テレンス・ロスのタフショット

マジックの勝ち方はディフェンス力で互角の展開に持ち込み、ヒーローボールで仕留める方法。そのため個人が決まらないと得点が取れなくなる傾向があり、負け試合での得点がリーグで唯一100点を下回ります。ていうか、「負け試合」限定なのに、100点以下のチームが1つしかいない時代だよ。

〇マジックの得点
勝ち試合 115.4(20位)
負け試合  98.6(30位)

勝利のみと、敗戦のみなら差がつくのは当然ですが、他のチームよりもその差が大きめの印象です。ただ、30勝35敗なのに負け試合がかなり苦しいことがポイントで、かといってディフェンス優先で考えているチームなので、接戦はものにしたいはずなのですが。まぁそれはいいか。

マジックのオフェンスは、ある程度はチームオフェンスをしますが、引き出しは少なめで、試合が進むにつれてヒーローボールと化していきます。ただし、そのヒーローがスペシャルなエースがいない分だけチーム全員で戦う印象。

その中で特別な6thマンとして存在しているのが、テレンス・ロス。ザ・ヒーローボールの主役として、次から次へとエース的な得点を奪っていきます。

まずはマジックの勝敗別FG成功率を比較してみます。

リーグで唯一100点を下回るような得点になってしまう敗戦試合なのに、インサイドでの確率には大きな変動がないことがわかり、一方で勝利した試合はトップから右ウイングにかけてのアウトサイドが良く決まっていることがわかります。

そこにいるのがテレンス・ロス。同じく勝敗別の数字を比べてみましょう。

そんなわけでマジックの勝敗に大きく関与しているのがテレンス・ロスのアウトサイドシュート。6thマンながら、チームの浮沈を握っており、同時にロスが決めなければ勝利が遠いことも示しています。

◉シューター系エース

〇ロスの勝敗別FG成功率
勝利 FG44% 3P41%
敗戦 FG37% 3P31%

ベンチの選手としては、かなりの差が出ているロスは個人技でベンチメンバーを引っ張るタイプのスコアラーですが、試合を決める役割も担っています。そのためプレータイムもわかりやすいバランスに。

〇クォーター別プレータイム
1Q 5.2
2Q 8.1
3Q 5.4
4Q 8.7

1Q途中から登場して、そのまま2Qまで行くけれども、長くプレーしたり、ベンチに一回下がって再び登場したり。そして4Qになると更にプレータイムが伸びています。それだけ重要な局面での得点に期待されているわけです。

エースキャラっぽいのですが、得点の取り方はシューター系に近く、キャッチ&シュートを中心にして、そこにドライブを混ぜていく感じです。純粋なシューターではない。

〇3Pアテンプト
キャッチ&シュート 5.2本
プルアップ 2.0本

〇2Pアテンプト(10フィート以上)
キャッチ&シュート 0.9本
プルアップ 2.3本

結構ちゃんとしています。ヒーローボールといったけど、その中身はしっかりとキャッチ&シュートさせているわけで、過度にエースに期待しているわけではないし、そこまでのエースじゃないし。

ヒート戦で35点を奪った試合では、なんとアシストもリバウンドもゼロ。最近のエース系ではありえない数字ですが、自分で打開するわけではなく、あくまでもフィニッシュ役専門だということもわかります。しっかりパスを貰って決めきるのがロスの真骨頂。シューター系エース。

◉タフ・ロング

それでは何故、ロスが決めるプレーが「ヒーローボール」に見えてくるのか。それはキャッチ&シュートなんだけど、「難しいキャッチ&シュート」を決める役割だからです。

10フィート(3m)以上離れた距離のシュートにおけるタフショット数(ディフェンスが4フィート以内にいる)を比べると

〇FGアテンプト数
FG計 6.0本(リーグ1位)
3P  3.9本(リーグ2位)

ベンチから27分のプレータイムながら、ミドルレンジ以上の距離におけるタフショットの回数でリーグトップになっています。特に3Pでその傾向が強いわけですが、3P1位はもちろんハーデンです。代わりにロスは3Pに限らず、ミドルでも打っている事にもなります。エースっぽい。

