ケガしちゃった選手を書けるのも新しいな。
今シーズンもケガをして絶望視されているクリス・ダン。本来はこういう選手に触れるのはオフになるのですが、中断期間が長くなるので、堂々と触れましょう。
◉ザ・スティーラー
〇ブルズのディフェンスレーティング 108.9(13位)
苦しい戦いをしているブルズですが、ディフェンスに関してはそこそこの数字を残しています。以前に書いたようにオフェンス面は何がしたのか意味不明なチームオフェンスになっていますが、ディフェンスに関しては闘志メラメラ路線で良くなっているのか。
〇ダンのオン/オフレーティング
オンコート 103.6
オフコート 110.4
ところがこの数字はダンがコートにいるかどうかで大きく変わってきます。エースであるラビーンのオンコートが110.4もあり、それはつまり主力クラスの時間帯に守れていないことになりますが、ダンが出ている時間が驚異的な103.6というのは注目すべき数字です。
〇ダン
プレータイム 24.9分
スティール 2.0本
ダンのディフェンスにおける最大の特徴はスティールの多さ。平均25分ながらリーグ2位の平均スティールなのですが、1位のベン・シモンズが36分で2.1スティールなので、同じくらいのプレータイムに換算するとダンは2.9本くらいになるため、圧倒的な1位になります。もちろん、そんな都合よくいきませんが。
※余談ですがスティール3位がドラモンドです。これもまた特集したいレベルなのですが、ドラモンドって毎シーズンのように触れている気がしてさ。
〇ダンのDIFF
3P △1.5%
2P +2.5%
マッチアップ相手のFG%を「平均FG%と比較し〇%下げた」という数字では、3Pをより抑えていることがわかり、ガードなので2Pが平均+2.5%も割と優秀です。
ただ、スティールの圧倒的な数字に比べると、明確に優れているわけではなく、ラビーンは3P△1.9なので、この点ではダンよりもしっかりと守っていることになります。
優れたスティール力、普通レベルのシュート阻害力
ダンのディフェンスを定義するとこんな感じです。ただし、シュートを止める能力が低いといっても、良いディフェンダーはそもそも打たせないってことも忘れてはいけません。ラビーンよりは良く守っていることは事実です。
〇ディフレクション 3.7回(4位)
〇チャージドロー 0回
ヴァンブリートの回で出したパス等に触った回数を示すディフレクションはリーグ4位ですが、こちらもプレータイムを考えるとリーグトップの数字と言えます。一方でチャージングはシーズン通じて0回となっており、コースを読んで先回りすることは得意ではありません。ラウリーとは違う系統のディフェンダー。
マンマーカータイプで、ボールを奪う系統のディフェンダーとなってきたダン。似たタイプはエイブリー・ブラッドリーかな。奪うのは上手いけどシュートを止めるわけではないし、あくまでもエースキラータイプ。
◉スリースライド
そんなクリス・ダンのディフェンスハイライトを観てみましょう。ディフェンスは映像がないと理解しにくいというか、ワンパターンの紹介になってしまうんだよね。作ってくれている人がいて感謝。
さて、これらの映像を見る限り、前述の数字がよくわかってくるわけですが、何かしらを定義づけないと「ダンの見どころ」を把握することが難しくなります。特徴的なのは大きく3つ
①オンボール、オフボールともに驚異的にチェイスしている
②「パスを読む」よりも、オフェンスを追い抜くようなパスカットをしている
③ハンドラーをスライドステップで追い抜いてのドリブルカットをしている
簡単に言えばダンは明らかに自分のマークマンよりも速く動いており、しかも単純なドライブに対してもスライドステップで追い抜くような形で自分が優位な状況になって奪っています。良いディフェンダーには
・一歩目の反応の速さで自由を奪うタイプ
・読みの鋭さで先回りするタイプ
・粘り強く追いかけながらハンドチェックするタイプ
などがあり、例えばウエストブルックはボーンヘッドで抜かれることが多いけど、一歩の反応力で追い付いてしまうタイプ、クリス・ポールは読みの良さで先回りして奪い取るタイプ、SGAは力感なく追いかけながら最後にブロックの手が伸びてくるタイプです。この記事はサンダー編の次に書いています。
これらに比べてダンは(一歩目も速いけど)反応力で勝負しているわけでも、読みの良さで奪っているわけでもなく、ハンドチェックはあるけどブロックはそんなに。その一方で
相手よりも足を動かしている
シーンが目立ちます。これ自体は小さい選手のあるあるなので、珍しくないのですが、ダンが凄いのは歩数が増えてから相手を追い抜いていることです。スライドステップなのに追い抜くっていうのは簡単ではないし、3歩目以降で一気に伸びるように加速してパスカットしていきます。
