サボニスとディバッツ①

ユーロ系センターの系譜というと、この2人しか思いつかなかったぞ。

前回マジック・ジョンソンがセンターを務めた試合をあげ、「ポイントセンターの源流があるのか」という視点で考えてみました。結論は「源流はないし、役割的にはポイントセンターというには厳しく、ビッグガードという特徴を生かしたくらい」でした。

これに対して質問があったので、それにアンサーする形での今回の記事になります。質問としてはポイントセンターの源流ってことで次の2つです。

・チェンバレンの方が源流に近いのではないか
・ユーロ系センターが源流ってどういうこと?

考え始めると、なかなか面白いテーマなのですが、考えたところで源流ってものは存在せず、個人能力と戦術の進化に過ぎないのですが、それでも触れてみても面白いかなーと思いました。

〇ウィルト・チェンバレン

この映像だけ見てもすさまじい選手です。エンビードのサイズでウエストブルックの身体能力を持っているようなイメージ。今ならアンソニー・デイビスが一番近いのでしょうが、レナードのワンハンドプレーも持ち合わせている、みたいな。

61-62シーズン 
50.4点 
25.7リバウンド

冗談みたいなスタッツを記録しているチェンバレン。80年のレイカーズでさえゾーンみたいなディフェンスなのだから、60年代初めはガッチガチだったことが予想されるのに、全く関係ないように得点を決めています。

67-68シーズン
24.3点
23.8リバウンド
8.6アシスト

しかし、キャリア中期から後期にかけてのチェンバレンは自身のプレーを改め、リバウンドの脅威はそのままに、よりチームメイトにパスを供給するようになりました。センターながらアシスト王になっています。そういえば今シーズンはレブロンがアシスト王になりそうですが、ガード以外のアシスト王って久しぶりなのかな?

確かにキャリア中期以降のチェンバレンはポイントセンターだったといえるかもしれません。ポスト役で起点になってのボールムーブによって、得点を減らしてからのチェンバレンはシーズン68勝、69勝、そして33連勝にチームを導いています。

ただ、まぁそれを確認するのも60年代となると難しく。またアシストが多いからと言ってゲームを作っているとも限りません。今回はアシスト数に捉われずに考えてみたいと思います。

◎ポイントセンターって何だろう

そもそも定義がないですし、人によってとらえ方は様々です。基本は「ポイントガードの役割をするセンター」になりますが、それってマジックに代表される単なる【ビッグガード】じゃないか。レブロンやカズンズもこの路線。

間違ってはいないのですが、これらは単なる個人能力です。ただサイズがあるだけってことになってしまう。だから考えたいのは、あくまでも

ポイントガードと協力してゲームを作る

そんなセンターを定義したいわけです。これは恒常的な定義というよりも、現代的なオフェンス戦術における定義です。ラプターズは全員がそんな役割をし始めているので、次の時代はそもそも「ポイント○○」が死語になっているかもしれません。

2人が協力してゲームを作るってことは、単にパスを出す・アシストをするということでなく、そういうシチュエーションを作るってことになります。シチュエーションという言い方はざっくりしていますね。だからブレークダウンすると

・「スペースとタメ」を作ってディフェンスを崩す
・崩した形からチーム全体にパスを供給する
・自分の役割やポジションを限定せず、パサーにもフィニッシャーにもなる

最後は付け足したような項目なのですが、「ポイント」であれば前者2つで良いのですが、それじゃあ「センター」じゃないよね。ってことで、ちゃんとセンター役もこなしているからこその「ポイントセンター」だと思います。

そういう意味で「アシスト」を差し引いて考えてもゲームメイクしているポイントセンターはいると思いますが、現代の代表格はドマンタス・サボニスが挙げられます。ハンドオフ、ピックなどを駆使してディフェンスを崩し、ダイブしてのゴール下、ポップしてのアウトサイド、もちろんパッシングもしていくセンターです。

このトリプルダブルにあるようにサボニスはアシスト数を伸ばしてきましたが、同じようなプレーをしていた昨シーズンまでは、ベンチスタートだったこともあり、あまりアシストが多いタイプではありませんでした。

〇ドマンタス・サボニス
17-18シーズン 2.0アシスト
18-19シーズン 2.9アシスト
19-20シーズン 5.0アシスト

ボールに触れる回数こそ多いものの、自分で突破することはなく、ガード陣とのコンビプレーで崩していくサボニスのプレーは「スペースとタメ」を作ってくれます。そして、この特徴はいかにもユーロでやりそうなコンビでの崩しです。

ということで、初期のユーロ系センター2人をみてみるのが今回の主旨となります。

◎サボニス

1人目はユーロの伝説的なセンターにして、ドマンタスのパパであるアルビダス・サボニス。旧ソ連の主力として数々の国際舞台で活躍し、ブレイザーズからドラフト指名されたものの、冷戦下ではアメリカに来ることは叶わず、ソ連解体後になってから加入しました。リトアニアの英雄。

サボニスはケガを負ってからNBAにきており、全盛期を過ぎてからの登場となりましたが、それでも一流のセンターとして活躍しました。NBAでもシーズンを棒に振るケガをしており、実質的には95年~2001年の6シーズンとなります。