いかにタフショットを打たない形にするかが重要な時代ですが、エースキャラは自分で打開する中で時にはタフショットを打つ必要があります。それを6thマンが担当する上に、打ちまくっている珍しいタイプ。

そしてこれが勝敗に大きく関係してきます。

〇勝敗別のタフ3P成功率
勝利 38.1%
敗戦 26.8%

タフショットの3Pなので27%決まっていれば、十分くらいな数字ですが、これが勝った試合だと38%も決まるわけで、ドフリーでも決まらないような確率で決めてきます。ザ・タフショットメイカー。

ロスは単に「タフショットを決める」選手なのではなく、「タフショットばかり打つ」選手なのも特徴です。

〇ディフェンスとの距離別アテンプト
2フィート以内 0.4本
4フィート以内 3.5本
6フィート以内 2.3本
6フィート以上 1.0本

マジックはチームとしてはフリーになっての3Pが多いのですが、ロスだけはタフショット3Pばかり打っています。これだけタフショット打っているにも関わらず3P35.7%というのは驚異的。

ディフェンスからすると、ロスが決めてくるのはわかっているので激しくチェイスしているわけですが、それでも決めてくるのがロスの怖さ。

そして言い換えれば「フリーになるのは上手くない」ようなシューターでもあります。チームメイトのシューター系エースであるフォーニエがは、ちゃんとフリーになっての3Pを打っているのにロスはタフになってしまう。

タフショットばかり打つテレンス・ロス

それはポジティブなだけじゃないんだよね。そしてこのタフショットの確率で得点が大きく変わってくるマジックのオフェンス。だったらもっとフリーにする仕組みを作りたいわけですが、そこは上手くいかないんだよね。

◉51点

ところでロスといえばラプターズにいた2年目に51点も記録しています。これもまた見事なるシューターっぷりでした。

ダンクチャンプでもあり、大いにスコアラーとして期待され育成されていてもおかしくなかったのですが、このタフショット癖が残ってしまったからか、フリーになるスキルが足りないからか、6thマンに落ち着いた印象もあります。

ロスのタフショットに頼っているような一方で、ロスが持つ特徴的な得点力を上手く活用しているマジックでもあります。

テレンス・ロスのタフショット” への3件のフィードバック

  1. お疲れ様です。
    ロスはどこかの実況・解説が「Human Torch」と言っていたのが印象的でした。
    コメントするにあたって調べてみましたが、マーベル作品のキャラクターみたいで、炎を操るみたいです。
    実際、炎のように爆発して点を荒稼ぎするイメージありますし、妙にしっくりきています。
    マジックは玄人好みというか気になるチームですが、ここから優勝を目指すにはどうすればいいんでしょうか?
    フルツ・ゴードン・ブーチェビッチ・フォーニエ・アイザックの並びは好きなのでもっと見てみたい感じもしますが…どうなんでしょう?

  2. 『結構ちゃんとしています』に笑いました。 タフショッターの割に意外と数字上は普通でしたね。ロスは、JRさんの後輩感がある印象です。悪くないJRさんみたいな。JRさん元気かなぁー。

    現NBAで『不効率』とされてるミドルのタフショット上位って、数字上は誰なんですかね?基本エース系だろーから、KD レナード あと誰だ?デローザン??

    なんだかんだタフシッョトミドルも決めてなんぼのplay-offだったりしますしねー。だからこそスリーとゴール下もいきるし。エースに限りのタフシッョトミドルだけど。

    タフシッョトミドル選手権して欲しい(今シーズンは理不尽KDいないから昨シーズンデータのが面白そうっす)

  3. ロスのタフショットは不思議と打った瞬間に入るってわかるんですよね。
    彼の場合、フリーで打っているスリーよりタフスリーのほうが入っているイメージすらあります。そんなわけないんですけど笑
    ロスが決めるのがヒーローボールっぽく見えるのって、タフショット決めてもそれが当たり前であるように振る舞っているからもあるのかなーなんて思ってます。

    バックスファンとしては同じくタフショットシューター系のミドルトンのブログなんかも読んでみたいです。今季がこのまま終わってしまったら50-40-90達成ですし…

    ここ最近はこのブログが生きる楽しみです。
    どうか管理人さんも体調にお気をつけて

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