20分以下のプレータイムにおける得点王はペイサーズのダグ・マグダーモット
最近はプレータイプなどの数字をみながら、面白い数字がないか探しております。普段あまり触れない数字として「オフボール」があり、ボールを貰う前にスクリーンを使って振り切って打つパターンです。
このプレーは、まさかのテレンス・ロスが1位なのですが、それはもう特集したじゃん。
続くのが、カリー、ビール、ジョー・ハリス、レディック、ボグダノビッチ(ジャズ)、ポール・ジョージ、ヒールドなので、題材として面白そうなのはボグダノビッチくらいです。
というのも、オフボールスクリーンという見方をすると、チームのシューティングエースに対して準備するのが自然であり、わざわざ抜き出して、オフボールと明記する必要がないのです。
そんなランキングを見ていくとマグダーモットに目が留まりました。
〇マグダーモットのオフボール
回数 2.3回(13位)
得点 2.8点(9位)
EFG60.1%
EFGはランキングにするのが難しいですが、上位15人の中で唯一60%を超えているのがマグダーモット。なお、16位にシャメットがいて、こちらは驚異の66%です。
高確率で決めていくマグダーモットですが、そのプレータイムは20分と少なめ。そこで20分以下のプレータイムでの得点ランクを調べてみると
1位 マグダーモット
2位 ワグナー(ウィザーズ)
3位 ミルトン(シクサーズ)
4位 リード(ウルブズ)
5位 ムーア(ペリカンズ)
一応、チーム名も書いておこうという微妙なラインの選手が並びます。つまり20分というのは実に微妙なプレータイムになっていて
・チームの主力ではない
・HCに信頼されていないわけでない
7~8番手でも、20分を超えるチームはザラなので、本当に微妙なラインのプレータイム。でも、そんな位置づけなのにペイサーズはマグダーモットのためにスクリーンをしっかりと用意しているわけです。これが珍しい。
ちなみに「20分以下の得点王」ではありますが、マグダーモットは20分ぴったりのプレータイムなので、この条件下では最も有利だということは付記しておきます。
◎インスタントスコアラー
最近はこんな言い方をする「ベンチから登場して短時間で得点を稼ぐ」選手がいます。ただし、彼らがなぜ「インスタント」かといえば「簡単に得点する」からであり、「個人技で得点する」からチームとして特別な準備が要らないからです。
チームスポーツのバスケなので選手の連携は重要ですが、ベンチメンバーの集まりだと連携を鍛えるのは難しいよね。だったらベンチこそ個人技って発想は理にかなっています。実際にルー・ウィリアムスを筆頭にした個人技選手や、ベンチメンバー+エースにするローテが流行っています。
マグダーモットは
・ベンチから登場して短時間で得点を稼ぐ
選手ではありますが
・個人技で得点する
選手ではありません。
ここがポイントになっていて連携を使うのに20分しかプレーしていないし、だけどしっかりとスコアリングしています。この連携については、ペイサーズらしさというか、サボニス感が溢れ出ています。まずは3Pアテンプトの中身を見てみましょう。
〇3Pアテンプト
2秒以内 262本
6秒以内 3本
キャッチ&シュート 228本
プルアップ 37本
これだけのアテンプトがありながら、ボールを持つのは2秒以内。プルアップは37本打っていますが、そのうち36本はワンドリブルからのシュートとなっており、要するに
キャッチ&3Pか、キャッチ&フェイク&ワンドリブル3Pのどちらか
といった選択肢です。ここまで徹底したシュートアテンプトになっている選手も珍しいでしょう。そのため成功したシュートには必ずアシストがついています。
〇3P
アシストあり 118本
アシストなし 0本
流石にこれはとんでもない数字です。118本も決めていてノーアシストが0本だってさ。ちなみに2Pでもアシストなしが16本のみ。ドライブレイアップくらいしかないってことになります。これらのことが示すのは
オフボールで決着をつけるスコアラー
まさに絵にかいたようなシューターっぷりを発揮しているわけです。なお、注目すべきはアテンプトの多さです。徹底しているとアテンプトが少なくなってしまうのが通例ですが、今シーズンのマグダーモットは徹底的にオフボールで勝負しながらも、得点を増やしているのです。