〇サボニスのキャリア平均
24.2分
12.0点
7.3リバウンド
2.1アシスト

こちらもアシスト数が少ないのですが、パス自体は上手いセンターでした。そして当時としては珍しく3Pアテンプトも平均0.9本あります。アウトサイドからも決められるセンターでした。ただし、「3Pを決めるセンター」自体はアメリカでもたまにいたので、それだけでゲームを作るとは言い難いものがあります。

ところで、サボニスのインターナショナルスタッツを見てみると、3P能力の高さがわかります。キャリア7年、208試合通算で359本を打ち、38%決めています。現代NBAにいたら、もっと多くのアテンプトがあったはずです。

https://www.basketball-reference.com/international/players/arvydas-sabonis-1.html

一方でインターナショナルスタッツでもアシストは2.0本に留まっており、パス能力はあるものの、あくまでもセンターとしてリバウンドや得点が中心的な役割になっていました。若い時はブロック力も高く、地味な役回りもしっかりと受け持っていたといえます。

そんなサボニスを「ポイントセンター」と定義するのは困難です。しかし、「スペースとタメ」「役割・ポジションを限定しない」という項目を考えたときに、それなりに面白い構図も見えてきます。

当時のブレイザーズは性格を除けば優秀なPFラシード・ウォレスがいて、サボニスがポストアップすることも重要だけど、ウォレスにスペースを与えることも大切でした。インサイドに陣取っているだけのセンターであればウォレスは消えていたでしょう。

PGにデーモン・スタウダマイヤーを置いたブレイザーズは、誰も20点を取らないけど、10点以上の選手がたくさんいるチームになっていきました。

〇二桁得点の人数
96-97シーズン 6人
97-98シーズン 5人
98-99シーズン 5人
99-00シーズン 5人
00-01シーズン 6人

当時は平均100点いかない時代なので主力たちで非常にバランスよく得点を奪っていました。特に最後の2シーズンは、
PGスタウダマイヤー
SGスティーブ・スミス
SFピッペン
PFウォレス
Cサボニス
と超豪華メンバーにして、フォア・ザ・チームなプレイヤーを揃えてシャック&コービーを打倒しに行きました。その意味では全員が流動的にポジションを変えながらオフェンスを構築する必要があり、サボニスはセンターといっても、どっしりとポストに構えているのでは意味がありません。シャックじゃ駄目さ。

こんな大前提を頭に入れてサボニスが32点を取った試合を見てみると、得点に結びつくサボニスの動き全般が気になってきます。スペースを作るための動きが複数あり、自身もインサイドに飛び込んだり、アウトサイドに開いたり、様々な役割をこなしていきます。

こうやって見ると、ポイントセンターという言葉の「ポイント」に引っ張られてしまいますが、もっと純粋に「オールラウンドにプレーする」ことが、最終的には起点(ポイント)でありフィニッシャー(センター)でもあるって感じな気がしてきます。

ポイントセンターの源流はユーロにある

というのは単純な3P能力ではなく、ユーロ系のセンターの方が様々なプレーをしていたことに由来する意見です。サボニスのスタッツは得点とリバウンドというセンターの特徴ですが、いろんなことをしていましたし、チームで崩すための流動的なポジショニングが光っているのでした。

息子サボニスほど秀逸ではないですが、パパサボニスもまた巧みにゲームを作れるタイプのセンターだったのでしょう。そして当時のブレイザーズ自体、全員がこんなタイプの選手で構成されていました。息子サボニスは誰もが主役になり得るペイサーズでオールスターにまで成長したわけですから、ユーロ系のセンターにはチーム全員で攻める形が向いていると言えます。これこそポイントセンターであるために重要なことなのかもしれません。

◎ディバッツ

次回にします。こちらはリアルにアシストの多いセンターでした。

サボニスとディバッツ①” への2件のフィードバック

  1. このころのブレイザーズは控えにシュレンプもいましたね。
    ポイントフォワードのピッペン、スミスも重要ポイントでしたね。
    マジック以外で平均10アシストで優勝したチームはないというのがあって、ITもアシストを下げて優勝しました。
    ポイントセンター、ポイントフォワードの有用性はアシストの分散なんでしょうね。
    ブルズにしろウォリアーズにしろ。
    ディバッツ社長のキングス。
    好調の2月以降はフォックスのアシストが1.5程下がりました。しかしチームのアシストからの得点は増えた。そしてシューティング%も上がって勝率も上がった。
    当時のキングスがそうでしたね。
    今のキングスにトレードで来たベイズモアは1/22に加入後38%で3Pを決めています。ブレイザーズでは32%でした。2月のキングスはスターターのセンターがポイントセンターなジャイルズで2番手はスモールでのビエリツァ。
    その間のキングスのアシスト%は61.9%でアシストレシオは18.4。
    ベイズモアがいた期間ブレイザーズはアシスト%が50%、アシストレシオが16を上回ったことが無いです。
    ポイントセンターの恩恵はなかなか有るような気がします。

    1. 確かに、ネッツなんかもディアンジェロが起点になりまくっているのに、アシスト数は伸びなかったし
      全員がアシストするって面もありますが、ワンパスではダメって発想もありますね。

      次回のディバッツさんはその辺を体現している感じのキングスにいたわけで
      目指していそうなんだけど、なんか違うっていうジレンマ

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