なんだこの題名って感じですね。
管理人はもともとオーランド・マジック時代のヴォーゲルが好きでして、(正しくはヴォーゲル時代のマジックですが)あそこでヴォーゲルがやっていた仕事は本当に素晴らしく、感動的ですらありました。この気持ちはマジックファンには理解してもらえないと思いますが。
何が素晴らしかったかといえばヴォーゲルらしいディフェンス整備だけでなく、オフェンス面でもしっかりとスペースを作るポジショニングが定義されている中で、オフボールムーブが行われていました。「ポジションを空ける」→「ポジションを埋める」の流れが極めてスムーズだったのです。
ただ、残念ながらというか、このオフェンスの肝だったのが「アーロン・ゴードンを成長させる」みたいなところで、スキル的に上手いのだけどハンドラーとしては不十分だし、フィジカル強いけどPFアタック出来ないし、って感じの中でオフボールのポジショニングで優位に立たせて勝負していましたが、ゴードンの方は成長しきれなかったね。
フルツも加えた今のマジックオフェンスは段々とハンドラー中心化してきています。その中でチームプレーを促すフォーニエとブセビッチがいるから助かっているような印象は拭えないんですけどね。まぁそれは本題から大きく外れます。
そしてヴォーゲルはレイカーズにやってきました。若手コア達とレブロンのプレーシェアに困っていそうなレイカーズだったので、オフボールで形を作れるヴォーゲルは楽しみ・・・だったのですが、その前にコアは手放してアンソニー・デイビスになっており、強力なハンドラーであるレブロン中心路線になりそうで、ちょっとがっかりしたものでした。
しかし、現実として 「レブロンにハードワークさせる」HCヴォーゲルに率いられたレイカーズは、素晴らしいシーズンを過ごしているのでした。ヴォーゲルらしいディフェンス強化と勝利に導くオフェンス。前置きが長くなりましたが、後者について触れてみる回です。
◉ポポビッチ路線
その前にヴォーゲルで最も印象的だった2017年のスパーズ戦ハイライトがあります。ほぼ前半で勝負をつけた試合でしたが、
・ドライブからのパスアウト
・パスアウト先のポジショニング
・起点として混ざるポストアップ
・エクストラパス
などなど、それはまるでスパーズを観ているかのようなマジックなのでした。
そしてこれらの印象を思い起こさせてくれたのが、最近のレイカーズのオフェンスでもありました。スパーズみたいだったヴォーゲルのマジック、そのマジックのようなオフェンスが出来つつあるヴォーゲルのレイカーズ。むしろスパーズよりも「ポポビッチらしい」レイカーズと思えてきたのです。
というのも、現在のスパーズはデローザン&オルドリッジを中心としたオフェンス構成ですが、ダンカン時代も含めてチームオフェンスなんだけど明確な主役を中外に立てるのが好きなスタイルでもありました。
パワーアップさせたようなレブロン&ADなわけですが、レブロンが自分のアタックよりもADのポストアップを多く使いたがる感じもよく似ています。
〇ポストアップ
レイカーズ 8.9回(2位)
スパーズ 8.2回(4位)
〇ポストアップ
AD 5.3回(3位)
オルドリッジ 5.8回(2位)
ちなみにエンビードが8.2回なのでシクサーズが1位です。エンビードに次ぐ2位と3位になっているわけで、当然のようにオフェンスが似てくる印象があります。
〇ドライブ
レイカーズ 36.3回(30位)
スパーズ 50.5回(6位)
ここに関しては似ていないのですが、レイカーズが明確にドライブを減らしたことがわかります。なんとリーグで最もドライブしないチームに変貌しました。一方でスパーズはガードだらけになってしまったので増えまくっています。
〇パス数
レイカーズ 283.9本
スパーズ 281.8本
順位は数えるのが面倒なので書いていませんが真ん中よりも下です。ドライブには差があるけどパスの本数が似通っている両チームです。
〇アシスト数
レイカーズ 25.9本(9位)
スパーズ 24.5本(13位)
そこから生まれるアシスト数も似ています。そしてリーグの順位では共に真ん中よりも上になります。「パスの本数に対してアシストは多い」という共通事項というわけです。なお、両チームにはレブロン&ADとデローザン&オルドリッジという差があるわけで、そう考えるとこのアシスト数は戦術的には差があるとは思えません。
シーズンも終盤になってきてレイカーズのパスワークには磨きがかかってきました。ドライブが少なくても攻略できるパスワークながら、そのパスは本数以上に効果的にボールを動かしてアシストに繋がっています。ポストアップを使いながらのパスワークはポポビッチ感がでているのでした。
◉質の差
パスを繋ぎアシストするスタイルは似ているわけですが、ちょっと違うのはヴォーゲルはボールを動かして3Pを狙うのが好きで、ポポビッチは動かしてのアタックが好きなところだったりします。スパーズのドライブが増えてきたのには、そんな理由もありますが、一方で3Pも増やしてきました。
両チームの3Pはコーナーとそれ以外にわけると、似通った部分がある気もしてきますし、ポジションを「空ける」→「埋める」の動きをしていく中でレイカーズの方が優れている理由が、コーナーまで目いっぱい使えていることに表れてきます。
〇コーナー3P
レイカーズ 8.5本
スパーズ 6.1本
〇他の3P
レイカーズ 22.7本
スパーズ 22.5本
似ているのか、いないのかは別にして、レイカーズの方がコーナーまで上手く利用できていることがわかります。そこにいるのはダニー・グリーンではありますが。