そこで6本の3Pを決めたナゲッツ戦のハイライトを見てみましょう。
1本を除いてサボニスとTJマッコネルのパスから打っています。はい、もうマグダーモットのチカラなのか、サボニス&マッコネルのチカラなのかってレベルです。そこでパスを受けた本数を調べると
〇マグダーモットへのパス数
サボニス 342本
マッコネル 338本
ホリデー3 100本
その他 294本
〇パスから3Pアテンプト
サボニス 68本
マッコネル 100本
ホリデー3 30本
その他 69本
なかなかファンキーな数字が並びます。マグダーモット自身はサボニスでも他の選手でも同じくらいの本数を打てているので、パスさえもらえればって感じでしょうが、マッコネルからのアテンプトの多さは目立ちます。
結局のところ、サボニスのようなタイプのセンターがいることでマグダーモットのオフボールが生きている感じです。そして「作ってくれる」マッコネルがいれば、なおさら効果的。ヨキッチやディアンジェロと組ませてみたいね。
連携あってのマグダーモットですが、同時に連携あってのペイサーズって感じなので、非常にわかりやすい効果が出ていると言えるのでしょう。
◎大学時代
せっかくなので大学時代にも振り返ってみましょう。Wikipedia先生の出番です。英語バージョンね。
ノースダコタで生まれたマグダーモットは父親がノースダコタ州立大学のACというバスケ家族で育ち、アイオワ州の高校に進むと2年間に渡って、なんと53連勝を記録し、週タイトルを獲得しています。そしてチームメイトにはハリソン・バーンズがいました。そりゃあ強いわ。
全米で28位のSFと評価され、そのままアイオワの大学に通うと思われたのですが、父親がクレイトン大学のHCに就任することとなり、マグダーモット本人もクレイトン大学に進むことになりました。ここで衝撃的な活躍をします。
1年生 14.9点 3P40.5% 7.2リバウンド
2年生 22.9点 3P48.6% 8.2リバウンド
3年生 23.2点 3P49.0% 7.7リバウンド
4年生 26.7点 3P44.9% 7.0リバウンド
これで2年生から4年生までの3シーズン連続でオールアメリカンファーストチームに選ばれています。とにかく圧倒的なスタッツを残しており、ラリーバードの再来と呼ばれたとか、呼ばれてないとか。少なくともラリーバードの記録を抜く得点を記録しており、4年時は年間得点が史上5番目に多く、当然の全米得点王となり、メジャーな個人賞を総なめにしました。
現在とは得点の取り方が違って、ポストアップからのパターンと3Pを組み合わせており、確かにラリーバードっぽい。これで無双スコアラーとなったマグダーモットは、4年間でNCAAの歴史に残る選手として、そしてこの年のNo1プレイヤーとしてNBAドラフトに向かうわけですが、その前に高校の同級生であるハリソン・バーンズを追いかけてみましょう。
〇ノース・カロライナ大学
1年生 15.7点 5.8リバウンド
2年生 17.1点 5.2リバウンド
バーンズはこれでウォリアーズから7位指名を受けています。強豪校に進んでいるバーンズと比較してはいけないのですが、マグダーモットの方が優秀なスタッツを残しており、4年間大学に進む必要性は低かったように思えてきます。
バーンズよりも2年遅くNBAドラフトに進んだマグダーモットは11位でナゲッツに指名され、すぐに16位ヌルキッチ、19位ゲーリー・ハリスとのトレードでブルズに加入します。うーん、もったいないトレードだ。ちなみに13位で現在のブルズのエースであるラヴィーンがいます。
当時のブルズはドラフトで少し変わった戦略をとっていました。それは
一番優秀な選手を獲得する
という方針です。一見すると普通ですが、3位エンビードに代表されるようにトレンドは「一番才能のある選手を獲得する」ことだったので、大学最優秀選手だからといって人気があったわけではありません。そしてこのブルズの戦略は、現在のロスターでは自前でドラフトした選手が最も古くて3年目のマルカネンという状況になっています。(マルカネンからブルズは方針転換している)
