バランチューナスとセカンドチャンス

カペラという優秀なインサイドフィニッシャーにして、オフェンスリバウンドで助けてくれる存在をトレードで放出し、ポケッツとなったロケッツはそれはそれで問題なくオフェンスを構築しています。

似たような現象はグリズリーズでもいえるのかどうか、というのが今回の主題。スターターにはバランチューナスがいて、インサイドで奮闘してくれるものの、試合終盤にはノーセンター(クラーク)という布陣を好んだりもします。まぁJJJがいなくなったので曖昧になっていますが。

ラプターズ時代と似たような起用法をされているバランチューナスですが、そのスタッツはなかなかに圧倒的。中外動き回り、様々な仕事をしなければいけないラプターズよりも、よりインサイドファイターとして戦っているし、周囲も広がっていることが多いので、純粋なパワーで押し切る能力も際立っています。

まずはそんなバランチューナスのスタッツを観ていきましょう。

◉フィニッシャー

26.3分
14.9点
FG58.6%
11.2リバウンド

1.1ブロック

短めのプレータイムながら、相変わらず有能なスタッツを残しているバランチューナス。特にFG成功率の高さとリバウンドの多さが目立ち、優秀なインサイドファイターといえます。

ちなみに3Pも1.3アテンプトで37%近く決めており、イージーシュートだけだからFG成功率が高いってわけではありません。しっかりと押し込んでのプレーもあれば、自分が空けられたらアウトサイドからでも打つよ。

〇グリズリーズのFG
オンコート 47.0%
オフコート 47.0%

ただ奇妙なことにチームで最も効果的に得点してくれるはずのバランチューナスがコートにいる時間といない時間で、チーム全体の成功率は変わりません。

オンコート時にチームメイトはシュートを外し
オフコート時にチームメイトはシュートを決める

なんていうことがあり得るわけです。ただし、ベンチのクラークがアテンプトはバランチューナスよりも少ないけど62%決めているので、一概に戦術的な違いともいえません。

〇オフェンスレーティング
オンコート 107.8
オフコート 107.5

そんなこともあって、優秀なインサイドフィニッシャーなのは間違いないのに、チーム全体としてはそんなに。ただし、これはバランチューナスだけじゃなくてモーラントなんかも同じなので、ベンチを含めて平均的に戦っているグリズリーズの特徴でもあります。個人が悪いってわけじゃないよ。

◉リバウンダー

11.2リバウンドでリーグ9位のバランチューナスですが、トップ10で唯一の30分を下回るプレータイムとなっており、あと5分長ければ5位くらいまで上がってきそうな感じ。

リーグトップクラスのリバウンダー

あまり意識しにくい割に、実はそんな感じになってきているのですが、そもそもドラフト5位なんだよね。

バランチューナスのリバウンドの特徴は、反応の良さや高さではなく、ベーシックなボックスアウトにあります。これがちょっと目立ちにくい要因なのかもしれません。ボックスアウトして奪うから「ボールがバランチューナスに落ちてきた」みたいな見え方になりがち。

〇ボックスアウト 5.9回(2位)

リバウンド上位陣がボックスアウトしない系統が多いのに対して、リーグで2番目に抑え込んでいるバランチューナス。そのためチーム全体としての確保率も向上します。

〇グリズリーズのリバウンド
オンコート 53.2%
オフコート 47.8%

〇ディフェンスレーティング
オンコート 107.4
オフコート 109.7

バランチューナスがいるかいないかで、グリズリーズのリバウンド能力は雲泥の差が出てきます。自ら奪い取るだけでなくチーム全体を助けてもくれる。なお、ここにはJJJがリバウンド少ない問題が絡むので将来的にも不安。

ただ実はバランチューナスのボックスアウトには違う特徴もあります。1位はアデバヨ(6.0回)なのですが、殆どがディフェンスリバウンド時のボックスアウト(5.4回)なのに対して、バランチューナスはオフェンスリバウンドが1.4回もあります。なお、ハワードと並んでリーグ1位ですが、ハワードの方はディフェンス時にボックスアウトしない。

つまりはバランチューナスのリバウンド能力を語るにはオフェンスでの貢献度が欠かせません。

〇セカンドチャンス
バランチューナス 3.9
他のチームメイト 9.9

〇チームのセカンドチャンス
オンコート 8.4点
オフコート 5.7点

チーム全体の1/4くらいがバランチューナスのセカンドチャンスポイントですが、コートにいる26分でチームが8.4点なのに対して、ベンチにいる22分で5.7点とチーム全体がかなり下がります。バランチューナスの存在は単なるオフェンスリバウンダーとしてだけでなく、ボックスアウトでチームメイトを助けてもいそうです。

チームにセカンドチャンスをもたらすリバウンダー

それがバランチューナスの価値だといえるでしょう。

ところでボックスアウトの数字ですが、昨シーズンまでと統計の仕方が変わったのか、記録される回数がグッと下がりました。昨シーズンの首位だったオルドリッジ(9.8回)が5.5回まで下がっており、しかも首位のアデバヨでも6.0回になっています。

◉ペイント内得点

というわけで、優秀なフィニッシャーであると同時にリバウンダーでもあり、そのリバウンドは自分が奪うだけでなくチームメイトも助けているようなバランチューナスの存在は非常に大きいのでした。

・・・で、終わっても良いのですが、そこでミルサップと違うのはチームスタッツで見た時には、バランチューナスの活躍度のわりにあまり違いがないこと。特にオフェンス面はね。バランチューナスのオン/オフコートに対してチームスタッツは

