。ジェラルド・ウォレスとか。
    現代だとスリーのないウィングはほとんど居場所はない気がするので少し残念です。

    1. 確かにノビツキーのようなビッグマンがいると、なおさら輝くタイプですね。サンズに足りなかった要素でした。
      とにかく色んなことをやれる環境が適している選手なので、ハーフコートでどれだけスペースを与えるかがキーなのかもしれません。

      今は3P決めないとダメですが、誰でも決められるという発想が強くなってきたので
      今後はハードワーカーも出番が増えてきそうです。時代の流れ!

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