ブルズでも2年目には3P42.5%を記録しており、順当なキャリアにも思えますが、プレータイムが25分を超えず、サンダーにトレード、ニックスにトレード、マブスにトレードと、どこでも必要とされるシュート力と、どこでも主力になり切れていない現状があります。
ペイサーズもマグダーモットにはサラリーを払っており、20分のプレータイムは微妙なライン。しっかりと得点してくれるし、自分の仕事を果たしてくれているのだけども・・・みたいな。
◎ワンシューター
マグダーモットはチームメイトとの連携を使い決めてくれる有能なシューター。それをペイサーズはしっかりと使っている。この構図は明確なのですが、一方でペイサーズはスターターにシュータータイプを置いていません。にもかかわらず、ちゃんとシューターを活かすってのは面白い構図です。
ペイサーズにとって唯一のシューターであるマグダーモットは、特定の相手との戦いの中で必要とされる選手として認識されていそうです。HCネイト・マクミランがマグダーモットを送り出したとき、チームの狙いを探してみると面白いかもしれません。なお、マクミランは意図がない時もあるので、さらに難しいんだけどね。
〇マグダーモット+サボニス+マッコネル
レーティング
オフェンス 112.2
ディフェンス 106.6
3P 42.6%
この3人が同時にコートにいるとペイサーズのオフェンス力は向上します。攻め勝ちたいときのユニットパターンの1つにもなるわけで、4Q序盤に作りたい1つ目の勝負どころのカギを握っているのです。ところが、現実は追いついていなくて
〇4Qのマグダーモット
得点 4.0点
3P 45.8%
得失点差 △0.5
20分以下の得点王は、個人としては十分なスタッツを残しているものの、4Qだけでは得失点差がマイナスとなっており、勝負を決める得点王にはなれていません。もう一歩の爆発力が欲しいのも事実なのでした。
サボニスのハンドオフを使うのが一番上手なのはマクダーモットだと思いながら試合を見ています。ペイサーズでこんなにスクリーンを使うのが上手いシューターはレジー・ミラー以来かもしれません。本人もレジーファンだと言っていたのでペイサーズファンの好感度も高め。
あと、それなりに身長があるのでカットインも決めてくれるのがいいですよね。
この点は昨シーズンまでいたボグダノビッチも同じでしたが、マクダーモットは脇役に徹していますし、サラリーも21M/3Yearsとそんなに高くないので、仮に売らなきゃいけない事態になっても売りやすいのもポイントですね。ペイサーズのフロントは有能です。
大学時代の映像を見て、カットしてのフィニッシュが出来る理由もわかりました。元々はそれが得点パターンだったんですね。
サボニスのハンドオフ利用も上手いですが、自身がスクリナーになってポルジンギスと組んでいるのも印象的でした。どちらも打てる2人によるスクリーンは、魅力的なので、ターナーともやってほしい。それはターナー次第・・・。
そうそう、大学時代はノビツキーチックなフェイドアウェイや、真正面からクロスオーバーなんてプレーをしていました。
わりと早い段階から20分前後のプレータイムと高確率のFGを残していましたが、チームがオフェンスをセットしてくれるか、守備難を隠してくれるかで印象が変わる選手のように感じます。
実はホイバーグ向きの選手だったと思うので、バトラーたちが移籍後に残れていれば全く違ったかもしれませんね。
ディフェンス面はガード相手は厳しいので、後はどれだけビッグマンを守れるか次第って感じかな。
ノビツキーやラリー・バードのサイズがあれば、使い勝手が全く違ったのかもしれません。
カイル・コーバーの後継者ってイメージですかねー。
大学4回生までいってたのか-。NBAのスカウトの目は確かって事なのかな。でも、本当、どこからか必要とされるタイプであり、スタメンにはちと物足りたいタイプ。レディック並みにはなかなか慣れないもんなんですねー。
脱ジャーニーマン化を目指して欲しい。
ペイサーズではベンチでもスタートでも使い勝手良いはずなので、渋い活躍期待してます。何より初代ラリーバードに色々教えてもらえたりレジーとかにもしごかれて欲しいっす。ディフェンスはまぁ…