FG成功率には変化がない
セカンドチャンスは増える

こんな事がわかっているわけですが、少なくとも後者ではメリットがあるわけで、「シュートの半分は落ちるのですからリバウンドが最も重要なんです」というリバウンド大好きの国であれば、オフェンス力に圧倒的な差が出るため、バランチューナスをコートに残し続けるでしょう。でも、そうはしないんだよね。

グリズリーズのスタッツで興味深いのはペイント内得点です。これが2位のレイカーズを3.1点引き離して、圧倒的なリーグトップなのです。

〇ペイント内得点 56.3点(1位)

ということは、ここには 堅実に決めてくれるフィニッシャーであり、セカンドチャンスを生み出してくれるオフェンスリバウンダーである バランチューナスの存在が大きく関与していそう。

実際チームトップの11.0点を奪ってくれているバランチューナス。そこでオンオフコートを比べてみると

〇ペイント内得点
オンコート 31.0点
オフコート 26.7点

もちろんオンコート時の方が得点は多いものの、26分というプレータイムを考えると、思ったよりも差が出ていません。セカンドチャンスで2.7点も差があったのに、ここでは4.3点しかない。

ちなみにバランチューナスはそこそこ走るので、速攻での得点はオン/オフコートでそこまで大きな差はありません。なので、バランチューナスがコートにいなくても、特に問題なくインサイドを攻めることが出来ているというのがグリズリーズの現状です。

ビッグマンがいなければ効果的にドライブを決める

ロケッツでよくある光景がグリズリーズにもあるわけです。セカンドチャンスが減ったからと言って得点が減るとは限らないわけだ。もちろん、ロケッツが不安定になっているように安定して戦うためにはバランチューナスは欠かせないけどね。

優秀なバランチューナス
優秀だけどいなくても成立してしまう

ちょっとしたジレンマなのでした。しかも前にいたのがFG%が低くて、セカンドチャンスの少ないガソルだったから尚更ね。

バランチューナスとセカンドチャンス” への3件のフィードバック

  1. 世の中が静かですねー コロナのニュース見なければですが

    はてさて、グリズリーズのオーナーは、ビックマン大好き星の日本人なんですかね ガソル ランドルフ バランチュナス ノア等々 GMがそーゆータイプ好きなのかな

    もち必要ですよ そーゆータイプの選手 でも毎回高サラリーなんすよね…

    リバウンドが得意な選手に高サラリー払っちゃダメって訳じゃないんですがね。攻守ともにリバウンド大切なので、リバウンダーがサラリー面や戦術を考える時に軽視してはもちダメっす。にしてもねーって感じ 来シーズンのサラリー問題で色々NBAも大変だろーなー 変な玉突き移籍おきろ

    バランチュナスってドラフト5位って事に少しビックリ。ヨキッチやヌルキッチあたりのセブンフッターが増えましたが(ポールジンギスもか) 東欧のバスケ育成が知りたい 良いビックマンがいれば、良いガードが育つのかなぁー。ドンチッチのお話ね。ドンチッチはまぁーマヌー大先生みたいなもんか。

    個人的にはクラーク推しなので、カペラやグラントみたいに成長を希望しとります。

    クラーク繋がりで、ふとRUI君のディフェンスについて考えてましたが、ワタナビーは来年はどーなるのかなぁーと、馬場君は??となりました。ユーロとか行って向こうのバスケをジャパンにも教えて欲しいっす。どーしてもNBA(アメリカ)のバスケは日本にはまだ遠すぎるのでね。 

    てか来年の話しても現実味ない時期ですね。失礼 噛みました

    1. ユーロ系は育成メソッドがクラブ単位なので、ハンドラー以外がしっかりと育つイメージです。
      アメリカバスケはどうしてもハンドラーが主役で、それ以外はハードワーカー系統がNBAで生き残れる形ですね。
      長期的目線でビッグマンにもスキルを仕込むし、合わせのプレーを大事に出来るクラブに比べると、1年単位でチームを作っていき選手もそこに合わせるアメリカは育成で苦しみますね。代わりにいろんなチームに対応する能力はつきそうですが。

      日本は一見するとチームバスケをしているようで、考え方がアメリカに近かったりするから、個人技思想が強いです。だからBリーガーは戦術面で苦労している印象が強い。今はBリーグが育成するようなユーロ式(サッカー式)に変化し始めたので、その成果が出るまでにはあと3年は待ってあげないといけません。

      ユーロには選手じゃなくてコーチがいかないとダメですね。ちょっと行ってこようかなー

  2. 詳細なお返事有難うございます。凄く分かりやすかったです。

    ユーロ事情にはほんと疎くて助かります。サッカーのが?盛んな地域が多いユーロですもんね。育成もサッカーから応用しますよね。そーすると南米もそーか。

    主さん ユーロ、ちょっくら行ってきてきて下さい。ついでにアイス買ってきて 

    コーチ陣がユーロで学ぶのは良いことだと思います。そんな日が来たらうれぴー まずは『知る』事が大事だと思ってるので。でも皆、そんな簡単に教えてくれないから大変さ。

    一般人からすると、日本代表とかの選手が、ユーロ選手になって、ユーロ事情を日本に発信してくれたらなーと思いまして。田中大貴とか行ってきて下さい ついでに明日の朝のパン買ってきて

    日本のあやふや感もオリンピック後に少しずつでも変われば嬉しいです。

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