最近はシューターチームと化しているスパーズですが、こうみると課題があることがわかります。シューティングではなく戦術としてシューターを使いたければどうするべきなのか。コーナーまで広く使わないとダメですよね。ただこの差は戦術の差なのか、選手の質の差なのか。
この点は3Pではなく、インサイドにディフェンスを集める能力の差だといえます。
〇ペイント内アテンプト
レイカーズ 43.5本
スパーズ 38,6本
〇うち、ゴール下
レイカーズ 32.0本
スパーズ 22.9本
ペイント内だけなら5本くらいしか変わらないのに、ゴール下まで押し込む能力では9本も違います。もちろん、これ以外にスパーズはミドルが多いわけですが、レイカーズもゴール下まで切り込むのではなく、ジャンプシュートを躊躇いなく選択します。でもトータルでは明確に差が出ている形に。
これをレブロン&ADのレイカーズとデローザン&オルドリッジのスパーズで比べてみましょう。
〇ペイント内アテンプト
レブ&AD 20.7本
デロ&オル 15.1本
〇うち、ゴール下
レブ&AD 15.4本
デロ&オル 8.2本
ということで、エース達の差がもたらしている要素は大きそうなわけです。9本あったゴール下シュート数の差ですが、7本がエースコンビの数字の差異になるわけです。まぁここってちょっとレブロンが凄すぎることが問題であり、デローザンを責め過ぎたら可哀そうですよ。
一方で「エース以外のペイント内アテンプト」は共に23本程度と似ています。周囲に促している(認めている)プレーとしては両チームは似ているとも取れます。
ちなみにプレータイムも似ていて、エース達が33~36分くらいプレーし、その次に多い選手として20~25分くらいの選手が6人くらいいます。エースを中心に組み立てながら選手を入れ替え、パスワークとポストアップで勝負するスタイルが似ているのでした。
◉ポポビッチの理想
レイカーズはクズマをトレードするのかという話がありましたが、それは個人で得点する選手を連れてくるための話でした。それに対して、チームとしてはパッシングで攻略するスタイルが浸透してきており、段々とスパーズっぽさが増してきました。
オフェンスはどうみてもレブロンとAD頼みなのですが、エース以外の選手が有機的に動き、そしてパスが出てくるオフェンスの完成度もあがっており、ここに個人技が過ぎる選手が加わってしまうとリズムも崩れそうです。
一方でスパーズの方はウイングが薄くなったことが問題点であり、ガード過多になったことはドライブを大幅に増やしたけど、パッシング増は生み出していないことがわかります。そしてコーナーから決められておらず、コートをワイドに使いきれていない問題があります。
またレイカーズはビッグマンを2人同時起用するチームですが、これまでスモール時代に抵抗していたのがポポビッチ。ところがスパーズはワンビッグに切り替えました。なので少し両チームは離れていく方向性です。
今回のテーマを「ポポビッチ・レイカーズ」にしているわけですが、その理由として
ポポビッチが本当にやりたいバスケをヴォーゲルが体現しているのではないか
と思い始めたからです。ダンカンという史上屈指のPFがいれば話は違うでしょうが、スパーズのバスケにおいてインサイドにアンソニー・デイビス、ウイング兼ハンドラーにレブロンがいれば、ポポビッチは今のレイカーズのようなバスケを志向していた気がします。
ダンカン加入前以来のプレーオフを逃す事態になりそうなスパーズ。もしもそんな事態になったら、スパーズファンはレイカーズの試合を追いかけてみたらどうでしょうか。絶対イヤだろうけどね。
めちゃめちゃ良き話題の記事でした。いや、いつも面白いんですがね。なんかわくわくしながら読み進みました。
『エースコンビの差』で終わりそうな話題ですが、確かに志向している事は近しく、一方はスモール過多。一方はビッグ過多。ふむふむ。スモール過多とビッグ過多はたまたまなのかなぁーと思ったり。
そもそもヴォーゲルってペイサーズ時代の印象が強くてマジック時代は『へぇー あんま見てないけど、そーなんだー』ぐらいでした。いざ、改めてこの動画みると、スペース広いのは当たり前として、リズム良く、ポストマンにも外にもボール行き来しますよね。
ハンドラーやプレイメーカーは、オーガスティンやT・ロス ペイサーズ時代にはG・ヒルとP・ジョージ(ランス)でしたが、そこをレブロンやロンドにやらしてるのがレイカーズヴォーゲル。それこそ選手の差(笑)
ランス・スティーブンスはいっそのことスパーズが取らないかなー?ポポさんとランスってどーなんるんだろー 興味本位でしかないけど見てみたい(笑)
今シーズンのレイカーズは確かにどことなく“かつてのスパーズ感”ありますね。
スパーズは今後のプランどーすのかなぁー。せめて、ベルターンズがまだいればと思ってしまいます。モリスめ。。。
いつも楽しく記事を読ませていただいてます。確かに今季のスパーズはコーナースリーが少ないと思っていました。効果的にシュートできているのがミルズぐらいだと思います。他のシューター陣は基本的にトップか45度からスリーばかりの印象です。シューター達のトランジションディフェンスに戻れるほどの走力の無さなのか、デローザンとオルドリッジのポストプレーのスペースの為なのかはわからないですけどコートを広く使えずオフェンスの閉塞感をもたらしていた気がしました。それに比べるとレイカーズは効果的にコートを使えていた印象です。ただあまり多くレイカーズの試合を見ていないので分かりませんがADのポストアップはそれほど効果的なようには見えませんでした。それならレブロンとのP&Rか、レブロンのポストアップのほうが効果的と思いましたがどう思われますか?