また、「歩数が多くなって追い抜く」とスピードがついているから、逆を突かれると簡単に抜かれるリスクがあるのですが、ダンの場合はそこから立て直して追いかけることもしています。同時にドライブに対しては追い抜いてから自分が止まることでハンドチェックしてのスティールもあります。これを定義すると
1歩目、2歩目の速さ以上に、3歩目の伸びと停止力が優れているのがダンのディフェンスの特徴と言えそうで、それが題名の
クリス・ダンのスリースライド
となるのでした。ディフェンスの良い選手達はフィジカル面で優れることで体で上手く止めていくのですが、ダンの場合は体を張って止めるよりも、スリースライドで前に出てしまっている感じです。
爆発的なクイックネス以上に3歩、4歩と追い込んでいくタイプのディフェンダーの厄介さであり、チェイスしまくる運動量が相まってブルズディフェンスを大いに支えています。
◉PGかディフェンダーか
ただ前述したように「プレータイムに対してスティールが圧倒的に多い」わけですが、スピードと運動量を兼ね備えて機能しているだけに
「プレータイムが伸びたら同じクオリティを維持できるのか」
という問題が付きまとうのも事実です。ここはダンにとって選手としての岐路をわけるかもしれません。なんせブルズにきて以降は毎シーズンをケガで長期欠場しており、長いシーズンを全力でプレーすることが必ずしもプラスにはなっていない様子。
同時にドライブ力はあるのだけど、一向にシュート力が上がってこないのでオフェンス面でも少し力を抜いたプレーがしにくい一面もあります。
〇3P 25.9%
〇FGアテンプト
17-18シーズン 12.8本
18-19シーズン 11.3本
19-20シーズン 7.3本
そんなこともあってか、今シーズンはアテンプト数がグッと減りました。アシストも6本あったのが3.4本まで減っています。これはラビーンのハンドラー化以上にサトランスキーがPGになったこと、ホワイトがメインハンドラーを任されることが増えたためであり、ダンはオフェンス面での期待が低くなってきています。
ブルズがハンドラー頼みのオフェンスを辞めれば状況は変わってくるでしょうが、優れたディフェンス力がより一層際立つようになってきたのは、よく言えばオフェンス面の負担軽減、悪く言えばディフェンダーとしてのみ起用されているような状況から生み出されています。
そもそもダンの場合は平均6本のアシストを2シーズン続けており、PGとしても悲観するような成績ではありません。ただしシュート力がないため使い道は難しい。そこも含めて上手く戦術に馴染ませることが出来そうなチームならば、単なるディフェンダー以上の働きをさせてくれそうです。サンズさんどうですか?
ブルズに明確な武器をもたらしてくれているダンですが、その武器が強大になるほどに選手としてはディフェンスだけを期待されるようになっていきそうな過渡期を迎えているわけです。
オフシーズンが短くなりそうなので、先に手を打たなければいけないダンの収去。ラビーン、サトランスキー、ホワイトがいる中で、ディフェンダーとなっているガードにどこまでのサラリーを払う気持ちがあるのかブルズ。
16年のドラフト5位ながら、4年でディフェンダーとなってしまうのかクリス・ダン。そんなオフシーズンです。
お疲れ様です。
以前もちょっとコメしましたけど、ほんと素晴らしいんですよねダン。
ほのかにピッペンぽいディフェンスが好きです。
先日のペイトンの話とちょっと似てますけど、ダンの場合は明確に3Pさえ向上すればそこそこの契約を勝ち取れると思うんですけどね。
安い単年でGSWとか行かないかなー
ドラ5が4年でディフェンダーとしてジャーニーマンに片足突っ込んでるとは…
トレード後即ウェイブもザラにありますし
米スポらしいっちゃ米スポらしいですが、NBAは厳しい世界ですねぇ…
そうなると日本の野球と違ってスカウト陣の面子とか気にしないんですかね?
若しくはスカウトマンも結果次第ではすぐに切られてるのか…苦笑
ほんとに数歩で前塞ぎますね。不思議。どう言う練習してんだろ。
ルーキーの時から「ディフェンスは良いんだけど…」という一芸タイプから抜け出せないのが残念というか。
本人としては残留するより、他のストレッチ系の戦術のチームに移籍する方が良いと思われ、他のチームにとってもディフェンスと控えPGの強化として候補に入る選手だと思います。
たぶん一番フィットしそうで、使い方を知ってそうなのが古巣MIN。D-LOの控えにダン、あるいは2ガードで起用するのも面白そうな感じがします。